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PCをリモコンで起動できる拡張カード「ES01-PCIE」テストレポート。いろいろな意味で力技のデバイスだが謳い文句に偽りなし
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印刷2015/11/27 00:00

テストレポート

PCをリモコンで起動できる拡張カード「ES01-PCIE」テストレポート。いろいろな意味で力技のデバイスだが謳い文句に偽りなし

ES01-PCIE
メーカー:SilverStone Technology
問い合わせ先:問い合わせページ
実勢価格:4000円前後(※2015年11月27日現在)
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 拡張性を重視したデスクトップタイプの自作PCやBTO PCは,グラフィックスカードやストレージを搭載したり交換したりするだけでなく,ビデオキャプチャカードやLANカード,RAIDカードといったさまざまな機器を内蔵できるのが利点であり,楽しみであるといえよう。だが,そんな自作PC向けにはときおり,「なぜこんなものを……」と言いたくなるような不可思議なデバイスが登場することがあり,しかもそれが,意外に使えるデバイスとして静かな人気を呼んだり,イロモノとしてネタにされたりする。
 今回は,どう考えてもイロモノに分類されそうな,SilverStone Technology製の拡張カード「ES01-PCIE」をチェックしてみたい。


夢が詰まったパッケージ。中身は超シンプルなカード1枚


 まずは製品ボックスを見てみよう,製品ボックス表面には,「2.4GHz wireless computer power and reset remote switch」なる文字が踊っており,小さなリモコンを左手で操作している写真,右下には拡張カードの写真が小さく掲載されている。つまり,2.4GHz帯の電波を使用して,リモコンでPCの電源オンやリセットを実行できるものらしい。
 「なるほど,有線LAN経由でPCを遠隔起動する『Wake on LAN』を,拡張カードを使ってPC 1台で実現するものかな」と筆者は考えたのだが,製品ボックスの裏面を見ても,LAN関連の仕様は書かれていないため,Wake On Lan的なスイッチではないようだ……。これはいったい?

ES01-PCIEの製品ボックス
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製品ボックスの中身。マニュアルはともかく,リモコンだけはなくさないようにしたい
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 製品ボックスを開けると,何本かのケーブルがつながった,とても小さなカードが出てくる。カード自体はPCI Express(以下,PCIe) x1接続で,通常サイズのブラケットにネジ止めされていた。
 カード以外の同梱物にも言及しておくと,Low Profile筐体で使うときの交換用ブラケットとリモコン。薄いマニュアルがあるだけ。リモコンは,2.4GHz帯の電波でカードに信号を送るだけのもので,ボタン類も電源ボタンとリセットボタンしかないというシンプルさだ。

 さて。ES01-PCIEから伸びるケーブルだが,その先は,自作PCユーザーにはお馴染みの,マザーボード上の電源ピンやリセットピンにつなぐ端子となっており,ここまでくると,動作原理を把握できた人も多いだろう。そう,カードから伸びたケーブルをマザーボードの電源ピンとリセットピンに接続した状態でリモコンのボタンを押すと,カード側がリモコンからの信号を受信して電源を入れたり,リセットしたりできるという,極めて単純な仕組みとなっているわけだ。

小さなカード本体(左)。SilverStoneロゴの上にあるクネクネと曲がった線のところがアンテナのようだ。カードの右側にケーブルがつながっており,その先端は,自作PCユーザーなら見慣れている,面倒なあの端子になっていた(右)。オスプラグとメスプラグに分かれているのは,オスプラグ側にPCケース側の電源ケーブルおよびリセットケーブルをつなぐため
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 リモコンは小さなもので,実測したサイズは30(W)×50(D)×10(H)mmしかない。表面に電源ボタンとリセットボタンがあり,電源ボタンの右横には,小さな孔が開いている。これはリモコンの基板上に取り付けられたLEDライト用の孔だった。

付属リモコンの表側(左)と裏側(右)。表側に電源ボタンとリセットボタンがあるだけだ。なお,裏には技術基準適合証明(いわゆる技適)を受けたことを示すマークも見える
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電源ボタンを押すと右横のLEDが赤く点灯して,押下できたことが分かる(左)。ちなみに,リモコンの電源は,ボタン型電池の「CR2025」(右)
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 ES01-PCIEの機能はこれだけ。まさしく,たまに出てくる不思議周辺機器であり,力技の極みだ。
 リモコンで電源を入れられるというのは,PC本体が手の届きにくいところに置かれているような環境――置く場所の都合で手を伸ばしにくいとか,ソファから離れたテレビの近くに置いてあるとか――であれば実用的である。Windowsを自動ログオンに設定したうえで,スタートアップをカスタマイズしてログオン後に「Steam」が起動するようにしておけば,ゲームをさっとプレイできる環境を構築できるだろう。もちろん,日本の家事情からすると,PCまで行って電源ボタンを押したほうが速そうな可能性もある。
 そこで,筆者にこれを送ってきた編集部員に問い合わせてみたところ……。

「COMPUTEX TAIPEI 2015で展示をしていて,あまりに面白かったから『すごくいいですよ』と褒めたら,最近になって届いたんだ……届いたんだよ……!!」

 という回答を得た。どうしてこれを日本で発売したのだろうかと思っていたのだが,原因を作った張本人がすぐ近くにいたわけだ。


取り付け時はケーブルの長さに注意


 それでは,PCにES01-PCIEを取り付けて,実際に使ってみよう。
 とはいえ,難しいことは何もなく,空いているPCIe x1スロットに差すだけ。あとは,マザーボード側の電源ピンとリセットピンにカード側のメスプラグをそれぞれ差し込み,オスプラグ側にはPCケースからのケーブルを差すだけで準備は終わりだ。PCIeからは電源を確保しているだけのようで,ドライバソフトなどは一切不要である。

