インタビュー
「大航海時代IV with パワーアップキットHD version」発売直前インタビュー。IVはストーリーに注力した,シリーズで一番人気の高いタイトル
本作のプロデューサーを務めるコーエーテクモゲームスの越後谷和広氏に,なぜ今「大航海時代IV」を復刻したのか,今後シリーズはどうなっていくのかなどを聞いてみた。
「大航海時代IV」は,シリーズを知ってもらうのに最適な内容
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,「大航海時代」シリーズの30周年記念タイトルとして,あえて「大航海時代IV」を選んだ理由を教えてください。
越後谷和広氏(以下,越後谷氏):
もともと「大航海時代」シリーズ30周年を迎えるにあたり,「III」か「IV」の復刻,もしくは「II」の大幅リニューアル版を出そうという案がありました。そこで改めて調べてみたところ,一番売れたのが「大航海時代IV」だったんです。
4Gamer:
「30周年に新作を出そう」という話にはならなかったのでしょうか。
越後谷氏:
30周年企画を検討していた当時は,まだ「V」と「VI」のサービスが継続していましたから,並行して「大航海時代VII」を出すのもどうかと。
4Gamer:
なるほど。
「大航海時代IV」は,どういった点で人気が高かったのでしょうか。
越後谷氏:
ストーリーですね。30周年記念タイトルの最終候補に残ったのは人気のある「II」と「IV」なんですけど,どちらもシリーズの中ではストーリーが厚めのタイトルです。「シブサワ・コウ」ブランドは,「信長の野望」や「三國志」などシミュレーションゲームが主体ですが,「大航海時代」はシミュレーションであると同時に,ストーリーも求められているということだと思います。
私としては,入社した後で最初に開発された「III」に思い入れがあるんですけれども(笑)。
4Gamer:
オリジナルは22年も前(1999年)発売のタイトルですから,どんなゲームか知らない人も多いと思います。改めて,その魅力を教えてください。
越後谷氏:
「大航海時代」シリーズは,冒険要素の「航海」および「新発見」と,「信長の野望」や「三國志」とは違う「交易」のシミュレーションが魅力となっています。なぜ当時の人達が航海をしたのかと言えば,新発見をして,それにより莫大な利益を稼ぐためです。それを体験してもらうべく「大航海時代」シリーズは企画されました。
しかし普通に作ってしまうと,「世界の市場を握る」ということがツボにはまる人にとっては魅力的かもしれませんが,「信長の野望」や「三國志」にある国盗り要素を期待している人は「ん?」となってしまいかねません。
そこで重厚なストーリーでゲームを引っ張ることにより,まず「そういう世界なんだ」「だから当時は,皆が航海するようになったんだ」という時代背景をプレイヤーに理解してもらう。そのうえでシリーズ本来の魅力である航海と新発見,交易の面白さを味わってもらう。「大航海時代IV」は,そうやってストーリーから自然にゲームに入ってもらえるところがキモになっています。
4Gamer:
ストーリーへ注力したことで,シリーズの中でも遊びやすいタイトルになっているわけですね。
越後谷氏:
そうですね。ナンバリングタイトルの中で一番間口が広いと思います。30周年のタイミングで,改めて「大航海時代」シリーズを知ってもらうには最適です。
7本の重厚なストーリーでプレイヤーを大航海時代の世界に誘う
4Gamer:
HD化するにあたり,何か新要素はあるのでしょうか。
越後谷氏:
いえ,当時の「大航海時代IV」の面白さをそのまま楽しんでいただきたいので,追加はしていません。ただ「大航海時代IV」はオリジナルの「PORTO ESTADO」と,シリーズとしては初となるパワーアップキット,そして携帯ゲーム機版の「ROTA NOVA」の3バージョンがあります。それぞれ独自の仕様になっており,完全版的な存在は今までなかったんです。ですから今回のHD版は,通信機能など一部を除くシングルプレイの部分で,すべての仕様が集まった完全版と言えるものに仕上がっています。
一応,CG担当から「これはぜひ直したい」「当時はOKでも,今の基準ではちょっと」というイベントシーンへの指摘がいくつかあったので,さすがにそこには手を入れています。
4Gamer:
今回は,PCとSwitchでリリースされます。携帯ゲーム機版もあったタイトルではありますが,Switch版の遊び心地はいかがでしょう。
越後谷氏:
快適ですよ。Switchのタッチパネルに対応ししているので,PC版のマウスで選択できるところはすべてタッチで選択できるようになっています。
4Gamer:
今回初めて「大航海時代IV」に触れる人に向けて,プレイのアドバイスはありますか?
