インタビュー
[インタビュー]「鉄拳8」は“アグレッシブ”な新システムで攻める。その上で,これまで培った力での駆け引きが活かせるように
今回の体験会では,試遊後のタイミングで鉄拳シリーズのゲームディレクター兼開発プロデューサーである池田幸平氏と,マーケティングを担当する安田イースポーツ氏に話をうかがうことができた。開発の進捗状況に加え,新ゲームシステムの実装意図など,気になる質問をぶつけてきたので,ぜひ確認してほしい。
[プレイレポ]「鉄拳8」は新要素“ヒートシステム”が戦いを熱く,激しく演出する。“アグレッシブ”の看板に偽りなし!
バンダイナムコエンターテインメントの格闘ゲーム「鉄拳8」のメディア体験会が,2023年3月22日に実施された。体験会でプレイアブルだったのは,仁,一八,ポールを始めとする全10キャラクター。本作から実装されたバトルシステムの紹介やプレイインプレッションを中心にレポートしていく。
「鉄拳8」公式サイト
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。昨年9月の発表からは約半年が経過し,発売日がいつになるのか楽しみにしている人も多いと思います。現在の開発はどの程度進んでいますか。また,発売時期についても話せる範囲で聞かせてください。
安田イースポーツ氏(以下,安田氏):
まず開発の進捗状況ですが,ある程度進んでいるとは言え,まだまだです。今回はストーリーモードなど,1人で遊べるモードも充実させたいと考えていまして,製品として形になるのはもう少し先になりそうです。
今回遊んでいただいた開発版は,月末に実施されるEVO Japanに出展するものと同じビルドで,10キャラがプレイアブルとなっています。発売のタイミングで何キャラくらいになるかなどは明言できませんが,ほかの格闘ゲームタイトルと比較して,多いと思っていただけるキャラ数を用意する予定です。
4Gamer:
鉄拳シリーズはこれまでアーケードで稼働してきたタイトルです。「鉄拳8」では今のところ発表されていませんが,アーケードでの稼働も予定していますか。
安田氏:
鉄拳シリーズは,プレイヤーが交流しつつ遊ぶのに最高のゲームだと思っているので,アーケードでも稼働させたいと考えています。ただ,まだはっきりとしたことは言えない段階です。
4Gamer:
「鉄拳7」が2015年で,そこからは8年が経過しています。新作の発表までにこれだけの期間が空いたのは,何か理由があったのでしょうか。
安田氏:
「鉄拳7」は当初,シーズン2※あたりで終わる予定だったんですが,予想以上に人気が高くてですね。ファンの熱い要望に応えてキャラクターを追加しているうちに,気づけば8年が経っていました。ですので,「鉄拳8」を開発するのに時間がかかったというよりも,「鉄拳7」の開発が長く続き過ぎたことが理由と言えば理由になるでしょうか。
※シーズン2では,アンナ/レイ/マードック/アーマーキング/ジュリア/ニーガンが使用可能になった。なお,現在はシーズン4となっている
池田幸平氏(以下,池田氏):
「鉄拳8」の構想自体は,実は2018年くらいからすでにあったんですが,「7」を作りながら「8」の制作に着手するのはなかなか難しくて,これだけの時間が空いてしまいました。
4Gamer:
「鉄拳7」がそれだけ長く愛され続けた理由はどこにあったと考えていますか。
池田氏:
1つに絞るのは難しいですね。対戦ゲームとしての面白さ,キャラクターの魅力はもちろんのこと,それ以外にもeスポーツシーンでの盛り上がりも理由の1つだと思います。数年前のパキスタン勢の台頭も大きな出来事の1つでしたね。そのようなさまざまな要因が積み重なって,今の人気を獲得できたと考えています。
4Gamer:
「鉄拳7」では豪鬼やギース,ニーガンといった別作品のキャラクターの参戦も大きな話題を呼びました。
池田氏:
豪鬼はかなり昔から,鉄拳シリーズのストーリーに絡ませて登場させたいという話が出ていました。ほかにもいろいろなキャラがコラボの候補に挙がりましたが,鉄拳のゲームシステムと親和性があるか,話題性や意外性はあるかなど,さまざまな要素を加味して総合的に判断するので,採用が見送られたキャラも数多くいます。
