インタビュー
[インタビュー]「龍が如く8」は3本のゲームをまとめて開発したような感覚。チーフプロデューサー阪本寛之氏に聞く“物量と幅”
その模様は「こちら」の記事を確認してほしいところだが,90分間の試遊後にチーフプロデューサーを務める阪本寛之氏が取材陣の合同インタビューに応じてくれた。
シリーズファンであればご存じのとおり,90分間の試遊では「龍が如く8」の全体像をつかめるわけもなく,取材陣は探るように質問をしていくという現場となったが,阪本氏はその状況をどこか楽しんでいるかのようにも見えた。
[プレイレポ]「龍が如く8」桐生一馬が自身の人生を振り返る“エンディングノート”,春日一番のプレイスポット“ドンドコ島”を先行体験
セガから2024年1月26日の発売が予定されている「龍が如く8」は,ハワイでも裸一貫から成り上がろうとする春日一番と,波乱に満ちた生涯にもう一度向き合おうとする桐生一馬の物語を描くRPGだ。今回は約90分間の試遊時間で分かった「龍が如く8」の最新情報をお伝えする。
「龍が如く8」公式サイト
もう1本,リゾート開発ゲームを入れてしまった
──「龍が如く8」の先行体験会に参加しましたが,遊べる要素がとても多く,90分という時間があっという間に過ぎてしまいました。
阪本寛之氏(以下,阪本氏):
我々としてももっと長くプレイしていただきたかったんですけど,まずはアウトラインだけでも触れていただこうと思いまして。
──中でも「ドンドコ島」はほぼ別のゲームというか,前作「7」の「会社経営」「ドラゴンカート」を超える遊び応えがありそうです。どういった経緯から生まれたのかを教えてください。
阪本氏:
発端はハワイならではのリゾート,大自然に触れられるコンテンツを入れたいというアイデアからでした。要は自分だけのリゾートアイランドを作り,お客を呼んでお金を稼ぐという遊びなのですが,「龍が如く」らしいブッ飛んだ“表現の幅”を用意していくうちにどんどんボリュームが膨れ上がって,最終的には繁華街を1個作れるくらいの規模感になりました。
──今回,プレイできたのはゴミを壊してクラフト用の素材を手に入れたり,魚や虫を獲ったり,和式便所を設置したりすることでした。
阪本氏:
いずれは神室町天下一通りの入り口ゲートなども作れるようになります。ひと通り終わらせるのに,20〜30時間はかかると思います。
──スローライフ的な遊びから都市開発まで,徐々にスケールアップしていくイメージでしょうか。
阪本氏:
そうですね。あとは施設の組み合わせによってお客さんを呼んだりもでき,その相手によってどう満足度を上げるかを考えたり。お客さんもただの記号ではなくて,「龍が如く」シリーズならではのキャラクターがどんどん遊びに来てくれます。たくさんお金を使ってくれるキャラをしっかりもてなすとおいしいですよ! ゲーム内にもう1本,リゾート開発ゲームを入れてしまった感じがありますね。
──島では独自の通貨を使用しているようですが,お金稼ぎもできるのですか。
阪本氏:
ドンドコ島では独自の通貨(ゼニー)が流通していますが,これは外の世界のお金とも交換できます。拾った素材でお土産を作って観光客に渡したり,島でのバトルで回復に使う食べ物を作ったり,収集して図鑑を埋めていく遊びがあったり,開発したモノを壊しに来るクリーンパイレーツとのバトルもアクションゲームになっています。じっくり腰を据えて楽しめると思います。
──さらにオンライン要素もあるそうですね。
阪本氏:
ほかのプレイヤーが作ったドンドコ島に遊びに行けます。同期通信型ではないので一緒に歩き回ったりはできないのですが,逆にやりたい放題できますし,相手に迷惑がかかったりもしません。どんなものがあるかを見てまわるだけでなく,相手が島に配置した「スジモン」とバトルもできます(関連記事)。
──スジモンもドンドコ島に関わりが深い要素であると。
阪本氏:
実はしっかり連携していて,ドンドコ島の近くにあるドンドコファームでは収集したスジモンを配置して野菜を育てたり,ファームを防衛してもらったりできます。2つの島は同時に守りきれないですからね。
阪本氏:
さらにジョブの1つに「召喚士」というものがあり,スジモンを召喚できます。基本的には仲間にできる全スジモンを連れていくことが可能です。通常のRPGパート,ドンドコ島,スジモンバトルといった複数の要素が個々にあるのではなく,相互に関わるようにしています。
そのため,部分的に説明するのは大丈夫なんですが,「どういうゲームですか?」と聞かれると困るかもしれないですね。本編と行き来するつもりだったのに,「ドンドコ島だけで1週間近く遊んでしまった」なんて人も出てくるでしょうから。
──スジモンバトルも相当しっかり楽しめそうな要素ですよね。街中にジムのようなものが,少なくとも5つ確認できました。やはりそれぞれにジムリーダーのようなものがいるのでしょうか。
阪本氏:
そうですね。さらに街中でも野試合ができますし,毎回同じスジモンをゲットできるわけではなく,一期一会的な出会いで強いチームを組んでいく遊びになっています。「狙ったスジモンをなかなか仲間にできない」みたいなこともありますが,強いスジモンをポロっとゲットできるとめちゃくちゃ強くて,かなり嬉しくなりますよ。
救済要素としてガチャも用意していますが,これはスジモン図鑑を全部埋めたい人向けです。メインストーリーを進めていくとスジモンのレベル上限も順次開放されるので,前に使っていたスジモンを鍛え直してもしいし,新しくゲットしたスジモンをどんどん使っても楽しいと思います。
──新たに加わった「マッチングアプリ」は,いろいろな人が楽しめそうですね。
阪本氏:
フル実写ではありませんが,「7外伝」のキャバクラみたいに実写の映像も楽しめるコンテンツです。プレイスポットはプレイヤーによって遊ぶ,遊ばないがかなり分かれるんですけど,「今回は〇〇〇◯がない!」という不満の声もよくいただきます。だから,なるべく多くの種類を入れたい気持ちがあります。
海外のプレイヤーを中心に「興味がないと思っていたものも,遊んでみたら楽しかった」という声もけっこうあります。「7外伝」のキャバクラなんかもそうですね。遊びがいっぱい詰まっていて,その幅が広いこと。これが「龍が如く」の強みの1つだと思っています。
──「龍が如く」シリーズのアクションのベースと言えるアーケードゲーム「スパイクアウト」が収録されるのも,セガファンには感慨深いものがあります。
阪本氏:
業界の方は皆さん,そう言ってくれますね(笑)。きっかけとしてはアーケードゲーム用の基板,MODEL3のエミュレータを作ろう! という話が先にあったんです(関連記事)。これを実現すれば,ゲームセンターで遊べるゲームが大幅に増えるぞと。そして,どのゲームを入れるかという話になったときに,MODEL3の代表的なゲームとして「スパイクアウト」が選ばれました。当時を知らない人でも爽快に遊べるアクションゲームなので,満足度はかなり高いはずです。
すごく細かいことを言えば,「スパイクアウト」のチャージ攻撃も「バーチャファイター」シリーズのコマンド技の代わりとして生まれたものだそうです。やはり先人たちの作り上げてきたものって大きいんですよ。
──マルチプレイに対応していますか。
阪本氏:
ローカル協力プレイに対応します。ハードのスペックによってプレイ可能人数が異なりますが,ぜひ試してほしいですね。「龍が如く」シリーズに収録する過去作品のセレクトは毎回悩ましいところです。この調子でいくと,次はNAOMI基板のエミュレートに挑戦することになるかもしれません。
シンプルな良さを残しつつ,さまざまなオプションを
──RPGパートに関して,あらためてアピールしたい点を教えてください。
阪本氏:
やはりバトルがけっこうな進化をしています。味方の位置取りを考えることで協力して攻撃したり,味方の追い打ちがどんどん連鎖したり,敵を吹っ飛ばしてさらに後ろの敵を倒したりもできます。敵も普通の人間の等身だけではなく,すごくデカい相手がいたりするので,それぞれ当たり判定やカメラの制御を調整しています。
──ボーリングやピンボールに近い爽快感がありそうです。
阪本氏:
すごく気持ちいいですよ。ちゃんと考えると複数の連鎖を起こせますし,1回のコマンドで与えられるダメージが相当変わってきます。戦闘中にキャラクターを動かせる以上,単なる位置調整ではなく,そこでもしっかり「遊べる」ようにしました。もちろん,シンプルなバックアタックも効果的です。
──ジョブチェンジはいかがでしょう。
阪本氏:
「7」では新しいジョブに就くと一時的にかなり弱体化するため,転職のタイミングを考えたり,事前に強い武器を調達したりしないと苦しい面があったのですが,もう少し気軽に変えられるように調整しています。パーティが2つに分かれた後も,装備を使いまわせるようになっています。
また絆レベルを上げていくと,別のジョブに持ち越せる技が4つ,5つと増えていって,技リストを自分の好きなようにカスタマイズできます。
──技同士の相乗効果を狙って転職するのも楽しそうですね。
阪本氏:
「属性同士の掛け算」みたいなものも用意しています。例えば,水で濡らした相手には電気の技が効きやすくなるとか。武器強化もかなり自由になっていて,威力を上げたり,刻印を使って属性や特殊効果を与えたりすることで,初期に手に入るものでも最後まで使えるようになっています。
もちろんそれらを使いこなさないとダメというわけではなく,転職しなくても,ダンジョンなどで強い武器を拾っていけばちゃんとクリアできる幅を持たせています。
──前作のシンプルな良さも残しつつ,さまざまなオプションを楽しめるということですか。
阪本氏:
そうですね。ところで,皆さんは「エンディングノート」をプレイされましたか。桐生一馬の生い立ちだったり,過去の出来事の振り返りだったり,昔馴染みとの再会だったりと,むちゃくちゃ長い専用のストーリーを用意しています。これも一度始めると,なかなか春日一番の物語に戻れなくなる要素かもしれません。
どの「遊び」も一度始めたら,10〜20時間はあっという間に過ぎてしまう面白さになったと自負しています。「8」はシリーズ中でも圧倒的なボリュームになりました。
──ストーリーについても,今を生きる人々が抱えている「モヤっとしたもの」に切り込んでいくような予感があります。
阪本氏:
そこは現代劇ですから。ストーリートレーラーでも触れているとおり,SNS上の悪意ある情報の切り取りや拡散が新たな冒険のきっかけになっています。現代に起こり得ること,人々の気持ちや感性みたいなものは,ドラマ作りのポイントとして強く意識しています。一方,サブストーリーはちょっと軽めに,現代を風刺したようなネタも散りばめつつですね。
──物語がどのようにスケールアップしていくのか楽しみです。
阪本氏:
実はスジモンバトルにも胸アツなストーリーが用意してあるので,こちらも楽しんでいただけるかと思います(笑)。
──それでは最後に,発売日を待っているファンにメッセージをお願いします。
阪本氏:
本当に語り切れないくらい,いろいろな楽しさが詰まったゲームになりました。今は3本のゲームをまとめて開発し終えたような感覚ですね。メインストーリーはシリーズ中,最も涙を流すんじゃないかという内容であり,ファンはもちろんですが,初めての人も感情を強く揺さぶられると思います。ぜひご期待ください。
そして,いろいろなコンテンツをひと区切りするまで遊ぶと,それらが相互に関わる本当の楽しさが見えてくる構造になっているので,実際にプレイして確かめていただけると嬉しいです。
──本日はありがとうございました。
「龍が如く8」公式サイト
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