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[CEDEC 2023]「ポケモンSV」はリアルな世界を目指していた。「パルデア地方を描き出す――見た目の仕組みを徹底解説!」レポート
本講演は,「絵を見ればどのタイトルかわかる」を前提に開発しているという「ポケットモンスター」シリーズ。本公演は,「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」(以下,ポケモンSV)を例に,ポケモン,主人公,世界のそれぞれについて,シェーダ処理からアセット構成まで徹底的に解説するというものだ。
前澤氏によると,ポケモンSVにおけるルックコンセプトは“リアルとデフォルメ”であり,背景の質感や形状はリアル方面に寄せていくのが目標だったという。しかし,ポケモンや人物キャラクターはデフォルメされているため,それらを統合したときの落としどころを探る必要があったそうだ。
講演ではまず,マテリアルの構成やライティングなど,作品全体の基本的な表現方法が紹介されたのち,ポケモンに使用されている特殊表現について解説された。
ポケモンの主な表現としてまず挙げられたのは,SSS(Subsurface Scattering)による陰影表現だ。この表現は体の大きさや密度などに合わせて,さまざまな設定で使い分けられており,ポケモンの個性に大きな影響を与えているようだ。
ほかにもジェルのような質感の出し方や,構造色の表現,パラドックスポケモンの粒子の表現などさまざまな手法が紹介されつつ,ポケモンSVの大きな特徴となっている「テラスタル」についても触れられた。
テラスタルでは,本体(ポケモン)部分については元々のモデルそのままにマテリアルを差し替え,ノーマルマップやカラーマップ,ノイズテクスチャを適用することで,宝石の質感を表現しているという。ただ,すべてを宝石化してしまうと見栄えが良くないため,テラスタル“しない”メッシュを指定できるようにもしているとのことだ。
また,テラスタル化の際にポケモンの頭上に現れるテラスタルジュエルは,表のメッシュを半透明にしつつ,裏面のメッシュを不透明にすることで,奥行きを生み,立体感を表現しているという。
続いては,主人公(人物)キャラクターに関する表現方法だ。まずは,ゲーム開始時にカスタマイズできる主人公の“メイク”をどのように表現しているのかについて。
ポケモンSVでは主人公のキャラメイクで,つり目やたれ目,目の大きさなとを選べるが,これは,Mayaのラティス機能を使って作成されている。この機能を使って目尻の上げ下げや目の大小,口の大きさや唇の厚さなどの制御を可能にしたそうだ。ただ,すべてを細かくいじれるようにすると煩雑になってしまうため,それぞれの変形値の組み合わせをプリセットとして用意したとのこと。
一方で,まゆげは基本的にテクスチャで描写しているが,先端をアルファで階層を持たせることによって,まゆげの長さにバリエーションをつけているという。
なお,表情は顔を五つのパーツに分けたモーフターゲットとして作成。ラインタイムではこれを最初に適応し,次に先程のラティス(メイク)の反映を行うことで,実際のキャラクターの顔形状が実現されているそうだ。
また,肌の表現については,偽装の法線を作成し,素の法線とブレンドしている。そして,顔とカメラの角度,光の方向などさまざまなシチュエーションで,どの割合が一番見栄えが良いのかを調整したり,スペキュラ(光の反射)をなだらかに抑えたりと,さまざまな試行錯誤を繰り返し,ルックコンセプトに見合う出来に仕上げることができたという。
最後に,パルデア地方の世界を作り上げる表現についての解説も行われた。
まずは大地(マップ)の作り方だ。パルデア地方の大地は,Mayaのメッシュを元にHoudiniでディテールを追加し,HightMapや質感を選択したり,草花を生やすためのMaskを出力したとのこと。また,それだけでは表現しきれないので,Houdiniでプロシージャルモデリングした崖や岩などを後から配置することで,地形を整えていったそうだ。
続いて海,川といった水辺の表現について。こちらは頂点アニメーションの動き,フローマップによる流れ,水深に応じた透明度の変化,スクリーンスペースの屈折表現を組み合わせ,基本的な処理を行っているという。さらに,波打ち際の白波を表現するため専用モデルを用意し,陸地に近いほど大きく変化するようにすることで“波打ってる感”を強調している。
そして空は,水平線にグラデーションをのせるため,Precomputed Atmospheric Scatteringなどの先行技術をベースに表現。また,雲の表現として,モデリングした雲に6方向からライトを当てた結果を2枚のテクスチャにベイクし.実際の世界の光情報をもとに描画色を計算しているとのことだ。
以上が「【ポケットモンスター スカーレット・バイオレット】 パルデア地方を描き出す――見た目の仕組みを徹底解説!」の内容だ。これらのさまざまな表現方法を用いることで,ポケモンSVのパルデア地方を描き出すことができたと,前澤氏は講演を締めくくった。
「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」公式サイト
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