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Wemadeが持つブロックチェーンプラットフォームの魅力とは。CEOヘンリー・チャン氏による懇談会でのスピーチと質疑応答をレポート
WebXで日本政府の関心の高さを実感。ゲームとブロックチェーンはいずれ溶け合う?
チャン氏は,これまでにさまざまな国でブロックチェーンのイベントに参加しており,日本では今回のWebXが初めての参加となるそうだ。そんなチャン氏だが,会場を回った印象として,日本政府の関心の高さを肌で感じたという。
実は今回のWebXでは,開会の挨拶を自民党政務調査会長の萩生田光一議員が行い,ビデオメッセージではあるが,岸田文雄 内閣総理大臣の演説も公開され,メディアも含めて参加者の注目度はかなり高かった。技術革新の産業化にはさまざまな要素が必要であり,とくにブロックチェーンにおいては,規制緩和や法の制度化というのが必要となるのだが,チャン氏は当初,日本政府はゆっくりとした歩みだという印象を持っていたのだという。
さて,ゲーム産業の歴史を振り返るチャン氏は,2000年代にインターネットが普及し,オンラインゲームが登場したが,現在ではオンラインゲームという表現も使われなくなっていると話す。確かに,ジャンルとして区別するときはともかく,現在では“オンラインにつなぐ必要なゲームである”ことを特別意識して遊ぶ機会は減っている。ゲーム機にしても,モバイル端末にしてもネットワークに常時つながっている状態であることがほとんどだからだ。とくに韓国のゲーム市場であればなおさらだろう。
また,2010年代にモバイルゲーム(スマートフォン用のゲーム)が登場したときには,ゲームを作るべきかという議論もあり,それくらいに小さな市場だったが,現在では売り上げ面においてメインストリームになっているとチャン氏は述べた。現在(Web3関連で)起こっている状況は,まさにオンラインゲームやモバイルゲームが登場したころの再現ではないかと考えているのだという。
つまり,ゲームを制作するとき,オンラインゲームのときのようにブロックチェーンを導入することは自然で当たり前のことになり,そうした議論すら将来的になくなると考えているわけだ。
最後にチャン氏は,日本のブロックチェーン産業との協力を本格的に行いたいとしてスピーチを締めくくった。続いて,質疑応答で行われた質問と回答を紹介しよう。
ゲームファンは“ブロックチェーン”という知識の壁を越えられるのか
――いま,世界中でさまざまな企業がブロックチェーンに参加しようとしていますが,Wemadeとしてここに訴求したい,コミュニケーションしたいという点はありますか。
チャン氏:
私どもはトークノミクスを使ったブロックチェーンのプラットフォームを目標としています。ですので,日本の大手企業だけでなく,小さな会社であっても,新しくIPを作ろうとしているすべての会社に対して関心を持っています。
会社の規模を基準にしているというよりは,どれだけ強い意志を持っているか,というのが重要です。トークノミクスを取り入れて,ゲームをより面白くしたい。ユーザーが楽しめるものにして,より多くを取り込んでいきたい。それらを信じている開発会社と一緒に仕事をしたいと考えています。
オンラインゲームやモバイルゲームが最初そうであったように,真摯にこの革新に向き合いながら,失敗をしたとしても,また次にチャレンジしていくような強い意志とビジョンを持った,そういったパートナーの皆様とご一緒したいです。
――日本のブロックチェーンゲーム市場に対して,どのように期待しているのでしょうか。また,Wemadeのプラットフォームについて,パートナーとなるゲーム開発会社から見た強みや特徴があれば教えてください。
チャン氏:
日本の産業的な動きは,ほかの国に比べるとややもすれば少し遅く感じるかもしれませんが,その一方で,非常に着実に進んでいるのではないかという印象を持っています。
昨年,一昨年に私がブロックチェーンやWeb3のイベントに行ったときは,見た目には華やかですが,以前参加していた会社がすでになくなっていたことも多くありました。しかし,今回の(WebXで)ブースを見て,1つずつ着実に,アイデアを形にすることに向けて努力が感じられました。
