ニュース
[CEDEC 2019]「ギフトが当たると勝手に動くVTuberアバター」セッションレポート。2人のVTuberが握手し・肩をつかみ・抱き寄せる。物理エンジンを利用した演技サポートシステムを体験
そんな中「自分のアバターが,ほかのアバターやオブジェクトに接触しても,物体を貫通してそこから先に進むことのない技術」がTwitterで発表され,CEDEC 2019ではインタラクティブセッションとして公開された。
簡単に説明すると,ほかのアバターに対し“触れた”状態がよりリアルに表現されるだけでなく,“押す”ことで,ほかのアバターの姿勢に影響を与えることもできる,というもので,いままでありそうでなかった技術となっている。
同システムを体験するとともに,開発者にいろいろとお話を伺う機会を得たので,レポートしていこう。
■「VR空間での演技」の表現力が飛躍的に向上
この技術が実際にどのような効果を発揮するかについては,実際に動画を見てもらうのが早いだろう。
物や人が当たるとアバタが勝手に動いて貫通しない研究をしています(物理エンジン使用)
— すずかけの民 (@suzukake0) September 2, 2019
CEDECで一人バージョンの展示をします!
題名「演技サポート!ギフトが当たると勝手に動くVTuberアバター」#VRoid #CEDEC pic.twitter.com/3gQVLGKjng
動画を見てわかるように,オブジェクトを通過しない&影響を与えるといった動作が,2人のアバターの表現に大きな違いをもたらしている。また,現在の環境では,同一空間に4人まで存在することができるそうなので,さらなる複雑な表現も可能になりそうだ。
以下,会場で実際に演じてもらった写真をご覧いただきたい。
肩を掴む |
頭を撫でる |
頭を撫でる。右の人物がこちらを向いているのは,アイドルモーションとの兼ね合いもある |
相手のあごに指をあて,そのまま顔をクイっと上に向けさせることも可能 |
この技術にはUnityが用いられているそうだが,使用した物理エンジンは東京工業大学長谷川研究所で開発された独自のものとのこと。
ぱっと見ると処理負荷が高そうにも思えるが,展示に用いられているPCは,Core i7の第7世代CPUで,グラフィックス関係はOculus Riftの最低要求水準とのこと。写真では,ディスプレイの裏に少し見えている小型PCで十分に駆動させることができる。
現状で実装されている動作としては“押す”以外にも“掴む”ことが可能だ。しかしそうなると気になるのは,動作がコンフリクトする場合だろう。
例えば「左のキャラクターA」が「右のキャラクターB」の腕を掴んでいて,AがBの腕を前に引っ張ったとしよう。このとき,同時にBが自分の腕を引き寄せようとしたとすると,どのような挙動が発生するのか?
結果だが,「まずは動きが拮抗して,どちらにも動かなくなる」という。また,その後「より長くその動作をしていた側」に対して腕が動くことにもなるようだ。
現状ではキャラクターに対して「硬さ」というパラメータが設定されており,その値によって,押されたり引かれたりすることによって受ける影響の大きさが変化するとのこと。
ちなみに装着者の視野は一人称視点で,今回のデモの場合は自分の腕ともう1人のアバターが主に見えるようになっている。
またVR空間上にある「奥の壁」には,「現状を観客視点でみた様子」が表示されており,演技する人にとっては大きなサポートとなっていた。
実際にこの環境を試用させてもらったところ,慣れは必要なものの,「相手を押したり引っ張ったりできる」効果は想像以上に大きいと感じた。「ゲームの基本はインタラクティブであること」とはしばしば言われることだが,「押したら動く」という当たり前のインタラクティブ性には大きな魅力がある。
また,このシステムによって作れる芝居(映像表現)が魅力的であることは,上の写真や動画がなにより雄弁に物語っている。
ともあれ,本技術がVTuberを含むVRを用いた表現においてピンポイントで大きなインパクトをもたらすのは,ほとんど疑いがない。今後の洗練と発展に期待したい。
4Gamer「CEDEC 2019」記事一覧
- この記事のURL: