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[GDC 2021]スクウェア・エニックスが,メカのモーションに関する新システム・MULSを公開。デモムービーも披露されたセッションをレポート
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印刷2021/07/21 17:05

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[GDC 2021]スクウェア・エニックスが,メカのモーションに関する新システム・MULSを公開。デモムービーも披露されたセッションをレポート

 日本時間7月20日に開幕した「Game Developers Conference 2021」(GDC 2021)の初日,スクウェア・エニックスによるセッション「Animation Summit: From Design: Full Procedural Animations for Mechs」が行われた。

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 これは,スクウェア・エニックスが開発を進めている,メカ(ロボット)のモーションをよりリアルに表現するアニメーションシステム「MULS」(Multi Unit Link System)に関するセッションで,同社のシニアAIエンジニアである並木幸介氏とAIエンジニアの森 寅嘉氏が登壇。技術デモムービーを交えながら,同システムについて解説した。

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 MULS開発の目的は,メカをフルカスタマイズ可能なゲームに対応したアニメーションシステムの構築にあった。
 これまでのゲームでは,腕や脚といった部位とそれらの動きは,あらかじめ作られたアセットを設定することで表現されている。この方式では,アニメーションで決められた動きが制約となり,メカのモデルやパーツのデザインに多様性を持たせることが難しい。これらの問題を解決するべく,スクウェア・エニックスが取り組んでいるのがMULSだ。

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 MULSは,メカの腕や脚,腰といったパーツそれぞれのデータをもとにアニメーションが自動生成するシステムで,パーツの組み合わせや関節の形状などによって異なる動きが表現できる。このシステムはさまざまな形状のメカに対応できるのはもちろん,地形によって異なる歩行時の動きなども再現可能だという。これを実装するために,順運動学や逆運動学の研究に基づいたアプローチも行われている。

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 ここで技術デモムービーが披露された。メカが歩行を開始し,ターゲット(的)を発見。狙いを定めて左腕に所持しているライフルで射撃。直後に新たなターゲットを発見し,今度は右腕のライフルで射撃。続けて遠方のターゲットを右腕のライフルで連続して撃つ。こうした一連のシーンに合わせて,歩く,狙う,探す,見る,見回す,アイドリング,左右の武器の使用といった,MULSが生成したそれぞれの動きの解説が行われた。
 また,終盤では,同じくMULSで作成された敵のメカも登場し,自機がライフルの弾薬切れで後退し,距離を取った場所からミサイルを撃って敵メカを撃破するといった戦闘時の動きも紹介された。

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静止画では分かりにくいが,こちらが技術デモを撮影した写真。「フロントミッション」シリーズのヴァンツァーそっくり……というかそのもののメカが登場。ゼニス“風”のメカでさまざまな動きが紹介され,ほんの少しだが赤いフロスト“風”の敵メカとの戦闘シーンも披露された
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 MULSによって作り上げられるメカは,ボディ,左右の腕,脚という4つのパーツで構成されている。今回披露されたメカは人型だが,それぞれを組み替えることで,さまざまなバリエーションが可能になる。歩行と照準(エイム)のアクションによって,それがさらに詳しく説明された。

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 すべての部位には可動域の最大角度と最小角度が設定されており,それらはパーツの形状によって決定される。メカのモデルにはアニメーションデータが設定されているが,それは動きが決められたアセットではなく,歩行時のステップの長さやエイムの動作にかかる時間,索敵時に回転する角度などのパラメータとのこと。それらをもとにして,メカの形状やパーツの組み合わせによって異なる動きが再現されるという。

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 例えば歩行時は,足が地面に着地して触れるとき,地面に踏み込んでいるとき,そして離れるときという3つのキーとなるポーズがあり,それらはつま先やかかとの形状,地面に足が触れるときの角度などといったパラメータをもとに生成される。

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 メカが動き出す前に,歩行する道筋をシミュレートするfootstep maker(フットステップメーカー)が働き,それに準じて歩行スタート。カーブする場合は,外側の足の動きが大きくなり過ぎないよう,内側になる脚の動きが小さくなるといったように,各パーツがその場面に沿った動きとなる。脚だけではなく,ボディの荷重がかかる脚のパーツの軸となる部分や,歩くときに上下する腰の高さなども動きの表現に影響するようだ。

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 エイム時の動きは,このために作り上げたAimIKというアルゴリズムを適用したものの,パーツにある可動域の制限をAimIKが考慮できないという問題に直面したとのこと。例えば,時計回りに腕を回せば照準を合わせられる場合でも,状況によっては反時計回りの不自然な動きを取ってしまうのだ。
 さまざまなポーズのパターンを用意し,そのデータベースを検索して最適なポーズを取れるようにするという解決策で,この問題は解決できたようだが,うまくエイムポーズが取れても銃の向きや角度がおかしくなるといった課題が残っているという。ほかにも,歩行時は1フレームごとにシミュレートが入るため,メモリとCPUのコストが(関節が多いメカの場合はとくに)高くなる点や,可動域の範囲によっては奇妙なポーズになるといった問題があるとのこと。

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 現在,メカのパターンは75種類あり,それらは脚の関節の構造や数が異なり,それによって異なる動きが表現できるという。つま先やかかとが複数ある。またはつま先がないといった形状のものもあり,あらゆるパターンのメカに対応できるようだ。

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 今回披露されたのは人型のメカのみだが,四脚の機体や固定されたアームのモデルなども試していくという。また,まだたどり着けていない“スタイリッシュなポーズ”も目標としてあるそうだ。システム面にはまだいくつかの問題があり,それを解決しないかぎり製品化にはつながらないとのことで,今後はそれらに取り組みながら,さらにシステムの機能を拡張していくという。

 新作メカゲーへの期待も高まるところだが,あくまで現状はゲーム開発の研究段階。これを採用した新作がすぐに披露されるわけではないが,現段階でのデモでもかなり興味深いものとなっていたので,今後の進展にも期待だ。

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