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PCからクラウド,そしてIoTに舵を切るMicrosoftの真の狙い
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印刷2019/06/04 23:00

イベント

PCからクラウド,そしてIoTに舵を切るMicrosoftの真の狙い

MicrosoftコーポレートバイスプレジデントのNick Parker氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / PCからクラウド,そしてIoTに舵を切るMicrosoftの真の狙い
 2018年のCOMPUTEX TAIPEI 2018におけるレポートで,MicrosoftがPCの話題よりも,クラウドサービスのサブスクリプションや,当時新しく発表されたばかりの組み込み機器向けセキュリティ管理ソリューション「Azure Sphere」のアピールに時間を割いていたことを紹介したが,2019年はその傾向がより強くなっていた。
 2019年5月29日に台北市内で開催されたMicrosoftの基調講演では,1時間半にわたって実施された講演のうち,Microsoftコーポレートバイスプレジデント(CVP)のNick Parker(ニック・パーカー)氏によるパートナー向けのメッセージが10分間,同CVPのRoanne Sones(ローン・ソーンズ)氏によるWindowsの新機能紹介が20分弱,そして同バイスプレジデントのRodney Clark(ロドニー・クラーク)氏によるIoT(Internet of Things:組み込み系コンピューティング)関連の話題が1時間以上と,明確にIoTのアピールに比重が置かれている。

 講演後にParker氏と立ち話で意図するところを確認したところ,「IoTはいま最も急成長中の分野であり,売上や可能性も大きい。Microsoftとしても当然力を入れていく」とのことで,明確にPCよりもIoT分野に力を入れていきたいという姿勢を示していた。

 COMPUTEXにおける講演で重要なのは,これが一般ユーザーを対象としたものというより,台湾に多く存在するODMやOEMのパートナー各社に対するメッセージ性が強いという点だ。つまり,PCは現状のまま維持したとして,「残りの力の多くをIoT分野でのソリューション開発と顧客開拓に注いでほしい」ということにほかならない。この点に留意して今回の講演を俯瞰すると,いろいろ見えてくるものがある。


「エッジ」としてのPC


 かつてPCの盟主として君臨していたMicrosoftにとっては,Windowsがある意味ですべてだった。だが現在,WindowsというOSは,ユーザーをOfficeや各種クラウドサービスへと誘導するためのフロントエンドという位置付けになっている。

 Windowsの新機能としてアピールされたのは「Your Phone(スマホ同期)アプリにおけるスマートフォン連携機能の強化」「フォトアプリのAIによる検索機能の強化」「Inkにおけるペンを使った漢字の認識機能の強化」の3点で,このほかに「音声認識での文章入力」のデモストレーションも披露されている。
 これらは便利ではあるものの,正直なところ非常に地味な進化といった印象だ。ひとついえるのは,これら機能の多くはMicrosoftのクラウドサービスで培われた機械学習の成果がフィードバックされてきた結果だということだ。Windowsではないプラットフォーム上で機能を成熟させ,それを「エッジ」で活用しやすい形に落とし込み,Windowsの最新機能として提供する。Windows OSが使いやすくなること自体は歓迎だが,すでにMicrosoftの中心にWindowsはないということの一例ではないかと筆者は考える。

[Microsoftの考える「モダンなOS」に対するビジョン
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Your Phone(スマホ同期)アプリはWindows 10で強化が続いている機能のひとつだ
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フォトアプリはAI機能対応により,標準でライブラリ内のキーワードによる画像抽出が行えるようになった
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IoTの世界での中核を目指す


今回のメインテーマはIoT Transformationだ。これまでは台湾のパートナー企業に向けてPCエコシステム中心のメッセージが多かったMicrosoftだが,よりIoTデバイス向けのソリューション開発を進めるよう促している
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 「デジタルトランスフォーメーション」という言葉がある。定義はさまざまだが,ITを使って仕事や生活をより豊かでよい方向へと変革させていくことを指している。Microsoftは,企業のビジネス改革でこのデジタルトランスフォーメーションという言葉をよく使っているが,今度は「IoTトランスフォーメーション」という形で,これをIoTの世界にも波及させていきたいと考えているようだ。そのためのツールや環境を多く用意し,台湾のパートナー企業各社が活躍しやすい土壌を作り出すのがその狙いとなる。

 Microsoftによれば,年率ベースで同社のクラウドサービス「Azure」に接続されるIoTデバイスは150%ペースで成長し,4100種類以上のデバイスが開発されているという。一方で,全世界で数十億以上と見込まれる大量のIoTデバイスを配置し,それらをクラウド接続して逐次監視・管理する仕組みを作るのは非常に難しい。とくにかつて組み込み機器と呼ばれていたIoTの世界では,いまだ職人芸的なコーディング作業で個々のデバイスの制御プログラムが書かれているケースも少なくなく,ここの生産性を上げることがエコシステム拡大にとって重要となっている。
 そこでMicrosoftがアピールするのが,2019年5月上旬に開催された開発者会議「Build 2019」で発表した「IoTプラグ&プレイ」の仕組みだ。

今回最大のトピックのひとつが「IoTプラグ&プレイ」だ。エッジ側とクラウド側の2つのデバイス(サーバー)をコーディングなしで,PCの「プラグ&プレイ」のように簡単に接続できる仕組みを提供する
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 簡単にいえば,認定済みのデバイスであれば,一切のコーディングなしでIoTのシステムを作れる仕組みとなる。必要な設定ファイルさえ用意すれば,すぐにAzureクラウドに接続できるようになるという。かつてPCの世界でWindows 95に「プラグ&プレイ」が導入されて周辺機器接続が容易になったように,IoTの世界でも同様の概念を持ち込もうという考えだ。
 これに去年発表されたAzure Sphereを組み合わせれば,管理までを含めて安全にIoTシステムを運用できるようになる。
 管理コンソールとしては「Azure IoT Cental」が用意され,接続されたIoTデバイスをダッシュボードを通じて管理できるようになる。問題が起きれば,アラートを通じてすぐに個々のデバイスの稼働状況やレポートを確認できる。

Azure IoT Centalのダッシュボードでデバイスの稼働状況を見ているところ
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複数の監視カメラを稼働させてエラー検出を行い,アラートが上がったことを確認後に該当するカメラの情報をチェックする
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 これらの仕組みをうまく活用して,パートナー各社にはIoTデバイスやソリューションをどんどん開発し,市場を盛り上げていってほしいというわけだ。ただ注意点としては,IoTの世界はデバイスの数こそ多いものの,単価が低く,単一デザインの製品が広く拡散できるわけではなく,PC市場とは異なっている。IoTの市場を真に「おいしい」ものとするにはソリューション開発が重要で,どのように顧客を獲得し,保守契約や周辺の開発も含めてどのようにカバー範囲を広げていくかが鍵になると考える。
 同時にMicrosoftとしては,この過程で自社のクラウドサービスを活用してもらえばそれだけ売上につながるわけで,自らのプラットフォーム上で商売をするベンダーが増えれば増えるほど恩恵を受ける流れとなる。すべてをエッジからクラウドへと誘導していくということで,ある意味ではIoTもPCも,その根底にあるものはMicrosoftにとって何ら変わりないということかもしれない。

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