サイバーコネクトツーから2021年7月29日に発売されるシミュレーションRPG
「戦場のフーガ」(
PC /
PS5 /
Xbox Series X /
Switch /
PS4 /
Xbox One)の
インプレッションをお届けする。
2021年7月29日発売の「戦場のフーガ」。ダウンロード専売で,価格は通常版が4180円(税込),ミニサウンドトラックやデジタルアートブック,ゲーム内で使用可能なコスチュームやアイテムが付属するデラックスエディションが6380円(税込)となっている
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サイバーコネクトツーの設立25周年記念タイトルであり,また初の自社パブリッシング作品でもある本作は,
「テイルコンチェルト」や
「Solatorobo それからCODAへ」に連なる
“リトルテイルブロンクス”シリーズの最新作だ。
“戦争×復讐×ケモノ”がテーマという今作では,一体どんな展開が待ち受けているのか。じっくり紹介していこう。
※本稿は開発版を元にしているため,製品版とは内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
絵柄は可愛らしいが展開はハード。後戻りできない戦場に向かう子供達
本作の舞台は,イヌヒト・ネコヒトが暮らす平和な浮遊大陸
“ガスコ”だ。物語はその辺境に位置する
“プチ・モナ村”が,突如北東の“ベルマン帝国”の侵攻を受けることから始まる。逃げ延びた子ども達は,村外れの洞窟に眠る古代戦車
“タラニス”に乗り込み,囚われた家族を取り戻すために立ち上がるのだ。
使用可能キャラクターは総勢12人。誰かしら琴線に触れるキャラクターがいることだろう。なお,左から2番目の少しひねくれた都会っ子“カイル”と後列中央の食いしん坊なのんびり屋“ボロン”の二人が筆者のお気に入り
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平和だった頃のプチ・モナ村。20世紀前半のヨーロッパがイメージされる可愛らしいタッチのイラストも本作の魅力だ
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炎に包まれる故郷の村を前にする“マルト”。最年長の彼は子どもたちの「長男」役としてリーダーシップを発揮していく
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本作はフルボイスでこそないものの,所々に読み聞かせ風の淡々としたナレーション(CV:徳永朱音)が挟まるようになっている。それがなんとも物悲しげで,雰囲気を盛り上げる
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物語は,そんなキャラクター達が囚われた家族の行方を追い,ガスコ各地を転戦する中で進行していく。チャプターごとに市街での探索パートがあり,その後に戦闘ステージで複数の戦闘をこなし,最後にチャプターのボスに挑むこととなる。
1章あたりのボリュームは平均して2時間程度だが,中間地点やボス戦前には休憩パートの
「インターミッション」が挟まり,途中でのセーブも可能なので困ることはないはずだ。
各章冒頭には,ステージ周辺の地図が表示される。シリーズファンであれば懐かしさを覚える地名も
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ステージ進行の途中に差し挟まれるイベントパートでは,ベルマン帝国側のキャラクターも描写される。ライブラリの「ベルマンレポート」と合わせれば,一筋縄ではいかない敵軍側の情勢を伺い知ることも。画像は老将校のシュトーレンとバウム
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なおステージは基本的に一方通行なので後戻りはできない。進路上のアイコンの位置で戦闘やアイテム収集などのイベントが発生し,それと共にストーリーが進行していく。セーブは中断とオートセーブのみで,経験値稼ぎのためのフリーバトルなどもないので,戦闘は一回一回がとても重要だ。受けたダメージは持ち越され,回復のチャンスも少ないため,リソース管理がかなりシビアなのだ。それゆえ相手が強敵でなかっとしても,自然と緊張感に溢れたものになる。
後述のボス戦を有利にすすめるためには,進行ルートの選択が重要になる。危険なルートではタラニスの強化アイテムや経験値が多く手に入るが,安全なルートをとればHP・SPが温存できる。ルート選択によってボスのステータスが変化したりは無いようなので,パーティの現状と相談して最善の道を探そう
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パーティが全滅したときのみ,直前の休憩ポイント・インターミッションへ戻ることができる。シリーズファンなら,背景の曲線的な文様に思い当たるところがあるかも?
