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[CEDEC 2023]生物多様性は,実はゲームやブロックチェーンと相性がいい。3Dデジタル生物標本の活用アイデアなどが語られたセッションをレポート
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印刷2023/08/25 15:15

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[CEDEC 2023]生物多様性は,実はゲームやブロックチェーンと相性がいい。3Dデジタル生物標本の活用アイデアなどが語られたセッションをレポート

画像集 No.001のサムネイル画像 / [CEDEC 2023]生物多様性は,実はゲームやブロックチェーンと相性がいい。3Dデジタル生物標本の活用アイデアなどが語られたセッションをレポート
 ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2023」の2日目となる2023年8月24日,「3Dデジタル生物標本:ゲームに生物多様性のリアリティを!」と題されたセッションが行われた。

 自然保護の観点はもちろん,我々が生きるうえで重要である「生物多様性」をテーマに,高品質な3Dスキャンで制作された生物の3Dモデルの制作経緯やメソッド,生物多様性の認知につながるゲームでの応用などが語られていたのでレポートしよう。
 スピーカーは,リアルな生物3Dモデルを集めた「3Dデジタル生物標本」をワールドワイドに2000点以上公開している,一般社団法人九州オープンユニバーシティ 研究部門の研究員である鹿野雄一氏だ。

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生物多様性の意味と価値,そして美しさ


 最初に,生物多様性とは何か。その意味や価値,そして美しさの説明が行われた。
 そもそも,生物多様性とはどういう意味なのだろうか。詳しくは鹿野氏のサイトを確認してほしいが,簡単にまとめると,「生物において,環境から遺伝子までそれぞれのスケールにおいて変異・多様性が存在する」ことを指す。

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 生物多様性の話をするうえで切り離せないものが,固有性――生きものそれぞれが持つほかの個体とは本質的に異なる要素“唯一無二性”のことだ。生きものはそれぞれ何かしらの固有性を持っており,多様性とはつまり固有性の集合体であるということは,重要なポイントとなる。

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 世界のあらゆるシステムは,固有性とそれからなる多様性がなければそもそも成立しない。これは野生の生きものだけではなく人間も同じで,その人間が作り出すアニメやゲームにも当てはまる。

 例えばポケモンにピカチュウしかいなければ,ゲーム自体はもちろんゲームの世界が成立しない。固有性を持つさまざまな種類のポケモンたちが存在し,それぞれにほのお(炎)やみず(水)といった属性や,生息地の違いがあるからこそ,ゲーム性や世界観が成立する。世界は固有性とその集合体である多様性で成り立っていること。これこそが価値のあるもので,そして美しさであるわけだ。

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 また,生物多様性は,絶対的に数多くの種が存在することを指す「アルファ(α)多様性」と,相対的にほかとは異なる種が存在することを指す「ベータ(β)多様性」という2つの概念がある。

 多様性が高いということは,どの地域でも一定の種類の生物が均一のバランスで統一されていることでは決してない。例えばA〜Dの地域があった場合,地域Aは7種類の生きものがいれば地域Bは2種類,地域Cは1種類しか生息しておらず,地域Dは5種類生息している。このバラバラなバランスこそが多様性なのだ。
 1種類しかいない地域Cは多様性がないように見えるかもしれないが,生物多様性の観点からベータ(β)多様性の高い地域ということになる。

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 再度ポケモンを例に挙げると,地域によって生息しているポケモンが違うということは言うまでもないことだ。また同じ種類でも希少種がいたり,「○○のすがた」でおなじみのリージョンフォームの個体がいたりする。このように生物多様性はゲーマーもゲームの世界で自然に触れている部分なのだ。

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 このように生物多様性は,とても面白くてエンタメとの親和性も高い分野であるという。そして,生物を種のレベルで認識している数少ない民族であり,多様なキャラクターが登場するアニメやゲームのコンテンツに慣れ親しんでいる日本は,実は得意な分野とも言えると鹿野氏は考えているそうだ。

