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[CEDEC+KYUSHU]「インディーゲーム開発者たちのリアル」レポート。アンケートとインタビューで現実を浮き彫りに
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印刷2023/11/26 16:56

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[CEDEC+KYUSHU]「インディーゲーム開発者たちのリアル」レポート。アンケートとインタビューで現実を浮き彫りに

 インディーゲームが大きな注目を集める中,開発者たちはどんな思いで制作を進めているのか。そんな疑問に答えるのが,2023年11月25日に九州産業大学で開催された開発者向けカンファレンス「CEDEC+KYUSHU 2023」の講演「インディーゲーム開発者たちのリアル」だ。この講演では「福岡インディーゲーム協会」の会長と理事がインディーゲーム開発者たちから聞いた様々な声をまとめている。

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インディーゲーム開発者たちへのアンケートとインタビューが,リアルを浮き彫りにする


 「福岡インディーゲーム協会(FIGA)」は,インディーゲーム開発者が経済的に独立できる環境を作れるよう,イベントを通じて支援を行う団体だ。会長である村上浩治氏は,かつて設計事務所を構える建築士だったが,39歳にしてゲーム開発者に転身,その後5年を経て「ゲーム開発で食べていけるようになった」という。

写真左から,「福岡インディーゲーム協会」会長の村上浩治氏と,理事の吉武直志氏
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 理事である吉武直志氏は,35年以上同人ソフトを作り続けてきたキャリアを持つ。そんな村上氏と吉武氏がインディーゲーム開発者たちにアンケートやインタビューを行い,それをまとめたのが本講演「インディーゲーム開発者たちのリアル」だ。インディーゲーム開発者たちが何を考えているのかが分かる,興味深い内容となっている。なお講演は,アンケート結果の発表(◎印)と,インタビュー映像(●印)という形式で進行していった。映像でのインタビュイーの略歴は以下の通り。

■インタビュイー
・渡部恭己氏(フツララ):元ゲーム会社勤務 インディーゲーム開発歴1年
「CultureHouse」開発中

https://futurala.com/
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・Pop氏:元ゲーム会社勤務 インディーゲーム開発歴10年
「Million Depth」「FAIRY TAIL : Birth of Magic」開発中


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[2022/05/20 17:25]


・K App.氏:会社員 インディーゲーム開発歴5年
QuietMansion」シリーズ

「QuietMansion」シリーズ公式サイト

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◎Q1:ゲーム開発を続けているモチベーションは?
1位:「好きなゲームを作れる」
2位:「純粋に創作が楽しい」
3位:「自己責任で活動できる」
4位:「経済的な成功」
5位:「趣味として」

 最も多かった回答が「好きなゲームを作れる」だ。商業的なニーズではなく自分の思うようにゲームを作れることが魅力であり,同時に経済的な成功も夢見ている。「開発者としての名声」は8位で「その他」より1ランク上に過ぎない。

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●インディーゲーム開発者になって良かったか?

渡部氏:
 良かった。それ以外ならまともに生きれていないかも。

Pop氏:
 向く人と向かない人がいると感じられた。自分は向いているし,満足。

K App.氏:
 とても満足。思い描いた世界観を知ってもらう,開発者ならではの喜びがある。

◎Q2:インディーゲーム開発の経済的な状況は?
1位:「有料ゲームを販売しているが,生活費は別の収入源から得ている」(52.6%)
2位:「フリーゲームのみリリースしている」(28.9%)
3位:「インディーゲーム開発者専業である」(18.4%)

 インディーゲーム開発者専業は18.4%。村上氏は「ゲーム開発者になって良かったとは思うが,専業でやっていくというのは厳しい」とコメントした。

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●インディーゲーム開発で悩んでいることは?
1位:「広告宣伝の方法」
2位:「開発資金の調達」
3位:「評価が売上に繋がらない」
4位:「グラフィックデザイナー不足」
5位:「プログラマー不足」


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◎開発で困難と感じることは?

