テストレポート
「PlayStation 4」分解レポート。AMDのカスタムAPUを搭載する新世代マシンは,とてもゲーム機らしいゲーム機だった
日本における発売日である2014年2月22日に向けた予習も兼ねて,外観上の特徴や内部構造をレポートしてみたい。
※注意
ゲーム機の分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカーはもちろんのこと,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。
コンパクトでしかも軽い!
驚くほど洗練された初代機
東京ゲームショウ2013に合わせて“写真集”を掲載済みなので,おおよその形状は把握済みという読者も多いだろうが,PS4初代機「CUH-1000A」の外回りを,まずはあらためて確認することにしよう。
もちろんこれは,直線を基調とした筐体デザインが発表されてから半年近く経過し,形状を見慣れてしまったから,形状にあまり目が行かない……というのもあるだろう。ただ,横置き時に275(W)
もっとも,現行モデルのPS3であるCECH-4000と比べると,奥行きは75mm長い。重量も初代PS3の約5kgと比べると圧倒的に軽量化している一方,世代が進んで約2.1kgにまで軽くなっているCECH-4000よりは重いのだが,「初代機がこのサイズでこの重量」というのはインパクトが大きい。
なお,PS4は横置きと縦置きが可能なデザインだが,縦置き時は本体の横幅が短いだけに,別売りの縦置き用スタンド――今回は入手できていない――がないと不安だ。
一方,横置き時は,底面に用意された3か所のゴム足により,そこそこ安定していた。
本体を上下に分断する溝の正面向かって左側にはスロットイン式の光学ドライブがある。電源とメディア取り出しボタンがそれを挟むようなレイアウトだ |
本体向かって右にはUSB 3.0ホストポートが2基。USBポートが用意されるのはここだけである |
ちなみに,電源ボタンとメディア取り出しボタンはタッチセンサー式だ。PS3初代機もタッチセンサー式だったので,それを継承したのだろう。
割とどうでもいい豆知識だが,電源ボタンなど,操作の影響が大きいアイテムを本体中央よりも左側に配置するのは,家電メーカーにおける伝統的デザインルールの1つである。利き手ではないことの多い左手側に配置することで誤操作を減らせるとされており,AV機器は,今日(こんにち)でもそのルールに従っているケースが多い。本当に誤動作がそれで減るのかどうか,統計的なデータが公開されているのを見たことはないのだが,そのルールに縛られていなかったPS3よりも,PS4のほうがAV機器っぽい配置になっているとは言えると思う。
一方,背面を見てみると,全体が排気孔になっており,「一部を潰してインタフェースにしてある」というデザインになっている。向かって上段は左から光角形サウンド出力,HDMI Type A,1000BASE-T LANと,現時点では別売りの「PlayStation Camera」用となるAUX。下段はいわゆるメガネ型コネクタのACケーブル用端子のみが用意されていた。
以上,意外にシンプルとも言える本体はこれくらいにして,付属品にも目を向けてみよう。
DUALSHOCK 3からけっこう変わっている
DUALSHOCK 4
基本的な話を先に済ませておくと,DUALSHOCK 4では,本体中央部分にタッチパッドが用意された。タッチパッドを軽く押し込むとスイッチとしても機能する仕掛けになっているので,「タッチパッド+スイッチ」を積極的に活用するタイトルも,PS4時代では出てくる可能性がありそうだ。
タッチパッドの両サイドには,DUALSHOCK 3における[START][SELECT]ボタンに代わり,[SHARE][OPTIONS]ボタンが新設された。[SHARE]ボタンは,PS4におけるキモの機能でもある,プレイムービーの共有機能を実現するものだ(関連記事)。
また,タッチパッドと[PS]ボタンの間に挟まれている穴のところにはモノラルスピーカーが内蔵されている。ゲームプログラム次第では,何らかの効果音をここから鳴らせるわけである。
……といった外観上の変更点とは別に,DUALSHOCK 4では,新たに3軸ジャイロ&3軸加速度センサーを内蔵してきた。要は,DUALSHOCK 4の姿勢変化をPS4が取得できるわけで,そうした操作もゲームで取り入れられる可能性があるのだろう。
いろいろと機能が追加されている以上,容易に想像できることではあるのだが,DUALSHOCK 4は,DUALSHOCK 3と比べると少し大きくなっている。目で見て分かる最も大きな違いは,グリップが長くなったところだろうか。
その理由として大きそうなのが,横から見たときの「グリップとボタン&スティック面の角度」が,DUALSHOCK 4とDUALSHOCK 3でほとんど変わらないこと。基本デザインを踏襲することで,機能追加に絡んだ本体の大型化による影響が出るのをできる限り抑えてきているのではなかろうか。
