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もし転職したとしても子どもにプログラミングを教え続けたい。TGSに3年連続で出展するキッズプログラミングアカデミーの代表が語る活動への思い
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印刷2019/09/25 12:00

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もし転職したとしても子どもにプログラミングを教え続けたい。TGSに3年連続で出展するキッズプログラミングアカデミーの代表が語る活動への思い

 2019年9月12日から9月15日に開催された東京ゲームショウ2019の一般日に,中学生以下の子どもとその保護者のみ入場可能なエリア「ファミリーゲームパーク」が設けられていた。毎年ゲーム体験ゾーンや,eスポーツチャレンジなどさまざまなコーナーが賑わいを見せているファミリーゲームパークだが,そのコーナーの1つ「ゲーム作り体験教室」に,ここ数年出展し続けている「キッズプログラミングアカデミー」(以下,KPA)という会社がある。

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 2018年は複数の会社が参画していた「ゲーム作り体験教室」だが,今年はKPAの単独で行われていた。そんななか4Gamerは,ブースにお邪魔し,代表の関 純治氏に取材を実施。KPAを興したきっかけや,TGSにプログラミング教室を出展し続ける思いなどを聞いた。

取材にうかがった時間,ゲーム作り体験教室では,小型コンピューターIchigoJamを使ってシューティングゲームを作るワークショップが行われていた
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こちらはブースで行われていた,色付きビーズを使ってドット絵のキーチェーンを作るというもの
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キッズプログラミングアカデミー代表の関 純治氏。ゲーム開発会社ハッピーミールの代表でもあり,最近ではファミコン風のテキストアドベンチャー「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」を手がけた
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4Gamer:
 よろしくお願いします。
 まず,KPAがどういった活動をしているのかお聞かせください。

関 純治氏(以下,関氏):
 我々はハッピーミールというゲーム開発会社をやっているんですが,これから小学校で始まるプログラミング教育に備えて,現役のゲーム開発者の観点から子どもたちに教えられるのではないかと考え,活動を始めました。私自身もちょうどゲーム開発の経験を生かした新しいことを始めたい,社会貢献をしたいという思いもありましたので。

 最初はゲームを作る小さなイベントを行っていただけなのですが,そこからどんどん活動の幅が広がっていき,今は千歳烏山でゲームを作る傍ら,プログラミング教室を開講し近所の子どもたちに教えています。

4Gamer:
 活動を始めて何年になりますか。

関氏:
 およそ3年前ですね。プログラミング教室は2年目です。

4Gamer:
 おととし,昨年,今年とファミリーゲームパークへ3年連続出展されていますね。

関氏:
 もともとはファミリー向けのコーナーと,スマホゲームのコーナーに10年くらい出展していたんですが,3年前から子どものプログラミング教育の特設コーナーが設けられるようになったんです。今はそちらに本腰を入れています。

4Gamer:
 先ほどのワークショップでは,IchigoJamを使ったゲーム作りイベントを行われていました。

関氏:
 はい。そのほかにも今回はScratchを使ったゲーム作りや,“言葉のプログラム”を使って“ロボットせんせい”を動かすワークショップなどをやっています。

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4Gamer:
 Scratchを使ったゲーム作りは分かりますが,“ロボットせんせい”……とは一体?

関氏:
 機械を使わずにできるプログラミング体験をコンセプトにしたワークショップです。2020年に始まる小学校におけるプログラミング教育では,実際にコードが書けようになることよりも,「プログラミング的思考」を身につけることに目標が置かれています。“ロボットせんせい”はその「プログラミング的思考」を何となく体験するものです。

4Gamer:
 具体的にはどのようなことをするのでしょうか。

関氏:
 ロボットの恰好をした講師に向けて子どもたちが命令をして,あるミッションを達成するというのがワークショップの内容です。
 例えば,人間に指示する時って,右に体全体を向けてほしい場合も,首だけを右に振り向けてほしい場合もただ「右を向け」と言うことが大抵ですよね。子どもたちも同様に“ロボットせんせい”に「右を向け」と言うんですが,正確に動かすプログラムとしてそれだけでは不十分なんです。「体を右に90度向けろ」といったより細かい指示をしないと,“ロボットせんせい”は思わぬ動きをしてしまいます。

4Gamer:
 プログラミングというものがどういうものかをPCを使ってではなく,言葉を使って教えるということですか。

関氏:
 はい。ワークショップを通して,「プログラミングとは,コンピュータが理解できる言葉で正確かつ細かく指示することなんだよ」ということを理解してもらうのが狙いです。

4Gamer:
 今年のプログラミング教室はKPA単独での開催ということですが,東京ゲームショウに出展し続けている理由をお聞かせください。

関氏:
 我々やプログラミングについて「知ってもらう」ということが最大の理由です。教育というのは結局のところ「実績」だと思うんですよ。一度の出展だけで終わらせずに活動し続けて,授業のクオリティを上げていくという積み重ねが大切なんです。

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4Gamer:
 「KPAは東京ゲームショウにずっと出ているよね」と認識されるようになる未来を見据えていると。

