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人類は「機械が生み出す知財」にどう向き合うべきか――SF作家・藤井太洋氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第19回
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印刷2014/08/12 10:00

インタビュー

人類は「機械が生み出す知財」にどう向き合うべきか――SF作家・藤井太洋氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第19回

「クリエイティブ・コモンズ」は絶対クソ


4Gamer:
 藤井さんって,小説を書かれる前のお仕事って何をされていたんですか?

川上氏:
 もしかしてエンジニアですか?

藤井氏:
 いえ,エンジニアではないですね。多少の知識はありますけれど。元々は,イーフロンティアっていう会社でマーケティングとか開発統括的なことをやっていました。

画像集#017のサムネイル/人類は「機械が生み出す知財」にどう向き合うべきか――SF作家・藤井太洋氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第19回
川上氏:
 あ,イーフロンティアだったんですか。そう聞くと,なんかちょっと身近に感じますね。「Shade」とか,僕はずっと買ってましたよ。全然使ってなかったけれど(笑)

藤井氏:
 というか,その「Shade」の開発統括をやっていました(笑)

川上氏:
 本当ですか!

藤井氏:
 元々は「Shade」のユーザーとして活動していたんですけど,「Shade」の権利がイーフロンティアに移ったタイミングで中の人になりました。

川上氏:
 へえー。ちなみに「Shade」って今はどうなっているんですか?

藤井氏:
 今は,あのビットコインのマウントゴックス社が権利を持っています。でもあんなこと(破綻)の後,どうなったのか聞いていません。

※藤井氏による補足:
このインタビューの後,株式会社Shadeを訪問しました。テレビにさんざん映っていたあのオフィスビルの隣で,以前のメンバーが変わらずShadeを作っているのを見て安心しました。


川上氏:
 え? マウントゴックスが「Shade」の権利を持ってるんですか?

藤井氏:
 正確に言うと,マウントゴックスの持ち主(経営者)が持ってるって感じですね。

川上氏:
 ええええ。「Shade」はそんなことになっていたのかぁ。

藤井氏:
 まぁでも,3Dソフトってお話でいうと,最近は「Unity」みたいなツールが一般的になってきて。そっちが主流になってきていますよね。

川上氏:
 いや,Unityは凄いですよね。なんか,簡単なアニメとかなら,もうあれで作れちゃいますし。

4Gamer:
 ゲームエンジンを利用した映画(映像)の可能性については結構前から注目されていましたけど,そのハードルがここ数年で一気に下がった印象はありますよね。MikuMikuDanceなんかもそうですけど。

山賊の娘ローニャ
(C)NHK・NEP・Dwango, licensed by Saltkrakan AB, The Astrid Lindgren Company
画像集#024のサムネイル/人類は「機械が生み出す知財」にどう向き合うべきか――SF作家・藤井太洋氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第19回
川上氏:
 はい。まぁその辺の話で言うと,今,宮崎吾朗監督とNHKで「山賊の娘ローニャ」というアニメをCGで制作しているんですが,手描きアニメよりもCGアニメのほうが作るのは大変なわけです。でも,同じ場面がでてくるとCGだと使い回しができるので,逆に楽になったりするんです。だから,日本なら「サザエさん」みたいな作品のほうがCGには向いている,あれこそフルCGで作るべきだ!って,吾朗さんはずっと主張しているんですよ(笑)

藤井氏:
 まぁ,1回セットを作っちゃった方が絶対に楽ですよね。もう長く続けていくのが前提の作品なわけですし。

川上氏:
 そうそう。あとツールって部分で言うと,最近はAdobeのソフトウェアとかが全部クラウド化していて。今後はさらに,制作したデータも全部サーバーに置くのが普通になっていく流れなわけじゃないですか。

藤井氏:
 そうですね。

川上氏:
 クラウド化されて全部がサーバー管理になると,パロディとか,二次創作とかっていうものも,著作権的に処理されてキチンとOKになる――そんな時代が来るんじゃないかって気はしているんですよね。データがサーバー上にあるなら,技術的には権利を一貫してトラッキングできるようになりますから。僕としては,未来はそういう風になっていってほしいなと常々思っているんですけど。