重量は約210g。DUALSHOCK 3は約193gなので17gほど重くなった計算だが,正直なところ,持ったときの重量感はほとんど変わっていない印象だ。このことも,筆者があまり違和感を持たなかった理由かもしれない。
触ってみて違いが最も大きいと感じられたのは,左右アナログスティックの傘部分が,従来のキノコ型ではなく,皿のような凹み付きのものになったことと,可動域がDUALSHOCK 3よりも小さくなったこと。指を固定しやすくなり,あまり大きく動かさなくてもよくなったため,DUALSHOCK 4のアナログスティックのほうが素速く操作できる印象を受けた。
また,4個の[△/○/×/□]ボタンが少し小さくなり,やや密集気味の配置になったのと,D-Pad(デジタル方向キー,十字キー)も同様にやや密集気味になっているのも指摘しておく必要がありそうだ。D-Padのほうは密集すると“誤爆”が心配だが,中央部が斜めに切り落とされているため,実際には誤操作することなく高速に操作できそうな雰囲気がある。
[L1/R1]ショルダーボタンはあまり変わりなし,といったところ。[L2/R2]トリガーボタンは指をかけやすい形状にあらためられており,この点は好ましいと感じられた。
残念ながら,北米版PS4のどこを見ても技適マークは付いていなかったので,DUALSHOCK 4がBluetooth接続となる以上,北米版PS4の電源を日本で入れるわけにはいかない。実際にゲームをプレイしたら評価として変わる部分があるかもしれないため,ここまでは現時点でのインプレッションとして理解してもらえれば幸いだ。
なお,DUALSHOCK 3から引き続き,充電は基本的にPS4とのUSB接続になるのだが,接続端子はDUALSHOCK 3のUSB Mini-BからDUALSHOCK 4ではより一般的なUSB Micro-Bに変更された。これはモバイルデバイス全盛という時代に合わせた結果だろう。
しっかりした内部構造で,
相当に完成度が高いPS4
本体向かって左上,光沢仕上げになっているところは,LEDインジケータの埋め込まれたラインに近い側を押すようにしてスライドさせると外れる。ドライブトレイへ簡単にアクセス可能だ。
ストレージデバイスが収められているカートリッジはビス1本で留められているだけなので,簡単に引き出し可能。入手した個体では,HGST製で7mm厚の2.5インチHDD「Travelstar Z5K500」の容量500GBモデルが採用されていた。
Travelstar Z5K500は,接続インタフェースがSerial ATA 3Gbpsで,回転数5400rpm,キャッシュ容量8MBという,ノートPCなどでも使われるような,ごくごく一般的なHDDである。簡単にストレージの交換が可能なので,今後,互換性情報が明らかになってくれば,速度向上を目指してSSDへ換装したり,より大容量のHDDを取り付けたりするゲーマーがすぐ出てくるのではなかろうか。
プラスビスを1本外すだけで,2.5インチストレージドライブは簡単に引き出せる |
出てきたのはTravelstar Z5K500(HTS5450A7E380,容量500GB)だった |
さて,ここからが本格的な分解である。分解にあたってはまず,背面の合計4か所に貼られているシールを剥がしたうえで,隠しネジを抜く必要がある。4枚あるシールのうち,中央の2枚には「剥がすと保証が無効になる」という,割とよくある警告文が書かれており,実際,剥がすと「VOID」(無効)マークが残る仕掛けになっていた。分解するかしないかではなく,シールを剥がした時点で保証は切れるので,遊び半分で「分解できたりしないかなー?」などと考えるのはやめたほうがよさそうだ。
このシールが剥がれたり傷ついたりしたら保証は無効になりますよというシール。剥がした時点で保証は無効になる |
中央2か所の“VOIDシール”を剥がしたところ。ネジはヘックスローブ型,俗にいうトルクスネジだった |
背面4か所のネジを外すと,天板と底板のパネルを外せる。ちょうど魚の開きのように,3枚に下ろせる構造と考えておけばいいだろう。
その隣,写真では奥に見えるのがアクティブ冷却機構。本体背面部は電源ユニットだ。
その電源ユニット,カバー表面には「ADP-240AR」という型番とともに,「100-240V〜 2.5A 50/60Hz」という仕様も刻まれている。型番と電流容量からするに,おそらくは240Wの容量を持つ電源ではなかろうか。
供給電圧は+4.7Vと+12Vの2種類で,PC用の電源ユニットよりシンプル。4.7Vというのが少し半端だが,ロジック用の+3.3Vなどは,マザーボード上のレギュレータで生成されているのだろう。
ちなみに,BDドライブユニットの裏側に基板らしきものは見えなかったので,底板を外したときに見えていた小さな基板がBDドライブの制御を行っているものと推測される。
