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ところが我らがキックサロット卿は,王様からのおつかいを伝えに来た使者を,話の途中でいきなり海へ蹴り落とす。城へ向かう道中の村でも,気に入らないやつは片っ端から蹴る。
トゲの壁,焚き火,崖。便利なものは全部,誰かを蹴り込むためにそこにある。お姫様救出の冒険は,こうして派手にこじれていく。
本日は,フランスのソロ開発者Stéphane Le Roy氏が手掛ける「The Adventures of Sir Kicksalot」を紹介しよう。
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本作はおとぎ話の世界を舞台にした一人称視点のアクションゲームだ。プレイヤーは騎士キックサロット卿となり,さらわれたお姫様を救うべく旅に出る……のだが,剣や弓や魔法をひととおり持っているくせに,この騎士の主な武器は「蹴り」。出会う敵を片っ端から蹴り飛ばし,物語を斜め下の方向へ転がしていくのが目的だ。
蹴りは世界を救う
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本作の主役は剣でも魔法でもなく“蹴り”だ。蹴られた敵はよろけて吹っ飛び,トゲだらけの壁に突き刺さり,焚き火に焼かれ,崖から転落する。要するに,蹴り飛ばす方向さえ間違えなければ,敵は勝手に痛い目を見てくれるわけだ。
剣で斬り合うより,敵をうまい場所まで誘い込んで一発蹴り込むほうが速い,という妙な世界がここにある。
ちなみにゲームの元ネタは2006年の名作「Dark Messiah of Might and Magic」。この作品の蹴り攻撃があまりに強烈で,海外では「kicking simulator」などとネタにされていた。本作のタイトルはそのジョークが由来になっている。
なんだって武器にする
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戦い方の自由度が,ちょっとおかしい。テーブルを持ち上げて投げつける,松明をつかんで敵に押し付けて火だるまにする,樽を蹴り飛ばしてボウリングみたいに敵をなぎ倒す。
倒した敵の体すら持ち上げて武器にできるし,まだ生きてる敵を別の敵に投げつけることもできる。
魔法もそろっていて,炎で焼き,氷で凍らせ,雷で痺れさせ,幻影で惑わし,さらには念力で物を浮かせて敵にぶつけることもできる。
地面に魔法を置いて罠にしたり,剣に魔法を込めて切りつけたり,最後の手段として敵を洗脳して仲間割れさせることまでできてしまう。「これって武器になるかな?」と思ったものは,だいたい武器になる。
ずる賢く戦うが正解
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ステージごとに細かく作り込まれた手描きのマップが用意されていて,敵の配置にも,地形にも,「ここで何かやらかしてくれ」という設計者の意図がにじみ出ている。
見張りの後ろに回り込んで気絶させる,スリで武器を奪う,パトロール中の兵士を物陰から眺めて声で気を引く――ステルスでこっそり進む遊び方もちゃんと成立する。
正面から剣で戦うと,たぶん一番つまらない。トゲの前で敵を待ち構え,松明片手にニヤッとして,最後に「ヨッ!」と蹴る。本作はそういう,行儀の悪い遊び方をした人ほど得をするように作られている。
お姫様救出という由緒正しいおとぎ話の始まり方をしておきながら,中身は「蹴って,投げて,燃やせ」のおふざけアクション。それでいてマップ作りや敵配置はしっかりしていて,ちゃんと一本のゲームとして筋が通っている。
「正攻法で勝つ」より「ズルくて派手に勝つ」ほうが楽しい人,物理エンジンで遊ぶゲームが好きな人,そして何より,かつてDark Messiahで延々と敵を蹴り落として遊んでいた人には,ぜひ一度試してほしい一本だ。




















