プレイレポート
[プレイレポ]「ペルソナ5 タクティカ」は,“考える楽しさ”をじっくり味わえるバトルが魅力。パズルを解くような感覚も新しいペルソナ最新作
本作は「ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ」(PS4 / Switch / PC)に続くペルソナ5のスピンオフ作品で,ジャンルはなんとシミュレーションRPG。アトラス全体で見ても「デビルサバイバー」シリーズ以来となる,なかなか珍しいジャンルの作品だ。
アート面は,同じくスピンオフの「ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス」「ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス」に近いカートゥーン調のスタイルで仕上げられており,こちらも過去のシリーズ作品とは違った雰囲気を放っている。そんなP5Tのゲーム序盤を遊ぶ機会を得たので,ストーリーやシステムを中心に確認し,そして思う存分楽しんできた。
「ペルソナ5 タクティカ」公式サイト
女王に支配された異世界で革命を起こせ!
表情やしぐさなど表現豊かなイベントシーンにも注目
P5Tの物語は,「ペルソナ5」のメインストーリーで描かれた事件がひと段落した時期,卒業式が近づくとある日から始まる。主人公たち心の怪盗団のメンバーは,十代の若者としての日常に戻り,いつものように純喫茶ルブランに集まっていた。
みんなでテレビの報道を見ていると,突如として大きな揺れが発生! 時が止まったかのように世界が静まり返ったかと思えば,今度はルブランの出入り口が光を発し始める。
状況を飲み込めないまま扉を開けると,そこには絵本に描かれる中世ヨーロッパのような不思議な風景が広がっていた。足を踏み入れると,ペルソナの力が発動し怪盗の姿になる怪盗団たち。異世界であることは間違いないが,ここは一体……。
そう戸惑う怪盗団の前に,マスケット銃で武装した謎の集団が出現。ペルソナの力で一度は撃退に成功するものの,次から次へと襲い掛かってくる大兵力を前に力尽きようとしていた。
ピンチの状況のなか,さらに武装集団を率いる女王マリエが出現する。女王の力によって,洗脳されていく怪盗団。残されたジョーカー(主人公)とモナ(モルガナ)は,まさに絶体絶命の窮地に立たされてしまう。
そこに現れたのがマリエの支配に対抗する「革命軍」のリーダーを名乗る少女エルだ。エルに助け出されたジョーカーとモルガナは,洗脳された仲間を救うため,まずはこの場を離れ態勢を立て直すことに。
これまでの戦いを見て,怪盗団の戦力を高く評価した彼女は,ジョーカーにある取引を持ちかける。それは,仲間の救出と異世界脱出の手がかりを探す見返りとして,革命への協力を求めるというものだった。これに同意したジョーカーは,エルとモルガナとともに革命への戦いに身を投じることになる。
中世ヨーロッパ風の世界にわがままな女王様,革命を先導する若き女性といったように,フランス革命をモチーフにしたと思しき要素がストーリーの随所に垣間見える |
革命軍のアジトは,なぜか外装も内装もルブランそっくり。エルたちは違和感を抱いていないようだが…… |
エルはペルソナを使えないようだが,光り輝く「旗」の不思議な力でマリエの支配に対抗できるようだ。これが仲間の洗脳を解く鍵になるかも? |
イベントシーンでの注目ポイントは,やはりカートゥーン調にリデザインされたグラフィックスだろう。色使いやアクションの面では「いつものP5」な雰囲気を残しつつ,ちょっと低めの等身と可愛らしいデザインを生かした豊かなしぐさと表情を見せてくれる。
とくに2D立ち絵のキャラクター別のバリエーションはかなり豊富で,序盤だけでも「そんな立ち絵,ここ以外でどこに使うんだよ!」とツッコみたくなるくらい,さまざまな表情を見せてくれる。会話シーンもイベントシーンも,見ていて飽きない豪華な仕上がりとなっている。
なお本作は,前述したとおりP5本編のメインストーリーがひと段落した時期から始まるが,ゲーム内には固有のキーワードを説明する辞書機能が用意されており,シリーズ初プレイの人であっても“ペルソナの世界”の理解を深めながらゲームを進められる。
P5をプレイしたからこそ楽しめる部分,どうしても避けられないネタバレ要素などはあるものの,確認した範囲では旧作のネタバレはそう多くはなさそうだ。新たな異世界と新キャラクターがストーリーの中核にあるため,P5を知らなくても純粋にP5Tの物語のみでも楽しめる独立した作品として問題なく遊べることは伝えておきたい。
不確定要素が最小限の悩ましい“戦略パズル”
試行錯誤を重ね,最適解を探し出そう