関氏:
 はい。私たちも根付くには10年,20年くらいはかかる覚悟でいます。プログラミング教育は,まだいち事業として収益を出せる段階ではないというのが正直なところです。ただ,そこは別の仕事で相殺しながら続けていって実績とノウハウを蓄積してきたいですね。

4Gamer:
 現役のゲーム開発者の観点から子どもたちに教えるというお話がありましたが,学校教育とは違った目線としてどのような形を目指しているのでしょうか。

関氏:
 私が最終的に目指しているのは「桃太郎電鉄」のように楽しみながら自然に知識を学べる教育です。学校教育の現場だとどうしてもお堅くなってしまうと思うんですよね。現役の開発者だからこそ分かるゲーム開発の面白いところや楽しい部分を子どもたちにしっかり伝えて,プログラミングに興味を持ってもらえるようにしたいです。

4Gamer:
 私も子どものころ,桃鉄で都道府県の位置関係や名産を覚えた人間なので「桃鉄」のようなという表現はとても納得できます。

関氏:
 親目線では勉強しているように見え,子ども目線からは遊んでいるように感じるものを作るのが理想です。親は「もっとやりなさい」と言って,子どもは「もっとやりたい」と言ってくれればお互いにWIN-WINですよね。

4Gamer:
 先ほどのワークショップを見ていて印象的だったのは,必ずその子の名前を読んでから子どもと接していたことです。当たり前に思えますが大切なことだなと思いました。

関氏:
 子どもたちには「参加している」という空気を感じてもらいたいですし,名前を読んであげたほうが仲良くなれるんですよね。昔の子どもは「呼ばれて恥ずかしい」というシャイな子が多かったんですが,今の子どもは大丈夫な子が多いです。

4Gamer:
 呼ばれたらやっぱり嬉しいですよね。

関氏:
 ただそこにいるだけのモブキャラみたいな扱いではなく,「君たちみんながこの世界のメインキャラクターなんだよ」という思いで教えています。名前をちゃんと覚えてあげれば子どもたちも「自分のためにやってくれているんだ」と思ってくれて,やる気も違ってくるかなと。もしかしたら嫌な子もいるかもしれないですけど,そこは自分のポリシーとして心がけています。

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4Gamer:
 活動3年目で,気をつけるようになったことや意識するようになったことはありますか。

関氏:
 そうですね……これはイベント活動ではなく,普段のプログラミング教室の話ですが,子どもの年齢などに応じて目標設定の仕方は意識して変えるように気をつけています。
 小学校中学年以上になると,いろんなことを吸収して理解するのも早いんですが,低学年の子はそもそも集中力が続かなかったり,思った以上にテキスト教材通りにやってくれなかったりということが多かったんです。
 なので,今はテキスト教材で教えることをいったん止めて,ロボット教材を使ったもっとゲーム的なものから始めるようにしています。

4Gamer:
 現状の課題などはありますか。

関氏:
 こういったイベントでのワークショップは一期一会なので,せっかくプログラミングに興味を持ってもらっても,我々の教室界隈在住の人しか,その後のフォローができないので,そこは何とかしないといけないなと思っています。
 また,教育とゲームの境目をどこに置くかは常に揺れています。ゲーム寄りにしすぎると遊んでいるだけになってしまうので,そこのさじ加減は非常に難しいです。

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4Gamer:
 そうなってしまうと,親御さんにも「遊んでいるだけ」と思われてしまいそうですね。

関氏:
 あと,親御さんに対するコミットが難しいということも挙げられるかもしれません。もし,「ゲーム作りましたけど,それが何の役に立つんですか」と言われたら「いろいろなことが身に付いてます」みたいな,あいまいな答えしかできないんですよ。
 我々ゲーム業界の人間からすれば「おっ,こんなゲーム作れたのか! いろいろ成長できたな!」と思いますが,お金を払っている親御さんからすれば「それで結果としてどうなったの?」と言われてしまわないかということを懸念してます。

4Gamer:
 それはゲームに携わる人にはない視点かもしれません。私はメディアの人間ですが,ゲーム1本を子どもが作ったらすごいと思いますし,いろいろ身についていることが理解できますが,一般の方はそうではないと。

関氏:
 そこまで極端なケースはなかなかないですし,今教室に通っている子どもの親御さんには理解を示していただいてます。ただ,学習塾のような結果を求められるものにするのは難しく感じているので,習字やスイミングスクールのような習い事の1つとして着地できればなと思っています。

4Gamer:
 なるほど。さまざまな課題も多いと思われますが,最後に今後の意気込みをお聞かせいただけますか。

関氏:
 プログラミング教育の活動は何としても続けていかなければいないと思っています。こういうのは続けることに意味があるし,逆に途切れてしまったらそこで終わりなんです。極論を言ってしまえば,たとえ転職して仕事が変わったとしても,この活動は続けると思います。仕事の傍らに少年野球を教えているようなイメージですよね。

4Gamer:
 東京ゲームショウには来年も出展される予定ですか。

関氏:
 はい。これからも東京ゲームショウに出展し続けたいと思っていますので,来年もよろしくお願いします。

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「キッズプログラミングアカデミー」公式サイト

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