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印刷2022/08/23 18:00

プレイレポート

最上の切なさを,PCで。「ヘブンバーンズレッド」がより快適に遊べるSteam版のインプレッションをお届け

 Wright Flyer StudiosとKeyの共同開発による「ヘブンバーンズレッド」iOS / Android / PC,以下,ヘブバン)のPC版が,Steamにて2022年8月10日に配信された。

画像集#001のサムネイル/最上の切なさを,PCで。「ヘブンバーンズレッド」がより快適に遊べるSteam版のインプレッションをお届け

 本作は,2022年2月にスマートフォン向けのサービスがスタートしたタイトルで,今回のPC版はサービス開始から半年のハーフアニバーサリーの一環として発表され,リリースされた形となっている。
 特筆すべきは,本作に関わるスタッフの豪華さだ。「MOON.」「ONE」「Kanon」「AIR」,そして「CLANNAD」といった,数々の名作ノベルゲームを手がけてきた麻枝 准氏がシナリオを手がけ,「ソフィーのアトリエ 〜不思議な本の錬金術士〜」「リディー&スールのアトリエ 〜不思議な絵画の錬金術士〜」に携わってきたゆーげん氏らがキャラクターデザインを担当するなど,発表当初から注目を集めてきた。リリース後もシナリオの面白さのみならず,声優陣の熱演などもあってプレイヤーからの支持は厚い。
 本稿ではそんな「ヘブバン」の魅力を改めて紹介すると共に,実際に触って分かったPC版のインプレッションをお届けしていこう。

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 Wright Flyer StudiosとKeyのドラマチックRPG「ヘブンバーンズレッド」は本日,Steam版のサービスを開始した。また,本作のリリース半年を記念した「ハーフアニバーサリー」イベントや,本作初の水着イベント「夏だ!水着だ!トロピカル祭りだ!」が実施されている。

[2022/08/10 13:45]

「ヘブンバーンズレッド」公式サイト



少女達の日常と,激しい戦い。麻枝氏が手がける話題作


 まず「ヘブバン」をまだプレイしていないという人に向けて,本作の概要を改めて紹介しておこう。
 本作は,突如地球に襲来した謎の生命体「キャンサー」と戦う少女達「セラフ部隊」の活躍を描いた“RPG”だ。RPGを謳ってはいるものの,物語の進行は豪華声優陣によるフルボイスで進行するアドベンチャーゲームを中心に展開され,その合間にターン制のコマンドバトルが挟まる形式が取られている。
 アドベンチャーパートには3Dグラフィックスで描かれたフィールドを探索する要素もあるが,メインはキャラクターの立ち絵とスチルによって繰り広げられる会話劇なので,往年のKey作品が好きな人も違和感なくプレイできるに違いない。

地球に襲来した謎の生命体・キャンサー。既存の武器が一切通じない,恐るべき存在だ
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 舞台となるのは,キャンサーによって人類滅亡の危機に瀕した近未来。通常兵器が通用しないキャンサーに対し,人類は決戦兵器「セラフ」を用いてこれに対抗した。剣や銃などさまざまな形態を持つセラフだが,しかし何らかの才能を持った少女でなければ扱うことができない。本作の主人公である茅森月歌(かやもりるか)は,セラフ部隊の一員となるべくスカウトされた少女の一人であり,同じ境遇の仲間達と共に,地球の存亡を賭けた戦いを繰り広げていく。

セラフ部隊の基地に建つ時計塔は,時間ではなく日本で生き残った人数を示す「人類残存メーター」だ。元は1億2千万だったものが,今は800万になっている
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 意志疎通すらできない敵と,戦いを運命付けられた少女達。まるで学園生活のような基地での日常と,過酷な戦場。そして謎の決戦兵器と,厨二病的な要素がこれでもかと盛り付けられた本作は,この手のジュブナイルが好きな人にとって,抗えない魅力を持っている。

セラフ部隊のメンバーが「セラフィムコード」を唱え,最終決戦兵器「セラフ」を召喚。実に厨二病的で,うれしい演出だ
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 そして,そんな世界を彩るのが,とにかくキャラの濃い,魅力的な少女達だ。
 主人公の月歌は,伝説のロックバンドのボーカル兼ギターというとんでもない経歴の持ち主だ。しかし普段は飄々としていて,人を煙に巻くような言動をとる。仲間に対しての接し方も,あるときはオッサンのようであったり,またあるときはイケメン王子のようでもあったりと,実に個性的なキャラクターとなっている。

とらえどころのない飄々とした主人公・月歌。ボケを繰り返しているかと思えば,女の子をナンパしたりもする
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 彼女が部隊長を務める「第31A部隊」の面々もまた,とてもユニークだ。核戦争を防いだ元ハッカーの和泉ユキ,ゲーマーと殺人鬼の二重人格である朝倉可憐,情報に通じていない自称諜報員の東城つかさ,能力を戦いに活かさないサイキックである逢川めぐみ,かつて戦艦の艦長だった國見タマと,一筋縄ではいかないキャラクターが揃っている。
 詳細は省くが,ほかの登場人物達も負けず劣らずで,そうしたキャラクター達の個性のぶつかり合いが,本作のシナリオの醍醐味だ。膨大なテキスト量による会話劇が展開される日常シーンはまるで漫才かコントのようで,こってりとした読み味は,往年のノベルゲームらしさを想起させる。
 そして少女達に降りかかる過酷な運命が,コミカルな日常とコントラストとなって,プレイヤーを物語に引き込んでいく。そのさじ加減が実に麻枝氏的で,これが本作を唯一無二なものにしている。