越後谷氏:
「大航海時代IV」は,スペインとポルトガルの全盛期に「どうやって大海原に乗り出すか,どう市場を開拓していくか」というゲームです。キャラクターは7人いますが,初心者ならまずラファエル・カストールを選んでプレイし,ゲーム全体の設定とゲーム性を把握するのがいいでしょう。その後で,今度は自分の好みの主人公でトライしてもらうといいと思います。
7人それぞれで異なるストーリーが楽しめますし,攻略の難度もキャラクターによって違います。例えばラファエルだと「ここを往復していれば結構稼げる」というポイントを用意していますが,アジア方面から始めてしまうとスタート地点付近に倭寇がたくさんいて苦労するといったことがあります。そういった部分を,キャラクターにフォーカスしたストーリーとともに体験していただければと思います。
4Gamer:
今作もやはり,ストーリーを楽しむ形で進めていくのがよさそうですね。
越後谷氏:
勘違いしていただきたくないのが,ストーリー重視といっても,一本道のゲームではありません。コーエーテクモのシミュレーションですから,全面的な自由度を確保しています。ストーリーに従うことなく最初からアフリカ大陸を横切ってもいいですし,何ならケープタウンを目指すのもアリです。ゲーム全体を大きな箱庭として捉えていただけると,何度でも繰り返し遊べるんじゃないでしょうか。
あとは,本作らしい要素として船の改造も楽しんでいただきたいです。積載量をガッツリ上げてたっぷり輸送するのもいいですし,海賊をやるために大砲を並べてもいい。帆船は,男のロマンをくすぐる存在だと思うんですよ。
HD版「大航海時代IV」の反響が大きければ,新作の可能性も高まる?
4Gamer:
現状,「V」と「VI」のサービスは終了していますから,やはり新作を見たいという気持ちもあります。
越後谷氏:
実を言うと,今回の「大航海時代IV」のHD化には,今の市場的に「大航海時代」シリーズが受け入れてもらえるかどうかという,今後の展開の試金石的な意味合いもあります。今回の反響が大きければ大きいほど,新作が出るチャンスも増えます。
我々シブサワ・コウブランドとしても,いろいろなゲームを作りたいですから,今回良い結果が出で,新しい「大航海時代」にチャレンジしたい気持ちもあります。
4Gamer:
シリーズでは,「大航海時代 Online」「V」「VI」と長らくオンラインゲームが続きましたからね。確かにスタンドアローンの「大航海時代」が,どれだけ求められているのかは把握しにくいかと思います。
越後谷氏:
実際,久しぶりにスタンドアローンの「大航海時代」を遊びたいという声も寄せられているんです。
シリーズが30年続いてきた理由,その面白さが,HD版「大航海時代IV」には詰まっていますから,ぜひ遊んでみてほしいですね。
4Gamer:
30周年と言えば,記念版にはCD10枚組のサウンドトラックが同梱されますよね。
越後谷氏:
30周年記念版は,本当におすすめです! 「大航海時代」シリーズの楽曲は,社内でもファンが多く,今回の機会に「絶対に作ろう」と決めていたものなんです。菅野よう子さんが作曲したものを筆頭に,名曲ぞろいなんですよね。私を含め,チーム全員が30周年記念版を自腹で予約したくらいです。
4Gamer:
今回初めてCD化される曲もありますよね?
越後谷氏:
はい。10枚組で219曲を収録しており,そのうち「大航海時代III」「IV」「外伝」の楽曲は,今回が初めてのCD化となります。また「大航海時代 Online」はサービス10周年の時にサウンドトラックを作っていますが,今回はそれ以降の曲も収録しています。本当に良いものだと自負していますので,ぜひこの機会に。
4Gamer:
最後にHD版「大航海時代IV」が気になっている人に向けて,改めてメッセージをお願いします。
越後谷氏:
画面を見ると「ちょっとレトロかな?」と思う方もいらっしゃると思いますが,ゲーム性に関してはキャッチコピーにもしたように色褪せていません。PC版でもSwitch版でも,世界が激変した時代の1つである大航海時代を堪能していただければと思います。おそらく,価格以上の時間泥棒になるんじゃないでしょうか。ぜひ,よろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
「大航海時代IV with パワーアップキットHD version」公式サイト
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