レビュー
メキシコの大自然を駆け抜ける「Forza Horizon 5」レビュー。PC版はウルトラワイド対応で満足度高し
「Forza Horizon 5」公式サイト
Forza Horizonシリーズとは
まずはForza Horizonシリーズについて,基本情報を整理しておこう。
同シリーズは,「Forza Motorsport」シリーズのスピンオフにあたる位置づけだ。本流であるForza Motorsportシリーズは,多数の実在サーキットを舞台にタイムアタックやオンライン上のレースを楽しんだり,あるいはレースキャンペーンを戦っていく。どちらかと言えば,硬派なモータースポーツ系カーライフを楽しむことを趣旨としている。
一方,Forza Horizonシリーズのほうは,Forza Motorsportシリーズにも存在するレースキャンペーンを少々ドラマ仕立てに拡張したスタイルのゲームデザインであり,「実在の地域」の「架空の街」を舞台にした「走り屋ライフ」を楽しめるようになっている。
Forza Horizonシリーズでは,「架空の街」の公道を走り回り,さまざまなレースイベントを発見していく必要がある。ゲーマーに分かりやすく説明するならば,「自動車版オープンワールド型RPG」といったイメージに近い。
ゲーム世界の移動はマイカーを走らせ,遭遇するレースイベントはRPGにおける「戦闘」といったところ。実際,レースに勝てば経験値や賞金(ゲーム内クレジット)が手に入り,獲得経験値に応じてプレイヤーのレベルも上がる。プレイヤーのレベルが上がるにつれて,ゲーム世界での名声が広まっていき,行ける場所や新しいレースとの遭遇機会が増えたりする。
Forza Horizonシリーズでは,車がRPGの武装品に相当するが,高性能な車ほど購入時には高額なゲーム内クレジットが必要だ。たくさんのレースに参加して勝ち,その賞金を貯めていくことが,当面のモチベーションとなるわけで,ゲーム序盤に「金の亡者」となりがちなところもRPG的である。
主人公(プレイヤー)は「どこからともなく現れた,天才的なドライビングテクニックを持つ無名の走り屋」という,走り屋マンガで見たような設定となっている。このあたりもどことなくRPGっぽい。
Forza Horizonのレースで使用されるコースは,基本的には架空のものだ。その中には現実離れしたシチュエーションも多い。「航空機とタイマン勝負するハイスピードレースイベント」「数百メートルのジャンプをする超立体的なラリーコース」「車両価格にして数億円の超シャコタンスーパーカーによるオフロードレースイベント」などは,近年のForza Horizonシリーズではお馴染みのシチュエーションである。
一方で,登場車両は実在するものが多く,ほとんどがForza Motorsportシリーズから継承されている。
Buenas tardes! メキシコだぜ,アミーゴ!
Forza Horizonシリーズの特徴と言えば,世界各地のロケーションである。「1」はアメリカ・コロラド州,「2」は南ヨーロッパの地中海沿岸地域,「3」はオーストラリア,「4」はイギリスが舞台になっていた。
開発スタッフによれば,ロケーション選定には毎回難航しているそうだが,「なぜ,この地域なのか」という質問に対しては,「グラフィックス技術の都合とも無縁ではない」と説明されることが多い。Xbox 360向けにリリースされたシリーズ作では,複雑な材質表現が難しかったことから,低湿度のカラっと乾いた地域が選ばれていたようだ。一方,グラフィックス性能が高くなったXbox One向けのシリーズ作には,雨天や水面などが登場しやすい湿度の高い地域が選定されている。
「5」の舞台はメキシコだ。メディア向けに行われた開発者へのQ&Aセッションにおいて,「メキシコを選んだのは,水蒸気や嵐といった表現が可能になったことと無縁ではない。悪路レースにおける背景に生息する動物達のリアルな挙動や,大量かつ高密度なジャングルの植物表現は,Xbox Series Xでなければ実現できなかった」という回答があった。
また,Q&Aセッションでは「プレイヤーと接する何人かのキャラクターの多くは,現地(メキシコ)採用の声優を起用している。彼らのハイテンションな演技の数々は,シリーズ最高レベルの異国情緒を与えてくれた」という説明もあった。今回,ゲームの言語音声を標準である「英語」に設定してプレイしてみたのだが,確かに一部のNPCはメキシコ(スペイン語)訛りのある英語だった。
