インタビュー
[インタビュー]「Pokémon Music Collective」で「ゴーストダイブ」を手がけたポルカドットスティングレイの雫さんに,ポケモン愛を語ってもらった
imase,ENHYPEN,Michael Kaneko,Matt Cab & BBY NABE & Charlu,ポルカドットスティングレイと,ジャンルや国籍を超えた5組のアーティストが参加しているこのEP,収録されている楽曲はいずれも「ポケットモンスター」シリーズのファンであれば,間違いなく楽しめるサウンドや歌詞で構成されている。
今回4Gamerでは収録楽曲のうちの一つ,「ゴーストダイブ」を手がけたポルカドットスティングレイでボーカル&ギター,バンドの作詞&作曲を担当する雫さんに,楽曲に込めたポケモン愛などを語ってもらった。
「Pokémon Music Collective」公式サイト
自分で歯止めをかけないと生活に影響が出るレベルで
4歳からずっとポケモン好きな人生
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは,ポルカドットスティングレイとしてこれまでどんな活動をされてきたのか,簡単に教えてください。
はい。福岡で2015年に結成し,2017年にメジャーデビューして上京した4人組のバンドです。上京するまで私はゲーム会社でスマホゲームの開発ディレクターや運営ディレクターをやっていたので,4Gamerさんに送るプレスリリースを作ったりもしていました。
なかなか壮絶な日々でしたが,IPを扱うノウハウなどを学べたのは良い経験になっています。
4Gamer:
各方面との調整の連続ですもんね。
雫さん:
どこに気を使わなきゃいけないかとか(笑)。何も知らない状態で最前線に送り込まれた感じだったので,学びの連続でした。
4Gamer:
ゲーム会社で働こうと思ったのは,元々ゲームがお好きだったからなんですか?
雫さん:
はい。4歳のときに「ポケットモンスター赤」に出会って,そこから私のゲーム人生が始まりました。
実は子供の頃は勉強ばっかりさせられていたこともあって,内向的で友達の少ないタイプだったんですが,唯一ゲームで息抜きができるというか,救われていましたね。以来,ゲームが友達という人生を31年間歩んできています。
4Gamer:
ポケモンって,友達との交換や対戦が好きな人も多いと思うんですが,どちらかというと一人でコツコツ遊んでいたタイプなんでしょうか。
雫さん:
そうですね。少しは友達もいたんですけど,一緒にゲームをするような感じではなかったんです。小学校の頃なんかも学校が終わったらすぐに塾に行かなきゃいけなかったりで。なので,例えば「ポケットモンスター 金・銀」だったら両方持って,一人で通信交換をしてゴーストをゲンガーに進化させたり(笑)。
むしろ大人になってからのほうが,一緒にゲームをやってくれる人も増えて人とポケモン交換をする楽しさを学びました。
4Gamer:
今はオンラインで手軽に交換できるようになりましたしね。
雫さん:
そうなんですよね。ゲーム機同士を通信ケーブルでつなげるっていうのも,当時めちゃくちゃ感動したんですけど,オンラインでハードルが下がったのはありがたいです。
4Gamer:
むしろ大人になってからは,今度交換しようぜ! と盛り上がっても,対面でケーブルをつないで……となると,あらためて時間を合わせて集まるのが難しかったり。
雫さん:
そうなんです。子供の頃は放課後に友達が通信交換しているという話は聞いていたんですが,そこに参加できなかったので,そのぶんを今になって取り返している感じです。
4Gamer:
先ほどゲンガーの話が出ましたが,ポケモンではゴーストタイプがお好きなんですね。
雫さん:
フェアリータイプみたいな可愛らしいイメージのあるポケモンも好きなんですよ。でも私は,ちょっと陰があって可愛いとか,ちょっと怖くて可愛いみたいな,スパイスが効いた可愛さを感じるポケモンが子供の頃から好きなんです。
子供の頃は周りの子がピカチュウが可愛いとかプリンが可愛いって言っていたんですけど,私はゲンガーが一番可愛いと言い張ってました。
4Gamer:
あ,一緒にゲームはしなくても,ポケモンの話をする友達はいたんですね。
雫さん:
そうなんです。私の幼稚園にはあまりポケモンのゲームをやっている子はいなかったんですが,それを探すために周りの子に片っ端から話しかけてました。
ただ,やっぱり幼稚園児なんかだとゲームをやっていても,何となく可愛いとかそれぐらいで,あまり意味が分からないまま遊んでいる子が多いんですよね。やっと文字を読めるかな? ぐらいの年齢なんで当たり前なんですけど。
でも私は当時からポケモンへの熱量が高かったので,ちゃんと意味を理解しようと努力しながら遊んでいたこともあって……ちょっと周りの子達とは話がすれ違っていた記憶はあります。
4Gamer:
当時から筋金入りのポケモンファンなんですね。でもその熱量を保ったまま大人になったというのも,なかなかすごいことですよね。
雫さん:
本当はもっとポケモンのゲームに時間を費やしたい願望はあるんですけど,その気になると無限にやり続けてしまうので,自分でストップをかけつつ……なんですが,それでもけっこうプレイしてしまいますね。
熱中すると自分で歯止めをかけないと,日常生活に影響が出るタイプなんで。
ゴーストタイプポケモンへの愛を曲に
ポケモンが好きな人達に聴いてほしい
4Gamer:
そこまでお好きなポケモンの,今回のような企画に参加することになったとなると,感慨もひとしおだったでしょうね。
雫さん:
これまでもコラボやタイアップ,楽曲提供などはいろいろと取り組ませていただいてきたんです。基本的には冷静に先方の要望を聞きつつ,いろいろと調べたりしつつ納期に向けてしっかり作り上げてきたんですけど……。
今回に関してはメンバーに「ねえ,ポケモンだよ?」ぐらいの勢いで,子供みたいにはしゃぎ回りましたね。
4Gamer:
冷静さを失ったとしても,あらためて調べたりする必要はなさそうですね。
雫さん:
そうなんです。知ってるから調べる必要もなくて(笑)。
4Gamer:
そこからどんな風に曲作りに取り組んでいったのでしょう。
雫さん:
まず,株式会社ポケモンさんと打ち合わせをさせていただいて,今回の「Pokémon Music Collective」の概要を直接うかがいました。そこで大興奮しつつも,一応どういうターゲットの年齢なのか,どういうキーワードを入れていこうか,どういうサンプリングの仕方をしようかとか,そういったことをざっくりと話し合いました。
そうやってこのプロジェクトに対する解像度を上げたうえで,家に帰ってから,「やっぱりゴーストタイプのことを書くしかないよな!」と思ったんですよ。
4Gamer:
何か理由はあったんですか?
雫さん:
プロジェクト自体に,曲を作った人のポケモンに関する原体験を曲にするというコンセプトもあるんです。だから,これはもう私のゴーストタイプのポケモンへの愛を曲にするしかない,それであれば私の右に出る者はなかなかいないぞ,と。
で,ゴーストタイプのポケモン達の曲を書きたいとメンバーに伝えました。そのうえで,まずポケモンが好きな人達に聴いてほしいから,そういう人達になじみのある音楽のジャンルかつ,今っぽさを出したいということで,若干ボカロ風のハロウィン味のあるエレクトロ・スウィングに行き着いたんですね。ゴーストタイプとも合いますし。
4Gamer:
確かに合いますね。
雫さん:
それで私のボーカルデータと歌詞,リファレンス曲をいくつか送って,アレンジをしてもらいました。「『シオンタウンのテーマ』が引っ張る曲にしたい」ということを伝えつつ,打ち込みを担当しているドラムに「私の歌に合わせてこう作って」と依頼をしたんですが,結果,サンプリングというかイントロが直球で「シオンタウンのテーマ」になりました。
4Gamer:
バンドのことを知らない人が聴いても,ポケモンが好きな人であればすぐに理解できる分かりやすさみたいなものは,こういう企画では重要ですよね。
雫さん:
そうなんです。割りと技巧派というような評価をいただくことも多いバンドなんですけど,実は音楽に対して日ごろライトに接している方達にも分かりやすくしようというのは,常に意識しているところではあるんですよね。音の数が多かったり,技術的にも難しいことをやったりはしているんですけど,ギターとボーカルが分かりやすく目立つみたいな。
なので今回は「あ,今『シオンタウンのテーマ』を聴けばいいんだな」ってすぐに分かる曲にしました。
4Gamer:
これまでやってきて得意としてきた部分と,今回のプロジェクトがいい具合にハマった感じだったんですね。
雫さん:
そうですね。さらに言うと,サンプリング自体をちゃんとやるのは初めてだったんですけど,こういうのもうちのドラムは得意なんだなという発見がありました。
4Gamer:
新たな武器を手に入れた,と。
「シオンタウンのテーマ」以外で,曲中で気に入っている部分,気合いを入れた部分などはありますか?
雫さん:
2番のAメロに出てくるオケのサンプリングが,「ポケットモンスター サン・ムーン」の,「スーパー・メガやす跡地」で流れる「アセロラの試練」のBGMなんです。これ,私の最推しポケモンであるミミッキュの大活躍シーンなんですよ。あまりに好きなので切り刻んだりせずに,そのまま16.7秒使ってます。一般的な“サンプリング”じゃないっていう勢いで直球勝負をしているんですけど,お気に入りのポイントです。
あと歌詞では,Cメロの「はがねつかいオフ会」というところが一番キャッチーで気に入ってます。
4Gamer:
なんか可愛いですよね(笑)。
ところで,曲名でもある「ゴーストダイブ」って,雫さんがポケモンで遊ぶとき,よく使うわざなんでしょうか?
