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ライブ配信プラットフォーム「Mirrativ」が変える,運営とプレイヤーの距離。新たな経営体制のキーパーソンが語る理想の組織とは
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印刷2019/03/29 12:00

インタビュー

ライブ配信プラットフォーム「Mirrativ」が変える,運営とプレイヤーの距離。新たな経営体制のキーパーソンが語る理想の組織とは

 スマートフォンの画面をそのまま配信でき,手軽にゲーム実況や雑談放送が行えるライブ配信プラットフォーム「Mirrativ(ミラティブ)」iOS / Android)。同サービスはDeNAの新規事業としてスタートし,2015年8月にAndroid版がリリースされたところから歴史が始まる。「パズル&ドラゴンズ」「逆転オセロニア」「クラッシュ・ロワイヤル」「白猫テニス」など,さまざまなタイトルとのコラボレーションが実施されており,触れたことがあるプレイヤーも多いことだろう。

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 2017年9月にiOS端末でのライブ配信に対応し,2018年2月にはDeNAの最年少執行役員だった赤川隼一氏がMBO(マネジメント・バイアウト)によって「株式会社ミラティブ」を創業。2018年8月にはVTuberのように生配信ができるアバター機能「エモモ」が公開され,同年秋には収益化モデルも導入。現在は配信者数が100万人を突破するまでに成長を遂げ,2019年2月には初のテレビCM放送や,総額35億円の大型資金調達を実施したことも記憶に新しい。

 加えて,同2019年2月に最高財務責任者(CFO)としてGunosy取締役であった伊藤光茂氏と,ゲームポット創業者である植田修平氏の参画が発表されている。ここに,2019年4月1日よりセガゲームス取締役を務めた岩城 農氏が,最高戦略責任者(CSO)に就任する。これにより経営体制の強化をはじめ,既存事業の成長や新たな事業開発に取り組んでいくという。

 4Gamerでは,赤川氏と岩城氏の両名にインタビューを実施。岩城氏が入社に至るまでの経緯のほか,ライブ配信プラットフォーム「Mirrativ」のこれまでを振り返り,今後の展望について聞いた。

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「Mirrativ」公式サイト



ミラティブ入社は“自然な流れ”


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。赤川さんは代表取締役を務められ,岩城さんは4月1日より最高戦略責任者に就任されますが,ミラティブにジョインするまでのお2人の経歴を簡単にご紹介いただけますか。

ミラティブ 最高戦略責任者 岩城 農氏
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岩城 農氏(以下,岩城氏):
 新卒で銀行系クレジットカードの会社に入社して,4年半ほどオペレーション側の企画畑にいました。そこからセガ(現:セガゲームス)の社長室に入り,2011年ごろからモバイルの事業責任者に転じて,2012年にセガネットワークスの立ち上げに関わりました。それからセガゲームスに戻って取締役CSOになり,2018年には上席執行役員CSOとなり退任。2019年4月1日からミラティブでCSO(最高戦略責任者)に就任します。
 投資先もポケラボ,f4samurai,マイネットでしたし,サンフランシスコや北京,シンガポールでの法人の立ち上げもモバイル側だったので,経歴的にもモバイルにどっぷりですね。

赤川隼一氏(以下,赤川氏):
 「Noah Pass(ノアパス)」(※ゲームアプリ間でのユーザーの相互紹介機能を持つマーケティングプラットフォーム)の創設もですよね。

岩城氏:
 そうですね。「Noah Pass」はネイティブ集中に並ぶ,スマホ参入戦略の軸として一から描きました。戦略という観点から振り返ると,それ以外でとくにインパクトが大きかったのはセカンダリーマーケットですね。

赤川氏:
 僕は,小学生のときに懸賞でスーパーファミコンが当たってからどっぷりゲーマーになりました。プレイステーションではなくセガサターン派で,「バーチャファイター2」「バーチャファイター3」「電脳戦機バーチャロン」「デイトナUSA」あたりにのめり込みましたね。
 インターネット関連でいうと,13〜4歳くらいのころに「Jリーグ プロサッカークラブをつくろう!2(サカつく2)」の大会運営をするホームページを作っていました。高校時代にテレホーダイが始まって,ゲームと同じくらい音楽オタクだった僕は,音楽好きな人がいるチャットルームでよく会話していましたね。そこで大人たちが知らない音楽を教えてくれて,インターネットを通じて自分の人生が広がる体験をしたんです。

4Gamer:
 その後,DeNAへ?

