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[GDC 2014]Free-to-Playゲームのマーケットを世界規模で分析するレクチャーをレポート。日本はカードバトルが好まれるが経営モノは人気がない
スピーカーは,北米のモバイルゲームメーカー Glu Mobileでパブリッシング部門のプレジデントを務めるChris Akhavan氏だ。以下,数字がいくつも並ぶが,出典はとくにあきらかにされていない。とはいえ同社は,「Deer Hunter」シリーズや「Frontline Commando」シリーズなど,大ヒット作を多く抱える業界最大手の一つなので,信憑性は高いのではないだろうか。
Akhavan氏はまず,F2Pゲームにおける地域別の現状について説明した。Akhavan氏によると,App StoreおよびGoogle Playで配信されているトップ150タイトルの収益の60%が,北米と日本で占められていると述べた。トップが日本の32%で,北米の29%,韓国の8%,中国の3%,そしてその他の国の28%という感じになっている。
そしてAkhavan氏は,「ソーシャル要素がすべてです」と続けた。これは,欧米では収益の75%が,そしてアジアでは90%以上が,ソーシャル要素を持ったゲームによって生み出されているという意味だ。MMORPGのような作品はともかく,どのあたりまでを“ソーシャルフィーチャー”と呼ぶのかはちょっと分からないが,いずれにせよ,モバイル向けF2Pタイトルを作るなら,広義でのマルチプレイ要素は欠かせないということだ。
とはいえ,全体の半数以上は,たとえばコーヒーショップで並んでいるときに遊んだり,レストランでちょっとプレイしたりできるものであり,そうしたゲームの人気が高いのは世界共通だとAkhavan氏は語る。
地域別の好みの違いは割とはっきりしており,例えば北米と日本を比べてみると,北米がストラテジー系を好むのに対して,日本ではカードバトルが高い人気を誇っている。ジャンル別では,例えば経営(マネジメント)モノのゲームが日本ではまったくといっていいほど人気がないのに比べて,アクション系の作品は北米と韓国で広くアピールすることが紹介された。もちろん例外はあるだろうが,F2Pゲームの制作時に,こうした地域別の好み違いを把握しておくことは無駄ではないだろう。
さらに,こうしたクリエイティブ(アイコンやスクリーンショット)は,最低でも5日ごとにリフレッシュする必要があるというのだから,F2Pゲームをダウンロードしてもらうのもラクじゃない。
さらに,Facebookなどを通じてユーザーにアピールすること,Amazonなどのレビューに細かく目を通して改善点をさぐること,ログイン報酬などのインセンティブを用意しておくこと,そして1回のプレイは30秒以内に収めることなどが語られて,Akhavan氏のレクチャーは終了した。
開発者の情熱や努力にまつわる話や,最新技術,新製品紹介など取り上げることが多いGDCだが,その一方で,このように市場を冷静に分析するレクチャーも数多く開かれている。ゲームもビジネスである以上,マネタイズや市場分析は,最新レンダリング技術と同じ,あるいはそれ以上に重要ということなのだろう。たまにはちょっと毛色が違う講演もいいかと思って出てみたが,ほんのちょっとしたことで結果がガラリと変わるゲーム業界の厳しさを,あらためて感じることになった。
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