「第31A部隊」のメンバー達。左上から時計回りに,主人公の月歌,元ハッカーの和泉ユキ,かつて戦艦の艦長だった國見タマ,サイキックである逢川めぐみ,二重人格の殺人鬼・朝倉可憐,自称諜報員の東城つかさ
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月歌の破天荒な行動に振り回される苦労人・ユキ
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二重人格の殺人鬼・可憐。清楚な通常モードと,サイコな殺人鬼モードを行き来する
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諜報員を自称するつかさだが,とくに裏事情に通じているわけでもないようだが……
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関西弁のサイキック・めぐみ。月歌を一方的にライバル視している
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元・戦艦の艦長・タマ。激戦の中で艦が沈み,タマだけが生き残ったとか
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戦いの最中でも青春する少女達。第31A部隊メンバーでバンドを結成し,訓練や戦いの合間を打って練習に励む
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コミカルなシーンはまるでコントのよう
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 一方,そんな戦場で繰り広げられる本作のバトルは,RPGとしては王道といえるコマンド選択式のターン制だ。
 中でも面白いのは,敵味方の双方が持つDPとよばれるバリアの存在だろう。味方の場合,「セラフ」が持つ防衛機能「デフレクタ」として説明されるDPは,攻撃がヒットすることで減少していき,ゼロになことで初めてHPにダメージが通るようになる。敵の場合はDPを破壊すると「ブレイク」状態となり,そのターンは相手は行動不能になるため,効率よく戦うにはまずこれをどうにかしなくてはならない。キャラクターが持つスキルには,DPに効果的なものや,反対にHPに有効なものがあるので,こうしたスキルをうまく組み合わせることが重要になる。

敵味方に存在する青いゲージがDP,赤いゲージがHPだ。DPは回復できるが,HPは回復できない
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敵のDPを破壊し,HPをゼロにすれば勝利だ。DPを破壊すると敵は「ブレイク」状態となり,そのターンは行動不能になる
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 もちろん,それはプレイヤー側も同様で,誰か一人でもHPが尽きると即ゲームオーバーだ。通常の戦闘なら,減少したDPやHPはバトル終了後にすぐ回復するが,ダンジョンではそうはいかない。
 またターンごとに蓄積されるゲージを使って「オーバードライブ」を発動すれば,こちらだけ一方的に行動可能になり,スキルを使うためのリソース「SP」も一気に増加,大逆転が可能になる。それゆえ使うタイミングが重要……と,考えることは意外と多い。そのため,戦闘は否応なしに緊張に満ちたものになるだろう。


キャンサーにこちらのDPを破壊され,さらにHPをゼロにされると,即ゲームオーバーだ
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ダンジョンでDPを破壊されると,戦闘が終了しても回復しない。そのため緊張感のあるバトルが楽しめる
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データ連携とショートカットキーで便利に遊べるPC版


 そんな「ヘブバン」だが,こうした面白さはもちろんPC版でも変わらない。スマホ版と同じく基本プレイは無料だし,既存のアカウントとの連携も可能なので,すでにスマホで遊んでいる人は,すぐにでも続きがPCで遊べてしまう。もちろん鍛えた部隊やゲームの進行状況などもそのままだ。
 具体的な連携方法は公式サイトを参照してほしいが,外ではスマホで気軽に,家ではじっくりPCでというように,場所に合わせてプレイ環境を変えられるのは,思いのほか便利に感じられた。スマホよりも大きな画面で楽しめるし,対応したディスプレイは必要だが4K解像度での表示も可能。印象的なイベントシーンやバトルを,美麗なグラフィックスで楽しめる。

これはPC版限った話ではないが,自宅ならフルボイスのイベントシーンも周囲を気にすることなく楽しめる。とくに本作は印象に残るセリフが多いので,この機会にPC版で鑑賞し直してみるのもアリだ
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 そしてPC版のもう一つのポイントは,キーボード操作に対応していることだ。
 画面タップの代わりにマウスクリックを使って遊ぶこともできるが,フィールドでは[W][S][A][D]キーで移動できるし,ノベルシーンでは[Ctrl]での文章スキップや[Space]によるUIの表示切り替えなど,ノベルゲームの定番操作が使用できる。バトルでは6人のキャラクターを[1]〜[6]キーで選択でき,[O]でゲージ技である「オーバードライブ」の発動,[Enter]で行動開始と,充実したショートカットが用意されている。PCゲームに慣れた人なら,マウスとキーボードの併用で快適に操作できるはずだ。

 またPC版のリリース直後は正式にはサポートされていなかった「自動周回」機能も,2022年8月22日のアップデートで対応が行われた。これはオートバトルで経験値や素材を稼いでくれる機能で,ゲームクライアントを終了しても自動周回が継続されるという,画期的なものとなっている。スマホ版からの本作の特徴だっただけに,PC版プレイヤーには嬉しいアップデートといえる。

フィールド移動シーンでは,月歌を[W][S][A][D]キーで動かせる
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バトルもショートカットキーに対応しており,快適にプレイできる
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ハーフアニバーサリーを迎え,ますます加速する「ヘブバン」


 話題を呼んだスマホ版のサービス開始から半年が経過し,ゲームとしてますます充実していく「ヘブバン」。メインストーリーも第四章前編まで実装され,今後の更新にも期待がかかる。
 現在は,期間中にログインすると最大6000クォーツがもらえる「ハーフアニバーサリーログインボーナス」,初の水着ストーリーイベント「夏だ!水着だ!トロピカル祭りだ!」,有償クォーツをお得に買える「Half Anniversary 記念スペシャルセール」といったイベント・キャンペーンが実施中なので,まだ未プレイの人が本作を始めるいい機会でもある。気になっていた人は,このPC版でスタートするのも面白いのではないだろうか。

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