頼りになるのは愛車だけ。ワイルドなレースを生き延びろ
プレイヤーの見た目を簡易的なキャラメイキングで作り,プレイヤー名を用意されているものから適当に選ぶだけで,すぐにゲームを始められる。ストーリーや世界設定としては,前作の舞台だったイギリスの走り屋業界で名声を得た主人公が「今度はメキシコで腕試しするぜ」といった流れだ。
ただ,ストーリーが地続きになっているというわけではないので,「今回が初めてのForza Horizonです」という“一見さん”も気兼ねなく楽しめると思う。「君が★★で有名な,あの○○君かね」といった“身に覚えのない英雄視”をされることもあるが,ゲームプレイに影響はない。「前作までのあらすじ」をネットで調べる必要はないだろう。
ゲーム開始直後は,チュートリアルレースが行われる。「今作で展開されるメキシコのレースはだいたいこんな感じでっせ」という趣旨のもので,1レースがとても短い“試食”的なレースモードとなっている。
いきなり高性能オフローダー車から,AMGの超限定スポーツカーまでも操縦することになるが,チュートリアルが終われば「今のは夢だったのか?」と言わんばかりの一文無し状態に。前作のイギリスで有名になった主人公(プレイヤー)も,メキシコではただの「駆け出し」の走り屋である。
こうなったらやることは,マップ上の面白そうなレースイベントを目指してマイカーを走らせるだけ。ただ,公道を優等生然として走ってもいいし,気になる景観があれば舗装路から外れて,柵やサボテンをなぎ倒しながら荒れ地を走りまくってもいい。地図には載っていない“何か”を発見する,「RPG的な偶然」との邂逅に恵まれるかもしれない。ゲーム世界の広さは,Forza Horizonシリーズ最大規模と謳われている。
筆者は同シリーズをシングルプレイで遊ぶことが多いが,オープンワールドの世界を持つタイトルらしいユニークなオンラインモードも充実している。
前作では追加実装された人気のオンラインモード「エリミネーター」(The Eliminator)は,今作では最初から収録されている。
これは,多数のプレイヤーをランダムでマッチングして,ゲーム世界のどこかに設定されたゴールを目指すレースモードだ。前半のレースは予選にあたり,道中で遭遇したプレイヤーにタイマン勝負を仕掛けることもできる。勝ち残ったプレイヤーが絞られてくると,最終レースが行われるといったバトロワ風の流れだ。
オフローダー車であれば,舗装路をナビ通りに走らなくてもいいため,必然的にレース展開はワイルドなものになる。まさにメキシコというロケーションにぴったりのモードなのだ。
32:9ディスプレイでのレースは筆舌に尽くしがたい
今回,筆者は主にPC版をプレイしている。せっかくなので,押し入れにしまってあったXbox One向けステアリングコントローラ「Mad Catz Pro Racing Force Feedback Wheel and Pedals」を引っ張り出してみたところ,ドライバーを入れずともWindows 10から認識されて使用可能になった。
非常にレアな製品に対応しているということは,Xbox One対応のステアリングコントローラが広く使えるのかもしれない。
また,筆者のPC環境は比較的ハイエンド級(AMD Ryzen 9 5950X,NVIDIA GeForce RTX 3090)なので,Samsung製のアスペクト比32:9の超横長ディスプレイ「C49HG90」も引っ張り出してみた。解像度は3840×1080ドットである。
PC版は通常のアスペクト比16:9だけでなく,21:9や32:9といった超横長アスペクト(ウルトラワイド)モードに対応しており,レンダリング画角のカスタマイズも可能だ。臨場感と没入感を重視している人は,ぜひトライしてほしい。
ちなみに,すべてのグラフィックスクオリティを最高位にしても,筆者のPCでは3840×1080ドット,常時60fpsを維持していた。もちろん,HDRにも対応している。
なお,Xbox版はウルトラワイドには対応していない(アスペクト比16:9に固定)。各機種の解像度とフレームレートの関係性は以下のとおりだ(すべて公称)。
