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ロックアレンジの作り方とは? 「Bloodstained: Curse of the Moon」1&2アレンジサントラの舞台裏をお届け
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印刷2023/07/08 13:00

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ロックアレンジの作り方とは? 「Bloodstained: Curse of the Moon」1&2アレンジサントラの舞台裏をお届け

 ご存知の人は多いかと思うが,ホラーとロック(およびそのサブジャンル各種)は“親しい隣人”だ。

 とくにホラー映画を例に挙げると分かりやすい。例えば,「Demoni」(邦題:デモンズ / 1985年)がビリー・アイドル氏の「White Wedding」やAcceptの「Fast as a Shark」などを取り入れていたり,ロブ・ゾンビ氏が「White Zombie」(邦題:恐怖城 / 1932年)のタイトルを自身のバンド名に借用したりしている。ゲームに関連するところでは,「Resident Evil」(邦題:バイオハザード / 2002年)のエンディングテーマにSlipknotの「My Plague」が採用されていたのを覚えている人も多いだろう。

 とくに1980年代のホラー×ロックはいろいろあり,ジーン・シモンズ氏とオジー・オズボーン氏が出演した映画「Trick or Treat」(邦題:ハロウィン1988 地獄のロック&ローラー / 1986年)や,スティーブン・キング氏がファンであったため「Maximum Overdrive」(邦題:地獄のデビル・トラック / 1986年)の劇伴をAC/DCが制作することになったエピソードなど,関連する話は枚挙に暇がないくらいだ。

 と言っても,本稿でフィーチャーするのは映画ではなく,CD-BOX「Bloodstained: Curse of the Moon Soundtrack」だ。このCD-BOXには,「Bloodstained: Curse of the Moon」および「Bloodstained: Curse of the Moon 2」のオリジナルサウンドトラック(Disc A/C)と,アレンジサウンドトラック(Disc B/D)が同梱されている。

インティ・ダイレクトの「Bloodstained: Curse of the Moon Soundtrack - Limited Collector's Edition -」販売ページ


 なぜホラーとロックの話から始めたかと言うと,このアレンジサウンドトラックが比較的オールドスクールなロックテイストをメインとしているため。ゴシックホラー要素と1980年代的な8bitスタイルをフィーチャーした「Bloodstained: Curse of the Moon」シリーズの楽曲がロックテイストにアレンジされるのは,ある意味で必然だと言えるだろう。

 ただ,こういったアレンジの裏側が語られる機会というのは案外無いものである。そんなわけで本稿では,アレンジサウンドトラックの制作に関わった諸氏のコメントを通して,「8bit風楽曲のロックアレンジ」の舞台裏を紹介したい。



Bloodstained: Curse of the Moon Arrange Soundtrack


 Disc Bの「Bloodstained: Curse of the Moon」アレンジサウンドトラックでは,インティ・クリエイツ社内で大まかな構成を行った後,ギターアレンジ,ドラム,ベースの制作をTAKUYA氏(INO Head Park)が担当。バイオリンを山田一法氏のプロデュースで別途収録のうえ,Mixが行われている。ヘヴィメタルのテイストでありつつ,モダンな音使いによってパンキッシュな印象も出ている,噛むほどに味わいが出てくるような組み立てとなっている。


アレンジャー:TAKUYA氏 コメント


――今回は70〜80年代ロックの質感や音楽性に近付いたアレンジですが,具体的にはどのような機材,技法,編曲で往時の音に近づけましたか。

 基本的なアンプとしてはKEMPERを使用し,Bognerやマーシャル系を中心に,曲によってBoogie Rectifierなども使いました。入力時にNEVE1272なども使用し,少しふくよかな感じにした曲などもありました。
 オールドマーシャルなども試したのですが,なかなかマッチしなかったです。

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 使用ギターですが,基本的なバッキングはFUJIGENのレスポールタイプを使用し,ヘビーなアプローチやミュートのかけ具合などで曲の重さを調整しました。テンポが速めな刻みは KILLER GUITARSのオリジナルシェイプを使用しています。
 メロディパートはホラー感を演出するためアームを駆使することが多かったです。一番使ったのがSuhrのストラトタイプです。

 ベースに関しては,基本的にNEVE1272を通してライン録音したのち,アンプシミュレーターを掛けて,曲によってWet/Dry(編注:エフェクト音/原音)のバランスを変えています。
 骨太に聴かせたかったというのもあり,割とラフに力強く弾くよう心がけました。5弦ベースを持っていなかったので,近くのリサイクルショップに急きょ買いに行ったりもしました(笑)。

 現代のデジタル処理の良いところを活用しながら,昔ながらの空気感や生々しい演奏の迫力など,うまく融合させられたかと思います。

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――しっかり現代に通じる志向性もありますが,現代ならではの要素はどういったところで求めましたか。

 KEMPERを使うことにより,現代的な少しすっきりした音になっているかと思います。また,演奏のニュアンスも現代的にうまくまとめられたかと思います。デジタルカット処理などを駆使して現代的にまとめられた部分もあります。

