インタビュー
[インタビュー]「DAMON and BABY」は新たな開発環境の試金石。よき開発者人生を送ってもらうために,これまでにない取り組みでゲームを作る
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[プレイレポ]「DAMON and BABY」,子連れ魔王のユーモラスかつハードボイルドな珍道中をツインスティックシューターで描く
アークシステムワークスが2026年3月26日に発売する「DAMON and BABY」は,2本のアナログスティックで攻撃と移動を行うツインスティックシューターに,探索や成長の要素を取り入れた「見下ろし型ガンアクションアドベンチャー」だ。先行プレイで見えた概要とプレイフィールをお届けする。
「GUILTY GEAR」や「BLAZBLUE」をはじめとした格闘ゲームをメインに制作してきた同社が,新規IPかつミドルプライスのツインスティックシューターを制作するという新たな挑戦だ。
今回は,そんな同作の開発の経緯や開発中のエピソードをエグゼクティブディレクターの石渡太輔氏とプロジェクトマネージャーの太田勇児氏に話を聞いた。本プロジェクトは,インディーゲーム全盛の時代に企業が生き残るための取り組みでもあるという。
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また,本日の発売に合わせて,開発チームからのメッセージと無料アップデートのロードマップが届いている。こちらも目をとおしておこう。
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「DAMON and BABY」で目指す新しい企業としてのゲーム開発のかたち
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは簡単な自己紹介をお願いします。
石渡太輔氏(以下,石渡氏):
アークシステムワークスのCCOの石渡です。「GUILTY GEAR」シリーズでは監督を,「DAMON and BABY」では旗振り役としてプロデューサーとキャラクターデザイン,ストーリーを担当しています。
太田勇児氏(以下,太田氏):
「DAMON and BABY」プロジェクトマネージャーの太田です。これまでは自分でプロジェクトを立ち上げ,開発を進めることが多かったのですが,今回は進行管理や仕様面の確認などをしています。
4Gamer:
先日Steamで体験版が公開されましたが,その反応はいかがでしたか。
石渡氏:
当初トレイラーのみが公開された際は「格闘ゲームの新作を期待していたのに……」というお声が多かったのですが,体験版をプレイしていただいたところポジティブな反応をいただけています。難度については,チュートリアルの時点で難しいというお声をいただきましたので,既に3回ほど体験版をアップデートしています。
太田氏:
我々としてもチュートリアルでユーザーさんを試したいわけではないので,回復アイテムを多く置いたり,回復アイテムである「ハンバーガー」の回復量を上げたり,値段を下げたり,敵の攻撃力も大きく変えるなどの調整を入れました。
4Gamer:
アークシステムワークスといえば対戦格闘ゲームのイメージがありますが,なぜツインスティックシューターの「DAMON and BABY」を開発することになったのでしょう。
石渡氏:
格闘ゲーム以外のジャンルについて,開発のノウハウを蓄積していきたいという考えがありました。とはいえ,大型プロジェクトを立ち上げるようなノウハウはありません。そこで,まずは手の中で収まるような企画で新規プロジェクトを立ち上げ,ゲーム1本ができあがるまでのプロセスを若いスタッフに体験してもらいたかったんです。
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4Gamer:
昨今,開発の大規模化に伴い,若いスタッフがゲーム1本の制作を最初から最後まで経験するのに時間がかかるという指摘はよく耳にします。
石渡氏:
現在の開発では,スタッフの関わり方が局所的になっていることも多くあります。数年前に「AAAタイトルに携わっていても,何年もマップに草を植える仕事をするだけだ」といった冗談が話題になったことがありますが,ただの冗談ではありませんよね。
何かに特化した仕事を何十年も続け,気が付いたらそれ以外のことができなくなってしまうのはとても危険です。自分が携わる企画が窮地に立たされたときにどうすればいいのか分からなくなってしまうし,仕事を辞めたとして次の就職先も危うくなってしまいます。