ミラティブ 代表取締役CEO 赤川隼一氏
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赤川氏:
 そうですね。バンドをやるか就職するかというときにDeNAへエントリーしたんですが,すごく面白くて入社を決めました。入社とほぼ同時期に「モバゲータウン(現:モバゲー)」の事業が立ち上がりまして,結果的に“connecting the dots”というか,好きだったゲームに関わることになりました。
 DeNA時代は,ヤフーと提携した「Yahoo!モバゲー」や海外事業,ゲーム事業の責任者を任されていました。そして「0->1で世界で勝てるような新規事業をやりたい」と思って立ち上げたのが“ミラティブ”です。最近はより戦える強い仲間を集め,世界に売り込むタイミングになりつつあるといった状況ですね。

4Gamer:
 お2人が知り合ったきっかけは,東京ゲームショウ2012でのパネルトークだそうですね。

岩城氏:
 赤川はDeNAの最年少執行役員で,僕も当時最年少執行役員でしたので,そんな縁も感じながら出演の依頼をしました。その後はさほど連絡を取っていなかったんですが,赤川が「Mirrativ」を始めたあとに,セガでのマーケティングで活用させてもらって面白い取り組みができたことをきっかけに,少しずつ連絡を取り始めたんです。「いつか来てください」みたいな話から,自然な流れで今に至りますね。

4Gamer:
 岩城さんはミラティブ社のミッション「わかりあう願いをつなごう」へ共感されたそうですが,どんな部分に魅力を感じられたのかもう少し具体的にお話しいただけますか。

岩城氏:
 戦略,経営,マーケティングどれをとっても,結局のところ全部“人”じゃないですか。海外にいた経験も相まって,人と人とが分かり合う素晴らしさや,その難しさも理解しています。だからこそ,そのギャップが縮まる瞬間にはビジネスとしての面白さがあると感じていたんです。
 「わかりあう願いをつなごう」を掲げるミラティブが,ここに熱量高く向かい合っている会社だと理解するにつれ,僕のほうからジョインしたいと思うようになりました。僕はとにかく人が好きで,この会社も人が好きなんですよね。志望動機のような月並みな話になってしまうんですけど,本当に「御社のミッションに共感しました」という感じなんです(笑)。

4Gamer:
 赤川さんが子供のころはセガのゲームで遊ばれていたとお話しにでましたが,そうした“セガっぽい”遊び心に影響を受けた部分も少なくないそうですね。長らくセガゲームスに在籍されていた岩城さんのどのような部分に“セガらしさ”を感じていらっしゃいますか。

赤川氏:
 失礼のないようにお話ししたいんですけど……僕の思うセガって,“早すぎる”なんですよね。ちなみにこれは,リスペクトを込めて言っています。

4Gamer:
 色々な分野で「早すぎた」「時代が追いついていなかった」と表現されることが多いですよね。

赤川氏:
 ビジネスとして成立させることよりも,先に面白いかどうかを考えている。新しいものに挑戦するやんちゃさや,あらゆるものを遊びに繋げようとする感覚が,僕の思う“セガっぽさ”なんです。岩城も「とりあえずやってみますか!」という感じの人なので,そういうところにセガっぽさを感じています(笑)。

4Gamer:
 そんな岩城さんは,今後ミラティブでどのような分野をご担当されるのでしょうか。

岩城氏:
 CSOとして全体を見るのはもちろんですが,主に3つの分野に関わっていきます。1つ目は,よりゲーム会社に寄り添って距離を縮めていけるよう,営業や事業開発に従事していきます。2つ目は海外展開ですね。「Mirrativ」の存在価値を世界中の皆さんに分かっていただくために,積極的に展開していきます。3つ目は新規事業です。まだ細かくお話しできませんが,過去1年〜半年で「Mirrativ」ではとんでもない量の機能をリリースしています。自分の知見を活かし「こういう新規事業ができるよね」と,今までのサービスにとらわれない提案をしていきます。

4Gamer:
 では,赤川さんは岩城さんにどのような期待を寄せられていますか?

