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[CEDEC+KYUSHU]カットシーンやテキストを使わずにストーリーを掘り下げるには。「戦場のフーガ」のディレクターがそのテクニックを語る
セッションでは,サイバーコネクトツーのヨアン・ゲリト氏が「戦場のフーガ」(PC / PS5 / PS4 / Xbox Series X|S / Xbox One / Nintendo Switch)に取り入れたストーリーテリングの手法について語った。
ゲームにおけるストーリーの表現方法でまず思い浮かぶのは,カットシーンやテキスト(シナリオ)だろう。
ハイクオリティなムービーや濃密な脚本,豊富なボイスといったものは確かにゲームを構成する魅力的な要素であり,ストーリーを作り上げる大切なものではあるが,これらを実現するにはそれなりに大きなコストが必要だ。
もちろん「戦場のフーガ」にも,カットシーンやテキストベースで進むシーンはあるが,小規模タイトルであったため,これらの手法に大きなコストをかけることが難しかったそうだ。
予算はかけられないが,もっとストーリーを掘り下げたい――そんな思いを抱いていた開発チームはカットシーンやテキストに頼らない手法を模索したのだという。
そこで紹介されたのは,キャラクターの「モーション」と「配置」を工夫し,そこにストーリー性を生み出す手法だ。「戦場のフーガ」では,戦車の中で子どもたちが生活するインターミッションというフェーズがあるが,キャラクターが生活している場所や動きに意味を持たせているのだという。
例えば,ハンナは,家事と料理をする姿が見られるが,これにより皆の世話をするのが好きなキャラクターであることを表現している。双子のチックとハックは,ゲームの序盤だと近い距離にいて行動を共にしているが,ストーリーが進むと離れていく。これはお互いに依存している状態から,それぞれが独立した状態へと変化するさまをキャラクターの配置で表現しているのだとゲリト氏は語る。
こういった性格づけは,各キャラクターのスキルとしても表現されている。考えるのは苦手だが,仲間思いのマルトには単純な攻撃と仲間のサポートを持たせ,力は強いが不器用なポロンには与えるダメージは大きいが,その代わりに味方や自分にデバフなどの負担がかかるようなスキルを持たせている。
しかしスキルでの性格づけは,プレイヤーにキャラクターをパーティに組み込んでもらうことで初めて伝わるものでもあるため,能動的にキャラクターに興味を持ってもらうことが必要になってくる。そこで開発チームはマップのレベルデザインにも工夫を施したという。
例えば,回復スキルを新キャラクターが仲間に加わった後には,HPを回復するマスのないマップを配置し,キャラクターを使いたくなるように作っているとゲリト氏は述べていた。
また,卑怯な性格のボスには,自分の部下を殺して吸収するといった非道な行動を持たせたり,仲間だったがある事情で敵に回ったボスは,プレイヤーたちを傷つけることにためらいを見せたりする。テキストやカットシーンを使わないキャラクターの掘り下げは,味方キャラだけでなく敵となるボスに対しても行われているのだ。
そのほかにも,本作の特徴の1つである仲間1人の命を犠牲にすることで,どんなボスも一撃で倒せる「ソウルキャノン」では,犠牲にしたキャラクターがその後のカットシーンで黒塗りにされたり,親しかったキャラクターが落ち込んでスキルを使えない状態になったりと,“キャラクターの死”に重みを持たせるような演出を入れているそうだ。
ゲリト氏は,「今回紹介した手法の1つ1つはストーリーテリングを支えるには弱いもの。しかしうまくつなげることによって,強固な柱になる」と語る。そして,改めてカットシーンやテキストに頼らなくてもストーリーテリングは可能であると述べ,セッションを終えた。
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(C)CyberConnect2 Co., Ltd.
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