プレイレポート
[プレイレポ]傑作RTS「Age of Empires II: Definitive Edition」がXboxプラットフォームに登場。ゲームパッド用の最適化はいかに
かくいう筆者も,初めてこのゲームをプレイした時の感動は今でも鮮明に覚えている。史実では千年にも及ぶ文明の進歩を約1時間で追体験できる密度の濃さ,軍事面や内政面で唯一無二の個性を持った文明の数々は,当時すでに歴史ストラテジーゲームの信奉者であった私を虜(とりこ)にした。大学の先輩の下宿にPCを持ち込んで,あるいはインターネットのISDN回線を使って,夜な夜なオンライン対戦に勤しんだものだ。
AoE2はその後,21世紀に入っても拡張パックやリメイク版が制作されている。2013年には高解像度に対応したHD版が登場し,2019年には20周年を記念して4Kグラフィックスとリマスター版サウンドトラックを備えた「Definitive Edition」(PC)がリリースされた。こうしたバージョンも,単なる懐古趣味に留まらない大勢のプレイヤーから支持を集めている。
AoE2とは,我々が現在知るRTSと呼ばれるジャンルそのものを既定する作品の一つであり,同時に歴史ゲームの代表格とも言える存在なのだ。
その一方で,マウスとキーボードに大きく依拠した操作性のために,AoE2のコンシューマ機への移植はこれまで限定的な形に留まっていた。だからこそ,Xbox版のリリースに対して,驚いたプレイヤーも多かったのではないだろうか。
果たして,ゲームパッド用の最適化が施されたというXbox版の出来栄えやいかに。今もストラテジーゲーマーに愛され続けている傑作,AoE2の魅力をあらためて確認したうえで,Xbox版の特徴を紹介したい。
なお,本稿の執筆にあたっては,リリース前に提供されたプレビュービルド版を主に参考にしている。実際のゲームプレイやバランスについて,今後も変更される可能性があることをお断りしておく。
「Age of Empires」フランチャイズ公式サイト
多彩な文明を発展させて,中世期を駆け抜けよう
冒頭に触れたとおり,AoE2の魅力は好きな文明を選んで,中世初期から近世初期へと進歩させられる点にある。
思えば,AoE2が登場した2000年前後は「PCの歴史ストラテジーゲームと言えば,何日にもわたってロードとセーブを繰り返し,じっくり遊ぶもの」というイメージが強かった。だが,AoE2は「暗黒の時代」「領主の時代」「城主の時代」「帝王の時代」という4つの時代をスイスイと進めていけるため,1日で何回も文明の興亡を楽しむことができる。その点でも新鮮なゲームだった。
とはいえ,RTS全般で見た場合,AoE2のテンポは最速とは言えない。建設・製造・技術研究の速度は比較的緩やかだし,ユニットもそこまで速く移動するわけではない。
この「遅すぎず,速すぎず」というゲーム展開は,筆者のような長考型プレイヤーから,アクション性を好むプレイヤーまで,多くのファンを生んでいる要因にもなっていると思う。
時代が進むにつれて,ユニットや施設の性能,ビジュアルが飛躍的にパワーアップしていく爽快感も,AoE2の大きな魅力だ。「暗黒の時代」から「領主の時代」となった時の文明が興隆する喜び,「領主の時代」から「城主の時代」に入って大型の城塞を建てられるようになった時の嬉しさ,そして「城主の時代」から「帝王の時代」に進んで,さまざまなユニットからなる混成部隊の大軍で敵文明を蹂躙する楽しさ。
ゲームの序盤から終盤まで,こうした文明が発展していく高揚感を常に得ながらプレイできるようになっている。
一方で,こうした時代の進歩には少なからぬ資源が必要となる。このため,同じく代表的な歴史ストラテジーゲームであるCivilizationシリーズのように,「軍備拡張よりも時代を先に進めることを優先するか,それとも時代の移行を後回しにして,初歩的なユニットの大軍で敵文明の攻撃を優先するか」といったストラテジーゲーマーにとってはたまらない判断を楽しめるのだ。
こうした戦略には,プレイヤーが選択した文明の特性も大きく影響する。AoE2ではヨーロッパの文明を中心に,アフリカやアジア,新大陸といった地域の勢力を選択できる。各文明には,詳しい歴史的知識が必要なくても楽しめるシングルプレイ用キャンペーンが用意されており,AoE2を通じて特定の文明が好きになった人も少なくないだろう。
また,文明の性能はマルチプレイ用のバランス調整が行われており,西欧の騎士,日本の侍,モンゴルの弓騎兵といった「いかにも」なユニットをしっかり登場させつつ,特定の文明が強くなりすぎないように配慮されていた。
シングルでもマルチでも楽しい。この点も,AoE2が傑作たる所以と言える。