赤川氏:
 まさに,今あがった3点です。僕はどちらかというとプラットフォーマー側の人間で,サービス運営に近いキャリアなんですよね。なのでゲームを作る,ゼロからリリースまでを行う側面はあまり経験していません。ゲーム会社さんとのネットワークもそうですし,ビジネスデベロップメントの役割はぜひお願いしますと。
 海外展開も同様で,僕もDeNA時代は海外担当執行役員だったんですけど,当時は海外展開がうまくいかなかったので,ミラティブを作ったときからそのリベンジをしたいとずっと思っていました。岩城は“イングリッシュカルチャー”を理解しているグローバル・パーソンですから,非常に期待しています。
 新規事業についても,究極的に最後は何が当たるか分からないじゃないですか。時代の流れに合わせて小さく速く検証を回して,ユーザーに刺さるものを見つけたら本気で取り組んで,ホームランを狙いたいですね。マーク・ザッカーバーグのように,1人で作ったサービスが10年後には20億人に使われることもあるわけですから,生きているうちにミッションの範疇で狙いたいと思っています。

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2人が目指す,理想の組織作りとは?


4Gamer:
 人材の採用については,すべて赤川さんが直接面接に関わっているそうですね。オープンな採用PRでも注目を集められましたし,組織作りに注力されているように思います。お2人はそれぞれ,どのような組織を理想と考えていらっしゃるのでしょうか?

赤川氏:
 理想の組織イメージは“WhatsApp”ですね。メッセンジャーアプリを生み出したアメリカの会社なんですけど,社員数が40人ほどでありながら,アクティブユーザーは10億人以上います。これは今の時代だからこそできる組織の形だと思います。本気の少数精鋭がガレージで作ったものが,10億人に届けられた1つの理想形としています。
 それを表した組織コンセプトとして,ミラティブでは“支え合うプロ集団”を掲げています。プロフェッショナルたちがお互いを補い,支え合う形ですね。その前のコンセプトワードは“やおよろずの神”なんですけど,年齢やキャリアを問わず何かの分野に卓越していて「○○さんは凄い!」と言われる人が,社内にあふれているというのを目指しています。

4Gamer:
 1人1人がプロフェッショナルとして行動し,お互いを尊敬しあえる環境ですね。

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赤川氏:
 もう1つ付け加えるなら“反脆い組織”です。「ブラック・スワン」というイノベーション論を書いた哲学者,ナシーム・ニコラス・タレブの本に「反脆弱性」というものがあるんですが,これをもとにしています。人間はワクチンのように体内へわずかな毒を入れると耐性ができるとか,衝撃を受けるとそれを利用して強くなる,あるいはトラブルがあるとむしろ成長する,こうした“反脆い”ものほど長く続くものです。
 長く続けていくとなれば,トラブルが起きるのを避けられませんから,むしろそうした状況でこそ結束力が強くなる,ピンチを武器にするような組織を“反脆い組織”と呼んでいます。

岩城氏:
 僕は,プロダクトに対する想いが強い組織ですね。さまざまな人が使うロングテールなサービスを目指すのであれば,信念を持ち,どんな規模になろうとも,形が変わろうとも,大事にし続けていくことが大切です。サービスプロダクトが分からず入社して,なんとなく過ごしてしまうケースもあるかと思いますが,我々の会社には馴染まないだろうなと感じます。
 皆が誰に言われるまでもなく,強い意志を持って同じ方向を向いている,組織が意志を持っているような感覚が好きなんですが,これはプロダクトに対する想いがなせる業かと思います。