また,日本のゲーム産業で感じるのは,日本はもっとも大きなマーケットの1つで,非常に長い歴史も持っている。そして,非常に高度化されたマーケットでもあるということです。さらに,ゲームの本来の楽しみである,プレイヤーを楽しませることに加えて,持続可能なゲーム内のシステムも持っています。これらはブロックチェーンを適用するのに,もっともふさわしいゲーム内システムではないかと考えました。
ただ,伝統があるということは,これまで構築されてきたパラダイムが強固であるということでもあります。新たな革新や変化は遅いかもしれませんし,それに関するさまざまな抵抗もあるでしょう。しかし,パラダイムがいざ変化したときには,爆発的な波及していくのではないでしょうか。
日本のマーケットで,日本のゲーム産業,または日本のブロックチェーン産業がこれら(日本の伝統)と結合したときに起こりうる波及力は,ほかの国やほかのマーケットよりも,はるかに大きいのではないかと考えています。
そして,技術革新というものは,社会という巨大な既得権からの抵抗を受けることになります。インターネットもそうでしたし,モバイル(スマートフォン)もそうであったと言えます。ブロックチェーンは暗号資産ということで経済と密接に結びついていますので,よりそうだと言えます。
世界的に見ると,どの国の政府も暗号資産やブロックチェーンに対する理解度は著しく低い,または否定的です。ですが本日(7月25日),議員が直接参加して冒頭発言を行いましたし,また総理が祝辞を述べている。さらに法の制度化についても,ほかのどの先進国よりも,一歩リードして構築されています。そのような状況を見て,長い期間,着実に準備をしてきたのだと感じました。
ほかの国の,どのイベントに行っても,このように積極的に政府が参加して意思表示をするというのを,これまでに見たことがありません。
これら3つの理由によって,日本のマーケットに対する期待を非常に大きく持っていますし,パートナーシップに向けてこれから努力していきたいと考えています。
もう1つの質問について,我々はWEMIX(Wemadeグループが開発,発行する暗号資産)の戦略の基本をプラットフォームと呼んでいますが,プラットフォームという用語は誰でも使えるので,補足の説明が必要になると思います。
我々が考えているブロックチェーンの技術的な部分は,トークンやコインを発行しつつ,それにまつわるさまざまな税務的な問題,または法的な問題を一括して執り行うというものです。
ゲーム開発者は,よりゲームを面白くすることに専念していただく,つまりゲーム中でトークン化させたり,NFTを発行したり,ReFi(リファイ)を適用したりと,ゲームを経済的な意味で面白くさせる,活用させるというところに専念していただくということです。そこに必要な技術的な問題,法的な問題,会計的な問題の処理は我々が行うというのが基本的なアプローチとなります。
トークンを使うことだけでなく,そのトークノミクスによって持続可能なことができるかどうか,それらを考えているすべての方たちに,私達は必要なソリューションを提供する。それが私達が考えるプラットフォームの意味です。そういった意味でのプラットフォームにおける現在の立ち位置として,Wemadeがいま,世界的にもっとも先頭を走っていると断言できます。
――先ほど,2000年のオンラインゲーム,2010年のスマホゲームというサンプルを提示されましたが,2020年のブロックチェーンにおいては,前の2つと違い,ユーザーにはまったく新しい知識を強制することになります。しかし,日本のゲームファンには,おそらくそこまで(知識は)広がっていないと思っています。
その部分を解消するために,今後どのようなことが必要だと思われますか。そして,そのためにWemadeはどうしていくのでしょうか。
チャン氏:
大衆に受け入れられない理由,その難しさという意味で,ご指摘については100%,私も同意します。
いまブロックチェーンの革新において起こっている現象は,過去に起こってきたことと共通点があると考えます。例えば90年代後半,オンラインゲームをするためには,インターネットにつなげるというところから始めなければなりませんでした。当時は2枚のマニュアルを使って,またPC通信(パソコン通信)に加入して,そこでソケットを設定しなければならないという煩わしさがありました。しかし,いまではインターネットを(意識的に)つなぐ必要もないですし,それはもう当たり前のようになっています。