そうならないように,ゲーム開発の基礎知識を得る機会を作りたいんです。
4Gamer:
素人目線ですが,あれだけのオリジナル格闘ゲームを作り,しかも国内外の人気IPを預かることもしているのですから,ノウハウは蓄積されているように思えます。
石渡氏:
例えば,箪笥の一部分をずっと作ってきた職人がいるとして,その職人に回転する椅子を作ってほしいと伝えても,どこから手を付けていいかすら分からないと思うんです。これはゲーム開発でも同じことがいえます。
ゲーム会社に入ってくる人って,いつかは自分の代表作を作りたいといったモチベーションを持っていると思うんですが,現在のゲーム市場ではそういった機会に恵まれることはほとんどないのが実状ではあります。
4Gamer:
専門性がある部分を任せるのも時間が掛かりそうですし,そこから自分の考える新作をとなると,それこそいつになるかといった印象はあります。
石渡氏:
同時に市場も二極化が進んでいるんです。売れるのはAAAタイトルか,よくできたインディーゲームというパターンですね。
AAAタイトルを作れるような大きな企業か,少数精鋭で作るコアなインディー会社かとなっているわけです。実は企業がインディースタジオに勝つのって,すごく難しいんですよ。
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4Gamer:
企業は資本とマンパワーでインディースタジオを上回っているように感じられます。
石渡氏:
インディースタジオは自由なこだわりでものを作ることができ,才能のある方なら10人未満という規模で作品を完成させてしまえます。開発のフットワークが軽いし,関わる人も少ないから,安い値段で提供できるんです。
その一方で,特定のジャンルにノウハウのない企業が同じものを作るとしても,インディースタジオと同じようにはいきません。インディースタジオなら個人の思い付きで作れていたものが,会社だと仕様書を切り,許可を得て,設計図を描き,外注に出して3Dモデルを起こしてもらい,リテイクを繰り返してようやく完成するということになります。
すごく小さいキャラクターなのに,実は3か月以上かかってしまったなんてこともあるんです。もちろん,その期間も人件費がかかりますので,ゲームをインディースタジオと同じ価格にするのは不可能になります。
お客さんからすると,ジャンルはインディースタジオと同じなのに,企業の作品は値段が高いうえにボリュームも少ないということになってしまう。だから今は,小〜中規模のゲームを作りにくくなっているんです。
4Gamer:
なるほど。インディーが得意とするジャンルでは,企業のゲームがボリュームや価格の面で苦戦することが多いですが,こうした事情があったわけですね。
石渡氏:
そうなんです。そこで我々アークシステムワークスは,企業だからこそ量産でき,安定したクオリティを担保できる環境を作る必要があると考えたんです。そして,小規模かつ早いサイクルで作品を作れれば,自分の代表作を持てるスタッフが増えていくという好循環が生まれます。
「自分の代表作を作れるからアークシステムワークスを目指した」「アークシステムワークスに入ってよかった」と思える会社人生を送ってもらいたいと考えています。
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4Gamer:
「DAMON and BABY」は単に新ジャンルに挑戦したわけではなく,アークシステムワークスやスタッフたちの生き残り方も絡んだプロジェクトだったわけですね。
石渡氏:
まずは「DAMON and BABY」でそうした下地を作ろうということで,僕がかなりワンマンで旗振りをしています。体験版のフィードバックをいただいている今が,「一番ゲームを作っている瞬間」だと感じています。
4Gamer:
「DAMON and BABY」は,どのような方針で開発が進められているのでしょうか。
石渡氏:
一言でいえば「料理をする時間を充分に取ろう」という方針です。ここでいう料理とは,ゲーム内容の作り込みになります。ゲームの仕様を決め,キャラクターを用意するのが材料を集めている段階で,ここから料理がスタートします。実際の開発では,材料が揃ったらもう締め切り間近で,料理する時間が足りないことも多いんです。
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4Gamer:
近年よくいわれるゲームの練り込み不足は,ゲームデザインやシステムの仕様作成,キャラクターデザインやアセット作りに時間がかかってしまうから起こるということですね。
そして,先に石渡さんがいわれたように,企業的な組織だとこの段階にどうしても時間がかかってしまう。