ここで,BDドライブの制御基板を先に確認しておこう。基板を見ると,表と裏に1基ずつ,やや大きめのLSIが載っているのを確認できる。
型番が「R8」から始まっているので,32bitマイクロコントローラであるSHファミリーか,もしくは16bitマイクロコントローラであるR8Cファミリーのどちらかと思われ,いずれにせよ,マイクロコントローラなのは間違いなさそうだ。
「RENESAS」だけではなく「SCEI」の文字もあるのは興味深いところで,「ゲーム機に必要な光学メディアのセキュリティに関する機能」をルネサスとソニー・コンピュータエンタテインメントが共同で実装したから……という可能性はあり得る話だろう。
ちょっと面白いのは,その隣にある,「STM8EB 9H」と記されたチップとその周辺だ。これはSTMicroelectronicsの8bitマイクロコントローラである「STM8」ファミリーに属するチップで,その近くには,静電容量近接センサーと思われる部品が取り付けられていた。このセンサーに手などが近づくとSTM8がそれを検出する仕掛けなので,タッチ式のディスク取り出しボタンは,STM8とセンサーで実装されているというわけだ。
底面からアクセスできるのは以上である。続いては天面側を開けていく。
その内部はシールドというか,マザーボードを保持する構造物と述べたほうがいいかもしれないが,ともあれ鉄板で覆われていた。
ちなみに天板の内側では,透明なプラスチック製の板が不自然に曲がっているように見えるが,これは壊したわけではない(※筆者も壊したのかと一瞬焦ったが)。このプラスチック板は光を通すパネルになっており,この曲がっている部分から,マザーボードに実装されたLEDの光を,ライン上のインジケータ部へと導く仕掛けになっているのである。
マザーボード全体を覆うシールド板の上には菱形の金属板も見えるが,これは,ヒートシンクをAPUに押さえつけるためのバネとして機能するものだ。この金属板を外して,さらにシールド板そのものを固定するビスも外すと,めでたくPS4のマザーボードを拝めるようになる。
マザーボードは,2.5インチストレージのための矩形を除き,本体のほぼ全体を占めるほど大きな基板になっている。サイズは実測で250×261mm。ストレージ部分を除けば,PC用のMicroATX(※標準は244×244mm)より大きい。
この時点でビスはすべて外れているため,ファンが接続された小さな電源コネクタを外せば,マザーボードは筐体から取り出せる。シリコングリスや熱伝導用シリコンシートが見えることからも分かるように,マザーボード下にある薄手の金属板は,シールドだけでなく,ヒートシンクも兼ねているようだ。
マザーボードの詳細は後述するとして,マザーボードの下にあったシールド板を筐体から外してみると,ブロワーファンによって生じるエアフローの先に,実測98(W)×55(D)×25(H)mmという,なかなか大きめのヒートシンクがあった。1本のヒートパイプが走るアルミ製のヒートシンクは,フィンのピッチが広い部分と狭い部分があるので,2つのヒートシンクをヒートパイプでくっつけたようにも見える。
ヒートシンク本体。土台はアルミ製のヒートスプレッダで,そのスプレッダとフィンをヒートパイプが結ぶ構造になっている。ヒートパイプは複雑な形状だが,見る限り,1本だろう |
正面から見ると段差があり,背が低い部分はフィンのピッチが狭くなっている。取り付けるスペースに形状を合わせる必要から,フィンが小さくなる部分では枚数を増やして放熱量を確保しているようだ |
分解は以上だが,初代機にしては内部構造がよく練られていてシンプルだなというのが,ここまでの作業を終えての感想だ。初代機というと,どこか作りが無理なところが見られたり,部品点数が多かったりということがあるものだが,PS4は部品点数が少なく,構造に無理なところがあまり見られない。気になる放熱システムに問題はなさそうで,「初代機であること」の不安をあまり感じずに使えそうなゲーム機といえるのではなかろうか。
AMDのロゴも刻印もない代わりに複数のSCEIロゴ入りチップが搭載されたPS4マザーボード
ここからは,取り出したマザーボードを見ていこう。かなり巨大な基板なので,セクションごとに分けてチェックしたい。
チップ上には「DG1000FGF84HT」「WB48280H30063」という刻印もあるが,この2つの意味するところは分からない。もしかしたら,AMD側の型番や製造番号が含まれているのかもしれない。
「DIFFUSED IN TAIWAN」という刻印からは,当初より伝えられていたとおり,このAPUが台湾の大手ファウンドリ(受託製造業者)であるTSMCで製造されたことも窺える。パッケージングはマレーシアで行われたようだ。
気になるダイサイズは実測約19×19mmで,パッケージサイズは同40×40mmだった。28nmプロセス技術を用いて製造されているとのことなので,トランジスタ数はおおむね35億前後ではなかろうか。
