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ボードゲームの祭典「ゲームマーケット2016秋」レポート。ゲームマーケット大賞は,すまいる120円工房の「ビンジョー×コウジョー」が受賞
開催場所はこれまでと同じ東京ビッグサイトだが,今回は増築された東7・8ホールが会場となり,そのスペースもさらに広くなった。開場前の行列は,東7・8ホールからスタートして東1〜6ホールの中央通路を抜け,連絡通路を通って入口近くまで伸びていた。とはいえ,会場内の通路が比較的広めに取られていたことからか,開場後はそこまで混雑することもなく,伸び伸びと出展サークルを見て回ることができた。本稿では,そんなゲームマーケット2016秋から,筆者が気になったものをピックアップして紹介していこう。
ゲームマーケット公式サイト
「ゲームマーケット大賞2016」が発表に
スペースが広くなったことで,会場内には新たなコーナーもいくつかお目見えしていた。
まず「プレイスペースストリート」と銘打たれた一角では,近ごろ急増中のボードゲームカフェ――ボードゲームをプレイしながら飲食が可能なお店が,軒を連ねて出展。JELLY JELLY CAFEやディアシュピール,アソビCafe,リトルケイブといったお店がブースを構え,店舗同様ゲームをプレイできるエリアとして終日賑わっていた。
また,ホール内にはこれまで無かった飲食コーナーも用意されていた。長丁場のイベントだけに非常にありがたかった……のだが,決して広くないスペースだったためか絶えず行列&混雑が続いていたようである。
一方,主催者ステージでは,昨年に引き続き「ゲームマーケット大賞2016」の発表&授賞式が開催された。
ゲームマーケットで発売されたゲームの中から,優秀なゲームを表彰するという,この「ゲームマーケット大賞」。昨年はオインクゲームズの「海底探険」が受賞し話題をさらったが,今年も「たのめナイン」(するめデイズ),「ちんあなごっこ」(高天原),「ビンジョー×コウジョー」(すまいる120円工房),「幽霊島の殺人」(楽々亭),「横濱紳商伝」(OKAZU brand)の5作品が,選考によって優秀作品として決定していた。この中から,今年の大賞作が選ばれるというわけだ。
ステージでは最初に優秀作品5作の授賞式が行われたが,このほか特別賞としてギフトテンインダストリの「アニュビスの仮面」が選ばれ,こちらも表彰が行われた。同作はVRによる視覚情報を頼りに,タイルを組み合わせて迷路を完成させるゲームで,純粋なボードゲームを対象としたゲームマーケット大賞においては,本来であれば審査の対象外ということになる。しかし審査委員長の草場 純氏によれば,その斬新なアイデアを評価し,今回特別賞という形で表彰を行ったとのことだった。
そして,いよいよ大賞受賞作の発表に移る。選ばれたのは,すまいる120円氏作の「ビンジョー×コウジョー」。工場の生産ラインを作り,うまくほかのプレイヤーに便乗していく拡大再生産タイプのゲームで,審査員推薦枠としてノミネートされた作品とのことである。
受賞のポイントとしては,ほかのプレイヤーのラインに「便乗」して生産できるというユニークなシステムが評価された一方で,草場氏からはルールの記述に分かりにくい部分が散見されたことが苦言として呈された。「本来,大賞作品はルールブックも含めて完全であるべき」(草場氏)だが,すまいる120円氏もその点については自覚があった様子。次回作では改善する予定とのことなので,期待しておこう。その次回作は,2017年3月12日開催の「ゲームマーケット2017神戸」で発表予定とのこと。お楽しみに。
なお,次回ゲームマーケット大賞2017からは,大賞に加えてエキスパート賞とキッズ賞が新設される予定。日本のボードゲーム作品もそれだけ多様性が出てきたということなのだろう。次回はどんな作品群がノミネートされるのか期待したい。
会場で見かけた気になる作品
そのほか,会場で見かけた気になるタイトルを,いくつか紹介していこう。
■カナイ製作所×Manifest Destiny「ウニコルヌスの騎士たち」
まず,「ラブレター」でその名を世界に轟かせているカナイセイジ氏は,Manifest Destinyと共同制作で新作「ウニコルヌスの騎士たち」をリリースしていた。カナイ氏といえば,最小限のコンポーネントで奥深いゲームシステムを構築する,ミニマリズムというスタイルで知られるが,今回の作品は写真のとおり,かなりの重量級となっていた。
マップ上をオートで突っ走るお姫様を無事王都まで送り届ける協力型ゲームで,プレイヤーは姫に迫り来る敵を事前に蹴散らしておいたり,姫に兵士を送ったりする。パッケージには「プレイ時間:120分」とあるが,カナイ氏曰く「先日,ニコ生の“ゲームマーケットチャンネル”でこのゲームを遊ぶ番組をやったのですが,インスト含めて4時間かかりました」とのこと。とはいえ,ルール自体は複雑ではないそうで,どちらかといえば,協力プレイであるがゆえに作戦会議に時間がかかるとのことだった。
