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[TGS2022]緻密に描かれた“和風でサイバーパンクな仮想世界”が滑らかによく動く。サムライネコが主役のADV「浮世/Ukiyo」の最新版をプレイ
本作は,和とサイバーパンクが融合した仮想世界「UKIYO」から出られなくなった主人公のカイが,現実の世界に戻るためにサムライネコの姿で仮想空間を旅するアドベンチャーゲームだ。
2021年9月に開催された「BitSummit THE 8th BIT」に出展されたときも本作のデモ版を紹介したが,TGS 2022でプレイできたのは,その最新バージョンとなっていた。本稿では,ブースにいた集英社ゲームズのプロデューサー小島英士氏に解説してもらった内容とともに,どんなゲームになっていたのかをレポートしよう。
和風でサイバーパンクな仮想世界を舞台にしたADV「浮世」を紹介。サムライネコのカイが現実世界に戻る冒険を描く
2021年9月2日と3日,インディーズゲームの展示イベント「BitSummit THE 8th BIT」が,開催されている。その中の出展タイトルである「浮世」を紹介していこう。本作は,和風でサイバーパンクな仮想世界「UKIYO」に閉じ込められてしまった主人公が,現実世界に戻るべく旅をするアドベンチャーゲームだ。
BitSummit THE 8th BITのデモと大きく変わっていたのが,基本的なゲーム部分が実装されていたことだ。前回体験したものはストーリーの冒頭部分の世界観を伝えるものだったが,今回のバージョンではゲーム本編のとある一つのくだりで,ゲームの進め方を体験できた。
ゲームの進め方は,街の住人と話したり,問題を解決して先に進むのに必要なアイテムを手に入れたりといった形の,ADVの定番といった形だ。一例を挙げると“一緒に行動していた仲間(?)がトイレに行きたいと言い出す→トイレを見つけて入ったが紙がない!→掃除ロボットを探してトイレットペーパーをもらう→トイレに戻って仲間に渡す→ちょっと落ち着いて,駆け込んだトイレをふとみると……”といったように,街を探索しながら物語は進んでいく。
街の探索で面白かったのが,なにかがあったときの解決策に,“バグ”を活用するというものがあったところ。普通にジャンプしても届かなそうな壁の上を,不自然にその場でぶるぶる,ぶるぶると縦に震える挙動で徐々に上に登っていくという場面があり,“仮想空間”という設定を生かした面白いアイデアだと感じた。
なお,基本的に謎解きやおつかいでプレイは進むが,今後実装を考えている要素に“バトル”があるようだ。といってもアクションやコマンドバトルというものではなく,時間制限のある選択肢で的確なものを選ぶといったもので,街のあちこちや住民との会話で集めた情報で相手を退けるようなものとのこと。まだ検討の段階のようだったが,これも気になるところだ。
そして,本作の大きな特徴となっているビジュアル面。もともとキャラクターが滑らかに動いていたのは,昨年(2021年)公開されたトレイラーを見て分かるとおりだが,背景となっている街も,これまたよく動く。モノレールや自動車が走ったり,画面隅の木の葉が揺れていたりといっただけではなく,モノレールの通過によって壁に照らされる光といったところまで表現されていた。
街の動きは最新版のデモで実装されたもので,とくに光はサイバーパンク的な世界観を持つゲームとして,こだわりを持って入れているそうだ。
ビジュアルの話でいうと,筆者が注目したのがグラフィティ。グラフィティはその街のカルチャーを反映するもので,筆者は個人的にグラフィティをはじめとしたストリートアートが好きなのだが,まさにこの街の雰囲気をバシッと伝えてくるような独創的な表現になっていたのである。
ゲームの世界観や街の雰囲気を表現するためだけのものではなく,著名なグラフィティアーティストやその作品がストーリー上でも重要なものとなっていたりもするようで,そういった意味でもゲームへの関心がさらに深まった。
ひとつ気になったのが,マップの移動。試遊の舞台となった地域は複数のエリアに分かれているのだが,どの道がどのエリアにつながっているかが分かりにくかったのだ。
エリアによって視点が変わるのもあって,どちらに行けばどの区域に行けるのかとか,この一帯はぐるっと一回りでつながっているとかいった部分が覚えにくかった。ただ,そのあたりは開発サイドも把握しており,マップの表示などでこの問題を解決するとのこと。
「浮世/Ukiyo」は現在,2023年内のリリースに向けて開発中だ。パブリッシャを担当する集英社ゲームズの公式サイトのタイトルページ(リンク)によると,プラットフォームはPC(Steam)/その他となっている。
まだゲーム部分は不明なところが多いが,和風のアートスタイルとサイバーパンクを組み合わせた仮想世界の雰囲気とグラフィックスは不安のないクオリティなので,この先どのような形で作品が仕上がっていくのか期待したい。