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[GDC 2019]海外のeスポーツ事情が語られた「ESPORTS DAY」をレポート
タイトルどおり,eスポーツに関連したセッションが中心になっており,さまざまな視点から海外のeスポーツ事情が紹介された。その中から,気になる話題をいくつかピックアップしてお届けしよう。
eスポーツ選手の育成には健康が大事
メンタルケアでとくに重要なのは,休憩を入れることだ。eスポーツ選手は,1日に何十時間と練習するため,デスクに座っている時間が長く,そうした生活が知らず知らずのうちに心身に負荷をかける。適度に休憩を取ることはもちろん,軽い運動も大切で,そうした注意をゲーム内で促す仕掛けがあるのがベストだそうだ。
もちろん,これはeスポーツ選手に限らず,ゲームを遊ぶすべての人にいえる話で,最近ではロード中の画面やゲーム内のポップアップで,適度な休憩を促すタイトルも見られるようになってきた。
eスポーツにおけるスポーツマンシップとコーチング
eスポーツに詳しい文化人類学者のMorgan Romine氏は,eスポーツのスポーツマンシップとコーチングの事例を紹介した。Romine氏は学生時代にバスケットボールの強豪チームに所属しており,そこでコーチから学んだことは,eスポーツにも通用するという。
Romine氏は,良いスポーツの条件は競争における尊敬と誠実さがしっかりしていることであり,対戦相手への感謝も忘れてはいけない。そのようなスポーツマンシップを指導するのもコーチの仕事であり,技術を教えるだけでは本当の意味での良い選手は育たないという。
しかし,そうした指導を受けた経験のない選手が,単にゲームがうまいという理由だけでコーチを務めるのが,現在のeスポーツの実情だとRomine氏は語る。
McGee氏とも重なるが,コーチングがしっかりしていないと健康面にも影響が出る。また,スポーツマンシップが十分に育っていない選手は感情を制御できない傾向があるという。Romine氏は,こういった悪い影響を「毒性」と表現していたが,毒性はコミュニティにも蔓延する可能性があるから厄介だ。
eスポーツ選手の不祥事――とくにネット上の不用意な発言と,その結果としての炎上などは,このあたりが深く関わってくるのだろう。
eスポーツのストリーミング配信における言語格差
IntersportのWalter Padilla氏と,TwitchのPablo Montero氏が共同で行ったプレゼンテーション「Esports Day: Internationalizing Esports: How to Engage Players Across the World」の中では,eスポーツのストリーミング配信での言語格差が紹介された。
ゲーム内の技の名前でも,国によって呼び名が異なる場合がある。例えば「Fireball」という技は,スペイン語だと「Bola de fuego」だ。もっとも,世界大会などのストリーミング配信では英語がメインになることが多いため,Bola de fuegoという言葉が配信に出てくることは,ほとんどない。
それ自体は仕方がないが,問題はスペインで行われる大会でも,英語圏での呼び方が“優先”される場合があることだ。英語圏以外の地域のコミュニティを活性化したいのであれば,そうした部分にも配慮する必要があるとMontero氏は述べた。
しばしば重なるeスポーツとWWE
「The Hero vs the Villain」と題されたケースでは,WWEのプロレスラーであるダニエル・ブライアン選手とトリプルH選手の例が紹介された。ブライアン選手はかつて,トリプルH選手とその舎弟であるオートン選手にはめられて王座を奪われたが,後に行われたWrestlemania 30でトリプルH選手をマットに沈め,見事に王座を奪取した。
このブライアン選手をヒーロー,トリプルH選手をヒールとした構図と重なるのが,北米のeスポーツ大会「Winterbrawl X 2016」で行われたFilipino Champ選手とKane BlueRiver選手による戦いだった。
「ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3」を使ったこの試合では,Filipino Champ選手から散々な煽りを受けてきたKane BlueRiver選手が,最終マッチでハルクを使い3タテで勝利を決めた。
eスポーツとWWEを重ねる展開にはやや無理があるような気がしなくもないが,こうしたエンターテイメント性が,今後のeスポーツの発展を助けることになるのかもしれない。
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