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明治時代の東京をゲーム仕立てで再現。「ハイパー江戸博 明治銀座編」制作発表会レポート
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印刷2023/04/27 15:20

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明治時代の東京をゲーム仕立てで再現。「ハイパー江戸博 明治銀座編」制作発表会レポート

 公益財団法人東京都歴史文化財団は,2023年4月26日にスマートフォン用アプリ「ハイパー江戸博 明治銀座編」iOS / Android)の制作発表会を行った。本作は,銀座四丁目の交差点を舞台に、明治から近代への移り変わりを体験できるというもの。その制作発表会の様子をお伝えしていこう。

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東京都江戸東京博物館 事業企画課長 新田太郎氏
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写真左から,東京都江戸東京博物館 学芸員の沓沢博行氏春木晶子氏。ライノスタジオCTO/アートディレクターの谷口勝也氏と開発チームプロデューサーの田口 仁氏

「ハイパー江戸博 明治銀座編」公式サイト

「ハイパー江戸博 明治銀座編」ダウンロードページ

「ハイパー江戸博 明治銀座編」ダウンロードページ



博物館の知見とゲームのインタラクティブ性で

新たな体験を作り出す


 江戸東京博物館と,ゲーム「AFRIKA」の企画制作やライブ「初音ミク GALAXY LIVE 2021」のコンテンツ全般制作,「VRデビルマン展」のリアルタイムCGなどを手がけたライノスタジオが共同開発したスマートフォンアプリ「ハイパー江戸博」(iOS / Android),その続編となるのが「ハイパー江戸博 明治銀座編」(以下,明治銀座編)となる。2023年4月26日から無料での配信がスタートしている。

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 公益財団法人東京都歴史文化財団は,2022年4月22日に江戸東京博物館において,オリジナルアプリ「ハイパー江戸博」制作発表会を開催した。本アプリは博物館とゲーム制作会社が共同開発するもので,バーチャル空間に再現された江戸を自由に散策しつつ,収蔵品から江戸の知識を学べる。アプリの概要や今後の展開などが語られた発表会の模様をお届けする。

[2022/04/23 12:00]

 「ハイパー江戸博」シリーズは,バーチャル空間に再現された江戸や東京をゲーム形式で散策し,江戸東京博物館の貴重な収蔵品を閲覧できるアプリだ。同館は大規模改修工事のため休館中だが,「Tokyo Museum Collection」(公式サイト)や「江戸東京博物館デジタルアーカイブス」(公式サイト)のように,オンラインで収蔵品を鑑賞できる取り組みも進められている。こうした流れの中で作られたのが「ハイパー江戸博」シリーズなのだ。

2022年に配信された前作「ハイパー江戸博」
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今回発表された「ハイパー江戸博 明治銀座編」
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 現在は江戸東京博物館に限らず,さまざまな博物館でオンライン鑑賞が行われているほか,学習用のアプリも配信されている。しかし「ハイパー江戸博」シリーズは「さがす」「みつける」「あつめる」をキーワードとしたゲーム仕立てになっているのが特徴だ。
 前作を手がけた江戸東京博物館の学芸員である春木晶子氏は,「博物館の展示を歩いて観覧する形式では“外から歴史を見る”意識になりがちだが,(ゲーム仕立ての)アプリでは自分で歩いて歴史を体験することになり,これは展示ではできなかったこと」であると語る。バーチャル空間に再現された江戸や東京を自ら歩くという,ゲームの没入感とインタラクティブ性が,通常の観覧とは違った経験を作り出せたというわけだ。