4Gamer:
 組織作りに対するお考えがよく分かりました。ミラティブといえば岩城さんをはじめ,ベテランスタッフの参画でも話題となりましたが,一方で若い人材の抜擢にも積極的に乗り出していらっしゃるかと思います。お2人は,若手の目に魅力的に映る企業環境はどのようなものだと考えていますか。

赤川氏:
 まず前提として,他意はないんですけど,ベテランの方はその経歴からニュースになりやすいですが,むしろブームは若い人から生まれると思っています。感性という観点でいえば,若くてイケてる人のほうが希少価値は高いでしょうね。Facebookのザッカーバーグや,若くして成功を収めたロックバンドなどの歴史を見ても,感性の勝負は我々のようなおじさんの出る幕はないんです。

4Gamer:
 なるほど。

赤川氏:
 では若者を引き付ける素養は何か,それは“成長環境であること”と,彼らが“心理的安全性を確保できる”という2点が重要かと思います。今は終身雇用という時代ではありませんから,能力あるいはキャリア的な資産を積み上げていくことが一番のリスクヘッジですよね。そう考えると実力がつくことこそ重要で,混沌の中でなんとかしてやろうとか,修羅場をくぐってきたベテラン勢が前向きに教えてくれるとか,そうした機会で若い人はもっとも成長すると思います。
 実際,弊社のマーケティングを仕切っているのはまだ22歳なんですが,非常に優秀です。1年前から仕事のできる人材でしたが,とくに成長角度がほかの誰よりもあった。それは修羅場をくぐったこと,その修羅場でベテラン勢がどういう意志決定,判断をしているかを間近で見てきた結果によるもので,異次元の成長を遂げました。

4Gamer:
 成長を促すパワーレベリングのようなものですね。

赤川氏:
 もう1つの心理的安全性については,若手は経験が少ないうちは“勘”に頼るところが多いと思うんですけど,勘って潰しやすいものなんです。それこそベテランの中には,そういう若者の芽を積極的に摘み取ろうとする人もいます。いわゆる老害と呼ばれる存在がいないとか,自分の思っていることを発信でき,きちんと受け入れられるとか,心理的な安全性の担保がキーだと思っています。ミラティブでは僕自身も含め,ベテランがマウントを取らないよう日々自分たちに言い聞かせて気をつけています(笑)。

岩城氏:
 赤川の話が総論かと思います。
 会社としてチャレンジするから挑戦できる大きな目標やビジョンがあって,そういった環境だからこそ1人では取れないようなリスクが取れて,その代わりプレッシャーもかかる。ただ,その結果として自分が得られるものは着実に財産になると思います。少しずつでも成長していたら,もっとチャンスにめぐり合えるかもしれない。若手のほうが爆発的な伸びしろがあるわけですから,椅子が埋まる前に早くミラティブに来たほうが良いんじゃないかなと(笑)。


「Mirrativ」で変化するプレイヤーとの距離感


4Gamer:
 「Mirrativ」は2015年8月にAndroid版が,2016年4月にiOS版が配信開始となりましたが,これまでのサービスを振り返ってみていかがですか。

赤川氏:
 リリース開始時は,もっと早く今ぐらいの規模になると思っていました。でも急成長したのは,2017年9月にiOSでライブ配信できるようになってからなんですよね。
 とくに誇らしく思っているのは,資金調達前はほとんど広告宣伝費を使わず,ユーザーたちの支持によってアクティブユーザーが伸び続けてきたことです。利用者がお金ではなく愛で育ってきたことが,競合が簡単に入ってこられない要因にもなっています。100万人の視聴者を得たいなら有名なYouTuberやタレントを呼べば達成できますから,予算次第で一時的にはどうにかなります。でも100万人の配信者となるとそうはいかない。この違いは非常に大きいと思います。もう一度同じことをやってと言われたらちょっと悩むくらい大変でしたけど,地道さゆえの盤石な経営基盤はユーザーからの愛情による部分が大きいと感じています。