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シンプルながら魅力的な戦闘システム
さて,ここからは本作のキモである戦闘システムについて紹介しよう。
本作のバトルシステムは,いわゆるターン制が取られている。古代戦車タラニスに搭載された3つの砲座に配置されたキャラクター(砲座1つにつきアタッカーとサポートの2人)が,それぞれの“素早さ”によって行動するシステムだ。
アタッカーはキャラクターごとに使用できる武器の種別――手数の多さと防御力低下デバフが魅力の
マシンガン,デバフや回復が得意なバランス型の
グレネード,足は遅いが火力重視の
キャノン――が決まっており,これによって攻撃の属性や攻撃力が決定される。
一方の
サポートは,
「サポート効果」と呼ばれる特殊効果がキャラクターごとに用意されているほか,後述の「絆イベント」をこなすことで使用可能になる“協力必殺技”もサポートによって変化する仕組みだ。後者はもちろん前者もかなり重要で,筆者の場合,とくに通常攻撃時にHPを追加回復できる“ハンナ”や,キャノンの命中率を補うカイルのサポート効果には,中盤以降かなりお世話になったほどだ。
つまり,このパーティ編成を敵に合わせて切り換えて戦うのが,本作においてはとくに重要になってくる。
敵ユニット上部に表示される時計型の弱点アイコンと同じ色の武器で攻撃すると,敵の行動順を遅らせられる。うまく活用して戦闘を有利に進めたい
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戦車に乗っているため,HPとSPは全員で共有される。タラニスのHPが半分以下のときにダメージを受けると,かなり厳しい状態異常を受けることがあるので注意が必要だ
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パーティ編成は
「戦術モード」で戦闘中に変更できるが,一度編成を変えると3ターンは再変更できない(戦術モードにアクセスできなくなる)点には注意が必要だ。さらに戦闘終了時の編成は次の戦闘にも引き継がれるので,先を見越して考える必要がある。
目の前の敵に戦力を集中するか,次回を見越して編成を整えるか,といったジレンマが,戦闘に緊張感をもたらすのだ。
戦術モードでは,アタッカーを入れ替えることで割り込み行動を行うことも。ピンチに防御・回復を挟んだり,予想外のチャンスを活かすために,戦術モードへのアクセスをいかに確保するかも重要となる
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状態異常効果のあるスキルの使用時は,状態異常アイコンの横に成功確率が表示される。ここぞというときに強力な状態異常が決まれば,戦況を一気に塗り替えられる
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プレイヤーに究極の選択を迫る,忌まわしき最終兵器「ソウルキャノン」
そうしてパーティ編成に血道を上げて戦ったとしても,各章のボス戦ではかなりの苦戦を強いられることになるだろう。道中でキャラクターやタラニスの能力をできる限り強化しても,HP/SPが万全な状態でボス戦を迎えるのは困難で,繊細なプレイの積み重ねが求められる。なんとかボスに勝利できたとしても,もうSPは枯渇寸前というのは序盤からままあることで,戦闘が苛烈になってくる後半になると,余裕で敗北できる難度である。
しかしタラニスには,そうした苦難を一発で解決できる最終兵器がある。それが
「ソウルキャノン」だ。
“一人の子どもの覚悟によってすべての敵をせん滅する”というこの武器は,子供達に決して癒えることのない傷を与えることとなるだろう。
HPが一定以下になるとソウルキャノンの使用を迫られる。悪魔の最終兵器か全滅か,プレイヤーは究極の選択に直面する
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「ソウルキャノン」を発射する覚悟を決めた,都会っ子のカイル。普段は斜に構えた彼の意外な一面を垣間見ることができる。ここから先の描写はかなり心に来るものがあり,「次こそは」という気持ちが自然と湧き出してくる。このあとの展開に一見の価値があるのは間違いないのだが……
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禍々しい光で敵を一掃する「ソウルキャノン」。パーティは仲間の「覚悟」を背負い,次の戦いへ向かうこととなる
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料理に釣りに農業,遺跡探索,子供達の暮らしが描かれる「インターミッション」