渡部氏:
 生活やお金を目的としていると,「これ以上こだわっても利益にならない」と妥協して先に進める。しかし,理想の実現が目標だと,妥協をできなくなってしまう。理想の実現とコストのせめぎ合い,妥協するかどうかの判断が難しい。

Pop氏:
 開発の終わりのなさにメンタルをやられそうになることがあるのが一番辛い。事前にしっかりと計画を立て,機械的にこなしていくのが解決法ではないかと思える。やる気と進捗をリンクさせず,開発をライフワークとして組み込むと,習慣として進められるようになる。

K App.氏:
 作品を宣伝するのが大変。Steamやスマートフォンはレッドオーシャンで,いいゲームも見つけてもらいづらい。ホラーゲームは配信者のリアクションを期待できるジャンルであり,ともにプロモーションを行うことによって困難を乗り越えている。

 開発はできても,広告宣伝や資金調達に課題が残る。仕事なら納期が決まっているし,資金の心配もしなくていいが,インディーゲーム開発者にとってはこだわりをどこまで追求するかは大きな問題となる。開発について,村上氏は「終わりのない孤独な戦い」であり,不安も大きいため,横のつながりを作るべきだと語った。

●インディーゲーム開発者として,パブリッシャに求めるものは?
1位:「広告宣伝の代行」
2位:「販促のアドバイスや販路開拓」
3位:「開発資金の援助」
4位:「ターゲット設定などのマーケティング」
5位:「開発メンバーの紹介」


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◎どのように自分のゲームを宣伝しているか?

渡部氏:
 早い段階からイベントに出展し,デモ版をプレイしてもらって反応を見る。メジャーなメディアがくることもあり,記事にしてもらえれば知名度も上がる。

Pop氏:
 X(旧Twitter)でフランクな内容のポストを行う。進捗をこまめに投稿して,ファンを少しずつ増やす。Steamページ公開時にプレスリリースを打つ。

K App.氏:
 X(旧Twitter),YouTube,TikTokなどを活用する。中でもTikTokは「熱い」ため,Switchやスマートフォンでゲームを出すならやったほうがいい。また,限定配信などWIN-WINになれるような形で配信者に声を掛けている。

 インディーゲーム開発者の課題は広告宣伝であり,皆がそれぞれに試行錯誤している。村上氏のゲームは配信者に取り上げてもらい,1万再生を超えたところから売上が伸びたという。こうした事情を踏まえ,実況者に目を付けてもらえるような作り方も必要になるかも知れないが,自分の好きなようにやるためにインディーゲームを選んだ人にはジレンマもある。

●インディーゲーム開発者としてパブリッシャと契約する際,不安に思っている点は?
1位:「利益の配分が適切か」
2位:「知的財産の保護をしてくれるか」
3位:「支援内容が不明瞭」
4位:「契約の締結自体が不安」
5位:「締結前にアイデアを盗用されないか」


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◎どのように資金を調達しているか?

渡部氏:
 「CultureHouse」の開発を進める決断ができたのは,講談社のコンテスト「ゲームクリエイターズラボ」で支援を受けられるようになったこと。貯金とコンテストの支援金を使って開発している。

Pop氏:
 これまでに出したアプリの売り上げと貯金,コンテストに入賞したときの支援金。

K App.氏:
 開発にお金をかけず,0円で進めている。PC環境を向上させるためにクラウドファンディングを行ったこともある。過去作がある人は,クラウドファンディングをやってみてもよいのではないか。

 最近はインディーゲーム開発者を支援するパブリッシャも登場している。村上氏の福岡インディーゲーム協会では,会員から契約に関する相談が寄せられることも多いという。ただ,売上の配分5:5を謳ってはいるものの,契約書をよく読むと抜け道的な項目があり,×万本を超えたら5:5だが,それまではもっと取り分が少ない,という例もある,と村上氏は語る。

 こうした目にあわないためには,周りの人とよく相談することが大切だという。一方,アンケートで多くのインディーゲーム開発者が心配する,アイデアやIPの盗用(例えば,パブリッシャに出した企画書からアイデアが盗まれ,似たようなゲームが発売されるなど)はまずないのだそうだ。


◎パブリッシャをどのように利用しているか?