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岩城氏:
 「東京都内に100〜200人規模のライブハウスを無数に作りました」というのが「Mirrativ」のイメージに近いんですが,ここに自分たちの“好き”を通じて,毎日配信する人やゲームを遊ぶ人,今日こういうことがあったと話す人がいます。コミュニティや居場所,サードプレイスなどさまざまな呼び方があると思いますが,「Mirrativ」は自分自身を表現できる場所なんですよね。
 ゲーム業界を見ていても分かりやすいんですけど,既存タイトルの強さは,そこが“ユーザーの居場所”になっているからとも言えます。話し相手がいる,ギルドの仲間がいる,自分の遊びを見て反応してくれる人がいる。「Mirrativ」は贔屓目なしに,ユーザーさんにとっても重要な場所になっていると思います。
 ゲーム会社視点から見ても,これほど近い距離でお客様と話ができ,息吹を感じられる場はなかなかありません。YouTubeやニコニコで生配信を行う形もありますけど,「Mirrativ」が選ばれる理由はここにあるのかもしれません。

赤川氏:
 僕らは昔から,人間は相手の情報量が多いほど相手のことを好きになるものだと考えてきました。重要なのは「量」「濃さ」「頻度」です。昨日まで知らなかった相手でも,一度出会えばなんとなく親近感が湧くものですよね。
 同じように,一緒にゲームを遊ぶ体験自体はオンラインゲームの初期からありましたけど,相手の実況を聞きながら一緒に遊べる昔とは少し違う濃い体験ができるようになりました。相手の顔はアバターですけど,「Mirrativ」という居場所を通じてコミュニケーションすることで,ゲームやコミュニティへの愛が強まっていくんです。

4Gamer:
 「Mirrativ」は,手軽にライブ配信を行えるプラットフォームであり,プレイヤーたちの居場所となってコミュニティを活性化させるものでもあるというわけですね。

赤川氏:
 もちろんゲーム会社さんの情報発信に,YouTubeやニコ生は必要だと思いますが,どこまでいっても番組や放送に留まってしまい,ユーザーとの距離感に関しては縮まりにくい。最近は,とあるプロデューサーさんが自宅から「誰か一緒にマルチ行きませんか」と「Mirrativ」で声をかけるとか,ゲームの障害発生時に「Mirrativ」で状況を報告するというケースもあります。
 Twitterのように文字のコミュニケーションでは一方通行になりがちですが,「Mirrativ」をとおして声を届けることで,互いの距離を縮められるんです。そんな居場所を提供できていたらと思いながらやっています。

4Gamer:
 「Mirrativ」は,まだインターネットが普及していなかった,子供のころのコミュニケーションに近いような気がしますね。

赤川氏:
 まさに“友達の家でドラクエをやっているような感じ”というのが,サービスのキーコンセプトです。テレビの前で1人しかできないのに,皆でこぞって見ているような,あるいは後ろでマンガを読んでいてボスのときだけ合いの手を入れても許されるような,そういう居心地のいい空間作りを目指しています。

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4Gamer:
 「Mirrativ」では,さまざまなタイトルとの連携を行っていますよね。さきほど障害対応のようなケースも出ましたが,各ゲーム会社はどのようにサービスを活用されているのでしょうか?

