プレイレポート
パックマン作品14本が遊べる「PAC-MAN MUSEUM+」を紹介。偉大な初代を振り返りながら,時代と共に変化するシリーズの魅力を味わおう
明るくオシャレな食べるゲーム,初代「パックマン」という衝撃
「PAC-MAN MUSEUM+」の紹介に入る前に,まずは初代「パックマン」を振り返ってみたい。1980年にアーケードゲームとして稼働を開始した「パックマン」は,知性のある敵に追われながら,迷路の中に置かれているドットを回収していく,いわゆるドットイートゲームだ。
前年の1979年に稼働したセガ(旧セガ・エンタープライゼス)のドットイートゲーム「ヘッドオン」が車同士のレースであったのに対し,「パックマン」が描くのは,可愛らしいパックマンとゴーストの追いかけっこ。当時はまだまだ単色のゲームも多かった中,カラフルなパックマンとゴーストたちがネオンサインを思わせる迷路の中を走り回るのだから,目を惹かないわけがない。
パックマンは大きな口を開け,クッキーやフルーツを食べまくる。当時はゲームが食べることを扱うこと自体が珍しく,エサを食べる際の咀嚼音(?)も心地よいものだった。「わしゃわしゃわしゃわしゃ」なのか「ぱくぱくぱくぱく」なのかとにかく独特な音で,ゲームセンターの喧噪の中でもこの音が響くだけで「ここにはパックマンがあるな」と分かるほどだった。
パックマンが食べるのは,今でこそクッキーやパワークッキーという洋菓子風の名前だが,かつては“エサ”“パワーエサ”という呼ばれ方をしていた。当時小学生だった筆者はクラスメイトたちと「パックマンのエサはどんな味がするんだろう?」と,よく話したのを覚えている。
――名前がエサやし見た目もアレやから,魚のエサと同じ味がするんちゃうか?
――丸いからラムネみたいな味やと思うなあ。
――よう見ると四角いから,角砂糖みたいなもんやと思うよ。
――じゃあパックマンは砂糖食い過ぎであんなに丸いんか?
とまあこんな感じで,馬鹿話を繰り広げていたのは,いい思い出だ。
その後「パックマン」ブームの波は電子ゲーム業界にも波及し,さまざまなドットイートゲームが発売された。
当時の電子ゲームで表示部分に使われていたFLや液晶では,パックマンの「進行方向に応じ,口が開く方向が変わる」特性を表現するのが難しく,「口が開く方向は左に固定されているが,右や上に進んでもエサを食べられる」とか「どの方向へ進んでも,常に身体下部の口が開閉する」など,さまざまなアレンジがなされていた。
筆者が持っていたトミーから発売されていた公式のLSIゲーム「パックマン」では,パックマンの口は左側に固定されていて,左方向にあるエサしか食べられない。この制約には,モヤモヤさせられたものの,ジリジリとした独特の駆け引きは面白く,パックマンを模したと思しき真っ黄色でまん丸な筐体と合わせて大いに気に入っていた。
ドットイートゲームのエポックメイキングとして,大ヒットした「パックマン」だったが,間もなくそれを追うように多くのドットイートゲームがゲームセンターに現れた。もちろんオリジナルの作品もあったが,中にはコピーゲームまであり,それはなかなかにカオスな状況だったのを覚えている。
このように“単にゲームを複製(コピー)するのではなく,プログラムを変えることで類似ゲームを作る”手法については当時から問題になっており,ナムコ(当時)がコピー品を置いた喫茶店を相手取って起こした裁判では「映画の効果に類似する視聴覚的効果を生じさせる著作物」として認められたという(※1)。パックマンは著作権関連でもゲーム業界に貢献していたという偉大な作品なのだ。
※1 引用:赤木真澄(2005),「それは「ポン」から始まった-アーケードTVゲームの成り立ち」アミューズメント通信社,p294
レジェンドたる「パックマン」から始まる,シリーズの変遷を収録
「PAC-MAN MUSEUM+」には,1980年にアーケードゲームとして登場した初代「パックマン」はもちろんのこと,これまで移植がなかった「パック モトス」「パックンロール リミックス」,ファンから高い評価を得ている「パックマン チャンピオンシップエディション」など,さまざまなタイトルが収録されている。アーケードゲームでは壁紙に海外版インストカードが表示されるので(日本版がないのが残念),普段とはちょっと違った気分で遊べるのもポイントだ。