ステージの要所に挟まるインターミッションでは,タラニスの強化や施設の拡充ができるほか,キャラクター同士の交流が行える。暖かな空気が流れるこのパートでは,プレイヤーも一時の平和に心を休められるだろう。
また会話によって経験値や親愛度が得られるので,編成の都合で活躍の機会が少なかったキャラクターのフォローアップも可能だ。
キャラクター間の親愛度を高めると,絆イベントが発生する。本編シナリオでは直接は語られない設定が深堀りされ,キャラクターへの愛着が増す要素となっている。彼らとどうにか無事エンディングにたどり着きたくなること請け合いだ
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絆レベルを上げると使用可能になるマルトとメイの協力必殺技「チアバースト」。追加効果で仲間の協力必殺技ゲージが溜まるので,強力な敵も一気にたたみかけられる
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タラニス内での活動に成功すると,ほほえましい一枚絵が表示される。画像は「料理」を行ったときのもの。料理では次のインターミッションまでのステータス補正を得られる
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遺跡探索では,小規模なダンジョン探索アクションをクリアすることでタラニスの強化素材が入手できる。ちょっとしたミニゲームだが,本編がハードだけに息抜きできる嬉しい要素だ
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釣りや探索,敵からのドロップで得た素材を利用してタラニスの武装を強化する。体感だが成功率80%ぐらいから強化失敗が目立ってくるので,絆レベルの高い仲間から応援がもらいたいところ
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周回プレイでリトルテイルブロンクス世界の謎に迫る
難度の面でもストーリーの面でも,かなりの歯ごたえを感じる本作だが,クリア後はプレイデータを持ち越してのプレイも可能になっている。悔いが残った戦いをやり直す意味でも周回プレイに臨む動機としては十分だが,どうやら本作には,
1周プレイしただけでは解き明かすことのできない謎が,いくつも用意されているようだ。
超兵器であるタラニスは,いったいどんな意図で生み出されたのか。ときおり挿入されるナレーションは誰が語っているのか。ゲームオーバーのたび,「今度は~」「次に~」と意味ありげに表示されるメッセージの真意は。各章冒頭に表示されるマップの既視感は。どうやら周回プレイが可能なこと自体にも何やら意味があるようで,筆者は2周目をプレイしている途中だが,まだまだ興味は尽きない。
エンディング後には,レベルやタラニスの拡張を保持した周回プレイが可能に。悔いの残る1周目への“復讐”の始まりだ
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クリア後のタイトル画面では右側の歯車が点灯する。なんとも意味ありげな演出だが……
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本編終盤でライブラリに追加される「ジャンヌアーカイブ」。最終ステージまで全ての項目が「???」のままだったが,2周目プレイでは解禁されていくようである。突然現れる聞き慣れた地名に驚きを隠せない
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一つだけ改善してほしい点を上げるなら,ユーザーインタフェースはもうちょっとだけフレンドリーであってほしいと思う点がいくつかあったことだろうか。キャラクターのレベルや経験値の一覧表示が出来なかったり,キャラクターの切り替えなどで,左端と右端でループしなかったりと,細かな点ではあるがストレスがあった。序盤のチュートリアルが親切な作りなだけに,アップデートなどで改善されるとありがたいところだ。
寝室で「休息」を行うと,「ケガ」や「戦闘不能」といった状態異常の回復に加え,かなりの量の経験値が獲得できる。ここで現在のレベルと経験値が表示されると,パーティの成長管理が捗るのだが
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ハードなストーリーにハードな難度と,人を選ぶタイトルであるのは確かだが,その分だけ強敵を倒せたときの達成感は大きく,エンディングを迎えたときの感動と壮快感はひとしおな本作。徐々に世界の謎に迫っていくメタゲームが仕込まれているところも,考察好きのゲーマーにはウケそうな予感がする。
本稿で引っかかる部分を感じた読者は,大団円を目指して周回を重ねてみてほしい。その価値は,きっとあるはずだ。