赤川氏:
 「クラッシュ・ロワイヤル」のSupercellはすごく面白いですよ。これまでなら,メーカーの配信をユーザーが“見に行く”形でしたが,その逆でユーザーの配信を運営が見に行く動きをされています。
 クリスマスにSupercellがやっていたのは,ユーザーの配信へ出向いては「メリー!」とコメントするんです。すると配信者が「クリスマスー!」と反応して,それを見た皆は笑ってしまうんです。Supercellのやっていることは,入室してただ「メリー!」って言うだけなんですけど,ユーザーに来てもらうのではなく,こちらから向かう今らしい動き方だと感じました。

4Gamer:
 メーカーの人が見に来てくれたというのは,ユーザーにとってうれしいものですよね。

赤川氏:
 ゲームのユーザー同士を繋ぐのはもちろんですが,クリエイターとユーザーの架け橋になるのも1つの仕事だと思っています。そういう意味では,障害が起きたときなどに,これまでは距離が遠くてただ待つしかなかったけど,運営スタッフも必死に対応していることがユーザーにも伝わるようになったのは,僕らにとっても嬉しいことですね。
 あとは,コロプラの浅井大樹プロデューサーがご自身のタイトルの配信をされています。浅井さんが最初にYouTubeでの配信を始めたときは,ユーザーとの距離がとても近くなったと感じたそうなんです。でも規模が大きくなるにつれ,ユーザーとのフレンドリーな空気感に変化が出ていった。そんななか「Mirrativ」は,YouTubeを始めたころのような感覚で利用できる,そう言ってもらえたときは嬉しかったですね。浅井さんは,ユーザーと同じ環境で一緒に遊ぶ感覚を体現してくださった方なんですよ。

岩城氏:
 「共闘ことばRPG コトダマン」でも,生放送で挑む「ナメカタチャレンジ」の練習を「Mirrativ」で流していました。デッキを相談したり,自前なので「ガチャそんなに回せない!!」とか言ってたり,そういう素の見えるやりとりが面白いんですよね。大掛かりな機材が必要ない,スマホ1つで簡単に配信できるところも魅力だと思います。
 ゲームから少し離れますが,YouTuberやVTuberも「Mirrativ」を少しずつ使い始めています。しっかり撮影して編集もとなると,配信できる本数にやはり限界がありますよね。でも「Mirrativ」ならもっと手軽にファンと日々繋がれるんです。使い方にも,まださまざまな余地があるかと思います。

4Gamer:
 2018年に登場したアバター機能の「エモモ」も可能性を秘めていそうですよね。
 こうしたサービスを提供,運営するにはビジネス目線でのビジョンも求められるかと思いますが,収益化に対する反応などはいかがですか?

赤川氏:
 「Mirrativ」は2018年11月まで,配信しても1円ももらえないプラットフォームでしたが,これはアドセンスが出てくる前のYouTubeみたいな状態なのかなと。むしろ1円ももらえないのに配信者が増え続けたことをとても誇らしく思っています。それこそYouTubeも最初は1円ももらえなかったですが,アドセンスの機能が入って,職業としてYouTuberが生まれた。お金ファーストではなく,楽しいからと動画を投稿していたら,ちょっとしたエッセンスとして収益が加わって,爆発したという順番だと思うんです。
 実際「Mirrativ」もようやく収益化ができるようになりました。マネタイズが目的ではないにしろ,適度なモチベーションになっていると思います。その先の収益性については,変な形でなくユーザーさんにフェアにお金を払ってもらう仕組みとして色々と考えています。


4Gamer:
 ゲームメーカーが「Mirrativ」で取り組みをしようとしたとき,インセンティブが発生するビジネスはあるんでしょうか?

赤川氏:
 視聴者参加型のライブクイズ「ミラティブQ」は,色々なゲーム会社さんが取り入れてくれていて,広告費をいただく形で行っています。
 これはゲームをプレイしていないと正解が分からないので,新たにダウンロードが増えるという観点の施策ではありません。CPI(Cost Per Install)やCPA(Cost Per Acquisition)で測れない部分に価値を感じていただいています。ヘビーユーザーほど自慢したくて参加するでしょうし,その結果をまたユーザーが配信するとか,色々な広がりが生まれて,結果的にユーザーコミュニティがとても盛り上がっているという評価をしてもらっています。