タイトルに「タクティカ」とあるとおり,本作のバトルは戦略シミュレーションの要素が特徴となっている。各バトルで出撃できるメンバーは最大3人で,それぞれの特徴を生かしてステージごとに設定された勝利条件の達成を目指していく。
基本的なバトルや育成のシステムについては本文でも紹介するが,今回は実機プレイ映像を用いた解説動画を作成したので,そちらも参考にしてほしい。基本のシステムとバトルの流れは,先に掲載したプレイレポートでも詳しく紹介しているので,気になる人はこちらもチェックしてみよう。
[gamescom]「ペルソナ5 タクティカ」試遊出展バージョンを先行プレイ。バトルの基本と“ペルソナらしさ”をチェックしてきた
ドイツ・ケルンにて開催中のgamescom 2023にて試遊出展されている「ペルソナ5 タクティカ」のインプレッションをお届けしよう。「ペルソナ5」初のシミュレーションRPGは,どのような仕上がりになっているのか。バトルの基本システムや“ペルソナらしさ”を,同イベントの試遊出展バージョンで確かめてきた。
ベースのシステムこそシミュレーションRPGを踏襲している本作だが,実際に遊んでみると多くのシステムがとてもシンプルにまとめられているのが分かる。
まず,本作には「命中率」や「成功率」といった確率の概念が存在しない。壁や遮蔽となるオブジェクトの背後でターンを終えると「GUARD状態」となり,射撃に対する防御力が向上するのだが,射線さえとおっていれば確実にヒットする。逆に,背の高い遮蔽で射線をカットすればダメージを確実に防げるなど“当たる/当たらない”の区分けが非常に明確だ。
遮蔽に隠れている敵に有効打を与える手段は豊富に用意されており,隣接する敵を弾き飛ばす「近接攻撃」,GUARD状態を無視して効果を発揮できる「スキル」で戦況を動かすのが戦術の基本となる。何を目標に動けばいいのかが常にハッキリしているので,シミュレーションRPG初心者でも迷わずプレイできそうだ。
一方で,ペルソナシリーズのプレイヤーにとって,最初に少し戸惑う要素になりそうなのが「1MORE」システムの使い方だ。これまでのシリーズでは,弱点属性の攻撃をヒットさせてダウンを奪い,1MORE(連続行動)を繰り返すのが基本だったが,本作では「属性」の概念自体がなくなっている。
本作における1MOREは,非GUARD状態のユニットに射撃攻撃をヒットさせれば発生するのだが,ダウンした相手は普通に次のターンに起き上がって攻撃してくる。ただダウンを取っただけでは,あまり意味がない。
そのかわり,敵をダウンさせると味方ユニット3体を直線で結んだトライアングルが表示され,範囲内の敵をまとめて攻撃できる「TRIBANGLE」が発動可能となる。これが,シリーズ作品における「総攻撃」にあたる要素だ。
TRIBANGLEは,対象となるダウン中の敵だけではなく,トライアングル範囲内の敵すべてにダメージを与えられる。相手の位置取りを把握し,大量の敵を範囲内に収めれば,1ターンで大量の敵をまとめて撃破することも可能だ。
しかし,位置取りの工夫だけで相手をTRIBANGLEの内側に収められるほど簡単ではなく,また一掃できたと思いきや,取り残してしまうということも少なくない。そこで役立ってくれるのが,ペルソナを用いた各種スキルの効果だ。本作のスキルは属性相性でのダウンを取れなくなったかわりに,固有の追加効果を発揮するようになった。
「ガル」であれば,相手を吹き飛ばす効果で複数の敵をTRIBANGLEの範囲内にねじ込む,「ジオ」なら,移動を封じる感電のバッドステータスを与えることで生き残った敵を無力化するといったように,スキルによって異なる効果を戦術に生かせる。
状況に応じて有効打となるスキルを考えるのは,形は変われどペルソナらしさを感じられる本作の特徴と言えるだろう。
特殊効果/バッドステータス | |
---|---|
絶望 | 付与されたユニットの移動力を吸収する |
疾風 | 攻撃した方向へ,対象ユニットを吹き飛ばす。低い遮蔽を飛び越えることも可能 |
感電 | 1ターンの間,移動ができなくなる |
炎上 | 攻撃した方向へ,対象ユニットを少しだけ吹き飛ばす。1ターンの間,ターン終了時にダメージを与える |
凍結 | 1ターンの間,移動と攻撃ができなくなる。ただし,ダメージを受けると解除される |
核熱 | 攻撃対象となるユニットを中心に,周囲のユニットを引き寄せる |
念動 | 攻撃対象となるユニットを,スキル使用者の方向へ強制的に移動させる。遮蔽があった場合は迂回させる |
また,“あえて動かない”という手が重要な意味を持っているのも見逃せないポイントだ。攻撃,スキル,射撃のいずれも実行せずにターンを終えたユニットは「チャージ状態」となり,次ターンにキャラクター固有の特殊能力を使えるようになる。距離を見て包囲できないと思ったら,攻撃せず陣形の整理を優先するのも有効な一手となるだろう。