なお,APUは「Jaguar」マイクロアーキテクチャのCPUコアを8基と,「Graphics Core Next」アーキテクチャのシェーダプロセッサを1152基集積することが明らかになっている一方(関連記事),設計にソニー・コンピュータエンタテインメントがかなり関与しており,内部構造は従来のAMD製APUと異なる部分があるともされている。
1枚あたりの容量は512MBなので,8枚の合計は4GB。裏のパターン面にも8枚あるため,合計容量はスペックどおりの8GBとなる。
部品面でAPUの次に目を引くのは,あたかも「APUに接続されたサウスブリッジ」に見える「SCEI」ロゴ入りLSIと,その周辺である。
Marvell Technology Group製の1000BASE-T LANコントローラ,88EC060-NN82 |
無線LANモジュール。「CO-D73106W」というのが型番だと思われるが,詳細は分からない |
K4B2G1646E-BCK0がCXD90025Gのすぐ近くにある |
1330KM420。ソニー・コンピュータエンタテインメントのカスタムLSIだが,サウンドやビデオのハードウェアエンコーダかもしれない |
つまり,CXD90025Gはプロセッサ的な機能を持っていると推測できる。確かにPS4ではネットワーク処理やサウンド関連,さらには前述のSHARE機能といったところを,APUから別のプロセッサへとオフロードできるとされているので,CXD90025Gはオフロード用のサブプロセッサと見ていい。また,1000BASE-T LANだけでなく,Serial ATAポートに向けてもCXD90025Gからパターンが伸びていることから見て,インテリジェントなI/Oサブシステムとしても機能していると推測できる。
その近傍にあるQFP型の「SCEI」刻印入りLSI「1330KM420」は,サウンドや動画のハードウェアエンコードを行うものではないかと,筆者は考えている。
Macronixのロゴ「MXIC」が印刷されたMX25L25635FMI-10G。容量32MBのシリアルフラッシュメモリである |
富士通製のMB86C311B |
CXD90025GからはSerieal ATAインタフェース付近にもパターンが伸びており,Serial ATAポートの根元に,富士通のロゴが記された「MB86C311B」というLSIがあったことも述べておきたい。データシートによれば,MB86C311BはUSB 3.0−SATAブリッジ。つまり,PS4のSerial ATAはUSB 3.0経由で接続されているわけである。
USB 3.0は最大5Gbpsの帯域を持つものの,少なくともPCにおいてはネイティブのSerial ATA 3Gbpsより性能が出ないことが多いので,PS4のストレージにも,ネイティブのSerial ATA 3Gbpsほどの性能は期待できないかもしれない。
ただ,写真でLSIのすぐ上には25MHzの水晶発振子が見えるので,IDTが得意にしているADC(Analog/Digital Converter)やDAC(Digital/Analog Converter),あるいはそれらを統合したサウンドCODECという可能性はあると思う。
サブプロセッサ周辺は以上のような感じだが,部品面では,電源部も大きなスペースを占めている。
ぱっと見で,大型のインダクタが4個,それより一回り小さなインダクタが2個あるので,4+2フェーズという理解で大丈夫だろう。インダクタの根元に並んでいるのは,DrMOSを集積したVishay Siliconix製パワーIC「SiC780A」だ。
3585Bでパターン面に視点を移したところで,パターン面も見ておこう。こちらは部品点数が少ないので,主要なものに絞って取り上げてみたい。
Serial ATAポート付近に2つのLSIが取り付けられているのも目を引くが,「53123A」と記されたチップは,Texas Instruments(以下,TI)のロゴがあるので,ステップダウンコントローラ「TPS53123」かもしれない。であれば電源関係であり,Serial ATAの電源を作っているということになるが,正直,周辺のパーツを見ると違う気配もあるので,保留とさせてもらえればと思う。
一方,Macronix International製の「25L1006E」は,容量128KBのシリアルフラッシュメモリだ。部品面にあった富士通製LSI,MB88C311Bは,ファームウェア&環境設定用のシリアルフラッシュメモリインタフェースを持っているので,ファームウェア用という理解でよさそうである。
パターン面には,HDMIポートコネクタ付近に,シールドで覆われたところもあった。このシールドはGNDパターンにガッチリと固定されているので取り外せなかったが,下にHDMI関連のチップがあることはまず間違いない。おそらくはHDMIトランスミッタだろう。
PS4はx86を搭載したPCなのか?
