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ドイツのボードゲームイベントで見た,広告媒体としてのボードゲームと,企業や自治体の広報戦略
ヨーロッパゲームコレクター協会公式サイト(ドイツ語)
現在の広告媒体は主に新聞やラジオ,テレビなどのマスメディアだが,実はボードゲームも無視はできない存在だ。ドイツのマールブルクに拠点を置くヨーロッパゲームコレクター協会(European Society of Game-Collectors)はこの点に着目し,ドイツ・エッセンで開催されたボードゲームのイベント「SPIEL’16」において,「景気と共に歩む - 広告媒体としてのゲーム」という企画展示を行った。
この協会は,会員が蒐集したボードゲームをもとに毎年興味深い展示を行っており(2015年は,ドイツ統一25周年にちなんだ旧東西ドイツのゲームを紹介していた),今年も膨大な量のボードゲームが所狭しと並べられて,見る人を圧倒していた。ここでは,写真を中心に展示内容を紹介したい。
プレイヤーなら,例えば既存ゲームの広告バージョンを「自分の知っているものと,どんな違いがあるのだろう?」と思ってしまうし,見たこともないゲームなら,「どんなゲームなのだろう?」と遊んでしまう。そのうち,ゲームに含まれる商品やメッセージなどに親しんでいくのだ。
個人的に興味深かったのは,公的機関がボードゲームを宣伝のために利用している点だ。実を言うと,ドイツの自治体ではかなり普及している広報戦略で,地元の風景をテーマにしたトランプや,ご当地版モノポリーなど,種類は多い。
また,旧東ドイツもゲームを介した広報活動とは無縁ではなかったという点が非常に興味深い。筆者はこれまで,競争のない社会主義国の企業に広告は必要ないのではないかと思っていたが,知名度の向上や教育目的のためのゲームが数多く作られていたのは新たな知見だった。
それにしても,限定的に制作されたであろうレアな広告用ゲームをこれだけ揃えられたというのは純粋な驚きだ。何十年も前に作られた品々が多かったにもかかわらず各展示品の保存状態はよく,ボードゲームに対する蒐集家達の深い愛情が伝わってきた。
彼らが次はどんなテーマで秘蔵の品々を出してくるのか,来年の展示が今から楽しみだ。
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