4Gamer:
 それでは今後,事業運営でとくに注力していきたい部分についてお聞かせください。

赤川氏:
 「エモモ」が入ったことで,色々なものがアバターで塗り替えられると思っているのでそこはすごく楽しみです。タイアップでも,アバターがあるからゲームがより楽しくなる取り組みをうまく進めていきたいですね。
 ゲーム実況も次のステージに向かうと思っていて,インスタ映えする場所へ旅行に行くようになったのと同じように,「実況映えするゲームが流行する」流れができていると思うんです。例えばプロ野球は,ビジネスのほぼすべてが見る側のビジネスじゃないですか。それでいうと,今までのゲームビジネスはプレイする人がターゲットでしたが,これからゲーム実況を見るだけの人も含めたビジネスに進化する過程にあるんじゃないかと。

4Gamer:
 まさにeスポーツでも注目されはじめた視点ですね。ノンプレイヤーこそが市場を切り開く鍵になるのではと。

赤川氏:
 野球のルールはよく分からないけど,ビールを飲みに球場へ行くような層は,まだeスポーツにはいませんよね。こうした広がりを作っていけると,エンタメ産業ももっと面白いことができるかもしれません。

岩城氏:
 もともと機材があってUnityの造詣が深い人しか参入できなかったけれど,今はスマホ1台でVTuberになれてしまう世の中ですし,そこにおける視聴者の皆さんの役割も非常に大きい。
 この先の表現の1つとして,もしかしたら「エモモ」が全力で走り回っている世界があるかもしれませんし,背中のある世界があるかもしれない。想像していることは大体現実になりますから,まだまだ面白いことをやりそうだなと期待していただければと。

赤川氏:
 このスマホ1台でゲーム実況というのが僕らの作ったイノベーションで,そこにスマホ1台でVTuberになれるアバター機能を追加しました。今度は,例えばボイスチェンジャーなどを含め,スマホ1台で違う自分になれる価値を乗せるとか,まだまだ広がりがありそうだなと。
 こうしたものが当たり前になると,もっと色々な才能が開放されると思うんです。現実のしがらみによって縛られている部分を破壊して,エンターテイメントが混ざり合っていく未来を今まさに試しているイメージです。

画像集 No.010のサムネイル画像 / ライブ配信プラットフォーム「Mirrativ」が変える,運営とプレイヤーの距離。新たな経営体制のキーパーソンが語る理想の組織とは

4Gamer:
 それでは最後に,読者へメッセージをお願いします。

岩城氏:
 まず,長い文章を読んでいただきありがとうございます(笑)。色々なゲームの遊び方があると思うので,もしまだ「Mirrativ」に触ったことのない方がいたら,ぜひ一度,配信を体験してみてほしいですね。僕もそうだったんですけど,「おっ!」となる感覚がありますよ。
 以前「一介のサラリーマンによるゲーム配信を100人くらいが見に来てて,自分のゲーム体験の限界突破をした」と仰っていたユーザーさんがいたのですが,まさにこれなんです。人と話しながら,反応を楽しみながら遊ぶ感覚を,この機会に知っていただけたらありがたいです。

赤川氏:
 本当に長いテキストになっている気がするんですけど,読んでくださってありがとうございます(笑)。昔から一ゲームファンであり,新しいもののファンであるので,僕らが作ったものを一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。

 「ライブ配信をしてください」と言われると少しハードルが高いかもしれませんが,「友達の家でドラクエをやっていた」という経験のある方は結構いると思うんです。そのときって,別に「今日は絶対ドラクエやろうな!」じゃなくて,ゲームをやっていたら友達が家に来たからそのまま一緒に遊ぶ,そんな感じだったと思いますし,そんなノリでいいと思っています。あるいはゲーセンの対戦台で,後ろで順番待ちしているユーザーにプレイを見られるのがちょっと照れくさいけど嫌いじゃないみたいな,こういう感覚こそ僕らの思うゲーム実況,ライブ配信のあるべき姿です。
 上手くなきゃいけないとか,しゃべりが流暢でないといけないみたいな意識があるかもしれませんが,そんなことはありません。1回体験してもらえたら,「なるほどな」と思っていただけるはずです。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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