藤井氏:
 ニコニコでもいろいろなチャレンジをされていますよね。「クリエイター奨励プログラム」とか「ニコニ・コモンズ」とか。

川上氏:
 まあ,中途半端なやつばっかりですけどね。

藤井氏:
 でも,ああいうものは,量が一定以上ある程度集まってくれば,どこかでゴロっと風向きが変わってきそうな気もするんですよ。

川上氏:
 要するに,まだそこまでは達していないんですよ。ただ,話題が出たのでちょっとニコニ・コモンズの話をさせてもらうと,僕自身は「クリエイティブ・コモンズ」は絶対クソだと思っていて(笑)

藤井氏:
 わはは。

4Gamer:
 それは何でですか?

川上氏:
 いやだって,クリエイティブ・コモンズの何がいけないかっていったら,あれは結局「契約」なんですよ。ネット上のクリエイティブをより活発にするってことなら,本当はもっと自由じゃなくちゃいけないのに,その自由さを担保するためにガチガチの契約を作っているのがクリエイティブ・コモンズで。

※編注:ちなみにクリエイティブ・コモンズとニコニ・コモンズは,どちらも似たようなものに見えるが,クリエイティブ・コモンズが「ライセンス」であるのに対して,ニコニ・コモンズはあくまで「ガイドライン」だという違いがある。

藤井氏:
 そうですね。

川上氏:
 コンテンツを作る人達の気持ちからすると,やっぱり自分が作ったものって,相当なリソースを割いて作っているわけだから,それをフルで提供するっていうのは抵抗があると思うんです。でも,一方では,別に使ってもらってもいいかな,それで盛り上がってもらえるのならいいかなって,そういう気持ちもある。いわば相反している状態なんじゃないですか。

藤井氏:
 そうかもしれません。

川上氏:
 そうであるなら,本当は「とりあえずオーケー」みたいなことができないといけないと思うんですよ。クリエイティブ・コモンズの最大の欠点っていうのは,あれはガチガチのライセンス契約で,内容が後で変えられないことです。でも僕は,ネット上の二次創作文化ってものを考えていくなら,クリエイターが「やっぱなし!」っていうのができないと駄目だと思うんです。「これまではここまで改変していいよって言ってたけど,この時点からは止めてね」みたいな。そういうことが言えた方がいいと思うんですよ。

画像集#011のサムネイル/人類は「機械が生み出す知財」にどう向き合うべきか――SF作家・藤井太洋氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第19回
藤井氏:
 なるほど。うーん。これは僕自身の経験から言うんですけど,クリエイティブ・コモンズって,公開する側に結構な圧力をかけるんですよ。例えば,「Gene Mapper」の電子書籍版――まあ,セルフパブリッシング版ですけど――って,オリジナルのテキストをクリエイティブ・コモンズで購入者に配布してるんです。芝居にでもなんでもしてくださいって感じで。

4Gamer:
 へえ。

藤井氏:
 でも,これは本当に覚悟が必要だったんですよ。なぜなら,1回出てしまうと,自分にはもうコントロールできないものになってしまうから。あと,クリエイティブ・コモンズって完全な作品でないと公開できないんですよね。改変禁止で公開する場合は,完全な作品じゃないといけないし,改変可能で公開するなら,作品としての輪郭がかっちりしてないと,そもそも公開する意味がない。クリエイター側にいろいろなもの(判断)を突き付けてくるものでもあるんです。

川上氏:
 だから,クリエイターさんだって本当はもっとゆるい感じでやりたいんだと思うんだけどねぇ。

藤井氏:
 はい。そういう意味では以前,クリエイティブ・コモンズで二次創作をしてもらうための方法を割と真面目に考えたことがあって。やっぱりいろいろと難しいというか,面倒だなって思ったんですよね。

川上氏:
 ほう?