誰がスキルを使い,誰が1MOREを取り,どんな陣形で敵をTRIBANGLEに収めるのか。はたまたこのターンは動かず見送るのか……。と,基本システムはシンプルながら,“考えられる”ことが多く,そして楽しい。
不確定要素の少ないシステムに則り,試行錯誤を重ねながら最適解を探す感覚はパズルゲームに近いが,射線管理や敵ユニットの誘導といった戦略シミュレーションとしての要素もキッチリ備えている。そういった意味で,本作のバトルは“戦略パズル”と呼ぶのが良いように思う。
そうした試行錯誤をじっくりと楽しめるように,システム面もそれに合わせた形に設計されている。キャラクターはアクション(各種攻撃やスキル)を行うまでは自由に移動可能で,行動順もプレイヤーが任意に決定できるほか,アンドゥ(一手巻き戻し)やバトルやり直し機能が標準で搭載されるなど,遊んでいて不自由さを感じることはなかった。
どのユニットに射線が通るかは常に表示されるので,いちいちカーソルを合わせて確認する必要はない |
攻撃を受けると自動的に反撃を放つ敵も存在するが,カーソルを合わせれば反撃の範囲が表示される。範囲外から攻撃して反撃を誘発してやろう |
また,レベルの概念は存在するものの,ユニット個別ではなく共有の「怪盗団レベル」となっており,ユニット別の育成は必要としない。つまり,ユニットをまんべんなく使いたい人も,レベリングのための周回をする必要がないわけだ。この,いわゆる“稼ぎ”をあまりしなくて済みそうなのは,個人的にはうれしいところだ。
スキルツリーとペルソナでメンバーを強化!
育成面の後戻りできない要素はいっさい無し
共通システム以外の部分で戦略に多様性を与えてくれるのが,各ユニットが持つスキルの数々だ。本作でスキルを習得する手段は,大きく分けて「スキルツリー」と「ペルソナ」の2つが用意されている。
スキルツリーは,バトルの結果などで得られる「GP」を消費し,新たなスキルを獲得できるシステムだ。習得できるスキルはユニットによって異なり,割り振りによってユニットそれぞれの個性を出すことができる。
ありがたいことに,割り振ったGPはいつでも自由にリセットできる。消費コストやペナルティなどはないので,挑戦するステージに必要なスキルがあったら気軽に振り直そう |
各バトルに設定された3つの条件を達成することで追加の経験値と資金を得られる。攻略済みのバトルはいつでも再挑戦できるので,リソースが足りなくなった場合は達成を目指してみよう |
ペルソナはシリーズおなじみの要素だが,こちらの扱いもP5とは少々異なり,PQシリーズに近い仕組みになっている。
本作では主人公を含む味方ユニット(エルを除く)も「サブペルソナ」と呼ばれるペルソナをそれぞれ1体だけ装備可能で,装備したペルソナが習得しているスキルをそのまま利用できる。
もちろん,ペルソナ同士を合体させて新たなペルソナを生み出す「ペルソナ合体」システムも健在。サブペルソナは2つのスキル枠を持ち,1つがペルソナ本体が持つ固有のスキル枠,もう1つが合体によって継承可能なスキル枠となっている。
サブペルソナが習得できるスキルは最大2つなので,「すべての状況に対応できる最強のペルソナを作り出す!」というのは難しそうだ。ユニットの個性を際立たせたり,チームの欠点を補ったりする要素として生かすのがいいだろう。
射撃などの威力に影響を与える武器も,ラヴェンツァ殿が調達してくれる。この異世界で主人公たちの銃を扱える人物がいないのが理由らしい |
キャラクターとの交流を楽しめる「TALK」を進めることでも,GPを入手可能だ。ストーリーを楽しみつつ,キャラクターの強化リソースを集めていこう |
今回の先行プレイは,ペルソナ合体などの要素を体験したところで終了となった。まだまだ気になる要素,現段階ではまだ触れられない部分も多いが,ゲームの要素はかなり盛りだくさんであることは伝えたい。
実際に遊んでみて感じたのは,ゲームを全体をとおしての配慮の行き届きっぷりだ。アンドゥや戦闘やり直し機能はもちろん,戦闘前の準備,過去の戦闘シーンのやり直しなど,戦略を考えるにあたって必要な手間が極限まで小さくなるように作り込まれている。
その上で,P5ならではのスタイリッシュな雰囲気を崩さず,カートゥーン調のビジュアルで独自の世界観を構築しているのも面白い。P5シリーズファンにとっても,シミュレーションRPGファンにとっても新鮮な感覚で楽しめる作品になりそうだ。
「ペルソナ5 タクティカ」公式サイト
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