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[TGS2022]PCゲームを盛り上げるには学校教育が重要? Intelの社長が語るPCゲーム分野に向けたこれからの取り組みとは
横ばいにはなったが,盛り上がりは衰えていない国内のゲームPC市場
まず鈴木氏は,簡単にIntelとゲーム分野に関する関わりを簡単にまとめて説明した。コロナ禍によって,世界的にいわゆる「巣ごもり需要」が高まったことで,2020年以降は,世界も国内のゲーム市場が大きく成長したという話題を,耳にした人は多いだろう。世界のゲーム市場は,対2020年度比で6.1%も成長しており,ゲームプレイ時間も21%長くなったという。
国内に目を向けると,巣ごもり需要で2020年から2021年に大きく国内PC市場が大きく成長した反動が,2022年には出てきているものの,それでも国内ゲーム市場については横ばい程度では推移しており,PCゲームを継続してプレイする人口も,約20%は増えているそうだ。
そうした状況の中で,Intelとしてここ数年,重点を置いて取り組んでいるのは,1つがゲーム開発会社との協力や支援,そしてもう1つは,ゲーマーのコミュニティに寄り添うことであると,鈴木氏は述べる。
とくに,開発会社への支援は,ここ2〜3年で目に見えて成果が現れてきた分野であろう。PCとゲーム機に同じタイトルを提供するマルチプラットフォーム展開は,海外では以前からごく普通に行われていたものの,国内メーカーには,なかなか浸透していなかった。それがここ数年は,国内開発のゲームタイトルでも,ゲーム機向けの発売と同時に,あるいは遅れても1年程度でPC版が発売となる例が非常に増えたからだ。
もちろん,Intelの支援だけがその理由ではなく,複合的な要因によるものではある。ただ,「PCゲームは,eスポーツタイトルや海外ゲームがメインで,国内の人気タイトルは遊べない」という状況でなくなりつつあることは確かだ。ゲーマーにとっては,「ゲーム機かPCか」ではなく,「ゲーム機でもPCでも,望むプラットフォームで遊べる」という具合に,選択肢が増えたことが重要なのである。
鈴木氏は,「ゲームやクリエイターの世界は,当たり前ですけれどゲーム,コンテンツにどれだけ寄り添えるかというのが,ハードウェア屋の仕事なんです。これは,自分の経験,哲学みたいなものですが,(日本の)Intelの中にも,そういう動きをかけたいと思っています」と述べる。開発者とゲーマーの両方に寄り添うことが,国内のPCゲーム市場を盛り上げる一端になるとIntelは考えているわけだ。
もちろん,Intelの本業であるプロセッサ開発も怠りはない。
2021年には,Alder Lakeこと「第12世代Coreプロセッサ」が登場し,2022年内には,「Intel 7」世代のプロセス技術を用いた新CPU「Raptor Lake」(開発コードネーム)が登場する予定だ(関連記事)。さらに,2023年から2024年にかけては,「Intel 4」「Intel 20A」世代のプロセス技術を用いた新CPUとして,「Meteor Lake」「Arrow Lake」が登場する。また,単体GPUの新製品(※スライドのExternal N3)投入も予定しているようだ。
さらに,2024年の先には,「Intel 18A」と呼ばれるプロセス技術を用いて,超低電力化によって電力あたり性能を大きく改善する「Lunar Lake」の開発を進めているとのこと。さすがに2年以上先の話になると,そのまますんなり実現するかどうかは分からないが,本業である半導体とプロセッサの開発も継続して進化を続けているわけだ。
GIGAスクールでPCに触れた子供たちが,PCゲームを盛り上げる
また,国内においても,2020年東京オリンピックに先だって,eスポーツトーナメント「Intel World Open」を主催するといった取り組みも行っていた。しかし,こちらもコロナ禍によって,本来の姿では実施できなくなってしまったのが残念だ。
オリンピック関連のイベントが一区切りついたことで,今後,国内でIntelは,ゲーマーコミュニティに対してどのようにアプローチしていこうと考えているのだろうか。そう鈴木氏に質問したところ,IEMやIntel World Openのようなフラッグシップとなる大がかりなイベントを主導するのではなく,ゲームメーカーやPCメーカーが行っている日本各地で行っているイベントを支援することを,継続して行っていくことを重視しているそうだ。「Intelが旗を振って『eスポーツだ!』とやる必要はもうなくて,大きな潮流がもうできていると思うのです」(鈴木氏)。
同席していたインテル技術本部 部長の安生健一朗氏も,同意見だ。たとえば,2022年6月にさいたまスーパーアリーナで行われた「2022 VALORANT Champions Tour Challengers Japan」は,総来場者数2万6000人(※ライアットゲームズの発表による)を記録した一大イベントであったが,Intelは,同イベントに協賛していたサードウェーブに協力する形で,スポンサーとして支援していたそうだ。
そして,そのような試みを,国内で広く実施することが,ひいてはPCゲーム業界のためになるのではないかと考えているとのことだった。
また,国内におけるPCゲームの広がりについての話題では,数年前と比べても,PCでゲームをすることが定着したという例として,鈴木氏は,あるゲームメーカーの社長との会話で出たエピソードを披露した。
その社長氏は,お子さんがいるのだが,あるとき,PCゲームをやりたくて「パパ,頼むからPCを買ってくれ」と言われたのだそうだ。「同じパイの食い合い(※国内ゲーム市場におけるユーザーの奪い合い)を,ゲーム機としたくはないし,しないとも思う。しかし,全体の底上げとして,PCゲームユーザーの絶対数が増えてくることは間違いない。コンテンツ側,ゲーム開発会社側がそうなってきている」と鈴木氏は述べて,今後の広がりにも自信を持っているようだ。
鈴木氏は,「下から上げていく」という表現も使っていたが,課題は多くあっても,GIGAスクール構想で子供がコンピュータに触れるようになったことは大きな前進であり,それによって,教育現場や子供の親による受け入れ方を変えていくのが重要であろうというわけだ。
最後に鈴木氏は,「ゲーム業界を盛り上げる,世界に競争力のあるものにし続けるのは,日本にとってすごく大事で,東京ゲームショウに来るとそう思う。ゲームやクリエイターの文化で,日本が競争力を持つようにやっていきたい」と述べた。
今後もIntelが,PCゲームを盛り上げる下支えを続けてくれることを期待したい。
Intel公式Webサイト
4Gamerの東京ゲームショウ2022特設ページ
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