■ギフトテンインダストリ「モニャイの仮面」
ゲームマーケット大賞で特別賞を受賞した「アニュビスの仮面」のギフトテンインダストリは,その続編となる「モニャイの仮面」を発表。今回は試遊のみだったが,2017年春の発売を予定しているという。
前述のとおり,「アニュビスの仮面」はVRゴーグルでダンジョンを探索し,その様子をほかのプレイヤーに口頭で伝え,ダンジョンマップを机上に完成させていくゲームなのだが,新作である「モニャイの仮面」では,マップの構造が二重になり,タイルが六角形になるなど複雑化している。ただし,伝えるべき情報が色をベースとしたものに統一されたため,前作よりも遊びやすくなっているとのことだった。
ギフトテンインダストリの濱田隆史氏によれば,同作は「アニュビスの仮面」の続編として2016年4月から開発をスタートさせたとのこと。ダンジョンの構造が二重になったのは,VRで周囲を見渡すだけでなく,「飛び跳ねる」ことで上下移動する要素を入れたかったからだとか。すでにアナログ部分のコンポーネントはほぼ完成しており,残すはスマホアプリ側の詰めのみとのことなので,期待しておこう。
■「東京トイボックス」のうめ先生が初出展
今回,カタログを眺めながら猛烈に気になっていたブースの一つに,「スタジオG3」というサークルがある。ピンときた人も多いだろうこのブース名は,ドラマにもなった漫画「東京トイボックス」「大東京ボックス」の舞台である,架空のゲーム会社の名前だったりする。そう,実はこのサークルは,同漫画の作者である二人組――小沢高広氏(シナリオ・演出担当)と妹尾朝子氏(作画・演出担当)による漫画家コンビ,“うめ”先生の主催するサークルだったのだ。
ゲームコミック誌,電撃マ王にて「御茶ノ水非電源系ゲーム部ひでぶ!」という作品を連載するほどボードゲームが好きな両氏は,「東京トイボックス」の連載中から自分達でもゲームを作ってみたい気持ちが芽生えたそうで,「テレビゲームは難しいけど,ボードゲームなら」と,「ぷよぷよ」で知られる米光一成氏主催のワークショップ「ゲームづくり道場」に参加。その課題として制作したのが,今回出展した「JUST MEAT!!」とのことだ。
ゲームマーケットへの出展(というか参加自体)は今回が初めてとのことだが,手応えは感じているようで,次回作のゲームアイデアもあるという。今後の出展については,「どうしようか悩んでいます」と話していたが,筆者もいちファンとしてぜひ期待したいところ。スタジオG3の今後の動向に注目しよう。
次回「ゲームマーケット2017神戸」は3月12日,「ゲームマーケット2017春」は5月14日開催
来場者数も参加サークルもどんどん増え続けるゲームマーケットだが,その勢いはまだまだとどまることを知らない様子。次回「ゲームマーケット2017神戸」は神戸国際展示場にて2017年3月12日に,「ゲームマーケット2017春」は,東京ビッグサイト東1・2ホールにて2017年5月14日の開催が予定されている。後者はサークル申込にまだ間に合う(2017年1月中まで)なので,出展を考えている人は,公式サイトを確認しておこう。
最後に,そのほか筆者が気になったブースを写真で紹介する。残念ながら今回会場に行けなかったという人も,熱気ある会場の雰囲気を味わってもらえたら幸いだ。
【アークライト】先行発売の5作品を中心に展開していたアークライトブース。504通り(!)ものゲームが遊べる「フリードマン・フリーゼの504」をはじめ,「ブルーノ・フェイドゥッティのウソツキシャーマン」「ラ・グランハ」「デッド・オブ・ウインター:ロングナイト」「ワイナリーの四季」と,大箱の話題作がズラリと並んでいた |
【ホビージャパン】「ヨーヴィック」「炭鉱讃歌カードゲーム」「アグリコラ:ファミリーバージョン」といった作品を先行発売する中,注目を集めていたのはペンギンのおはじきアクションゲーム「アイスクール」。汚しを入れた凝ったコンポーネントが魅力のゾンビゲーム「ヒット・ザ・ロード」も面白そうだ |
【ジーピー】「カタン」でお馴染みのジーピーは,「バルセロナ」と「ヴィアネビュラ」の2作を出展。同社は,「カタン」以外のボードゲームの輸入・販売にも力を入れてきているようだ |
【オインクゲームズ】会場中央で大いに目立っていたオインクゲームズ。昨年のゲームマーケット大賞受賞作「海底探険」の佐々木 隼氏による新作「死ぬまでにピラミッド」を出展し,賑わいを見せていた |
【テンデイズゲームズ】「キャピタル・ラックス」と「アベニュー」を,日本語マニュアル付きで発売していたテンデイズゲームズ。ゲームマーケット2016春でカワサキファクトリーが販売していた「トリック・オブ・スパイ」も,テンデイズゲームズよりあらためてリリースされた |
【ニューゲームズオーダー】「キャント・ストップ」と「バサリ」の日本語版がついに登場。どちらもしばらく入手しづらい状況だったので,ファンには嬉しいかぎり。日本独自のアートワークも付いている |
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