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ゲーム大会を開催する場合に注意すべき法的な問題と,ゲーム利用のルール策定について,ゲームファンの弁護士がポイントを解説[CEDEC 2024]
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印刷2024/08/29 16:33

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ゲーム大会を開催する場合に注意すべき法的な問題と,ゲーム利用のルール策定について,ゲームファンの弁護士がポイントを解説[CEDEC 2024]

 2024年8月22日,ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2024」にて,セッション「ゲーム大会の法的問題とゲーム利用ガイドライン策定のポイント」が行われた。

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 このセッションでは,シティライツ法律事務所 弁護士 前野孝太朗氏が,ゲーム大会の主催者が注意すべき法的な論点,およびゲーム大会に関するゲーム利用のルールについて,策定の必要性や法的なポイントなどを解説した。

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ゲーム大会の法的な問題の整理


 セッションの前半では,ゲーム大会の主催者が注意すべき法的な論点の解説がなされた。ゲーム大会を開催する場合の関係者としては,コンテンツホルダー(ゲームのパブリッシャやデベロッパ),大会主催者,参加者の大きく3者が存在する。とくに大会主催者が注意しなければならないのは,「著作権法」「刑法(賭博罪)」「風営適正化法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」「景品表示法」の4つとのこと。

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 まず著作権法に関しては,当然ながらゲームは著作物なので,ゲーム大会を開くとなったらコンテンツホルダーから許諾を得る必要がある。

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 刑法に関しては,参加者から集めたゲーム大会の参加料を賞金に充てると,賭博罪に該当する可能性がある。たとえば4人で集まって,各自が1000円ずつ出し,それをゲームで勝った人が総取りする,という行為は立派な賭博となる。したがって参加者から集めた参加料を賞金にすることも,同じく賭博行為になってしまうというわけだ。

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 そこでゲーム大会の参加料は無料にするか,徴収するのであれば運営費などの別のところに使う必要がある。もし成績優秀者に賞金を出すのであれば,スポンサーなど第三者から提供してもらう必要が生じる。

 風営適正化法に関しては,ゲーム大会の会場にゲーム機を置いて参加者にプレイさせる行為が,定義上のゲームセンター等営業,つまり風俗営業にあたる可能性がある。なお,これに抵触する可能性があるのはゲーム機を使ったオフライン大会で,完全なオンライン大会や,PCまたはスマートフォンを使った大会は問題ないとのことだ。

 また日本eスポーツ連合(JeSU)と警察庁が折衝した結果,ゲーム大会の参加料を設営費用にのみ充てればゲームセンター等営業にあたらないという確認がされていることも紹介された。
 したがってゲーム機を使ったオフライン大会を開催する場合には,参加料を無料にするか,すべて大会設営費用に充てる必要がある。具体的には,最大参加者数と参加料を掛けた金額が,大会設営費用を超えないように設定する。

 景品表示法は,自らが提供するサービスの景品を規制する法律なので,ユーザーがゲーム大会を開催する場合はほぼ無関係であることが示された。しかしコンテンツホルダーが開催する場合は,注意する必要がある。

 また一時期話題になった高額賞金に関しては現在,参加者が「観客に高いパフォーマンスを示すことが類型的に保証されている」ケースでは,「仕事の報酬」として認められていることも示された。ゲーム大会は,一般的に優秀なプレイヤーが決勝に進出し,技術的に優れたプレイを披露するので,高額賞金を出しても大丈夫というわけである。

ゲーム大会で高額賞金を提供できるようになった経緯なども紹介された
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ゲーム大会に関するガイドライン策定のポイント


 セッションの後半では,コンテンツホルダーがゲーム大会に関するガイドラインを策定する際のポイントについて解説がなされた。

 最初に,コンテンツホルダーが自社のゲームをゲーム大会に使っていいとユーザーに許諾を出し,あとはすべて委ねてしまうことのリスクが示された。仮にユーザーが賭博罪を意識していなかったとすると,参加料をそのまま賞金に充ててしまう可能性が生ずる。それを警察が賭博罪とみなされた場合に,「自社のゲームが犯罪に使われる」ことをよしとするか,というところがまず1点ある。

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 また,ユーザーが意図せず法令違反のペナルティを受けることもあるという。ユーザーは必ずしも法的な知識を持っているわけではないため,参加料を大会設営費用に充てればOKだからと,一部を自分に還元したり,賞金に充ててしまったりするなどした場合に,それが法令違反だと言われてもピンと来ないケースが多いとのこと。

 とくに風営適正化法に関しては,規制があまり周知されておらず,理解しづらいため,コンテンツホルダー側から「遵守してください」と言うだけでは説明が足りないと前野氏は見解を示した。
 また,「せっかく自社のゲームを使っていいと言っているのに,法令違反になるかもしれないからとユーザーが萎縮して,ゲーム大会が開かれにくくなりかねない」とも付け加えた。

 以上を踏まえて,コンテンツホルダーがゲーム大会開催について一般的に許諾する,あるいはガイドラインを策定するにあたってどうすればいいかが示された。まず必須となるのは,大会開催を許諾する旨の記載である。

 また任意だが,前田氏は,刑法や風営適正化法の対応を含むルールを設定してユーザーに示しておくのが好ましいとする。加えてこれも任意だが,そのほかの遵守すべきルールを設定するのもありとのこと。ただ,これらすべてをユーザーに伝えるとなると,以下に示すようにかなり細かい規定をつくることとなり大変であるため,現状のコンテンツホルダーがそうしているように,ゲーム大会を開催したい場合には個別に問い合わせてもらうのもいいという。