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「3Dデジタル生物標本」と制作のきっかけ


 生物多様性の話に続き,話題は今回のテーマとなる「3Dデジタル生物標本」の話に移った。
 こちらの制作に至ったもともとのきっかけは,鹿野氏が沖縄の石垣島にて,日本では絶滅したとみられていたタイワンコオイムシを見つけたことにあるのだそう。

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 通常であれば,生物を標本にして博物館などの施設に寄贈する流れになるが,56年ぶりに再発見されたタイワンコオイムシを,そのまま寄贈するのはもったいないと思った鹿野氏は,CTスキャンにかけてデジタル化しようと考えたという。

 ちょうど当時,生物標本のDX化(Digital Transformation)の取り組みを始めていたため,CTスキャンの用意があったのだが,なんとこのタイミングで機器が故障。ほかに何か方法がないかと考えたとき,フォトグラメトリー(1つの被写体をさまざまな角度で撮影し,複数枚の写真から3Dイメージを作る手法)にたどり着いた。

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 フォトグラメトリーによる制作は見事に成功し,これが「3Dデジタル生物標本」制作の第1号となった。こうしてできたタイワンコオイムシの3Dモデルを科学論文に使用し,3Dモデルの共有プラットフォーム「Sketchfab」にて公開。これを皮切りに鹿野氏は,さまざまな標本の3D化へのチャレンジをスタートした。

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3Dデジタル生物標本の作り方と課題,意義


 しかし,標本の3D化はすぐに壁にぶつかったそう。もともと体の固い昆虫の標本であるタイワンコオイムシと違い,魚や蛙といった柔らかい標本は撮影の難度が高くなる。また台などに乗せて撮影する必要があり,全球ではなく半球の3Dモデルしか作れなかったのだ。

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 これらの解決策について,鹿野氏は趣味の釣りからヒントを得たのだそう。クサフグを釣り上げたとき,針にぶら下がったフグがクルクルと回っているのを見て,標本を縦に宙づりにぶら下げてクルクル回しながら写真を撮るという方法を閃いた。

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 3D化のソフトウェアは「3DF Zephyr Lite」を使用。撮影はアナログな方法のため,カメラ設定の知識や経験,職人的な技術,撮影技術の鍛錬が必要だが,魚だけではなく植物も試してみて,最良な形を探っていったという。

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 こうして制作した3Dモデルからお気に入りのものと苦労したもの,それぞれ3種類が紹介された。生物の魅力を交えながら紹介されたお気に入りのモデル3種(カブトムシ,蓮,アカシュモクザメ)も伝えたいところだが,本稿では3D化が難しく苦労したモデルとして技術的な解説がなされたトクビレ(ハッカク),ミナミテナガエビ,テナガダコの3種類について触れよう。

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 トクビレ(ハッカク)は,ヒラヒラとした背びれや腹びれが特徴で,そのヒレの薄さが撮影や取り込みときに苦労したという。

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 ミナミテナガエビは,体や名前の由来である長い手(胸脚)自体は難しくないが,細くて長いひげの表現に苦労したという。

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そして“最悪に時間がかかった”というテナガダコ。ぐにゃぐにゃと柔らかい体のため,撮影時の遠心力を一定にしないと体がぶれて計算が合わなくなり,何度も失敗しては撮り直したそうだ。

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 苦労した個体に続いて,デジタル生物標本を作るうえでの課題も語られた。
 一つは,目の表現が難しいこと。目は光に対して網膜で特殊な反射をするため,モデル上では凹として構築されやすいが,錯視によって凸に見えやすいという。

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 滑らかな表面の再現も大きな課題だ。例えばサザエの貝殻の内側は,実際はピカピカとしたものだが,3Dモデルとして取り込むとざらざらなものになってしまう。マスカットも,そのままではきれいに取り込めず,霧吹きで細かい水滴をつけたりしたが,水滴が凹で表現されるが錯視で凸に見えるという状態になった。

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 魚のヒレといった半透明な部分も難しい。技術的な理由でグレーで表現されており,背景が黒だと半透明に見えるが,白バックにすると作り物感が出てしまう。また,質感の例だと,フラッシュを焚いて撮影しているぶん,コガネムシなどテカテカとした体の表現も課題となっているそうだ。