石渡氏:
しかし「料理に時間を掛けたいから材料が少なめ」ではお客さんに満足していただけません。そのため,今回は,たくさんの材料を早い段階で用意しました。
例えば,キャラクターのモデリングは,通常だと三面図を描いて外注のモデラーさんとやり取りし,入念にチェックしたうえでゴーサインを出します。しかし「DAMON and BABY」では,ラフ画を1枚用意し,そこから先はモデラーさんにお任せし,想定と違うものが出てきてもOKとしたんです。もちろん,弊社内でクオリティを保つための調整が前提ではありますが。
また,通常ならモデリングとモーションを作る人が別なんですが,今回はモーションも触っていたモデラーを探し,キャラクターを一体丸々お任せするということもしました。分担していた頃より指示が出しやすいですし,キャラクターの勘どころも分かっているのでアイデアも出しやすく,修正するにしても話が早かったですね。
4Gamer:
1人のスタッフが専門化するのではなく,ある程度いろいろな仕事をすることで,全体像を把握しやすくなると。
石渡氏:
ゲーム開発がロードマップどおりに進むのは珍しいことで,「DAMON and BABY」の場合,材料は予定どおりに用意できましたが,料理するのに時間が掛かってしまいました。
4Gamer:
なるほど。ただ,材料をすばやく用意できる環境を作れたのはひとつの前進ということですね。
石渡氏:
そうですね。時間が掛かれば,それだけ人件費も膨らみますので。だからこそ「スケジュールを管理して,時間を掛けず開発しろ」とはいわれますが,そのためにはノウハウの蓄積や開発環境が必要になります。
こうした課題を無視したまま,できないのに「できる」といって物事を進めてしまい,結局開発期間が延びる……ということをずっと繰り返してきました。今回のプロジェクトは,調理器具を整えるための時間を確保するためのものでもあったんです。
4Gamer:
課題を無視したまま,できないのに「できる」といって物事を進める……というのは実に耳が痛い話ですね。ゲーム業界に限らず,仕事の普遍的な問題である気がします。
石渡氏:
普遍的な問題だからこそ,失敗できないようなビッグバジェットではなく,コントロールが効く小さいバジェットでこれを解決する必要があるんです。しっかりとスケジュールを守り,早いサイクルで安定した開発を行い,作品を多く出せるようになれば,それが経営の支えになってくれるのではないかと期待しています。
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紆余曲折あった開発。マニアックなゲームデザインから間口を広げる方針へ
4Gamer:
「DAMON and BABY」のゲームデザインは,開発中どのように変化していきましたか。
石渡氏:
当初は固まってはいたんですが,あまりにもマニアックすぎるということで大幅に方向転換を行いました。
4Gamer:
方向転換前のゲームはどのような内容だったのでしょう。
石渡氏:
横視点のベルトスクロール形式で,主人公のデイモンが映画「ジョン・ウィック」のように一発撃つたびにポーズを変えていく,いわばガンアクションのメトロイドヴァニアでしたね。
4Gamer:
話を聞くと,その企画も面白そうです。
石渡氏:
コアになるガンアクションはちょっと視点が違うTPSというくらいに凝ったものでした。エイミングにレティクルを使うことで,ヘッドショットも狙える。銃の撃ち方ひとつとっても,うしろの敵に狙いを付けるならこう,この角度に敵がいたらこう……と敵と味方の位置関係によって全部違いました。
ただ,こうした内容を奥行きがあるフィールドでやろうとしたので,かなりマニアックなものになってしまったんです。
太田氏:
社内のレビューでも難しいという意見が多く,調整が必要ということになったんです。
4Gamer:
そこから見下ろし型という現在のかたちになったわけですね。
石渡氏:
そのとおりです。横視点だと相手が奥にいるのか手前にいるのかが分かりにくかったんですが,「カメラの角度を変えてみよう」ということで上からにしたら分かりやすいものになりました。
キャラクター自体は3Dグラフィックスで作っていたので,カメラ位置を変えることで対応できたんですが,真横からのカメラアングルを想定したモーションは全部使えなくなりました。ジョン・ウィックばりのガンアクションのポーズをいろいろと作り込んでいたんですが……。
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4Gamer:
それはちょっともったいない気持ちもありますね。ストーリーは,魔王デイモンが子供を連れて旅をするという,ちょっとユーモラスなところがある内容ですが,これもジョン・ウィック路線からのものなのでしょうか。
石渡氏:
はい。当初からのコンセプトでした。もともと「GUILTY GEAR ‐STRIVE‐」を制作している頃から考えていて,しかもゲームではなく絵本にしたいと考えていました。
ですので「GUILTY GEAR」シリーズとは時間軸的につながっていて,「GUILTY GEAR ‐STRIVE‐」の話のあとのケイオスやイノ,ブラッドエッジ卿も登場する,ある種のユニバース構造になっています。
4Gamer:
「GUILTY GEAR」シリーズを遊んでいないと話がよくわからないといったことはないですかね。
石渡氏:
全然大丈夫です。「GUILTY GEAR」を知っている人がプレイされると,キャラクターのセリフにニヤっとできるくらいですね。
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4Gamer:
デイモンのセリフ回しが粋で,全体的に洋画というかアメリカンな雰囲気が漂っているように感じられました。
石渡氏:
僕自身がそういった世界観が好きなので,舞台をアメリカに設定しています。設定を考えるのが好きで,「DAMON and BABY」ももう3作先までのドラマがあるんですよ。年代的には1970年代ですが,文化背景を出すための絵をもうちょっと作りたかったですね。
4Gamer:
子供もアクションに関わるのが面白かったです。デイモンが子供を飛び出させ,その位置にワープする「ベイビージャンプ」は当初から考えていたのでしょうか。
太田氏:
開発が進んだ段階から追加されたシステムです。当初の子供は銃を構えるとデイモンの背中から降りていて,アクションには無関係の存在でした。
なんといっても子供ですから,銃撃戦に関わらせてしまうとあまりよくないのではないかと考えたのも理由のひとつです。ただ,社内でテストプレイしてもらったところ「子供がいる意味がない」という意見が出たんです。
石渡氏:
そこからは紆余曲折がありました。子供を戦闘に巻き込むのはNGですし,パズル的に使うことも避けたかったんです。
4Gamer:
パズル的に使うというのは,例えば,床にあるスイッチに子どもを座らせると,行く手の扉が開くといったギミック系でしょうか。戦闘に関わらせないのであれば問題ないようにも感じますが。
石渡氏:
パズルをうまく解けないと,子どもにヘイトが向く可能性はありますよね。おかげでゲームオーバーになったじゃないか,みたいな。子どもにそんな感情を向けさせたくなかったんです。
太田氏:
子どもを背負っていると体力が回復したり,銃がパワーアップしたり,背中から降りるとデイモンの移動が速くなったり,といったアイデアもチームから出ましたが,これらもヘイトが向いてしまいそうなのでNGとなりました。
現在はデイモンがハンドガンを撃つと,メインの弾の周囲に小さな弾がくっついて飛んでいきますが,これは子どもを背負ったパワーアップの名残です。
石渡氏:
パワーアップ要素がなくなった際,小さな弾も消してみましたが,途端に攻撃判定が小さくなって射撃が外れるようになってしまいました。ゲーム性的には精密射撃を要求したいけれど,手応えが悪くなるのは避けたい。
そこで,小さな弾をダメージ1にしたところ,手応えのフィードバックを与えつつ精密射撃を要求できるようになりました。
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4Gamer:
ここから現在のベイビージャンプになった経緯を聞かせてください。
石渡氏:
いろいろなアイデアを出してもらい,実現性があるものをとにかくテスト的に実装していく時期がありまして,その中にあったのがベイビージャンプでした。
太田氏:
これまでに作ったレベルデザインはベイビージャンプを想定していないものだったので作り直す必要が出てきましたが,それでもこの仕様は面白いということで本実装が決まりました。
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4Gamer:
アイデアを次々実装していくというのは,いい意味でインディーぽい手法ですが,アークシステムワークスの開発スタイルとしては珍しいものなのでしょうか。
石渡氏:
ほかではあまり見られないんじゃないですかね。これが先ほどお話した料理の時間を多く取ったことによるメリットです。制作期間が延びるたびにお金がかかるんですが,僕は役員なんで残業もし放題ですからね。
4Gamer:
石渡さん自身がアイデアを実装されていたのでしょうか。