――アレンジにあたり,どのように原曲を膨らませましたか。

 原曲の持つ独特なホラー感をうまく解釈するところから始めて,原曲の持っている世界観をもとに,どういうところへ向かっていきたかったのかを模索しました。
 特にメロディーの演奏には,とても気を使いました。ニュアンスのつけ方や音色などを工夫して,よりロックでホラーな楽曲にすることができたかと思います。

――アレンジにあたり苦労した点は何でしょうか。

 まず「On to the Next Battle」から取り掛かったのですが,そのアレンジをまとめることが一つの基準作りにあたり,一番時間を費やした作業になりました。基準ができてしまえば,後はそれをもとに各曲ごとの役割やバリエーションを付けていく作業となるので,楽しく進めることができました。
 ただ,もともとの曲データがMIDIのため,人が弾くにはかなり困難なフレーズなども結構ありました。その場合,原曲を壊さないよう,うまく着地させるところなどは,とても苦労しました。

 また,音的に古くも新しくもなり過ぎない絶妙なバランスを作り出すところが,今作品で一番難しいことだったと思います。

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Bloodstained: Curse of the Moon 2 Arrange Soundtrack


 Disc Dの「Bloodstained: Curse of the Moon 2」アレンジサウンドトラックでは,インティ・クリエイツ内で全体のアレンジおよびベースとドラムを制作し,栗原 務氏がギターのアレンジ/収録および全体のMixを担当している。こちらは小気味よく重低音が響くリズムパートと,個性を前に出したギターサウンドが印象的な,メタル寄りの雰囲気となっている。


アレンジャー コメント


――今回は70〜80年代ロックの質感や音楽性に近付いたアレンジですが,具体的にはどのような機材,技法,編曲で往時の音に近づけましたか。

栗原氏
 サウンド的には、70年代のハードロック〜80年代のヘヴィメタルよりも、どちらかというと2000年代以降のDjent系ダウンチューニング&多弦ギターの重低音を意識したサウンドになっています。機材的には、Line6のHelixというアンプモデリングエフェクターを使用して録音しました。

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佐藤裕之氏(インティ・クリエイツ):
 ドラムサウンド的には,作曲時点から「〜Curse of the Moon」よりもおどろおどろしさを重視されていた点から,バリバリに加工された様なドラムサウンドよりかは「生々しさ」を感じられるようなサウンドにしています。機材的には「SUPERIOR DRUMMER 3」を使用しています。
 ドラムのビートは正確無比な感じではなく,人間味のある多少のずれ等を表現するようにしています。また,現代では少なくなってきているギターソロパートを編曲で組み込みました。

TOONTRACK「SUPERIOR DRUMMER 3」
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吉永 涼氏(インティ・クリエイツ):
 「〜Curse of the Moon 2」は前作と違って2000年代以降のサウンドを意識しているので,重低音を重視した音作りをしました。
 ホラー感のアプローチに際して,おどろおどろしい感じを出すため,ベースの打ち込みに関してはかなり後ろノリになるように作った曲が多いです。機材は「Trilian」を使用しました。

SPECTRASONICS「Trilian」
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――しっかり現代に通じる志向性もありますが,現代ならではの要素はどういったところで求めましたか。

佐藤氏
 (70年代〜80年代ロックの)バンド形式を想定した編曲ではありますが,パート数は結構たくさんあって,わりと音が密集しています。譜面やビートが当時っぽい反面,音数や音圧で現代っぽさを出しています。

吉永氏
 フレーズ感や重低音要素などで現代っぽさを出しています。これは原曲から意識していた部分なので、そこから正当に膨らんだ結果であると思います。

――アレンジにあたり,どのように原曲を膨らませましたか。

佐藤氏
 ゲームループ版の尺から拡張する(≒繰り返す事になる)にあたり,通常の歌謡曲的な広げ方っぽい事をしたりしています。例えばリフが印象的な曲であれば,2回目のAメロでリフは原曲通りのままドラムのリズムを変えたり,メロディが印象的であれば,2回目のメロディはそのままでコード進行だけリハーモナイズ出来そうな部分を変えたりしています。
 「引き立て方を変えながら,主役を何度も楽しんでもらう」というイメージの膨らませ方をしています。

――アレンジにあたり苦労した点は何でしょうか。

佐藤氏
 元の8bit音源から生楽器に差し替えたとき,「原曲と違う」と思われないようにした事です。もちろん音源は違うのですが,原曲の譜面でベースの役割をしていた音を,そのまま編曲でもベースに当てはめただけでは,何か物足りなく感じることがあります(8bit特有の聞こえ方というか,ベースとバッキングの二つの役割を担っていたりするので)。
 そういう場合はバッキング等にも音を足し,原曲の聞こえ方を維持するように配慮しました。


 「Bloodstained: Curse of the Moon Soundtrack」はインティ・ダイレクト専売かつ,限定生産のため在庫の完売をもって販売終了となる。オリジナルサウンドトラックは「Bloodstained: Curse of the Moon Chronicles」限定版にも付属するが,アレンジサウンドトラックはCD-BOXだけの収録だ。

 ホラー,ロック,ゲームミュージックの“らしさ”が集結した,なかなか希少なアルバムなので,興味のある人は買い逃さないようにしよう。

「Bloodstained: Curse of the Moon Chronicles」公式サイト

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