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 そういった苦労をしながら,なぜ鹿野氏は3Dデジタル生物標本を制作するのか。ここではドイツの哲学者ヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel)の螺旋的発展を例にその意義が語られた。

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 生物の生物学・生物分類学における視覚的表現や記述は,描画(絵)からフィルムカメラ,8ミリビデオカメラ,デジタルカメラ,デジタルビデオカメラと螺旋階段を上るように発展してきた。そして現在鹿野氏が取り組んでいる3Dモデル,続いて4Dモデル(鹿野氏自身はそれに関与するかは分からないと語っているが)へと進むであろう生物の記述の発展への貢献という考えがあるようだ。

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 また,生物学的にもプラスになることが大きい。生物は,ホルマリン標本で保存できるもののその姿や色の劣化はさけられない。その点3Dモデルは,実際の色や外部形態を半永久的に残せるので,学術的にも大きな魅力となる。
 また,標本は保管するためのスペースが必要で,貸し出しの際の手続きなどの手間がかかる一方,デジタルであれば保管場所を気にせず,オンラインでアクセスしやすくなることも利点となるわけだ。

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生物多様性は,実はゲームやブロックチェーンと相性がいい


 最後に,3Dデジタル生物標本の応用や,3Dモデルのゲームやエンターテイメントへの適用の可能性について語られた。
 生物の3Dモデルは,すでに特撮映画やARを使用したイベント,メタバース世界の構築,裸眼3Dディスプレイによる展示,フィギュア化,バーチャル空間での化学授業,学校の教科書など,エンタメと教育双方で応用されている。一方,ゲームへの応用は今のところゼロであると鹿野氏は語る。

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 ここで鹿野氏から一番強調したいこととして,「生物多様性は,実はゲームと相性がいい」という意見が述べられた。
 生物多様性を感じられるゲームはさまざまあるが,現状は架空の生態系が多く,実在するものもデフォルメされており,種のレベルまでは細分化されていないことが多い。

 そこでセッションでは,生物を種のレベルまでリアルに再現したコレクションゲーム,3Dモデルの生物が動く没入型3DCGゲーム,あえて不釣り合いなデジタル空間にリアルな生物モデルを投入してそのその違和感楽しむ“クソゲー”など,さまざまな形で生物多様性に触れられる“ゲーム上での応用のアイデア”が鹿野氏から語られた。

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 また生物多様性との相性が高いものとして,NFT(非代替性トークン)ゲームの例も挙げられた。例えばノコギリクワガタは,一見同じノコギリクワガタでも,それぞれ個体差があり,それは形や色が違う唯一無二の個体である。その唯一無二性の価値をNFTという形で表現できるというのだ。

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 また,ゲームでの生物多様性の応用は,生物多様性の理解や保護の意識を広めるうえでも重要なものにもなると語った。
 生物多様性を守るうえで重要なことは,とてもシンプルで,それぞれの人が興味を持つこと。そもそも知らない,興味がないでは守るという考えには至らない。そういう人たちに知ってもらう,興味を持ってもらうには,実際に野生生物のいる自然での環境教育といった直接的な体験が大きいが,都会などに暮らす人たちには難しい。そこで,ゲームやメタバースなどの空間で間接的な体験が提供できれば,それは生物多様性の理解への貢献になるというのだ。

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 種のレベルで生物を覚えるのも“はじめに言葉(名前)ありき”であり,興味を持つには実際の自然である必要はなく,重要なのは知る機会であると鹿野氏は語る。社会学者の宮台真司氏とNianticのJohn Hanke(ジョン・ハンケ)氏の会話から「現実との出会いを触媒するような,あくまで現実とつながり拡張していくメタバース」「現実から人々を逃避させて隔離するメタバース」という2つのワードを引用し,3Dデジタル生物標本の3Dモデルを使えば価値のあるゲームを生み出すツールになりえると語り,セッションは終了した。

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