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[gamescom]物語のように面白い? ゲーム開発者が振り返る「カジュアルゲームの歴史」とは
そのGDC Europe初日である19日には,「The Story of Casual Games」(カジュアルゲームの物語)という講演が行われた。講演者は,GameDuellというデベロッパのMichael Kalkowski氏。氏が所属するGameDuellはドイツのベルリンにあり,ソーシャルゲームのポータルサイトを運営/開発している企業である。
Kalkowski氏による講演のテーマは,「カジュアルゲームの歴史を振り返る」というもの。いくつも企業やゲームタイトル,プラットフォームが登場しては栄枯盛衰を繰り広げるその様を,まるで物語のようだとKalkowski氏は述べる。同氏による講演の概要をレポートしよう。
Facebookで火が付いたカジュアルゲームの広がり
しかし転落もまた早かった
Kalkowski氏が最初に紹介したのは,カジュアルゲームの売上の推移だ。1980年代にピークを迎えたのちに急激に落ち込み,その後はほぼ横ばいだったが,2000年を過ぎたあたりでものすごい勢いで成長し,現在に至るというグラフを示した。
さらにKalkowski氏は,カジュアルゲームを,アーケード,コンシューマ,オンライン,ソーシャル,モバイルの5つプラットフォームに分類。Kalkowski氏が提示したグラフでは,新たなプラットフォームが誕生するたびにカジュアルゲームの売上が伸びていることが示されている。
当時,Facebookで提供されていたゲームのDAU(Daily Active Users)は,シミュレーションが全体の7割を占め,2009年にサービスが始まったZyngaの「FarmVille」がそれを牽引したという。
FarmVilleは一時,DAUが3000万人を超え,その天下は長期にわたって続くのかと思われていたが,2010年には下降線をたどりはじめ,2012年にはその規模が絶頂時の6分の1近くになってしまったという。後継作品である「FarmVille 2」が2013年に提供されたものの,前作には遠く及ばない状況だ。
FarmVilleに続く形でヒットしたのが「CityVille」だが,FarmVilleほどの盛り上がりはみられなかった。また,CityVilleのサービス開始時期は,FarmVilleのDAUが急激に落ち始めた時期と重なっているので,乗り換えたユーザーがかなりいることが推測できると,Kalkowski氏は指摘している。
しかし,同社は2013年6月に18%のレイオフを発表。わずか数年で頂点から転げ落ちた。
カジュアルゲームの激動はしばらく続く
次を制するプラットフォームは?
Facebookゲームに取って代わる勢力となったのはモバイルゲームだ。2007年に「iPhone」,2010年に「Nexus One」と「iPad」が発売されるなど,プラットフォームの拡大にともなって,カジュアルゲームの盟主の座をソーシャルから奪ったと,Kalkowski氏は述べる。
新プラットフォームの登場に合わせて,カジュアルゲームの市場規模は拡大し続けている。Kalkowski氏はその市場規模について,「1980年代のアーケードゲームを『10』とすると,現在のモバイルゲームは『35万』になっている」と表現し,いかに巨大な市場となっているのかを示した。
現在は「LINEゲーム」などに代表される,インスタントメッセンジャーと連動したゲームがはやり始めている。ではこれが第6のプラットフォームになるのかというと,Kalkowski氏はそうは考えていないと述べる。ただ,その根拠は示されなかった。
Kalkowski氏の予想は楽観的なものであり,氏もそれを認めている。そのうえで,「未来のことは誰にも分からないので,ものすごい勢いで市場が急速に縮むこともありえるが,いずれにしろカジュアルゲームの歴史は,これからも面白いものになるだろう」と述べて,Kalkowski氏は講演を締めくくった。いずれにしても,カジュアルゲームを取り巻く激動の物語は,当分は終わりそうもなく,こちらもゲーマーを楽しませてくれそうだ。
GDC Europe 2013 公式サイト
gamescom 2013公式サイト
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