藤井氏:
 例えば,僕の著書である「オービタル・クラウド」で考えると,クリエイティブ・コモンズで二次創作をしてもらうなら,「キャラクターシート」「設定資料」「物語のストーリーライン」をそれぞれ独立した形で用意して,この3点セットをクリエイティブ・コモンズで公開する――みたいなことをやらないといけないんです。キャラクターのイラストとかを添えるにしても,あらゆるIPに抵触しないオリジナルのものを用意して。
 そこまでやれば,「オービタル・クラウド」という作品(小説)自体は守りつつ,世界設定やキャラクターを使って自由に二次作品が作れますってことが言えるわけですけど……そんなめんどくさいこと普通はやってらんないですよね(苦笑)

川上氏:
 まぁでも,そういう風にしないと,小説本編を1文字書きかえただけのものを「二次創作だ」って言い張られちゃいますからねぇ。ライセンス的には。

藤井氏:
 そうなんです。つまり,ここまでは自由に使っていいですよっていう枠を,作者側がカッチリ決めないといけないんですね。そういう部分を考えないといけないのがクリエイティブ・コモンズで。

川上氏:
 うーん。でもさ。それがどういうことかというと,要するにライセンスを出す側に「コーディングの能力」を要求してるって話ですよね。しかも,それは公開した後はデバッグ禁止なんですよ。運用して見て,「あ,バグがある」と思っても修正が効かないというシロモノなわけで(笑) それはやっぱり,僕は間違ってると思うんですよね。

藤井氏:
 なので,「Gene Mapper」の場合は,上記のようなことをいろいろ考えた結果,「めんどくさい。もう全部公開で!」という形になりました……(苦笑)

川上氏:
 やっぱり必要なのは「とりあえずオッケー」ですよ。そういう精神なんじゃないかなぁ。

藤井氏:
 かといって,ゆるいやり方もどうなんだろうか?って思うところはなくもないです。

川上氏:
 まぁ,そうなんですけどね。でも,日本の二次創作の文化っていうのは,「著作者人格権()」でいきなり刺されたりだとか,よくわからないけど許されないケースも往々してあるわけじゃないですか。オッケーかオッケーじゃないのかっていうドキドキ感の共有も,もしかしたらコンテンツなのかもってたまに思います(笑)

※著作権法で定められた著作物創作者の権利のうち,公表権,氏名表示権,同一性保持権といった人格的な利益の保護を目的とするもの。譲渡,相続はできない。

画像集#013のサムネイル/人類は「機械が生み出す知財」にどう向き合うべきか――SF作家・藤井太洋氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第19回


著作権法違反の非親告罪化について


4Gamer:
 そういえば,著作権周りのお話でちょっと聞いてみたいんですけど,TPP()に日本が加入すると著作権法違反が非親告罪になるかも――という件については,お二人はどうお考えなんですか?

※環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)の略。環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定だが,条文には著作権についての項目が盛り込まれている。

藤井氏:
 そもそも,著作権法違反を親告罪として扱う国が世界的に少ないですからね。日本以外だと,ドイツとオーストリアくらいでしたっけ? 基本的にすべての法律は非親告罪。誰だって訴えて良いというのが普通で。

川上氏:
 そうですね。

藤井氏:
 ただ一方で,例えば,アメリカで著作権侵害の申し立てするのって,経済的にこれだけ被害を受けましたっていうのを証明しなきゃいけなかったりするんですよ。だから,逆にあんまり無茶な訴訟もできなかったりするんです。まあ,やれるところは専門のチームを作って,そういう算定をバシバシやるわけですけど。でも,いわゆる同人誌とかファン活動的な二次創作を訴えて意味を持つケースって,あんまり無いんじゃないかなぁとは思います。

川上氏:
 まぁ,確かに経済的な被害がない(少ない)ものは,逆に訴えられにくくなる可能性はありますね。僕としては,もしアメリカと同じルールになるんだったら,TPPの項目の中に「著作者人格権の廃止」とかも含めるべきだとは思いますけど。

画像集#027のサムネイル/人類は「機械が生み出す知財」にどう向き合うべきか――SF作家・藤井太洋氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第19回
藤井氏:
 ああ,「著作者人格権」は確かに大きなポイントかもしれませんね。アメリカの場合は,著作権侵害で刑事罰にできるんですけど,それで捕まるのっていうのは,ちょっと前の「Megaupload()」みたいな,仕事として海賊行為をしている人達なんですよね。だけど,いわゆる二次創作を「エロイから駄目」みたいな理由で捕まえてるケースって,少なくとも海外では探しても出てこないですよね。

