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[EVO Japan]5G時代は携帯電話回線でも遅延なしのオンライン対戦プレイか可能になる? NTTドコモのデモを西川善司がチェック
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印刷2018/01/29 16:40

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[EVO Japan]5G時代は携帯電話回線でも遅延なしのオンライン対戦プレイか可能になる? NTTドコモのデモを西川善司がチェック

 EVO Japan 2018の池袋会場における企業出展コーナーへNTTドコモが出展し,2020年頃の民生向け実用化に向けて開発中の第5世代移動通信環境(以下,5G)に関する実証実験のデモを行っていた。
 実際にこのデモを体験することができたので,次世代携帯電話向け通信回線でゲームの世界に何が起こりうるかをレポートしてみたいと思う。



そもそも5Gとは何か


 次世代携帯電話ネットワークとして開発されている5Gでは,新技術の開発と導入により,次に挙げる3つの特徴を実現できることになっている。

  1. ユーザーが密集する環境における安定した接続
  2. 理論性能値最大10Gbps以上の超高速通信
  3. 1ms未満の超低遅延通信

画像集 No.002のサムネイル画像 / [EVO Japan]5G時代は携帯電話回線でも遅延なしのオンライン対戦プレイか可能になる? NTTドコモのデモを西川善司がチェック
 1.は,現行の第4世代移動通信環境(4G,もしくは4G LTE)で課題となっている,「ユーザー密集状況下での安定した接続とその維持」を実現するものになる。NTTドコモとしては,2020年の東京オリンピック会場で大量の観客が詰めかけた競技場などにおける安定したユーザー間通信や,災害時などにおける確実かつ迅速な情報提供を実現する目的から,とくに重視しているようだ。

 2.と3.は次世代携帯電話通信環境の性能要件として,ゲーマーを含む一般ユーザーにも分かりやすいものだろう。
 2.は,現在よりも短時間で大容量のデータを送れるようになるということだ。ロードマップ的には20Gbps以上の伝送帯域幅を目指しているというから相当なものである。
 3.は,以前よりもさらにリアルタイム性の高い用途に移動体通信を応用するため待ち望まれていたものだ。現在,この超低遅延性はIoTや自動運転技術,あるいはVR映像のリアルタイム配信の実現においても欠かせない要素と見込まれている。

 では,そもそも5Gとはどういうものなのだろうか。
 無線通信回線を1つの伝送路として考えた場合,これを大勢で多目的に共有しながら活用してきたのが3G以前までの考え方だ。4Gからは「MU-MIMO」(Multiple-User Multiple-Input and Multiple-Output)と呼ばれる技術を用い,同一周波数帯内における実効データ伝送速度の最大化を行っているが,5GではこのMU-MIMOの考え方の多重性を拡張することになる。

 MIMOは,最近のいわゆる無線LANルーターで馴染み深いキーワードだが,簡単に言うと,同じ電波周波数帯において複数のアンテナを用い,送りたいデータをアンテナの数分だけ分割して各アンテナから同時送受する仕組みだ。そんなことをすると混信してしまいそうだが,各アンテナから送出するデータ同士には強い相関関係が生まれるよう工夫してあるため,受信側で数学的に分離することができるため,これを応用して仮想的に伝送路を拡大することになる。
 そしてMU-MIMOは,MIMOを複数のユーザーが利用できるように拡張することで,仮想的に拡大された伝送路を,通信中に限り,各ユーザーが「自分だけの回線」として利用できるようにするものだ。

 それを踏まえて5Gだが,誤解を恐れず簡単にまとめると,5Gでは伝送するデータの種類によって伝送路を切り分けたり,より高周波数の電波帯も利用したりすることによって伝送路の拡大を図る。同時に,伝送帯域幅の拡大に合わせた通信パケットの最適化によって遅延の低減を図るのである。

 ……と,ここまで説明すれば,NTTドコモがEVO Japan 2018へ出展した意図が見えてくるのではないだろうか。要するに同社は,世界的な格闘ゲーム大会で,格闘ゲームの対戦によって5G回線の可能性を分かりやすく伝えようとしていたのである。


5G時代は携帯電話回線を使って格闘ゲームのネット対戦プレイをしても「異端扱い」されなくなる?


