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ゲーム業界から見たWeb3の未来と可能性とは。スクウェア・エニックスのWeb3ゲームに関わるキーパーソンが意見を交わした講演をレポート
同社のブロックチェーン・エンタテインメント事業部が企画した本イベントでは,NFTホルダーや業界関係者を招いた懇親会や,NFTプロジェクト「資産性ミリオンアーサー」「SYMBIOGENESIS」の新情報発表,キーパーソンたちによる2つのトークセッションが行われた。本稿では,トークセッションの1つ「ゲーム業界から見たWeb3の未来と可能性」をレポートする。
「資産性ミリオンアーサー」と「SYMBIOGENESIS」のキーパーソンが,NFTホルダーからの質問に回答。制作者Q&Aセッションをレポート
スクウェア・エニックスのWeb3イベント「SQUARE ENIX GameX Community Party Vol.1」で,「資産性ミリオンアーサー」と「SYMBIOGENESIS」の制作者によるトークセッションが行われた。各タイトルのキーパーソンがNFTホルダーからの質問に回答した同セッションのレポートをお届けしよう。
スクウェア・エニックス ブロックチェーン・エンタテインメント事業部の事業部長を務める畑 圭輔氏をモデレーターにして行われたトークセッションでは,同事業部の担当執行役員であるスクウェア・エニックス取締役の齊藤陽介氏,ストーリーノート代表取締役の藤澤 仁氏が考えるWeb3の現状や今後について語られた。
トークの最初のテーマは,「Web3というものをどう考えているか」。齊藤氏は,Web3の基盤となるブロックチェーン技術について,「新しいテクノロジーから新しい遊びが生まれるという思いがある」と話した。
続けて,位置情報サービスから「Pokémon GO」(iOS / Android)や「ドラゴンクエストウォーク」(iOS / Android)のような遊び,あるいはARやVRといったXRの遊びが生まれたことに言及。この前例のように,ブロックチェーン技術からも何かしらの新しい発明が生まれると予想できるため,「スクウェア・エニックスとしても,大きな課題の1つとして取り組んでいくべきと考えている」と語った。
藤澤氏は,過去40年のゲームの歴史を振り返りつつ,Web3の現状について語った。
ゲームは一直線に進化してきたわけではない。テレビやディスプレイで高品質のグラフィックスを表示できるゲーム機が登場する一方で,手軽に遊べる携帯機やモバイル端末向けのゲームの流行がくるなど,寄せては返す波のように,進化しては少し戻り,また進化しては少し戻りを繰り返してきた。そう話す藤澤氏は,続けて「Web3の現状は,そうしたゲームの進化の波における局面の1つ。今はWeb3で何ができるのかを手探りしている段階」と持論を語った。
ビックリマンのシール集めのような遊びからスタートし,それにバトルの要素が加わり,ゆくゆくはオープンワールドを目指す。このように,ゲーム性のあるコンテンツに向かっていろいろなことを試しているフェーズにあると,藤澤氏は考えているとのことだった。
次のテーマは,Web3のキーワードである「分散」だ。
齊藤氏は,スクウェア・エニックスを含め「まだ誰もブロックチェーン技術の本当のよさを引き出すものを発明できていない」とし,それを生み出せた人が,次の世界で活躍できるクリエイティブな才能の持ち主であると語った。また,そうした発明は分散に関わるものだけでなく,まったく異なる切り口のものなども,これからいろいろ出てくるだろうとも話していた。
藤澤氏は,分散を「デジタル上のサービスにおいて,主権を民主化すること」だと捉えているとのこと。これまでの一般的なデジタルサービスは,基本的にその提供者が主権を握っている。だが,Web3の登場によって分散型インターネットが広がることで,ユーザーがコントロールできるようになるというわけだ。
「おそらく将来的に,ゲームに限らずSNSなどのサービスでもユーザー主権型のものが登場する。それがどのような形で進んでいくのか見極めていきたい」とも話していた。
「Web3ならでの新しいビジネスモデル」というテーマについては,齊藤氏が「思いついて実現できたら一人勝ちだけど,ここで言ったら真似されちゃう」と苦笑しつつ,「ふんわりとだが,メタバースやユーザー生成コンテンツ,Web2といったワードがどんどん曖昧になっていき,それが昇華されて形になるのかなと思っている」と語った。
さらに齊藤氏は,今後新しいビジネススキームなどが試されていくのではないかとの見解を示した。
法律面など乗り越えなければならない課題があり,Web3コンテンツをローンチさせるのはそんなに簡単ではなく,現状は無難なものばかりになっているが,法整備が進むことでそれも変わっていくということだろう。加えて,ユーザーに何を提供するか,どう継続していくかとった部分の考え方がこれまでの売り切り型のパッケージビジネスとは異なる点に触れ,「難度が高いぶん,やりがいもある」とも話していた。
藤澤氏は,Web3上でデータの売買をすることは,リアルな社会においてパンを売買することと同じと指摘。「それくらい価値観が変わったら,当然ゲームのあり方も変わる。たとえばオープンワールドの中で何を売買するのかと言ったら,デジタルシールを超えるようなデータを売買していくことになる。それが実現するころには,ゲーム性が今の僕らの想像がおよばないところにたどり着くと思うので,ワクワクする」と期待を述べていた。
一方,藤澤氏は,スクウェア・エニックス在籍時代に手がけていたスマホゲーム「予言者育成学園 Fortune Tellers Academy」に言及した。このタイトルは,いわゆるクイズのようなゲームなのだが,ブロックチェーン技術を使った新しいサービスとして,問題作成などの権利をユーザーに渡してサービスを継続することができないかと,当時考えていたことを明かした。
トークの最後には,あらためて「Web3が新しい概念であること」に話題がおよんだ。
齊藤氏は,新しいものであるからこそ,「そんなことを考えるんだ。そんなものを発明するんだと思うようなものを,若い世代が生み出してくれることに期待している」と語る。モデレーターの畑氏も,「若い世代が『自分はこういう世界を実現したい』とチャレンジすることが,ゲーム業界が発展するきっかけになる」と同意。そのために,現状のWeb3が抱えている課題を解決したり,調整したりしなければならないと話していた。
また藤澤氏によると,ストーリーノートは25歳以下の若いスタッフばかりであり,クリエイティブに対する情熱が非常に高いとのこと。つねにモチベーション高く業務に取り組んでいる彼らの姿を見て,藤澤氏は新しい時代を感じるそうだ。また自身が若いころにファミコンが新しい存在だったように,今の若い世代にはWeb3で「『そこで何をやろうか』と,いろんな想像力を膨らませてほしい」とも語っていた。
「スクウェア・エニックス」公式サイト
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