4Gamer:
個人的には,「ウォーキング・デッド※」からニーガンの参戦が一番衝撃的でした。
※アメリカの人気テレビドラマシリーズ。ゾンビの大群によって荒廃した世界で,安住の地を求めて旅をするグループが描かれる
池田氏:
ニーガンは,僕と原田とマイケルの趣味の影響ですね(笑)。3人とも「ウォーキング・デッド」シリーズがすごく好きで,ニーガンが出てきたときに「なんてキャラが出てきたんだ」と衝撃を受けて。このキャラが鉄拳シリーズの世界に入り込んだら面白いんじゃないかという話になり,それから版元さんと何度もやり取りをして,ぜひやらせてくださいと頼み込みました。
4Gamer:
「鉄拳8」のテーマが「アグレッシブ」に決まった経緯について聞かせてください。「鉄拳7」は,防御側が有利になる場面が多いゲームでしたが,そこに問題を感じていたということでしょうか。
池田氏:
おっしゃる通り「鉄拳7」は,極めていくと防御が強いゲームだと思うのですが,それはそれでプレイヤーから好評だったので,そのゲーム性を是正しようという意図はありません。
まず「鉄拳8」を開発していくうえで,0から新しい世代の鉄拳を作ろうとなったとき,バトルシステムや制作の姿勢として,保守的ではなく「アグレッシブ」に攻めた作品にしようというのが始まりにあったんです。テーマが決まったことで,「もっとパワフルで攻めたグラフィックスを目指そう」とか,「もっともっとキャラの個性を強めていこう」とか,そのようにチームが一丸となって開発が進められていきました。
4Gamer:
新要素の「ヒートシステム」は攻めれば攻めるほど有効に使えるシステムで,アグレッシブを体現したものだと思います。導入するに至った経緯を聞かせてください。
池田氏:
僕は格闘技を観戦するのが好きなんですが,格闘技の試合も鉄拳の対戦と同じで,両者のレベルが拮抗していると膠着状態になるときがあるじゃないですか。ただその中で,大きい攻撃が一発当たると流れが一気に変わってK.Oまでいくことがあって,そこが見ていて面白い。
この「優勢・劣勢の流れの変化」というのをゲームでもうまく表現できれば,プレイしている人にとっても,観戦している人にとっても面白くなりそうだと思ったのがヒートシステムの始まりです。
4Gamer:
これまでの鉄拳にない斬新なシステムに感じましたが,発表したときのプレイヤーからの反響はいかがでしたか。
安田氏:
反応はおかげさまで上々です。現在,EVO Japanのクローズドαテストで使える10キャラクターのPVを順次公開していますが,すでにヒートシステムを絡めた攻めの展開など,細かく考えて見てくれている人も多くて,ベテランのファンたちの大きな期待を感じます。ありがたいことです。
4Gamer:
逆に公開しているPVの内容で何かネガティブな反応はありましたか。
安田氏:
「エフェクトが派手すぎて眩しい」という意見はありました。こちらはエフェクトを自分で調整できるようにするといった対策を考えています。現在はグラフィックスやバトルシステムなど,あらゆる面について調整を重ねている段階なので,たくさんの意見をいただけるとありがたいです。
4Gamer:
ヒートシステムや回復可能ゲージなど,ゲームシステムに大幅な改修が入っていますが,バランス調整にはやはり苦労しているのでしょうか。
池田氏:
ヒート中に強くなる部分はシステムとして一律にするのではなく,キャラごとに特色が出るようにしているのですが,そこが面白くもあり,悩ましくもある部分です。例えばキングなら,「プロレスラー」と「筋肉」がキーワードで,プロレスラーらしく相手の攻撃を受け止めてみたり,派手な投げ技の部分を強化したりといった感じです。
また,回復可能ゲージの調整も難航しているのですが,ひとまず表に出せる段階にはなったかなという状態です。
4Gamer:
ヒート発動技をどの技に設定するかの選定はかなり難しそうです。必然的にプレイヤーが多用する技となるでしょうから,加減1つでキャラの印象が大きく変わってくることにもつながりそうです。
池田氏:
おっしゃる通りです。人によって,「このキャラのウリはこの技だろう」というイメージが違うので,議論が白熱しやすい部分になっています。