 前段で挙げた「5G回線の三大特徴」のうち,格闘ゲームのネット対戦プレイにおいても最も重要視されるべきものは,もちろん言うまでもなく3.である。現状,もし「格闘ゲームの対戦プレイには携帯電話回線を使っています」なんて人がいれば,一発で「異端」のレッテルを貼られるだろう。それくらい,携帯電話回線の遅延は致命的と思われている(もしくは,格闘ゲームをプレイできる遅延レベルではないとハナから高をくくられている)わけだが,だからこそNTTドコモは会場で,「5G時代が来れば,携帯電話回線で問題なく格闘ゲームをプレイできます」というデモを実施したのである。

 具体的には,左側のプレイヤーは5G接続,対戦相手となる右側のプレイヤーは有線の光回線でプレイし,遅延が体感されるかどうかを確かめてもらうという内容だった。

EVO Japan 2018における5G対戦環境のイメージ
画像集 No.003のサムネイル画像 / [EVO Japan]5G時代は携帯電話回線でも遅延なしのオンライン対戦プレイか可能になる? NTTドコモのデモを西川善司がチェック

 動作していたゲームはSteam版(=PC版)の「鉄拳7」で,2人のプレイヤーはそれぞれ割り当てられたPC上でゲームを動かし,対戦ラウンジを通してマッチングされた状態から対戦を開始するという流れである。
 実際に筆者は5G回線側プレイヤーとしてプレイさせてもらったが,確かに,有線LAN接続とプレイ感覚はほとんど変わらない印象であった。

5G回線を使った鉄拳7の通信対戦を行っている筆者
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5G回線プレイヤー側のPC。これと5G回線移動端末テスト機の間は1000BASE-T LAN接続となっている
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 なお,5G回線側のPCは,ごくごく一般的な1Gbps仕様の(=1000BASE-T)LANアダプター経由で5G回線移動端末テスト機とつながっており,その通信データはテスト機に備え付けのアンテナから発信している。そしてこれを同じブース内にある5G回基地局テスト機で受信し,それをインターネットへ“流す”。という経路だ。光回線側のPCは,やはり一般的な1Gbps仕様のLANアダプター経由でインターネットとつながっている。
 今回のデモで,無線伝送には送受信ともにアンテナ4本ずつの「4×4」なMIMOを採用しており,NTTドコモによれば,安定した10Gbps通信を実現できているとのことだった。

右側の機械がいわゆる5G通信モジュールで,左側の機械が基地局。向かい合う白い直方体がアンテナだ。1mもないアンテナ間ではなるものの,データはここで一度電波として送受信されている
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 冒頭で示したムービーは,実際の対戦デモを60fps撮影したものだ。左が5G環境でプレイしている筆者,右がもう1人のプレイヤー。ムービーを見ると,微妙に時間軸のズレがあるのを見てとれるが,これは「5G回線に起因した遅延」ではなく,インターネット側の遅延と見ていい。

冒頭のムービーから1コマ切り出したもの。左右で画面は微妙にズレ見えるが,実はこれ,有線インターネット接続のプレイにおいても起こり得る現象なので,インターネット回線側の遅延という理解でいいだろう
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 ブースにいたNTTドコモのスタッフは「5G回線時代になれば,携帯電話回線を使って,格闘ゲームや音楽ゲームが不満なくプレイできるようになる。それだけでなく,クラウド側で頭部の動きまでをリアルタイム追従させたVRコンテンツ配信も行えるようになるだろう」と自信を見せていた。

 5G時代ではもしかすると,昨今,勢いをやや失っている感のある「仮想マシンベースのクラウドゲームサービス」などが巻き返す,なんてことも起こるかもしれない。
 なお,正式なサービスインや料金体系などは一切まだ決まっていない。あくまで,現在は実用化に向けた実験といった状況である。

NTTドコモの5G情報ページ


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