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ケーブルの長さは実測で約31cm。取り付けるPCの内部構成によっては,長さが足らないこともあり得る
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テストに使用したMSI製マザーボードの970 GAMING。CPUに近いPCIe x1スロットにES01-PCIEを装着すると,グラフィックスカードの上にケーブルを通そうとした場合,右下のピンにケーブルが届かない
 なお,ES01-PCIEのケーブルは,実測で長さ約31cmなので,フルタワーのPCケースとATXマザーボードの組み合わせにも対応でき,背面配線でケース内をスッキリさせたい人にも適している……と言いたいところだが,装着するPCIeスロットとグラフィックスカードのサイズや位置関係によっては,ケーブルが届かないこともありそうだ。
 今回,筆者は,MSI製のSocket AM3+対応マザーボード「970 GAMING」と,「Radeon R9 280X」を採用するGIGA-BYTE TECHNOLOGY製グラフィックスカード「GV-R928XWF3-3GD」を使ったデスクトップPCでテストした。ところが,CPUに一番近いPCIe x1スロット(PCI_E1)スロットからでは,グラフィックスカードの上にケーブルを通そうとした場合,ケーブルがピンまで届かないという問題に直面したのだ。

 グラフィックスカードの下を通せば,多少の余裕を残して配線可能だったが,ケーブルが余裕をもって届くかどうか,ケーブルマネージメントがやりやすいかどうかは,どうしてもPC内部の構成に依存する。無難な配線法は,なるべく下のPCIeスロットを使用することだろう。とくに,グラフィックスカードを複数枚装着したSLIやCrossFire環境の場合は,ケーブル長の余裕を考えると,そうしたほうが問題になりにくいはずだ。
 いずれにしても。ES01-PCIEの導入を検討している人は,自分のPC環境で使えるかどうかをあらかじめ確認したほうがいい。

カードを取り付けてみたところ(左)。ケーブルの長さに制約があるので,PCIe x16スロットに取り付けているが,取り付け自体に特筆すべき点はない。右はケーブルをマザーボード側のピンヘッダと接続したところ。余談ながら,このマザーボードで何かをテストするときは,ドライバーでピンをショートさせて電源を入れていたので,ES01-PCIEは意外に便利かもしれないと感じた
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 リモコンの操作は,単にボタンを押すだけ。工場出荷時点で,リモコンとカードはペアリングされているが,もし,電源ボタンを押しても反応がないときは,電源ボタンとリセットボタンを同時押しすることでカードと再ペアリングできる。


ディスプレイとPCを離して設置している環境向けか


 それでは実際にES01-PCIEを使ってみよう。PCが起動可能な状態で,リモコンの電源ボタンを押すと,基板上の赤色LEDが点灯して,PCの電源がオンになった。OSが起動したあとは,PCケース側の電源ボタンと同じように振る舞う。リモコンの電源ボタンを長押しすると,電源が強制的にオフになる操作にも対応していた。

電源ボタンを押すと,カード上の赤色LEDが(左),リセットボタンを押すと青色LEDが点灯する(右)
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 リモコンによる操作が可能な距離は,見通しのいい状態で「20m」とある。当然ながら,障害物や遮蔽物がある場合は,電波が減衰するのでこのとおりにはいかないだろうが,一般的な日本の家屋や集合住宅であれば,10m程度の距離なら問題なくワイヤレスで操作できるだろう。筆者は,直線距離で7mほど離れた浴室から,電源をオンにできることを確認している。

 少し気になるのは,2.4GHzという周波数帯のどのあたりを使用しているか,記述が見当たらないことだ。2.4GHz帯といえば,無線LANやBluetoothデバイス,ワイヤレスタイプのマウスやキーボードで混雑した周波数帯であり,他の機器による通信に悪影響を与えないものか,不安になる人もいるだろう。
 筆者が実験したところ,2.4GHz帯でスマートフォンを4台とタブレットを3台,ノートPCを1台,無線LANルーターに接続した状況でも,ES01-PCIEと各デバイスのどちらも,問題なく動作していた。基本的に,ボタンを押した瞬間だけ電波を発信すればいい機器なので,スマートフォン5台で同時にストリーミングしてみるといった特殊な状況でもない限り,通信障害の心配はしなくてよさそうだ。


 そろそろまとめに入ろう。
 ES01-PCIEはどういう場面で役立つかを考えると,先述のとおり,室内レイアウトの都合で電源ボタンを押しにくい配置になっているゲームPCとか,もっと素直に,リビングにあって,ソファからの距離が遠いところにあるゲームPCの電源オン/スリープ解除用として,ちょうどいいのではないだろうか。最近のマザーボードでは,オンボードで電源スイッチを備えている製品も珍しくはないが,電源スイッチのないマザーボードの場合は,組み立て途中のPC起動用としても利用できる。あるいは,キーボードやマウスを接続していない状態で,部屋の片隅に設置しているPCサーバーの電源オン/スリープ解除といった用途にも,リモコンはかなりグッドな存在になりそうだ。

 イロモノっぽいデバイスではあるのは否定できないが,実用的な面も十分にある。筆者の場合,最近は冷却効率を高めるために油没/液没させた自作PCの構想を練っているので,それの電源スイッチ用に使えるかなとも考えている。
 変わり物好きの自作PCユーザー専用ともいえる製品だが,実勢価格は4000円前後とお手頃なので,本稿を読んで「面白そうだ」と思ったのなら,保護しておくといいだろう。

ES01-PCIE 製品情報ページ

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