ブロックチェーンの状況は,やはり一般のユーザーが入ってくることを難しくしている,壁があるというのは事実です。ですから,より使いやすい,分かりやすいユーザーインタフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)を作って難しさを解消していくというのは,Wemadeの課題でもあると考えていますし,現在のところ,ほかのプラットフォームよりもWEMIX PLAY(Wemadeが運営するプラットフォーム)は,はるかに使いやすい環境を持っています。
このようにUIやUXこそがキーとなると考えていますが,今後はいま以上,はるかに使いやすく,簡単になっていくということは間違いないです。ユーザーにとって,これがいまブロックチェーンなのかどうかという認識すらしない状況になるでしょう。
そして,その部分における競争力を持つためにも,プラットフォームとしては使いやすさ,分かりやすさという要素がマストだと考えています。現在でも非常に使いやすいインタフェースをWemadeは備えていますが,より使いやすくしていくために努力を傾けています。
来年の夏頃には,まさにユーザーにとっては,ブロックチェーンなのかどうかということすら認識できないような環境のサービスを提供できると考えています。
――Wemadeと言えば、PCオンラインゲームで名を馳せた会社です。先ほど,どんなに良いタイトルが出てもUIがいまいちなら,それはユーザーが入ってくれないんじゃないかとおっしゃっていましたが,例えば昔のゲーマーは「Diablo」や「ウルティマオンライン」がやりたいがために,一生懸命いろいろなことを勉強して遊んでいました。
同じことがブロックチェーンでも起こるのではないかと思うのですが,そこに対してWemadeとして,ユーザーがその障壁を乗り越えるような,素晴らしいタイトルを作るご予定はありますか。
チャン氏:
こちらも同じく全面的に同意します。コンテンツが競争力を持っている場合に人々を引き込んでいく,また使いやすいUIやUXがあった場合にそれが背中を押すという2つの側面があり,プラットフォームはより成長していけると思います。
ただ,同時に実現するのはなかなか難しく,マーケットが成熟すれば,そのプラットフォームの自主的な競争力によって,コンテンツの背中を押すこともできると思います。ですが,いまの初期段階では,良いコンテンツ,優れたコンテンツでユーザーを引き込むのが,短期的には非常に効果があるでしょう。
WEMIX PLAYがブロックチェーンプラットフォームにおいて,1位になれている理由は,まさに「MIR4」(PC / iOS / Android)の大成功によるところです。プレイヤーにとっては2年前の作品ですので,今よりも使いづらさがあったと思います。しかし,このゲームを何が何でもやりたいというニーズによって,成功を得られたと考えています。
私が今回このように積極的にWebXに参加し,このような場を設けさせていただいているのは,こういったウォレットを何度も設置しなければならないという使いづらさ,煩わしさがあるとしても,ブロックチェーンがいかに潜在力を持っているのかというのを日本のパートナーの皆様に,日本のコンテンツクリエイターの方々に,知っていただきたいからです。
そして現段階では,使いづらさ,分かりづらさがあったとしても,それは技術的に不足しているからではなく,あくまでも法的な問題,制度的な問題,規制による理由であるということを理解していただいたうえで,これらを一緒に乗り越えていくパートナーを探しています。
このような良質なコンテンツを確保するということ,それは自社のものであっても,または他社とのパートナーシップで作るゲームであっても,現状においては本当に必要なことでしょう。(マーケットの)初期には,やはりそれが決定的な競争力を持つと考えています。
最後に,チャン氏による終わりの挨拶をもって,本稿を締めよう。
チャン氏:
これまで私どもは,いいゲームを作って日本のユーザーの皆様に,そして日本のマーケットにそれらを披露してきました。これからは,日本のゲーム開発会社の皆様とともに手を携えて,新しい分野でグローバルのマーケットに一緒に取り組んでいく,包括的な協力関係を築いていけることを期待しております。
我々も今後,より良いプラットフォームを作ることに努力をしていきたいと思っていますし,また日本の企業が持つ,これまでの長い歴史と伝統からくる力量がそのプラットフォームと結合すれば,グローバルマーケットの中でも非常にいい成果を出せるのではないかと私は確信しています。
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