「明治銀座編」の主人公,「アキラくん」(左)と「ハルちゃん」(右)
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 1年前に配信されて以来,累計5万ダウンロードを超えるなどの好評を博している前作に続き,シリーズ第2弾となるのが今回発表された「明治銀座編」だ。
 本作の主人公は,明治に生きる「アキラくん」と「ハルちゃん」で,2人の視点から時代の急激な変化を体験していく。舞台となる銀座四丁目は,江戸から東京に移り変わった明治元年(1868年),明治10年頃,明治20年頃,明治40年頃と四つの時期をピックアップし,江戸東京博物館の資料や模型から3Dマップとして再現。有名な時計台や日本で初めてあんぱんを売り出した店,日本初のポストや鉄道駅といったさまざまな場所を訪れることができる。
 建物が和風のものから洋風のものへ移り変わっていくのに加え,2人の服装や暮らしぶりも変化していくなど,明治時代がより身近に感じられるようになっている。ゲーム内には夏目漱石や永井荷風といった明治の文豪も登場するそうだ。

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主人公を操作してバーチャル明治銀座を巡る
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夏目漱石や永井荷風といった明治の文豪も登場

明治元年(1868年),明治10年頃,明治20年頃,明治40年頃という激動の時期がピックアップされている
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 ゲームは,マップのあちこちに配された収蔵品を集めながら進めて行く。総プレイ時間は約5時間とのこと。前作では庶民の生活に密着したユニークな収蔵品選びが印象的だったが,こうした方向性は今回も踏襲されているようだ。当時伝来したカレーのレシピ集。洋装が高価だったため,庶民がワンポイントとして取り入れていた世相を反映した,和装と洋装が入り交じった着せ替え人形。明治19年にコレラが流行した際,ラムネを飲むと病気に罹らないという風説が流れ,人々がこぞってラムネを買い求めたというエピソードなど,100個の収蔵品から明治事情を学ぶことができる。
 一部はARにも対応しており,実物大の品を出現させることも可能。同時に出現するキャラクターが実演してくれるため,どのように使われていたかのあらましもチェックできる仕組みになっているのも面白いところだろう。

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さまざまな収蔵品が収録されている
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ARに対応している収蔵品は,現実世界に呼び出してスケール感を確認できる
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 今回明治時代が選ばれた理由について,江戸東京博物館の学芸員である沓沢博行氏は,今の生活に関わる制度や文化がスタートした時代が明治であるからだ,と語る。前述した鉄道やあんぱんのほかにも,1日を24等分する定時法や学校制度,近代的な通貨制度などさまざまな物事が明治を起点としている。そうしたこともあり,「明治銀座編」のテーマとして,“東京のはじまりを,さがす・みつける・あつめる”というのもにしたのだという。

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 開発にはunityが使われ,江戸東京博物館の資料や模型をベースに明治時代の銀座四丁目が再現されている(ちなみに開発費は1500万円とのこと)。ライノスタジオの谷口勝也氏によれば,開発におけるテーマは絵としての面白さと考証の正確さの両立であったという。建物自体のディテールについては収蔵品の写真を用いて正確に作りつつ,マップを眺めたとき,変化に乏しいところには看板を置いてアクセントを加えるといったアレンジを行っていったそうだ。

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現在の銀座四丁目時計塔付近と,ゲームで再現された明治時代の時計塔
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「明治銀座編」のマップ制作に当たっては,前作同様に江戸東京博物館のジオラマが活用された
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 制作発表会では,今後の「ハイパー江戸博」シリーズの展開についても語られた。次回作は再び江戸時代がテーマとなり,商業の中心地である日本橋が舞台になるとのこと。シリーズは全5作構成の予定で,残り2作品についてはあらためて発表されるとのことだ。
 また,シリーズで作られた3Dマップについては,XRを始めとしたよりインタラクティブな展開を行っていく準備を進めているという。博物館の知見と資料に,ゲームのインタラクティブ性が加わった「ハイパー江戸博」シリーズの今後が楽しみだ。

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「明治銀座編」のアイコン。明治時代の女性といえば着物に編み上げブーツというコミックから受けた印象が残っている人も多いだろう。しかし,本作のアイコンになっている「ギンちゃん」は編み上げブーツではない。これは当時編み上げブーツがそこまで一般的でなかったからだそうで,博物館としての考証の正確さが細かいところにまで反映されているというわけだ
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