渡部氏:
 担当編集がつき,週1回打ち合わせをしてくれたり,イベント出展の際に手伝ってくれたりする。自分の立ち位置を確認して前に進むうえで,外部とのつながりがあるというのは契約して良かったところ。また,パブリッシャは東京ゲームショウなどのイベントで大きなブースを出してくれ,露出の機会も増える。

Pop氏:
 相談できたり,指摘から改善点を見つけられたりするといったメリットがある。海外向けの発信ができるなど,宣伝力も上がる。ただ,自分とパブリッシャの意見が違ってくる可能性もあるため,上手く足並みを揃えないとならない。

K App.氏:
 自分のゲームをNintendo Switchで出す際,パブリッシャと契約した。このように,家庭用ゲーム機に参入することができ,何かあってもある程度パブリッシャが守ってくれるのがメリット。

 村上氏は,こうした現状を踏まえ,「インディーゲーム開発者は,横のつながりを作り,情報共有を行う機会が最も必要なのでは」と指摘。福岡インディーゲーム協会では,こうしたつながりを作っていきたいと抱負を語った。

 講演の後半では,吉武氏がSteamから集計したデータを使い,現在のインディーゲーム市場を分析していった。インディーゲーム(ここで吉武氏が対象としたのは,価格が0.1ドル〜25ドルのもの)のタイトル数は年々増加し,平均価格は7.31ドル。売上については5000ドル未満のものが全体の62.8%を占めており,平均売上額は17万6845ドル,平均販売本数は2万1072本であるという。

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 こうした結果を受けて村上氏は,現在はゲームエンジンの発展により個人でも高クオリティのゲームを作れるため,クオリティ勝負ではなかなか目立てないものがあり,協会としても「インディーゲームで食べていこう」と無責任にはいえない状況であるものの,ゲームを作る楽しさや,自作が評価されることによる自己肯定感の向上といった部分は応援していきたいと語った。

◎今後の目標

渡部氏:
 作りたいものはいろいろとあり,生きている間にすべて作るのは不可能だが,1つでも多く理想に近い形で作っていきたい。認められないと次の作品へつながらない。人に届けたいと思う良いものを作り,充分な数の人に届けることが目標。

Pop氏:
 誰かの心に残り,一番好きなゲームとして名前が出るような作品を作ることが目標。

K App.氏:
 今はPC版と家庭用ゲーム機版の同時発売が目標。

 皆,誰かの心に残るようなゲームを作りたいと考えているが,自分の場合は奥さんに届けたいと村上氏は語る。これまでに作ったゲームはしばらくするとプレイしてもらえないようになっていたが,近作を1週間以上遊び続けてくれたのを見た際に「インディーゲームを作って良かった」と思えたという。

 村上氏は,こうした体験から,誰かに「面白い」「あなたのゲームを遊んでクリエイターを目指した」といった声をもらえることが,インディーゲーム開発者にとって嬉しいリアルなのではないか,と講演を締めくくった。誰かの心に残るようなゲームを目指して開発を進めるうえでは,資金調達や宣伝,パブリッシャとの契約といった諸問題と向き合わなければならない。純粋な願いと現実的な問題,両者の折り合いをいかにつけるべきか? タイトル通り,インディーゲーム開発者のリアルが浮き彫りにされた講演であった。

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「CEDEC+KYUSHU 2022」公式サイト


※2023年11月27日18:30,【お詫びと訂正】渡部恭己氏の名前を誤って記載していたため,修正いたしました
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