長々とPS4を見てきたが謎も残った。メインのファームウェアが格納されている場所が分からないのだ。
ストレージが換装可能である以上,どこかにメインのファームウェアがあるはずである。部品面とパターン面にシリアルフラッシュメモリがあるものの,どちらも小容量なので,メインのファームウェアが収められているとは到底思えない。
これは推測だが,未フォーマットのストレージを検出すると,サブプロセッサのファームウェアが,OSを含むメインのファームウェアをネットワーク経由でダウンロードし,新しいストレージにインストールする仕掛けになっている……という可能性はあると思う。
さて,すでに触れたようにPS4のマザーボードはとても巨大だが,LSIの数はそれほど多くはなく,パターンは,余裕をもって引き回されている印象を受ける。
- APUの発熱が大きい
- 筐体は排熱設計のための十分な大きさが必要
- なので大型の基板を搭載できる
という理由で,無理な高密度化はしなかったということなのかもしれない。将来,採用されるプロセス技術が進み,APUの発熱量が小さくなれば,より小型なPS4が登場する余地は大いにありそうだ。数年後には,「あれ,初代PS4ってこんなに大きかった?」と言われるようになっているかもしれない。
ところで,PS4ではx86アーキテクチャのAPUが採用されることから,「ほとんどPC」という理解をしている人も多いのではないかと思う。しかし,基板を見ると,日本のゲーム機メーカーらしい部分がある。それは,サブプロセッサの存在だ。
歴代のPlayStationでは,一部の処理を,メインプロセッサとは別のチップやプロセッサにオフロードさせるアーキテクチャが伝統的にとられてきたので,PS4のサブプロセッサも,シリーズ伝統のアーキテクチャを受け継いだものといえる。さらに言えば,かつてのアーケードゲーム機でも,サウンドなどをサブのプロセッサに担当させる設計はよく採用されていたので,サブプロセッサは“ゲーム屋”のお家芸みたいなものだったりもする。そういう意味でPS4はゲーム機らしいゲーム機なのである。
それにそもそもの話,「ほとんどPCと呼ぶときの『PC』とは何なのか」という,別の疑問もある。10〜20年前なら「IBM PC/ATと互換性を持つx86プロセッサ搭載のプラットフォーム」と断言できたが,今では事情が異なるからだ。IBM PC/AT時代のデバイスはレガシーと名指しされて切り捨てられ,レガシーBIOSもUEFIベースのファームウェアに切り替わっている。
PCの世界では,IBM PC/ATとの互換性,具体的にいえばI/Oマップやメモリマップといったものの互換性が,すでに意味をなさなくなった。UEFI経由でOSがプラットフォームの構成を把握できるため,UEFIブートに対応し,搭載される周辺装置用のデバイスドライバさえあれば,PC用のOSが原理的には起動できてしまう。
つまり今日(こんにち)のPCとは,UEFIブートのx86プラットフォームである,ということになる。仮にPS4がUEFIブートならPCのようなものといえるが,まず間違いなく違うはず。ゆえに,PS4はx86ベースのAPUを搭載しているものの,PCとは異なるアーキテクチャのプラットフォームだというのが筆者の見方だが,どうだろうか。
4GamerのPS4特設ページ
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアのPS4公式情報ページ
※2013年11月26日14:50頃追記
BD7763EFV,そして,初出時にMB88C311Bと誤って表記していたMB86C311Bについて,読者からいただいた指摘を踏まえ,本文をアップデートしました。
- 関連タイトル:
PS4本体
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