雫さん:
……実はこの曲をリリースしてから,ファンの方から「雫さんのミミッキュも『ゴーストダイブ』を覚えているんですか?」って質問されることがあるんですけど,覚えさせているのは「つるぎのまい」「シャドークロー」「かげうち」「じゃれつく」です。「つるぎのまい」から「かげうち」という流れが好きなので,使うタイミングが難しくて。でも,ドラパルトには「ゴーストダイブ」を覚えさせていますし,わざとしては好きなんですよ。名前がキャッチーだし,紫のモヤモヤが出てくるエフェクトや,SEも素敵ですし。
推しをみんなに見てもらうための
ミュージックビデオに
4Gamer:
雫さんは4歳からポケモンにハマってきたとのことですが,歴代の「ポケットモンスター」シリーズをすべて遊んでこられたんでしょうか?
雫さん:
はい,全部発売当日に買ってプレイし続けています。もちろん「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」の追加コンテンツ,「ゼロの秘宝」の「前編・碧の仮面」も速攻でやりました。新キャラクターだとゼイユが好きなんですけど,「後編・藍の円盤」でスグリがどうなるのか,めちゃくちゃ気になってます。ただ,後編の配信は12月14日なんですよね。楽しみなんですけど,できることなら一日でも早く遊びたいです。
ポケモンの話なら,このまま8時間ぐらいはぶっ通しで話せますよ!
4Gamer:
……本当にお好きなんですね。
雫さんが4歳のときに出会ったポケモンが今でも続いていて,雫さんは今でも好きで,しかもその企画に携われるというのは,さぞかしうれしいことだったのだろうなぁと,あらためて思いました。
雫さん:
本当にそうなんですよ。ポケモンって,今では世界中にファンがいる,世界的なコンテンツなのに保守的にならず,常に新しいものを生み出していますし,音楽でもこういう試みを続けてくれているので,ファンとしてはずっとワクワクさせてもらえてありがたいんです。そこに関わらせていただけたんですから,ありがたいしうれしい限りです。
4Gamer:
音楽をやっていて良かったですねぇ。
雫さん:
そうなんですよ! 私,ポケモンがきっかけでゲームが好きになって,ゲーム会社で働きましたけど,あのまま働いていたらポケモンのプロジェクトに携わるきっかけなんてなかったと思うんですよね。
でも会社を辞めて音楽を主軸にして活動してきたら,ついにポケモンに関わることができて……。転職して良かった!(笑)
4Gamer:
良かった!
雫さん:
転職って言っても,会社員から自営業のクリエイターになったわけで,まあ不安定な職種なんですよ。だからこの先,大丈夫かな? と考えることも多かったんです。でも「ポケットモンスター」シリーズのBGMをサンプリングした楽曲を作れたし,これで良かったんだなって,思えるようになりました。ポケモンが自己肯定感を上げてくれました。そんな「ゴーストダイブ」を,一人でも多くの人に聴いてほしいです。
4Gamer:
今回,サブスク等で配信されていたものが,あらためてCDとしてパッケージ化されたという流れですが,配信自体は続いているので気軽に聴ける環境ではありますしね。
雫さん:
ワンコーラス分ですがミュージックビデオもYouTubeで公開されているので,これはもう全員見たほうがいい(断言)。
実はミュージックビデオをどんなものにするかという打ち合わせも,株式会社ポケモンさんとの間であったんです。そのとき私はポケモンのファンだから,実写にするという選択肢は出てこなかったんですよ。ポケモンと私の共演より,私の推しをみんなに見てほしい。ミュージックビデオに登場する推しの割合を,私が減らしたくなくて。とにかく画面いっぱいにゴーストタイプのポケモンがずっと映っている映像を見たくて,アニメでお願いしました。
4Gamer:
ミュージックビデオに関しては,ファンとしての欲求を最も重視したんですね。
雫さん:
私は出なくていいんで,見せてください! という気持ちで。ただ,今回のEPに参加しているほかのアーティストさんが,ポケモンと一緒に並んでいるミュージックビデオを見たときには「これはこれでいいなぁ……」と,ちょっと羨ましく思いましたけど(笑)。
でもいいんです。先日,私の誕生日ライブにミミッキュが出てくれたんで。誕生日に推しが来てくれたから,それでいいんです。
4Gamer:
よ,良かったです。
最後になりますが,今後のバンドとしての活動のご予定は?
雫さん:
11月8日に配信でニューシングル「天誅(雫 Solo Ver.)」をリリースしました。
でも,とにかく「ゴーストダイブ」を聴いてください! 私の推しがたっぷり出てくるミュージックビデオを見てください! それが今の一番の願いです。
4Gamer:
承知いたしました。
【フィジカル】
●アーティスト/タイトル:Various Artists 『Pokémon Music Collective』
●発売日:2023年9月27日(水)
●CD情報
「Pokémon Music Collective」公式サイト
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