Xbox Series X (Graphics Mode) |
4K/30fps/HDR |
Xbox Series X (Performance Mode) |
4K/60fps/HDR |
Xbox Series S (Graphics Mode) |
1080p/30fps/HDR |
Xbox Series S (Performance Mode) |
1080p/60fps/HDR |
Xbox One X | 4K/30fps/HDR |
Xbox One S | 1080p/30fps/HDR |
Xbox One | 1080p/30fps/SDR |
Xbox Series X版もプレイしてみたが,ゲームのプレイフィール(運転操作の感触)やグラフィックスの面において,PC版に大きく見劣りする部分は感じられなかった。
グラフィックスと言えば,「レイトレーシング対応」が気になる人もいるだろう。残念ながら,レースイベントやゲーム世界の走行中は未対応である。
ただし,所有する車を舐め回すように眺められる「ForzaVista」モードはレイトレーシングに対応しており,リアルな鏡像表現が楽しめる。
個人的には,リプレイモード(終了したレースを別視点で再生できるモード)もレイトレーシングに対応してほしかった。2台が並んでデッドヒートを繰り広げるシーンで,互いの車の姿はなく,環境マップによる背景のみが映り込んでいるのは残念だ。
車両シミュレーションのクオリティは高い
筆者が使用した「Mad Catz Pro Racing Force Feedback Wheel and Pedals」はフォースフィードバックが強力で,コーナリング中にタイヤのグリップ力が抜けて,再びグリップ力が回復したときには,とんでもない力でステアリングがプレイヤーの意思とは違う方向に回転してしまう。
また,メキシコの荒れ地を走行するシーンが多くなるが,走行中にタイヤが拾う障害物からの衝撃を振動だけでなく,ステアリングの左右方向へのフォースフィードバックにも強く影響する設計になっているようだ。そこそこ大きい石が多い道の走行中,ハンドルが左右にブルブルと振動するため,しっかり握ってステアリングを抑え込まないと真っ直ぐ走るのも難しい。
フリー走行の時には,こうした体験もかなり面白いのだが,レースイベントだとコースアウトの確率を上げてしまう。操作の設定はマシンやコースに応じて,臨機応変に変更することをオススメする。
敵車両の速さは「DRIVATARのレベル」から設定できるが,「適度な本気」と「適度なおもてなし」をしてくれるのは「中級」になるだろう。かなり腕に自信がなければ,「上級」で1位を獲得するのは難しい。
Forza Horizonシリーズは「ドライブフィールがアーケードっぽい」と言われがちだが,プレイヤーの操作がしっかりと挙動や感触に現れるので,車両シミュレーションのクオリティは高いと思う。
アシスト関連の設定は各車種の駆動方式や走行路面の状態が関係するため,一概には言えないものの,「トラクションコントロール」と「スタビリティコントロール」(STM)は適宜変更したほうがよさそうだ。
例えば,カウンターステア操作をしながら走り抜けたい車種,あるいはそのほうが速くなるコースでは共にオフ設定がオススメ。そうでない場合は,STMをオンにすると運転しやすかった。それぞれのオン/オフ設定の組み合わせもドライブフィールに影響するため,いろいろと試したほうがいいだろう。
Forza Horizon 5はPC(MicrosoftストアやSteam),Xbox Series X,Xbox One向けにリリースされており,その製品バリエーションも多彩だ。もちろん,Xbox Game Passに対応しているが,プレイ可能なエディションは標準版相当となっている。追加車両や拡張パックに興味がある人は,特別なエディションもチェックしてみよう。
現在,Xbox Series X|S本体が手に入りにくい状態ではあるが,せめてもの救いはPC版もリリースされているところだろう。最上位のゲーム体験を楽しみたいとなると,必要なPCスペックは比較的高めだが,その意味でもXbox Series Xのコストパフォーマンスは魅力的である。
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