太田氏:
そうです。今回は石渡がプロトタイプを作っていたので,一晩経ったら中身がガラッと変わってるようなこともありました。カメラが横視点から見下ろしになったのも,ある日出社したら変わってたという感じでしたし。
それまでは石渡の頭の中をアウトプットしてもらったうえで,僕たちが理解する必要があるため,新しい仕様の実装にも時間がかかっていました。
石渡氏:
人に伝えることの難しさがあらためて浮き彫りになりましたね。
4Gamer:
横視点から見下ろしにしたときのひらめきについて聞かせてください。
石渡氏:
「見下ろしにしよう」とひらめいた感じではなかったですね。僕の作家性は非常に癖が強くて,プレイしやすさを邪魔していることが多々あるんです。今回は遊びにくいところを削いでいくためにカメラの角度を変えていたら,最終的に見下ろしになっていました。
4Gamer:
デイモンだけでなく,敵キャラクターも個性豊かなアクションを見せてくれるので印象に残りました。
石渡氏:
アートディレクターの河内大輔が,上手いというより可愛いとか面白いモーションを作るのが得意なので,自由にやってもらいました。僕がラフに描いていないような登場シーンの動きや,やられ方をどんどん作ってくれるんです。
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太田氏:
例えばイベントシーンも当初は石渡が描いた2Dの顔アイコンだけでした。ここで河内に「イイ感じにしてください」と頼んだら,キャラクター1体1体に動きを細かくつけてくれ,すごくよくなったんですよ。
石渡氏:
その河内が太田に詰め寄っていたことがありましたね。イベントシーンを作る際,スケジュールを優先したいから,固定した画面のままでやってほしいという話をしたら,「それでは,これから入ってくる後輩にこの作品を自分が作ったとは言えなくなる」って。そこであればと自由にやってもらったら,すごくよくなったんですよ。
太田氏:
子どもも可愛い動きをしていて,しっかり作ってもらってよかったなと思っています。
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さまざまな意図や願いが込められた「DAMON and BABY」の開発
4Gamer:
いろいろとイレギュラーな開発になったと思いますが,間もなく「DAMON and BABY」は発売を迎えます。現在の心境を聞かせてください。
石渡氏:
今回,一人の旗振り役がビジョンを持ち,自分で手も動かして作っていくインディーのように作らせてもらえましたが,このやり方が正解だったかいまだに分かっていません。
このやり方で迷惑をかけたスタッフもいますし,どこを着地点とすべきかは,今後ノウハウを溜めていかなければならないところだと思っていますね。
4Gamer:
まだまだノウハウを蓄積していく段階ということですね。ここまで話を聞いて,「GUILTY GEAR」シリーズの開発をしていた時代の話も気になってきました。
石渡氏:
「GUILTY GEAR X」や「GUILTY GEAR XX」を作っていた頃はすごくて,ゲームのルールや調整は僕とプログラマーの鈴木くんの2人でやっていたようなものでした。僕がゲーム内容を変えた翌日に鈴木くんが中身をガラッと変えていて,それが気に入らない僕が勝手に直して……ということを繰り返していました。
この手法が正しいかは分かりませんが,少なくともゲームが洗練された理想像に向かっているのは間違いありませんでしたし,料理をちゃんとしていたという実感がありました。
現在は,これに近い環境を実現できないと,インディーゲームには敵わないと考えています。ただ,企業としてはあまりにもリスクが高い方法です。ですので,今回のような取り組みをとおして必要な道具をしっかり用意し,あとはみんながアイデアだけを練り込めばいいという環境を作ろうとしているんです。
4Gamer:
密度が濃いといいますか,石渡さんのいう料理をじっくりやっていたという印象です。
石渡氏:
当時は深夜のファミレスで雑談しながらいろいろなことを決めていき,納得がいかないときは単純に喧嘩してましたね。より沸点の高いほうが勝ってアイデアをとおすんですが,しばらくすると,負けた側の言い分も見えてくるんですよ。「ああ,そういうことか」って。
4Gamer:
そのときは負けた側が相手のやりたいことを理解して,謝っていたのでしょうか。
石渡氏:
頭は下げていなかったです。お互い胸を張っていましたね。とはいえ,これは皆が前に向かう力を持っていた時代のやり方です。現在で当時と同じ熱量でぶつかると,折れてしまったりいなくなってしまったりするケースが多いので,通用しないとは思います。
