企画記事
「スーパーマリオ」でスターを取ったときの光り方は,地上と地下で違う。そこにはファミコンゆえの理由があった
当時生まれていなくても,「バーチャルコンソール」や「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」「ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online」などで触れた人は多いはずで,家庭用ゲーム史上,もっとも多くの人がプレイしたタイトルかもしれない。
そんなスーパーマリオなので,特定のブロックを叩くと出てくる「スター」を取ると,マリオの体が激しく光り,無敵状態になる……ということは,今さら説明するまでもないだろう。
だが,その「マリオの光り方」が場所によって違うことに気づいている人は,あまりいないのではないだろうか,そこについて調べてみると,ファミコンの仕様からくる理由に行き当たったので,紹介しよう。
では,場所によってマリオの光り方がどう変わるのかを,画像で確認してほしい。まずは地上ステージの場合だ。
スターを取ったときのマリオは,4パターンの配色が繰り返し表示されている。一番左の画像は,スターを取る前の状態と同じなので,ファイアマリオであればオーバーオールや帽子がクリーム色,シャツが赤の配色になる。
そして,地下ステージでの光り方は以下のようになる。
4パターンが繰り返されるところは同じだが,そのうち2パターンは地上と違う配色。しかも,「地下で光るもの」を表現するのなら,より明るい色を使ってもよさそうなものなのに,なぜかどちらも地上より暗めになっている。
上の画像を見て,勘のいい人ならすぐに気づいたかもしれないが,この2パターンの配色は,それぞれクリボーやノコノコと同じになっている。この2キャラは地上と地下で配色が違うため,マリオの光り方もそれに合わせて変わっているわけだ。
なぜこんなことが起こるのか。そこには,ファミコンのグラフィックスの仕組みが関係している。
簡単に説明すると,ファミコンのゲーム画面は,主にキャラクターなどの動く物を表現する「スプライト」と,主に背景や動かない物を表現する「BG」の2つで構成されている。
1つのスプライトやBGに使える色数には制限があり,スプライトの場合は透過色+3色,BGの場合は背景色+3色しか利用できない。この色の組み合わせを「パレット」と呼ぶのだが,パレットの数にも制限があり,同時に使えるのは,スプライト用とBG用で4つずつしかない(パレットの色を切り替えることは可能)。
言葉だとなかなか分かりづらいところもあると思うので,スーパーマリオの地上ステージを例に,スプライトの4パレットがどのように使われているのかを推測してみた。
●パレット1
●パレット2
●パレット3
●パレット4
このように,キャラの数が多くなれば専用のパレットは用意できないし,1つのパレットには3色しかないので,どうしても配色がかぶることになる。パレットの色を切り替えることは可能だが,その場合「キャラの出番」がかぶらないようにする必要があり,同じパレットを使っているキャラが多くなるほど,その調整は難しくなっていく。
こういった制限がある中で,地上と地下でクリボーやノコノコの色が変わる仕様になった結果,「マリオの光り方がクリボーやノコノコに合わせて変わる」という,奇妙なことが起こったわけだ。
それにしても,3色しかないパレット4つで,バラエティ豊かなキャラクターを作り上げたスーパーマリオの開発スタッフの工夫には舌を巻く。「この2キャラは同じ配色だったのか……!」と,今回初めて気付いた人もいるのではないだろうか。
スーパーマリオに限らず,この仕様を知ってからファミコンのゲームをプレイすると,今までとは違った景色が楽しめるはず。しばらくご無沙汰の人も,40周年を機にプレイしてみてほしい。
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