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「eスポーツなら有機EL」の時代が来るか? JOLEDがeスポーツ向けを謳う垂直144Hz対応有機ELパネルを披露
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印刷2018/12/06 00:00

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「eスポーツなら有機EL」の時代が来るか? JOLEDがeスポーツ向けを謳う垂直144Hz対応有機ELパネルを披露

 手の届きやすい価格になるかどうかは微妙だが,PC用の,それもゲーム用途を重視した有機ELディスプレイが,数年以内に実現するかもしれない。
 2018年12月5日から7日まで,千葉の幕張メッセで,「液晶・有機EL・センサ技術展」(ファインテック ジャパン)という展示会が開かれている。この展示会に,日本の有機ELパネル専業メーカーであるJOLED(ジェイオーレッド)が,eスポーツ向けを謳う有機ELディスプレイの試作機を出展していたので,いったいどのようなものなのかをレポートしたい。

JOLEDのブースは,同じく日本の液晶パネルメーカーであるジャパンディスプレイ(以下,JDI)との合同ブースとなっていた(左)。入り口には,21.6インチ有機ELパネルを9枚組み合わせた「6K3K」ディスプレイがあり,PCゲーマーなら見覚えがあるであろう「ファイナルファンタジーXIV」のベンチマークアプリを使ったデモを披露していた
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 JOLEDは,かつてソニーやパナソニックといった企業で有機ELテレビの開発に取り組んでいた技術者たちが合流した日本メーカーで,インクジェットプリンタのような装置で素材を塗り分けてパネルを成形する「印刷方式」を使った有機ELパネルの開発と生産に取り組んでいる。
 JOLED製有機ELパネルの特徴については,西川善司氏によるASUSTeK Computer(以下,ASUS)製有機ELディスプレイのレポート記事に詳しくあるので,そちらを参照してもらうとして,ここでは取材レポートを続けたい。

 今回のテーマであるeスポーツ向け有機ELディスプレイは,当然ながら試作品であり,このディスプレイ自体をJOLEDが製品化しようとするものではない。JOLEDはパネルメーカーであり,展示しているのはあくまでも,「同社製有機ELパネルを使えば,こんな製品が実現できますよ」という提案のためのもの。この提案を受けて実際に製品を作るのは,ディスプレイメーカーである。
 それを踏まえたうえで,展示されていた試作機を見ていこう。

JOLEDのeスポーツ向け有機ELディスプレイ試作機
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製品化を意図したものではないが,背面にLEDで光るラインとJOLEDのロゴマークがあるあたりは,いかにもゲーマー向け風だ
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 会場で披露されていた試作機は,21.5インチサイズで,解像度1920×1080ドットの有機ELパネルを使ったディスプレイである。簡易なスタンドが付いたものと,ディスプレイアームに取り付けられたものの2台でデモを行っていた。
 会場で表示されていたのは,「League of Legends」(以下,LoL)の国内大会を素材にした中継映像のビデオであり,ライブのゲームプレイではなかったことはお断りしておく。

試作機の主なスペック
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 JOLEDが,この試作機をeスポーツ向けと位置付ける理由は,まず高リフレッシュレートの表示に対応することが挙げられる。対応する最大垂直リフレッシュレートは144Hzで,今どきのゲーマー向け液晶ディスプレイに匹敵するスペックに対応しているわけだ。
 有機ELパネルを使ったテレビやディスプレイで,高リフレッシュレートの表示に対応するものはまだ少ないので,ここは重要な差別化要因であろう。

 また,有機ELパネルの利点である応答速度の速さもポイントだ。JOLEDの説明員氏は,応答速度は液晶パネルの10分の1とアピールしていた。
 それに加えてJOLEDの有機ELパネルは,RGB 3色のサブピクセルで構成した画素による発色の良さも利点であり,液晶パネルが苦手な低輝度部分での色再現性にも強みを発揮するという。
 ちなみにJOLEDでは,LoLの国内プロリーグでも活躍するプロゲームチーム「Burning Core」とパートナーシップ契約を結んでおり,同チームの選手たちから意見を聞きながら,開発を進めているそうだ。

