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メディア環境の変化がゲーム産業に及ぼした影響とその対応策は? 韓国ゲーム産業の新年討論会で語られる
下記の記事は,GAMEVU(→リンク)に掲載された記事を,許可を得て翻訳したものです。可能な限りオリジナルのまま翻訳することに注力していますが,一部日本の読者の理解を深めるために,注釈の追記や,本文や画面写真の追加・変更をしている箇所もあります。(→元記事)
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※韓国ゲーム法・政策学会(KGPA)は,ゲーム法学分野の研究を促進し,ゲーム法学分野における学問と産業の総合交流を通じてゲーム産業の展に貢献する目的で設立した団体。
※韓国ゲーム自律政策機構(GSOK)は,ゲーム産業の振興および国民の健全なゲーム文化確立のために,ゲーム関連で発生する諸事項を自律的に解決し,ゲーム利用者により健康なゲーム環境を提供する目的で,産学連携で設立した団体(外部サイト)
韓国のNPO,文化連帯※の執行委員を務めるイ・ジョンイム博士は,この討論会で「2025年ゲームプレイ率の減少がゲーム産業と文化に及ぼす影響」をテーマに発表を行った。
※文化連帯(Cultural Action)は,文化・芸術の領域で市民の権利向上と社会参加,そして文化産業の改善を目指す市民団体(外部サイト)
イ博士はまず,ゲーム産業の危機を示す兆候が顕著だと述べた。KOCCAの「2025年ゲーム利用者実態調査」によると,調査参加者の中で「最近1年間ゲームをプレイしたことがある」という質問に「プレイしたことがある」と答えた参加者の比率は,2020年の70.5%から2025年50.2%まで減少。
その原因を分析すると,単なる「ゲームに対する疲労感」ではなく,根本的なメディア環境の変化にあるとのこと。
イ博士は「5年間で利用者環境が劇的に変化した」と述べ,ゲーム産業が新たなパラダイムに直面していることを強調した。かつてはテレビがメディアの中心だったが,現在はメディア自体が我々の生活環境そのものになっている。
さらに博士は,「人々がスクリーンタイムを意識し,確認し始めたこと自体が,メディアが環境になったという証左だ」と説明する。
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スマートフォン,タブレット,PCなど多様なデバイスが大気のように我々を取り囲み,各デバイスでは無数のコンテンツが競合している。今やゲーマーが選択すべきものはゲームだけではない。動画共有サービス,動画配信サービス,SNS,そして最近では,生成AIまでがゲームの時間を侵食してきているのだ。
特に注目すべき現象は,生成AIの大衆化だ。韓国における生成AIの利用率は,2025年上半期の25.9%から下半期には30.7%へ上昇した。「ジブリ風画像生成」ブームがその一例である。
AIで生成したキャラクタープロフィール写真がSNSで流行し,人々はゲーム以外からも創作と体験の楽しさを感じるようになった。かつてゲームが提供できる体験の領域に,ゲーム以外の選択肢が登場したのだ。
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ゲームをプレイしない理由についてのアンケート結果も変化を示している。「動画配信サービスの動画視聴」と「屋外活動」が大きく増加した。
イ博士は「新型コロナウイルス感染症の世界的流行以前は,利用者と生産者間のフィードバックが予測可能な規則の下で行われていたが,今やそうした規則自体が崩れた」と指摘する。
過去にゲームが提供していた,ほぼ独歩的だった「遊びと体験」は,今ではウェブトゥーンやSNS,AIなどとの相互作用でも類似の満足感を得られるようになったというわけだ。
興味深いのは,開発者と利用者間の認識の違いだ。生成AIがゲーム開発に流入し,開発者達は雇用代替への懸念や倫理的問題について深い悩みを抱えている。
しかし利用者側は,AIが使用されたゲームに対してより肯定的な評価をする傾向を示している。イ博士は「これは技術に対する大衆の錯覚と信念が混ざっているのではないか」と疑問を呈した。
インディーゲーム市場も葛藤の中心にある。The Game Awards 2025で「Clair Obscur: Expedition 33」(PC / PS5 / Xbox Series X|S)が9部門を受賞し,ネクソンの「The First Descendant」(PC / PS5 / Xbox Series X|S)も革新性を認められ,96万人の同時接続数を記録した。
しかしこの過程で,AI使用の有無について議論が巻き起こった。イ博士は「The Indie Game AwardsではAI技術を使用したゲームの受賞を除外する規定を新設した。これは純粋創作を目指すインディーゲームの哲学と,現実の技術導入との間の緊張を示している」と分析している。
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KOCCAの「2025年ゲーム利用者実態調査」によると,ゲームユーザーがゲームをプレイする理由として一番多かったのは「ストレス解消」で,例年と同じ結果だった。プラットフォーム別でも,各ゲームのファンは変わらぬロイヤリティを見せている。
問題は新規ユーザーだ。イ博士は「既存ユーザーと新規ユーザーは,ゲームを楽しむ方式と技術に対する感覚が異なる」とし,「利用者の技術感受性と体験スピード感が転換期を迎えた」と説明した。
イ博士が提示する今後の対応策は3つある。第一に,AI技術に対する社会的合意の形成だ。現在は,肯定か否定という二分法的議論に留まっているが,二分法的議論に留まっているが,技術の可能性とリスクを同時に考慮すべきだという。
第二に,インディーゲーム生態系の強化である。メインストリームに入らないインディー領域が強固であってこそ,ゲーム産業全体が健全になれるという論理だ。
第三に,新規プレイヤーの獲得戦略だ。既存ユーザーの維持も重要だが,変化したメディア環境におけるゲームの独自の価値を再定義すべきだという。
結局のところ,ゲーム利用時間の減少はゲーム産業だけの問題ではない。動画配信サービスが映画やドラマ市場を揺さぶっているように,生成AIとSNSがゲームの座を奪っている。
イ博士は「今後ゲーム産業が乗り越えるべき課題は,市場シェアの拡大ではなく,変化した環境におけるゲームならではの体験を再定義することだ」と結論づけた。
(著者:パク・サンボム)
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