※オンラインでファイルを共有できるストレージサービスの一つ。違法ファイルの温床になっていたことから,アメリカ司法省と連邦捜査局(FBI)が運営者を起訴し,サイトは閉鎖された。司法省とFBIによると,Megauploadの著作権侵害による被害総額は5億ドルを上回るという報告だった。

川上氏:
 そうですね。でも,仮にアメリカと同じルールになったとして,それが日本でどう運用されるかが問題で。そこはやっぱり不安が残る部分なんだとは思います。

藤井氏:
 確かに。

川上氏:
 著作権侵害ってものが不当に使われないとは言えませんからねぇ。それに,アメリカみたいな訴訟社会になるのも絶対よくないですよ。あんな,弁護士が儲かるだけの社会システムは良くないと思う。

藤井氏:
 でも,会社勤めをしていた頃は,アメリカ人からときどき「権利侵害してるよ」って連絡がきたりしていたんですけど,結構ドライというか,カジュアルにお金で解決したりするんですよね。例えば,新しいソフトウェアのプレスリリースを出すと,「その商標は俺が持ってる」みたいなツッコミが来て。「3週間使ったから200ドルね」「いや,150ドルにまけろ」みたいな感じのやり取りが発生するんですよ(笑)

川上氏:
 へえー。

藤井氏:
 あれぐらいカジュアルに請求できて,やりとりできれば別にいいんじゃない?とは思いますけどね。

川上氏:
 まぁでも,それはカジュアルな金額の場合もあれば,そうじゃない場合もあるだけなような……(笑)

画像集#022のサムネイル/人類は「機械が生み出す知財」にどう向き合うべきか――SF作家・藤井太洋氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第19回


「コピーライツ」って言葉がすで良くない


4Gamer:
 でも,著作権のあり方は,今は本当に過渡期って感じがしますよね。

藤井氏:
 そうですね。引用や二次創作についてもそうですけれど,デジタル化&ネット化することで,従来よりも著作権そのものに対する捉え方が広がってしまいましたし。

4Gamer:
 それは具体的にはどういう部分ですか?

藤井氏:
 例えば,写真なんかの話をすると,今は「Lytro」っていう,後で焦点を変えられるカメラがあるんです。中にレンズがだーっと並んでいて,画像のデータを3次元的な構造で持っている奴で。後で自由にピントの位置とかを変えて現像できるんですね。

4Gamer:
 面白いですね。

藤井氏:
 だから,その画像のローデータ自体は昆虫の複眼みたいな状態のものになるんですが,この画像に著作権がありますとか言われても,まったくピンと来ないじゃないですか。

川上氏:
 まぁ,そうですよねぇ。

画像集#026のサムネイル/人類は「機械が生み出す知財」にどう向き合うべきか――SF作家・藤井太洋氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第19回
藤井氏:
 結局,写真における創意工夫の部分が何かっていったら,画角や光源などいろいろなものを加味しながら,一つの場面を選び出して,「これが感動的だ」って決める判断だと思うんですよ。


川上氏:
 でも,そもそも論でいうと,僕は写真に著作権があるのがオカシイと思うんですけど(笑)

藤井氏:
 そこはおかしくないですよ!

川上氏:
 えー。でも,僕からすると,写真って本当は著作隣接権なのでは?って思うんですよ。写っている被写体に権利(著作権ないし肖像権)があるのであって,写真そのものに権利はないだろうと。現在の著作権制度のあり方から考えると,そちらが正しいんじゃないですか。

藤井氏:
 どうだろなあ。写真には,撮影者の技術とかもあるわけだし。

川上氏:
 んーでも。撮影者の技術うんぬんで言うんだったら,歌や音楽のレコーディングだって同じですよね。歌詞や楽譜の著作権とは別に,それを扱う(著作物伝達に重要な役割を果たした)演奏者や歌手にも権利を認めよう,定義しようっていうのが著作隣接権の考え方で。写真といったい何が違うんですか。

藤井氏:
 なるほど。うーん,難しいなぁ(笑)