デモ画面を正面から撮影してみた。LoLは,映像美を楽しむタイプのゲームではないので,有機ELパネルの美しさを表現する素材として適当かという疑問はあるが,それでも発色の良さは分かる
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 実は,この試作機で使っている21.5インチサイズの有機ELパネルは,JOLEDブースに展示されていた21.5インチサイズで4K解像度(3840×2160ドット)の医療用途向け有機ELディスプレイと同じものであるという。ちなみに,ASUSの有機ELディスプレイである「ProArt PQ22UC」のパネルも,スペックから想像するに,これらと同じものと思われる。

JOLEDブースに展示されていた4K解像度の医療向け有機ELディスプレイ(左)。その隣にあったASUSのProArt PQ22UC(右)も,おそらく同じパネルを使っているのだろう
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こちらは27インチサイズで4K解像度の有機ELディスプレイ試作機
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 つまり,パネルの解像度自体は4K解像度なのだが,それをフルHD相当として使っているわけだ。その理由はシンプルで,ディスプレイパネルを駆動するドライバ回路が,フルHDを超える高解像度での144Hzに対応できないためとのこと。逆にいえば,対応できるスペックのドライバ回路が実現すれば,より高解像度かつ高リフレッシュレートの表示も不可能ではなさそうである。
 ただ,有機ELパネルに付きものの焼き付きや,焼き付きに対処するための表示遅延といった課題をどう克服するのかまでは踏み込めなかった。

 さて,気になるのは,「仮にこのパネルを使った有機ELディスプレイができたとしたら,値段はいくらくらいになるのか」だろう。繰り返しになるが,JOLED自身はパネルメーカーであり,ディスプレイメーカーではないので,製品がいくらになるのかは決められない。それを踏まえたうえでの話になるが,「ローカルディミング対応の(ハイエンド)ゲーマー向け液晶ディスプレイ並みになるのではないか」という回答を得られた。
 直下型LEDバックライトのローカルディミング(エリア駆動)に対応するゲーマー向け液晶ディスプレイと言えば,ASUSの「ROG Swift PG27UQ」が思い浮かぶ。発売当初は30万円以上,現在でも26〜29万円台で販売されている製品だ。また,同じ有機ELパネルを使っていると思われるASUSのProArt PQ22UCは,4000ドル前後(約45万1800円)の価格になると言われている。つまり,現時点でゲーマー向けディスプレイとして製品化しても,30〜45万円程度はする超高級ディスプレイになってしまうわけだ。

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 ただ,JOLEDの説明員氏によると,現状で高価になってしまうのは試作用のパイロットラインで製造するしかないためで,2年後くらいに量産向けの製造ラインが稼働すれば,本来,印刷方式で製造する有機ELパネルは製造コスト面で優位に立てるはずなので,価格も下がる可能性があるという話だった。
 JOLEDは現在,石川県能美市のJOLED能美事業所で,印刷方式有機ELパネルの量産ラインを2020年に稼動させようと取り組んでいる。これが本格的に動き出せば,もう少し手の届きやすい価格帯で,ゲーマー向け有機ELディスプレイが登場する可能性もあるだろう。

 2年後くらいのゲーマー向けハイエンドディスプレイに,有機ELパネルという選択肢が加わっていることを期待したい。

有機ELパネルではなく液晶パネルだが,JDI製のVR HMD向け液晶パネルを使ったデモ機。両眼で2880×1600ドット,615ppiという既存のVR HMDよりも高解像度の液晶パネルを使うという
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VR HMD向け液晶パネルの主なスペック(左)。右写真はVR HMDからパネル部分を取り出したもので,左右2枚のパネルを並べて,横2880ドットとなる
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JOLED公式Webサイト


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