インタビュー
[インタビュー]「逆転裁判456 王泥喜セレクション」は往年のファンが喜ぶコレクションアイテムを目指し,さまざまなコンテンツが詰め込まれた
「逆転裁判456 王泥喜セレクション」公式サイト
コンセプトはファンサービス。ファンが喜ぶ盛りだくさんな内容を詰め込んだ
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。はじめに自己紹介と「逆転裁判」シリーズへの関わりからお願いします。
橋本賢一氏(以下,橋本氏):
「逆転裁判456 王泥喜セレクション(以下,456)」のプロデューサー,橋本です。カプコンには2008年に入社し,パブリシティの部署で「逆転裁判5」「逆転裁判6」「逆転検事」「逆転検事2」「大逆転裁判」あたりまで宣伝を担当していました。その後開発に異動したんですが,もともと初代作をGBAで遊んでいた逆転裁判のファンでもあり,「456」のプロデューサーに立候補しました。
4Gamer:
今回の移植は,当時の資料集めからスタートしたのでしょうか。
橋本氏:
そうですね。「逆転裁判5」と「逆転裁判6」については結構資料が残っているんですが,「逆転裁判4」は2007年のゲームなので資料集めには苦労しました。当時の資料があれば,今回のようにフルHDでブラッシュアップするにしても,目指すべき方向性が分かりやすいんですよね。資料が残ってないのであれば,関係者に聞き取りをするしかありません。
4Gamer:
「456」をリメイクするうえでのコンセプトはどういったものだったのでしょう。
橋本氏:
「今までのファンに向けたコレクションタイトルにする」というものですね。「逆転裁判123 成歩堂セレクション(以下,123)」はグラフィックスこそリファインしましたが,プラスアルファがほぼなかったタイトルでした。音楽を聴けて,設定資料が見られて,自分で好きなシーンを作ってキャラクターを愛でられる,そういったコンテンツを入れられたら,「456」を待っているファンに満足していただけるだろうと。
4Gamer:
なるほど。シーンセレクトが最初から開放されていたり,自動で読み進めて選択肢は自分で選ぶ「オートモード」や,謎解きも自動でやってくれる「ストーリーモード」があったり,コンサートのオーケストラ楽曲を聞けたりと便利な機能が多いと感じましたが,コンセプトそのものがファンサービスだったわけですね。
橋本氏:
「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-(以下,大逆転裁判)」では,ストーリーモードが追加されましたが,評判がすごく良かったので続投が決まりました。ただ「456」には,カガク捜査やココロスコープといったミニゲームが結構多くて,これを自動で解かせるところの調整が大変でしたね。アドベンチャーとしてのフラグを立て,次にどちらへ進むかをきちんとプログラムとして組まないといけませんでした。
4Gamer:
単にクライマックスのシーンを見られるだけではファンサービスとして不足であると。
橋本氏:
テキストの自動送り時間も調整できますので,自分に合った気持ちいい速度で進められます。使わない方は使わないでしょうし,ストーリーモードとオートプレイと通常プレイを環境に合わせて使い分けていただければと思います。
4Gamer:
これまでのコレクションは「123」「大逆転裁判」「456」という順番での発売でした。オリジナル版と発売順序が違っているのはなぜなのでしょうか。
橋本氏:
そこまで大きな理由はなくて,社内の開発リソース的に「大逆転裁判」が対応しやすかったということです。当時オリジナル版の「大逆転裁判」に関わっていた人たちを集めやすかったですし,なにか狙いがあって発売順序を「456」と入れ替えたわけではないんです。
4Gamer:
先ほどのお話と重なりますが,当時を知る人が多いほうがリメイクもやりやすいということですね。
橋本氏:
開発に何年も時間を掛けるわけにはいきませんし,当時を知る人が多いと,効率のいい開発スケジュールを組めることは確かです。
4Gamer:
「456」をリメイクするにあたり,大変だったところはどこでしょう。
橋本氏:
「456」はオリジナル版よりも大きな現行機の画面でプレイしますし,ニンテンドーDSのタッチパネルが前提だった操作もゲームパッドに落とし込まなければなりません。そうした中で気持ち良くプレイできるようにすることに苦労しました。また,グラフィックスをブラッシュアップするにしても,単に大画面にするだけではダメなんです。
例えば,当時の画面では潰れていた文字も,そのまま拡大するのではなく,文字として読めるものにしないといけない。ツールで拡大するだけでは終わらず,ドットの塊を補完して文字にするといった手間が出てくるわけです。
4Gamer:
単に移植するだけではなく,新たに作っていく部分もあったわけですね。
橋本氏:
5は背景の上下を切って少しアップにしているんですが,3Dなのでまだ融通が効きます。大変だったのは4の背景で,2Dデザイナーに頼んで左右の部分を新しく描き足すことになりました。あと,実は弊社の「RE ENGINE」を使った初めてのアドベンチャーゲームだったので,ツールが揃っていないのも大変でした。
4Gamer:
RE ENGINEといえば,近年の「バイオハザード」や「デビルメイクライ」シリーズ,「ストリートファイター6」といったタイトルで使われており,アクションゲーム用のゲームエンジンというイメージがあります。
橋本氏:
そうなんです。だからアドベンチャーゲームでどう使うかについては,社内にもまったく知見がないわけです。何しろ「アドベンチャーゲームでライトを当てるにはどうやる?」というところからのスタートでしたから,プログラマーもがんばってくれました。
4Gamer:
素人目に見ると,アクションが作れるならアドベンチャーも作れそうな気がしますが,まったくそんなことはないと。個人的に印象的だったのが,オーケストラコンサートの曲が収録されていることと,アクションスタジオ機能の追加になります。
橋本氏:
オーケストラコンサートの曲については,ファンサービスをコンセプトとしたタイトルということで,何が入っているとうれしく感じていただけるかを考えた結果です。ゲームの曲が聞けるのはもちろん,プラスアルファでシリーズのコンポーザーである北川(保昌氏)とどの曲をどの順番で収録するか相談しました。選りすぐりの曲になっていますし,音源自体も高音質です。気に入っていただければ,当時のCD購入やサブスク配信の利用を検討してもらえればと思います。オーケストラホールというモードでは,プレイリストも作れるなどこだわっていますので,ぜひ活用してみてください。
4Gamer:
ゲーム音楽は思い出を呼び起こしてくれるものですし,コンサートに行って聞いた曲となると,より強く記憶が刺激されるように思えます。
橋本氏:
アクションスタジオも本編では不可能な組み合わせができるなど,さまざまな使い方があります。元々は好きなキャラクターのアクションや表情,動きを愛でられるモードを目指したんですが,途中からプレイヤーが自由に遊んでいただけるものへ方向転換しました。グリーンバックにもできますし,アイデア次第でいろいろと楽しめるんじゃないかと思います。使い方は無限大なので,面白い使い方を考えてみてください。
4Gamer:
過去には法廷シーンを作れる「つくろう! 逆転裁判」というツールも公開されていましたし,相手を指差して「異議あり!」のような明確な“型”があり,それが広く知られている「逆転裁判」シリーズならではの楽しみ方だと思います。
橋本氏:
英語圏の方々もそうしたミーム的な楽しみ方をしていますし,何が出てくるか期待大ですね。
4Gamer:
「456」の海外での評判はいかがでしょうか。
橋本氏:
いい感触を得られています。「123」を2019年にSteamで展開して以降,欧米のプレイヤーさんが増えました。アドベンチャーゲームというジャンルで見ると,「逆転裁判」シリーズはSteamでもトップランナーなんですよ。本数もちゃんと出ていますし,テキストアドベンチャーゲームの「逆転裁判」というブランドは,海外でも認識されている印象です。オリジナル版の時点で,英語版ではナルホドくんを「フェニックス・ライト」という名前のロサンゼルスの弁護士にし,フランス語版では舞台をパリの街にするなどカルチャライズをしっかりしていましたから,そこも評価されているところです。
4Gamer:
日本文化が浸透した今では日本の弁護士ナルホドくんで通るんでしょうけれど,当時はカルチャライズすることが最善だったようにも感じます。
橋本氏:
そこは昔と今で違うところですね。当時は日本文化が分かりづらかったでしょうから,日本人しか分からない文脈を使った推理の部分も細かく調整していました。「456」では,オリジナル版にはなかったアジア圏の言語に対応していますが,こちらもネイティブの方と相談して新たに構築し,ボイスも新規で収録しました。
4Gamer:
「123」からスタートしたコレクションシリーズですが,ここから新たなファンが入ってきているのでしょうか。
橋本氏:
10代後半〜20代前半の方が結構増えてきていて,特に北米の方が多い印象です。そうした新たなファンの方々にも買っていただけるよう,今回の中身もしっかり作りこみました。
4Gamer:
それは朗報ですね。シリーズの存続には新しいファンの獲得が欠かせませんし。現在のコンサートやコラボカフェの展開を見ても,「逆転裁判」ファンは非常に熱いと感じられます。
橋本氏:
キャラクターに対して熱い思いを持たれているファンの方が多いですよね。練られたストーリーや,そこで起こる逆転劇,推理や謎解きを通してキャラクターが光り,そこを好きになっていただけているんじゃないでしょうか。「逆転裁判」の作中でもキャラクターたちは年を取り,成長している。そしてプレイヤーさんも年を経るごとに思い入れも深くなり,大人になってもまたプレイしたいと思っていただけている。
4Gamer:
気になるのは「逆転裁判」シリーズの今後です。ここでRE ENGINEのアドベンチャーゲーム対応のノウハウを積み上げているわけですから,これからの展開にも期待できるということなのでしょうか。
橋本氏:
現時点でお話しできることは何もないんですが,RE ENGINEでアドベンチャーゲームを作る知見が得られたことは確かです。ただ,「逆転裁判」がシリーズとして止まることはないので,そういった意味で続報を楽しみにお待ちいただければと思います。
4Gamer:
「逆転検事」シリーズのリメイクはどうでしょう。御剣は非常に人気の高いキャラクターですし,可能性はないのでしょうか。
橋本氏:
ないわけではないと思いますが,現時点ではとくにお伝えできることがありませんということで。
4Gamer:
分かりました。シリーズ未体験の人がコレクションをプレイする際にオススメの順番をお願いできますか。
橋本氏:
もちろん「123」から順番に遊んでいただくのがオススメですが,実は「456」だけでも話は成立しているんです。ですので,いきなり「456」から遊んでいただいても問題ないようにはなっています。ただ先に「123」をプレイしていただくと,ナルホドくんの成長や師匠としての立場を見届けられますし,「456」に登場する「123」キャラのその後という視点でも楽しめます。
4Gamer:
最後に発売を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
橋本氏:
有料DLCの「特別編」やコスチュームも今回の「456」には最初から収録されていますので,当時DLCを買わなかった方にもオススメできるタイトルです。もちろん,いきなり特別編を遊ぶことも可能です。個人的には「逆転裁判5」の特別編がかなり好きで,「123」で子どもだった綾里春美が成長した姿で出てくるのも,シリーズをずっとプレイしている人にはうれしいポイントだと思います。好きなエピソードから遊んでいただくのもいいですし,ミュージックモードで好きな曲だけを集めたプレイリストを作ってループさせたり,設定資料を眺めたりといろいろな遊び方ができるものになっています。ぜひ手に取って遊んでみてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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