なお,Definitive Editionでは,これまでにリリースされた拡張パックのものを含む35種類の文明を選択できるほか,3種類のDLC(「Lords of the West」「Dawn of the Dukes」「Dynasties of India」)を導入できる。ひとつひとつの文明を極めるだけでもかなりの時間を要するため,リプレイアビリティは非常に高いはずだ。
ショートカットと自動化機能による
Xbox版ならではの爽快さ
さて,ここからはXbox版の感想をお伝えしよう。上記のような,スピーディかつ奥深い戦略ゲームというAoE2の特徴は,ゲームパッドでプレイしていても変わらない。
確かに,マウスとキーボードを使用するPC版と比較すると,カーソルを移動させて施設やユニットを選択するような時には,若干のまだるっこしさを感じないわけではない。
その代わり,方向キーによるショートカットを利用して,町の中心,待機中の町の人,軍事ユニット,家畜と聖職者のユニットといった,プレイ中は頻繁に確認したり指示を出したりする施設やユニットに視点を切り替えられるのはありがたい。
また,複数のユニットを選択する時には,ボタンの2度押しで同種のユニットを一括選択できるほか,マウスのクリック&ドロップと同じ感覚でAボタンを長押して範囲を指定し,ユニットをまとめて選択できる。これらの機能は,ゲームの中盤から終盤にかけて攻勢をかける際に,各部隊を分散・集合させるのに大いに役立つ。
施設を建てたり,ユニットを移動させたりといった基本的な操作には,ゲームパッドならではのクセがあるものの,PC版とほぼ同質の体験ができると思ってもらっていい。
ゲームパッドならではのクイックコマンドも洗練されており,ユニットや施設を選択して右トリガーを引くと,それぞれの状況に最適化されたコマンドメニューを呼び出し,適切な戦略的判断を素早く下せる。ただし,町の人の場合は建設オプションが多いため,内政施設と軍事施設のメニューを切り替える必要があるので注意が必要だ。
クイックコマンドと言えば,町の人の資源収集を自動化できるAIオートメーションも非常に便利だ。
この機能を使うと,町の人に対して4種の資源(木,食料,金,石)を指定の割合で収集するように指示を出せる。一旦指示を出せば,その後に生産された町の人も自動的に収集に割り振られるため,生産キューに町の人を入れたまま忘れていても安心だ。
なお,収集する各資源の割合には「軍事力強化」をはじめ,7種類のプリセットが用意されており,序盤から終盤までさまざまな状況に対応できる。
もちろん,この割合は手動で調整することができ,機能をオフにしてPC版と同様,すべてを手動で行うことも可能だ。また,集めた資源の使い方は完全にプレイヤー次第なので,戦略的判断をしていく楽しさはまったく損なわれていない点を強調しておく。
AIオートメーション機能はXbox版ならではの特徴であり,とくに初心者〜中級者にとって大いに役立つだろう。
最初に与えられた町の中心付近を斥候で探検しつつ,発見した資源に町の人を割り振っていくのは,AoE2の序盤における楽しみの一つ。だが,中盤以降はゲームに勝利するべく,軍事ユニットの生産や敵文明の攻撃に専念したいところだ。
しかし,そんな時に限って,木や石などの資源を収集し尽くしてしまい,町の人が大量に立ち尽くしている……。このゲームのプレイヤーならば,何度となく目にしたことがあるシチュエーションではないだろうか。
そんな時,資源の収集を最適化してくれる機能はありがたい。熟練のプレイヤーには不要かもしれないが,AoE2に早く慣れたい人はもちろん,軍隊の生産やベストな攻撃方法を集中的に練習したい場合にもぜひ活用してほしい。PC版に“逆輸入”するのも面白いかもしれない。
Xbox版AoE2を総合的に見ると,PC版が持っていた面白さであるスピーディな戦略性を存分に楽しめる内容だと言える。操作デバイスがゲームパッドになっても,プレイヤーに生じるストレスを軽減しつつ,独自の改善が行われているため,PC版のプレイヤーもあまり違和感はなく,新鮮なゲームプレイを楽しめるはずだ。
なお,Xbox版はキーボードとマウスによる操作にも対応し,PC版とのクロスプラットフォームにも対応している。
AoEシリーズが未体験だったり,そもそもコンシューマ機で本格的なストラテジーゲームをプレイしたことがなかったりする人にも,本作をぜひお薦めしたい。一つのゲームが複数のプラットフォームで展開されることは一般的になってきたが,今回のAoE2にはストラテジーゲームの分野でもその流れを後押しする存在になってほしいと思う。
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