安田氏:
ヒート中の技の調整のほか,ヒートゲージや回復可能ゲージなど,調整すべき変数が「鉄拳7」と比べて大幅に増えたので,とにかく手間がかかっていますね。だからこそ,キャラごとの特色を出しやすくなったとも言えますが。
4Gamer:
「アグレッシブ」というコンセプトを聞くと,「攻める側が一方的に有利なゲームとなって,今まで自分が培ってきた防御テクニックが無駄になってしまうのではないか」と不安がる人もいると思うのですが,それについてはいかがでしょう。
池田氏:
そこについてももちろんしっかりと考えていて,これまで培ってきた防御テクニックが無駄にならないよう注意深く調整を進めています。ヒート中の攻撃は確かに強力ですが,だからこそ防御側がどのように切り返していくかは,プレイヤーの力量が問われる部分になるんじゃないかなと考えています。
また,「鉄拳8」では,防御側の選択肢であるパワークラッシュが強化されています。攻撃を受け止めた場合,パワークラッシュがガードされても反撃を受けないようになっていますし,受け止めたダメージは回復可能ゲージとして残るので,この強化されたパワークラッシュを利用した駆け引きも楽しんでもらいたいですね。
4Gamer:
クローズドαテストで使用できるキャラクター数は10キャラとのことですが,「鉄拳7」では最終的に50キャラを超える大所帯となりました。「鉄拳8」でも最終的にはこれに近いキャラ数が参戦することになるのでしょうか。
池田氏:
もちろんできるだけ多くのキャラを引き継いでいきたいですが,全部のキャラを登場させるとは言い切れないですね。キャラを開発する際には人気や使用率,ストーリー上の重要度などさまざまな面を考慮しますし,マーケティング面で,「特定の地域を盛り上げるために,決まったコンセプトのキャラを作ろう」となることもありますから。
4Gamer:
鉄拳シリーズにはさまざまな国籍のキャラが登場しますが,やはりその地域のキャラクターというのは人気が高くなるのでしょうか。
池田氏:
特定の地域を意識したキャラクターに関しては,想像以上の反響になることがありますね。たとえば,ジョシーを発表したときはフィリピンの国営放送のテレビで取り上げられましたし,シャヒーンに関しても,サウジアラビアの新聞の一面で取り上げられました。
4Gamer:
「鉄拳7」では,鉄拳ワールドツアーなどのeスポーツに関する取り組みが成功し,大きな盛り上がりを見せました。「8」でも同様の取り組みは予定されているのでしょうか。
安田氏:
もちろん継続していきます。「鉄拳7」では,2019年のパキスタン勢の台頭は世界中に大きな衝撃を与えましたが,新型コロナウイルスの影響で次につながる話題が出てきませんでした。
「鉄拳8」は,世界同時発売となるので,日本勢と韓国勢,そのほかの地域の差はこれまで以上に埋まるのではないでしょうか。スタートラインが同じになることで,どんな競技シーンが見られるようになるかとても楽しみです。
4Gamer:
最後に「鉄拳8」を楽しみにしているプレイヤーやファンに向けて,メッセージをお願いします。
池田氏:
まだまだ「鉄拳8」の開発は続きますが,まずはEVO Japanで試遊していただくみなさんの反応を心待ちにしています。プレイヤーの期待を超えるような,シリーズ最高の作品になるよう開発を進めていますので,応援のほどよろしくお願いします。
安田氏:
開発は長丁場なので,「鉄拳7」のシーンを盛り上げつつ,「鉄拳8」の開発と両立させて,最後にはみんなで笑って「8」に移行できるようがんばっていきます。また,EVO Japanでは,試遊に対するアンケートも用意していますので,さまざまなご意見・ご要望をお待ちしています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「鉄拳8」公式サイト
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TEKKEN™8 & (C)Bandai Namco Entertainment Inc.
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