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 実際に,ゲーム大会開催のガイドラインを策定する場合のポイントも示された。まず参加料に関しては,上記のとおりすべて大会設営費用に充てること,景品に充てることは禁止であることの2つを絶対に記載してほしいとのこと。

 関連して,会計書類の公開を必須にするかどうかという論点もある。前野氏は,事後的な検証が可能となり,またユーザーに風営適正化法を促す効果もあるため,会計書類の公開を必須にすることも選択肢になると語った。

 また,そもそも参加料を徴収するかどうか,徴収するのであれば上限などの条件を設けるかという点も検討する必要がある。
 あまりに参加料が高いとユーザーコミュニティに悪影響が出かねず,また犯罪に結びつく可能性も生じるため,あらかじめ参加料には上限を設定しておいたほうがよいのではないかというのが,前野氏の見解である。加えて,観客から徴収する観戦料も同じように条件設定について検討したほうがいいそうだ。

 賞金を含めた景品に関しては,提供をOKにするかどうかがまず論点となる。景品の提供をOKにした場合は,金額の指定など条件を定める必要がある。これはあまり高額な景品だと,ユーザー間の圧力が生まれるなどのリスクが生ずるからだ。
 また違法なものや公序良俗に反するものを景品にすることは,当然禁止しなければならない。それ以外では,金融商品のようなものも禁止にしたほうがいいとのことだ。
 
 大会主催者が対価を得られるかどうかも論点となる。上記のとおり,参加料はすべて大会設営費用に充てることとなるため,それを大会主催者が得ることは基本的にできないが,それ以外にも広告収入や物販といった形で対価を得ることは可能だ。

 その一方でコンテンツホルダーの多くは,主にユーザーが仲間内でゲーム大会を開催してもらうためにガイドラインを策定する。そのため,大会主催者が対価を得てもOKとなると,もともとの目的から外れることにもなりかねないので,十分な検討が必要とのこと。
 またスポンサーによる提供品を,大会主催者が対価として得られるかについても検討の必要があることが示された。

 ゲーム大会の収益化配信についても同様で,OKとする場合は,プラットフォームの指定や,いわゆるスーパーチャットの可否などによって収益化の手段を限定したり,あるいは営利性を高めないために年間いくらまでと上限を決めたりする必要が生ずる。

 大会名なども論点となり,まずコンテンツホルダーが協賛していないことを明記する必要がある。また,たとえばゲームの名称が大会名に入っていると,公式大会と受け止められかねないので,あらかじめ「こういった大会名はOK」「この大会名はMG」と決めておくことも必要だ。ほかにも,略称やロゴの使用についてOK/NGを決めておくことが必要となる。

 ゲームに関する知的財産権に関しては,この場合ゲーム大会に使っていいという旨は当然明記する。また大会開催の告知について,たとえばゲームに登場するキャラクターを使ってバナーなどを作るケースは,場合によって著作権侵害となることもある。そのためガイドラインで,そうしたキャラクターなどを告知に使っていいかどうか,使っていい場合でもこういう使い方はNGといったことを検討する必要がある。

 加えて,そうしたキャラクターを別途イラストレーターに依頼して色紙に書いてもらったり,その色紙を成績優秀者にプレゼントしたりといったように,ゲームの知的財産をどこまで使っていいのかについても,明確にしておく必要がある。

 ゲーム大会開催の承認については,さまざまな方法が考えられるとのこと。たとえばガイドラインに沿った形で作成した企画書などを提出してもらい,それを承認したことを伝えるという形式もあるし,書類を届け出ただけで承認と見なす形式もある。またガイドラインを守っていれば,とくに書類の提出などは必要なしとすることも可能だ。そして,それらの方法をミックスしたやり方もある。

 前野氏は,頻度にもよるが,書類を届け出てもらってを逐一承認する方法は運用の負担が重く,かなり本腰を入れることとなると話す。
 また別の観点から,ガイドラインには厳しめに記しつつ,承認するときに相手によっては一部の条件・制限を緩和するやリ方を示した。

 法人によるゲーム大会の開催や営利利用に関しては,前野氏はほとんどの場合が承認制を採ると指摘。また規模がかなり大きい大会や,賞金が高額な場合についても,別途検討しておく必要があるとした。

 最後は禁止事項に関して。たとえば営利目的のゲーム大会や法令違反の大会,海賊版を利用した大会は禁止事項に記しておく必要がある。またコンテンツホルダーが不適当と判断するものも禁止事項にするべきだが,そのまま記してしまうとユーザーが何をしてはいけないのか分かりづらいので,「こういうものはNG」といくつか例示しておくのが望ましい。

 セッションの終盤,前野氏はガイドラインの策定について,いろいろ細かく定めていくと重厚長大なものとなり,読んでも何が書いてあるか分からないものになりがちであることを指摘。そのためゲーム大会のガイドライン策定は,細かいところまで決めがちな弁護士任せにしないほうがいいかもしれないとの見解を示し,「主眼は,ユーザーがゲーム大会を開催しやすくするところにある。コンテンツホルダーと弁護士がコミュニケーションを取りながら,分かりにくいとこを修正していったほうがいい」とまとめていた。

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