収録作の中でも筆者が特に印象に残っているのは,Xbox 360用ソフトとして2007年に発売された「パックマン チャンピオンシップ エディション」だ。大会を意識したゲームデザイン,ダウンロード専売かつ大会翌日の配信といった試みは,今思えば時代を先取りしている感がある。
これまでのシリーズでは迷路のクッキーをすべて食べるとクリアになっていたが,本作ではクッキーを食べるごとに「おかわり」とばかりに新たなクッキーが追加されていく。右で食べれば左に,左を食べれば右に……という具合に,プレイヤーは良い意味で振り回され続けることになる。「おかわり」へ向かうときの焦りと期待,そしてクッキーを思うさま食べつくす快感が繰り返される。プレイヤーのモチベーションを巧みに操作して,ゲームを面白くしているのだ。
さらに,制限時間の中でスコアを競うというルールが,ゲーム全体を引き締めている。ミスせずにクッキーを食べていくと,パックマンとゴーストの速度がアップしていき,クッキー1個あたりの点も上がっていく。
限られた時間の中で高いスコアを取るには,できるだけミスすることなくクッキーを食べ続けなければならない。ノーミスの時間が続くほどプレッシャーは増していき,普段ならやらないようなミスもしてしまう。
そして,残り時間がわずかとなった時,「ここから最大のスコアを得るにはどうすればいいか」という思いがプレイヤーの脳裏をよぎり始める。「このままノーリスクにクッキーを食べ続けるか」「ゴーストをおびき寄せてパワークッキーを食べ,かみついての高得点を狙うか」というリスクとリターンを天秤にかけた思考がぐるぐると頭を巡り,心は千々に乱れるのである。
初代「パックマン」が非常に高い完成度を持つなか,同じドットイートゲームというジャンルで,これだけ違うプレイ感を演出できたというのは驚くしかない。
「パックマン チャンピオンシップ エディション」には,クッキーが次々追加されていくこと,ノーミスで速度がアップしクッキーの点が増えていくこと,制限時間が設定されていることといった要素が加えられている。いずれも「パックマン」の良さを損なわないうえ,複雑な要素や操作でプレイヤーに負担を与えることはない。ゲームデザインの妙味がそこにはあると感じるのだ。
筐体やインテリアを集め,仮想ゲームセンターをカスタマイズ
最後に,「PAC-MAN MUSEUM+」における収集要素を紹介しよう。仮想ゲームセンターが舞台となった本作では,ゲームをプレイすると,成績に応じたゲーム内コインをもらうことができる。
コインはゲームを遊ぶのに使えるほか,「自動販売機」や「ガシャポン」からインテリアやフィギュアを購入できる。インテリアは自由に配置可能だ。また,プレイの報酬としてゲーム筐体や壁紙,ジュークボックスで流せる曲も手に入る。仮想ゲームセンターを模様替えし,いろいろな筐体やフィギュアを眺めて楽しもう。ちなみにコインが切れてしまうと,アーケードゲームはプレイできなくなるのだが,「パックインタイム」などの家庭用ゲームなら無料でプレイできるのでご安心を。
また,コレクション系ソフトといえば,ディップスイッチの設定や,どこでもセーブ,巻き戻し,といった便利機能を備えているものも多いが,本作にはそうしたものはない(「パック モトス」や「パックインタイム」といった家庭用タイトルの一部は中断セーブ可能)。
アーケードタイトルの場合,現実のゲームセンター同様にスタート前にはコインを投入しなければならない辺りにこだわりが見える。“ゲームセンターに出かけ,アーケードゲームとしてのパックマンシリーズを遊ぶ”体験を重視したソフト,とも解釈できるだろう。
今遊んでも面白いゲームの数々が収録されている「PAC-MAN MUSEUM+」。特に「パックマン」と「パックマン チャンピオンシップ エディション」「パックマン256」からは,「パックマン」シリーズの歴史のみならず,ゲームの発展や変化が見えてくる。直撃世代の人はもちろんのこと,そうでない人も楽しめるはずなので,興味のある人はぜひプレイしてみてほしい。
「PAC-MAN MUSEUM+」公式サイト
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PAC-MAN MUSEUM+ & (C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
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