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「Ready or Not」のVOID InteractiveがTeam 17とのパブリッシング契約を解消。学校を舞台にしたミッションが理由か
犯罪の凶悪化に対応して1960年代にアメリカの警察組織で設立された特殊部隊,SWATをモチーフにしたゲームとしては,2005年にIrrational Gamesがリリースした「SWAT 4」がよく知られているが,その後,大きなヒットは出ていない印象だ。ニュージーランドのハミルトンに本拠を置くVOID Interactiveが,「Ready or Not」の制作を発表したのは2017年で,2019年にはプレα版が公開されたが,大きな話題になることもなく,地道な開発が続いていた。VOID Interactive and Team17 have mutually agreed that Team17 will no longer publish Ready or Not. We are confident that this is the right path for the future of Ready or Not, and we thank Team17 for their partnership and wish them great success with their spectrum of games!
— VOID Interactive (@VOIDInteractive) December 20, 2021
そんな「Ready or Not」にスポットライトが当たったのは2021年3月,Team 17とのパブリッシャ契約締結が発表されたときで,同時にSteamのストアページがリニューアル。アップデートを続けていたα版も好評で,12月に入ってアーリーアクセス版の販売が始まった。
問題となったのは,北米の大型掲示板「Reddit」の公式スレッドで,ファンが「ゲームに学校を舞台にしたミッションを採用するか」と質問し,開発者がそれに対して肯定的な返答をおこなったことだ。現時点では当該コメントは削除されているが,この直後となる北米時間の2021年12月21日にTeam 17との契約解消が公式Twitterアカウントで発表されたことから,デベロッパとパブリッシャのゲームについて方向性の違いが契約解消の理由ではないかとファンやメディアに考えられている。
アメリカでは,学校での銃撃事件,いわゆるスクールシューティングが頻繁に発生して,重大な社会問題になっている。過去12年間で,300人近い学生や学校関係者が命を落としたという。銃規制だけでなく,いじめやメンタルヘルス,家庭や教育現場のあり方などについてさまざまな議論が交わされる中,アメリカだけでなくヨーロッパやラテンアメリカでも類似事件が発生するなど,問題の広がりも指摘されている。
VOID Interactiveは,契約解消と「学校ミッション」の間に直接的な関係はないとしているが,「Ready or Not」で現代社会のリアリティを追求したいVOID Interactiveと,センシティブな話題をゲームで取り上げくないTeam 17との合意が以前からできていなかった可能性もある。事実,アーリーアクセス版の発売時点で,SteamストアページではすでにTeam 17の名前は削除されていたようだ。
こうしたことについて,VOID Interactiveは12月23日,公式Twitterアカウントで新たなコメントを発表している。少々長いが,日本語にざっと訳してみよう。
「Void Interactiveは,高品質でインパクトのあるコンテンツを提供するという明確な使命を持っていますが,もしかするとそれは,主流にある他のデベロッパが文化的慣習やモラルの違いから敬遠するものかもしれません。我々は,プレイヤーやパートナーの声を大切にしており,その声だけでゲームの方向性を決めることはありませんが,私達の判断に影響を与えることは間違いないでしょう。その判断の中心にあるのは,このゲームが世界中の法執行官の仕事を尊重するものであり,卑劣な犯罪行為の称賛を意図したものではないということです。
私達は,難しいテーマを持つ「Ready or Not」というゲームの信頼性とリアリズムのレベルを向上させることに専念しています。そして,このゲームのリリースが,ファンやコミュニティに対してだけでなく,法執行機関が頻繁に対応するトラウマ的な出来事の影響を受けた人々に対しても一定の責任を持つ必要があることを理解しています。
私達の目的は,「Ready or Not」のすべてのコンテンツに同じ態度で取り組んでいくことであり,そのために,最近,必要な注意を以て継続的に議論していくことをチームメンバー同士で確認し合いました。
学校ミッションは,「Ready or Not」のストーリーの一部であるだけでなく,世界中の何千もの人々が体験した物語の一部です。それは,狂った銃撃者の手であまりにも早く死んだ人々の話,決してかかって来ないかもしれない電話を待つ家族や友人の話,できることをすべてする警察や治安部隊の話です。一般的になってしまった不快な現実を見たり,悲劇の影響を受けた人々の経験を,ふさわしい描写で現実世界に伝えるため,私達が少しでも役立てることを願っています。
私達はそのビジョンを守り,耳を傾け,「Ready or Not」を完成させるために毎日働きます。声援に感謝いたします」
— VOID Interactive (@VOIDInteractive) December 24, 2021海外報道の中には,「Ready or Not」を「スクールシューター(学校襲撃ゲーム)」と表現してファンの失笑を買う非ゲーム系メディアもあるようだが,このゲームのプレイヤーが,SWATチームの隊員として多くの人命を救うため,仲間と協力してミッションを進めていくものであることは強調してもいいだろう。
今のところ,Steamストアページで1万3000を超える「圧倒的に好評」を得ている「Ready or Not」だが,こうした問題への対処も行わなければならないなど,難しい舵取りを迫られていくことになりそうだ。
- 関連タイトル:
Ready or Not
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Ready or Not(C)Void Interactive Ltd