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太田氏:
あの頃は,開発者がプライベートで一緒にゲームをしていたので,ゲーム観もマッチしていたと思うんです。仕事の関係というより,友人に近い感覚でゲームを作っていた。
石渡氏:
「GUILTY GEAR 2 -OVERTURE-」の頃なんかはそうした感覚がありましたね。昼も夜も,大体みんなで飯を食べて,家に帰っても一緒にゲームで遊ぼうか,なんて感じでした。金曜日はみんなで集まっていましたし。今だとそんなことなくて,皆バラバラに食事にいっていますが。
太田氏:
僕がこの会社に入ったときは「GUILTY GEAR 2 -OVERTURE-」のプロジェクトに配属されたんですが,その輪の中に入れてもらいました。みんなで集まって「Gears of War」を対戦したり,「Fable」をプレイしたりしていましたね。
会社の上司と部下であり,先輩後輩ではあるんですけど,友人に近いかたちで付き合ってゲームを作るのが当時のアークシステムワークスでした。この感覚を知っているので,今回のプロジェクトで石渡がやりたいこともなんとなく理解できました。
石渡氏:
IT大手が「いい仕事をするための条件は,みんなで一緒に飯を食うことだ」ってキャッチを出していて,すごく納得がいきましたね。通常のオフィスだと,やり取りも発注と受諾の内容に限定される感があります。
「なんでその仕事をやらないといけないの? それなら自分を納得させてほしい」といったやりとりもない。だから間違ったこともずっと続いてしまい,どこかでしわ寄せがくる可能性も高くなる。
でも飯の席で気軽に話せるような関係なら,事前に間違いを防げるんじゃないかと思うんです。そもそもそれが叶わなくても,関係が良好なことに越したことはないじゃないですか。
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4Gamer:
「同じ釜の飯を食う」という慣用句もありますが,チームとして一体になるにはお互いが腹の内をさらけ出すのも必要なことなのかもしれませんね。
石渡氏:
当時は不思議な時間に起きていたり,映画をみんなで見に行ったり,会社に泊まって「Diablo」をしていたりしてました(笑)。Xboxのオンライン麻雀をみんなで遊んだり。ボイスチャットもありましたから,くだらない雑談をしながら遊んでましたよ。
太田氏:
いつも楽しかったです。
4Gamer:
1990年代後半から2000年代あたりの開発武勇伝をもっと伺いたいですが,残念ながらお時間のようです。「DAMON and BABY」をどんな人に遊んでほしいですか。
石渡氏:
「DAMON and BABY」は最終的な着地点として,少々高難度なものとなりました。世間でいわれるところの“高難度ゲーム”にするつもりはなかったのですが,それでもだれでも遊びやすいゲームと言い切れないところが正直あります。
とはいえ,その手のジャンルは僕自身が好きなので,本作も芯を捉えたものになっています。このタイプのゲームが好きで,新しい手触りを求めているのであれば,ぜひ一度触っていただけるとうれしいです。
太田氏:
石渡から企画の概要を聞いたとき,子どもと一緒に遊べるようなものになればいいなと思ったんですが,実際にできあがったのはちょっと難しいゲームになっています。発売後もアップデートを重ね,バランス調整やコンテンツの追加,ユーザビリティの向上を目指していきます。最終的にはもう少しカジュアルに,ご両親と子どもが一緒に遊べるようなゲームになればと思っています。
4Gamer:
最後に今後の目標を聞かせてください。
石渡氏:
今回作った調理器具への練度を高めていきます。才能あふれるインディーの方が5年に1度作品を出せるのであれば,我々はそれを2年に1度出せる体制を整えたい。これができて,初めて企業としてインディーに対抗できると考えています。
4Gamer:
今後の活躍も楽しみにしています。本日はありがとうございました。
アークシステムワークスが手がける新たなツインスティックシューターには,新ジャンルへの挑戦という側面に加え,AAAとインディーへと市場が二極化する中での企業としての生存戦略,さらにじっくりとゲームを煮詰める開発体制の構築といった,さまざまな意味合いが込められている。
今回の取り組みがどのような成果として結実するのかは,「DAMON and BABY」単体にとどまらず,今後の作品展開も含めて期待したいところだ。
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