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[COMPUTEX]ハイエンドゲーム環境高速化の最終兵器!? X299チップセットのPCIeレーンをごっそり使うストレージ技術「VROC」とは何か
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印刷2017/06/02 00:00

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[COMPUTEX]ハイエンドゲーム環境高速化の最終兵器!? X299チップセットのPCIeレーンをごっそり使うストレージ技術「VROC」とは何か

 COMPUTEX TAIPEI 2017では,開発コードネーム「Basin Falls」と呼ばれてきた「Intel X299」(以下,X299)プラットフォームが登場したが,X299チップセット搭載マザーボードの一定割合がサポートしており,PCシステムのストレージ性能を大きく左右しそうな技術に,「Intel VROC」(以下,VROC)というものがある。

VROCの概要。実のところ,このスライドにだいたいのことは書いてあるのだが,それを説明しましょうというのが本稿の主旨である
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 VROCは「Virtual RAID On CPU」の略で,その名のとおり,CPU上で構成する仮想RAID技術だ。
 そもそもの話をしておくと,PCI Express(=NVM Express,以下 NVMe)接続型SSDには,CPU側のPCI Expressレーンと直接接続してRAIDアレイ化すると,UEFI(UEFI BIOS)から認識されなくなり,結果としてOSのブートドライブとしては利用できなくなるという問題があった。

 それに対してVROCであれば,バージョン5.x以降のRSTe(Intel Rapid Storage enterprise)ドライバから「OSのブートが可能なRAIDアレイ」を構築できるようになる。PCI Express Gen.3 x4接続のM.2スロットを2基以上持つX299マザーボードなら,対応SSDを複数枚用意して,あとはマザーボードのUEFIから設定するだけで,VROCを利用できるわけである。

X299世代で,マザーボードメーカーは,NVMe接続型SSDの複数枚利用を前提とした冷却設計を行っていることが多い。写真は2枚のSSDに対するパッシブクーラー「M.2 SHIELD FROZR」を採用するMSI製マザーボードの例
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 このとき,とくに注意すべきは2点で,1つは,現時点でVROCを利用できるのはIntel製SSDのみだということだ。ASUSTeK Computer(以下,ASUS)は「サードパーティ製SSDはサポートされない」と言い切っている。現時点でも,NVMe接続型SSDをCPUと直結させると,製品固有の問題が生じやすいということはよく知られているので,ブート時に必要なNVMeデバイスの初期化など,何らかの都合で,SSDを幅広くサポートするのは(Intel側の)手間やコストがかかるということなのかもしれない。

 もう1つは,RAID 0アレイの構築は無料ながら,RAID 1アレイを組みたいなら「Standard Key」,RAID 1もしくはRAID 5アレイを組みたいなら「Premium Key」というハードウェアキーを購入し,マザーボード上に取り付ける必要があるということだ。RAID 0は無料版だが,RAID 1/5は有料版,という理解でいいだろう。

VROCのキー(左)と,X299マザーボード上にある「VROCのキーを差す4ピン端子」(右)
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 GIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)によれば,現時点でハードウェアキーはIntelのみが取り扱うようになっており,ユーザーはIntel(製品の販売店)から購入する必要があるとのこと。「製品ボックスにバンドルしてユーザーに提供するような計画は今のところない」(GIGABYTE)そうだ。

ASUSが示した「VROCの使い方」。左下のところにも「使えるのはIntel製SSDのみ」「VROCはサードパーティ製SSDをサポートしない」とある
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 あと,これは「当たり前」の話なので,注意も何もないのだが,まず,CPUから出ているPCI Express Gen.3レーン数が少ないKaby Lake-XコアのCore i7およびCore i5はVROCに対応しない。あくまでも6コア12スレッド対応以上のCore Xシリーズ向けということになる。

MSIが準備している,M.2スロットを2つ追加する拡張カード「M.2 Expander-Z」。これでPCI Express Gen.3は8レーン消費する
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 また,4レーン接続のSSDを束ねる以上,RAIDアレイ構築に使うM.2接続型SSDの枚数が増えれば増えるほど,それ以外,とくにグラフィックス用途で利用できるレーン数は減っていくことも押さえておきたい。
 X299マザーボードの場合,オンボードのM.2スロットは最大でも3基程度なのだが,マザーボードメーカーはM.2スロットを追加できるPCI Express拡張カードを別途用意していたり,マザーボードに付属させたりしている。これらを使えば,SSDが占有するPCI Expressレーン数はさらに増えるため,最大でも44レーンとなるCore i9の場合,ことによるとフルスペックでのデュアルGPU構成を行えなくなるとか,そういう問題は発生しうる。「ご利用は計画的に」案件と言えるだろう。


8枚のRAID 0で逐次読み出し性能は12GB/s超を実現


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 いま述べたように,マザーボードメーカーは,拡張カード型のM.2スロット追加ソリューションを準備しているのだが,COMPUTEX TAIPEI 2017の時点,かつ筆者がチェックした限り,最もアグレッシブなのは,PCI Express Gen.3接続で4基のM.2スロットを追加できる「Hyper M.2 X16 Card」を用意しているASUSだ。

Hyper M.2 X16 Cardのカバーを取り外したところ。PCI Express x16接続のカードで,アクティブファンを搭載する
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 ASUSのHyper M.2 X16 Cardは,SSDの発熱対策として40mm角相当のアクティブファンを搭載するカードだ。「4枚の『Intel SSD 600p』を差したHyper M.2 X16 Card」を2枚差しして,都合8枚のSSDによるRAID 0アレイを構築して実施したライブデモでは,逐次読み出し(Sequential Read)で12GB/sという,圧倒的な数字を叩き出した。

Hyper M.2 X16 Cardを2枚接続したデモ機
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ASUSの示したライブデモより。使っているのがIntel SSD 600pだからかもしれないが,CrystalDiskMarkのスコアを見ると,逐次読み出しのスコアに比してランダム読み出しのスコアが今ひとつ伸びていないのはちょっと気になった。このあたりはランダム読み出しに強いと言われるOptane MemoryベースのSSD待ちなのかも
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Hyper M.2 X16 Cardの主なスペック
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 落とし穴……とまでは言わないが,VROCには,前段でも述べたとおり,もろもろの制約がある。とくに痛いのは対応SSDで,Hyper M.2 X16 Cardのようなカードにサードパーティ製SSDを1枚差して使うことはできるにもかかわらず,VROCを使おうとしたとたんにIntel製SSDでなければならなくなるのは,やはりちょっとどうかと思う。

 ただ,それを差し引いても,期待できる性能の高さは魅力的だ。そもそもHEDT(High End DeskTop)と呼ばれるこの市場では,コスト度外視で性能向上のみを目指すユーザーが少なくないが,そういう人達にとって,現在,システムにおける最大のボトルネックの1つでもあるローカルストレージ,しかもブートドライブ(アレイ)の大幅な高速化を実現できるのはかなり魅力的だろう。

 大多数のゲーマーにとっては高嶺の花と思われるが,ゲームなどの読み出し時間をとことん短くするための秘密兵器として,VROCは,一部の人達から熱い注目を集めることになると思われる。

COMPUTEX TAIPEI 2017取材記事一覧

  • 関連タイトル:

    Core X(Skylake-X,Kaby Lake-X,Cascade Lake-X)

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