4Gamer:
 まぁ,一口に写真といっても,自然を写したものから人を写したものまで,いろいろありますからねぇ……。

藤井氏:
 私としては,写真に著作権を認めて,被写体の方がむしろ隣接権じゃないかっていう方を支持したいんですけどね。

川上氏:
 でも,それって音楽で言うと,歌手が著作権を持っていて,作詞家や作曲家の方が隣接権扱いになるって話になりますよね。やっぱり,整合性がとれてない気がしますよ。

藤井氏:
 私が言いたいのは,作品を受け取る側の印象としては,そっちの方が受け取る側の“感覚的には正しい”んじゃないかって話なんですけどね。私達が音楽っていうものを認識するとき,パフォーマンスをしている人と,おそらくPCと楽器に向かってる作曲者,どちらを音楽だと思うのか?という。間違っていることがわかっていても,私としては著作隣接権しか持ってない歌手や演奏者のパフォーマンスこそが「音楽」だろうと,強く感覚が訴えるわけですよ。

画像集#016のサムネイル/人類は「機械が生み出す知財」にどう向き合うべきか――SF作家・藤井太洋氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第19回
川上氏:
 そこは分かりますよ。でも,それを言うと,本当はその人間が発するアウラ(芸術作品に対する畏怖や崇敬)みたいなものに対して人はクリエイティブを感じているんだけれど,そういう1回1回の経験に対して著作権があるみたいな考え方は,僕はやっぱりおかしいと思うんですよ。もっと抽象的な大元の権利があるというようにみんな思っているし,そういう権利行使が実際にされていますよね。

藤井氏:
 まぁだから,現代における著作権というのは,本質的には「コピーライツ(=複製権)」とはちょっと違うんじゃないかってことだと思うんですよね。

川上氏:
 そうですね。もう単純な「複製の権利」ってことではなくなっていますからね。グーテンベルク()の時代なら,著作権=複製権ってことで一致していたんだけど,それが段々と複雑化してきて。ネットの登場でさらにワケが分からなくなってきたのが今の状況ですから。

※ヨハネス・グーテンベルク。活版印刷技術の発明者。

藤井氏:
 音楽における著作権の歴史にしても,本格的な立ち上がりはレコードみたいなビジネススタイルが確立されて「複製」されるようになってからですからね。まだまだ議論の途上にあるのは確かでしょう。

川上氏:
 うん。だから,昨今のキャラクタービジネスなんかも含めて考えていくと,著作権って実際にはもっと抽象的なものに与えられる権利になるべきなんじゃないかなと思うんですよね。実際,今はそっちの方,拡大解釈する方向に向かっているじゃないですか。

4Gamer:
 ふと思ったんですが,キャラクターって今は法律上はどういう扱いなんでしたっけ?

川上氏:
 キャラクターの著作権っていうのはないよ。

藤井氏:
 ただ,キャラクターを描いた絵には著作権があります(笑)

4Gamer:
 じゃあ,小説自体は全然売れなかったんだけども,キャラクターだけがすごい人気で,それが莫大な利益を生み出しましたっていう場合ってどういう扱いになるんですか?

川上氏:
 だからね,そこら辺があんまり厳密じゃないんだよね(笑) 今は,絵の著作権や小説の著作権,あるいは著作人格権,いろいろなものを組み合わせて守ってる状態だと思う。

藤井氏:
 その辺も難しいですよね。例えばですよ,著作権の年限がアメリカで100年に延長(現行法では70年)できなかったとなると,もうすぐ初期のミッキーマウスの著作権が切れるわけですよ。でも,そのときに,きっと「自由になるミッキーマウスっていうのはどれなんだ?」って議論が巻き起こると思うんです。そして結局は,映画の著作物としての蒸気船ミッキー(※蒸気船ウィリーに登場した最初期のミッキー)みたいな,ふるーい,誰が見てもミッキーマウスとは思えない白黒の奴だけがパブリックドメインになって,「みんながミッキーだと思っているもの」は全然自由にならない可能性があるわけです。

川上氏:
 まぁ,とにかく一つ言えるのは,「コピーライツ」って言葉がすで良くないってことですね。現状に即してない!

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