企画記事
「E3 2011」を振り返って――取材をした4Gamerスタッフの編集後記を掲載
本稿では,そんな今年のE3 2011が一体どんな様子だったのか。各ブースのレポートと,現地で取材してきたスタッフの感想をまとめてみた。PlayStation VitaやWii Uが展示されていた,SCEAおよび任天堂のブースはどういう状態だったのか。カプコンやセガのブースでは何が出展され,プッシュされていたタイトルはなんなのか。写真中心のレポートではあるが,E3 2011というイベントの全体像を,なんとなくでも掴めてもらえれば幸いである。
ちなみに今年の来場者数は4万6900人。Xbox 360の公開で7万人の関係者が集まった2005年,あるいはPlayStation 3とWiiの公開に6万人が詰めかけた翌2006年と比べると,ちょっと少なく思えるかもしれないが,昨年の4万5600人からは1200人増という結果に。出展社数も約200社を数えるなど,世界最大級のゲームイベントの面目躍如といったところだろうか。
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「E3 2011」記事ランキング
と,会場の各ブースレポートや4Gamerスタッフの感想に入る前に,4Gamer上で掲載されたE3関連記事のアクセスランキングを見てみよう。
まぁ当然といえば当然なのだが,やはり新ハードに関する記事が上位を独占。とくに4Gamer上では,PlayStation Vitaに関連する記事の注目度が高く,1位と2位の記事の間にも,アクセス数的には実に倍近い開きがある点は興味深い。今なお勢いのあるPlaystation Portableの後継機ということもあるだろうが,想像以上に本気で“勝負”を仕掛けてきた2万4980円という価格設定は,ゲーマーの間で大きな反響を呼んだ。
他は,「Battlefield 3」「Halo 4」「FINAL FANTASY XIII-2」など,ビッグネームが名を連ねる。その中にしれっと「Neverwinter」の記事がランクインしてくるあたりは,4Gamerならではといったところだろうか。
読み物としては,日本を代表するクリエイターの一人である板垣伴信氏へのインタビュー記事がランクイン。板垣氏のゲームに対する考え方や思想,そして情熱などが垣間見える内容になっているので,興味がある人はぜひ一読を。
■「E3 2011」を振り返って
――4Gamerスタッフが感じたこと
TAITAI
今年のE3だが,やはり注目はWii UとPlayStation Vitaである。幸いなことに,筆者はどちらにも触ることができたが,個人的には,Vitaを持った時の“感触の良さ”がとくに印象的であった。想像以上に軽かったというのもインパクトがあったのだが,何よりもアナログスティックのグリップ感にゲーム機としてのこだわりみたいなものを感じた次第。最近は,スマートフォンやタブレットで遊ぶタイプのゲームが増えつつあるが,やはりゲーム機には優れた入力インタフェースが欠かせない要素だと再認識した。
これは別にVitaやWii Uに限らない話だが,ゲーム機におけるもっとも重要な「コンセプト」の一つは,入力インタフェースにこそあると思うのは筆者だけではあるまい。過渡期においては,処理能力や機能面がクローズアップされた時代もあったが,結局のところ「人間が触れて遊ぶもの」という意味で,「操作の気持ちよさ」「操作の面白さ」がゲーム機には欠かせない。今回,VitaにせよWii Uにせよ,ハードウェアとしてのスペックをあまり強調しないのは,単に公表できない以外の理由……時代の流れの変化というものがあるのではないだろうか。
言うまでもなく任天堂も,そうした「ゲーム機=入力インタフェースの提案」という部分にこだわりを持ち続けている会社である。液晶モニタ付きの新型コントローラが採用されたWii Uは,ゲームへの新しい接し方を模索するものであり,少なくとも任天堂の考え方そのものは,昔から少しも軸がブレてないことが見て取れる。
昨今,スマートフォンやタブレットが爆発的な普及の兆しを見せ,それに伴って「ゲーム機が衰退するのではないか」という意見が多く囁かれるようになった。確かにインフラとして,これら高い処理能力を持つハードウェアが普及すれば,そこで動かせるコンテンツ(ゲームも含む)には,必ず一定の需要があるものだとは思う。
しかし一方で,そうした汎用デバイスではカバーできない面白さや需要,あるいは遊び方というのも,確実にあるように思えてならない。E3を前後して,任天堂の岩田社長が質疑応答や各メディアでのインタビューで,口を酸っぱくしてゲームの価値やソーシャルゲームに対する見解を述べているが,岩田社長をはじめとした任天堂が持つそうした信念やポリシーは,今後のゲーム業界を支える一つの考え方だと筆者は思う。
誤解しないでほしいのだが,例えば,スマートフォンで遊ぶゲームというものが,今後普及しないかといえば,それは確実に「する」と思うし,既存のゲーム業界がその影響を受けずに済むというのは,正直いって考えづらい(実際に資金や開発リソースのシフトという面で現実に影響が出ているし)。
ただ,例えば10年前の携帯電話の普及を指して,同様の議論が行われていたことも忘れてはならないとも思うのである。汎用性が高く,日進月歩で進化する携帯電話は,当時,あらゆるメディアや機器を飲み込む可能性のあるデバイスとして大きな注目を集めていたし,実際に,携帯電話用のゲーム市場が立ち上がり,一定の規模を築いたのもご存じの通りだ。
しかし今日,例えば携帯ゲーム機が滅んだかといえば,その答えはノーだし,逆にゲーム機市場がまったく影響を受けなかったかといえば,それもノーである。GREEやモバゲーの隆盛一つとってみても,携帯電話の特性を活かしたゲーム……というか,携帯電話の特性を活かした遊びの提案には,大きなポテンシャルが埋もれていたのは確かなのだ。
PlayStation VitaやWii U,あるいはニンテンドー3DSなど,ゲーム専用機が今後どうなっていくのかは正直分からない。しかし,Wii Uの各種デモゲームで感じられた,シンプルながらも童心に帰れる面白さや,あるいはPlayStation Vitaならではの機能を存分に盛り込んだ「GRAVITY DAZE」の,なんとも言えない浮遊感が味わえる不思議なプレイ感覚は,やはりゲーム機ならではの面白さだと思う。
どんなに性能が良くなろうとも,すべてのゲームがスマートフォンのタッチパネルで楽しめるワケではない。それでしか味わえない面白さや体験,あるいは“ゲーム機でしか味わえない感触”がそこにあるのならば,その需要は普遍なのではないか。今回の取材で,筆者が新型ゲーム機を触って,素直に感じた感想である。
noguchi
というわけで,E3開催前は大々的に両ハードが展示されると思っていたのだが,その予想は少し外れたかもしれない。
というのも,PlayStaion Vitaはアポイントメントを取った一部の人しか触れないという展示状況だったのだ。
これが東京ゲームショウやドイツのGamescomなど,一般のゲームファンが入場するイベントなら分からなくもない。だがE3は,メディアや流通関係者しか入場できないイベントなので,開発初期段階のタイトルが多かったとしても,もっと積極的に出展してもよかったのではないだろうか。今回の出展状況からは,年内に発売されるハードという印象は受けなかったというのが,正直なところだ。
そんな大量にいろいろなものを紹介した中から,あえて印象に残ったものをピックアップするとすれば,やはりWii Uだ。
今回は出展されていなかったが,Wiiリモコンとタッチパネル付きのコントローラを同時に使うようなゲームも登場するようで,作り手側のアイデア次第では,いままでにないものが生まれそうだ。
もっとも,今回展示されていたゲームを遊ぶ限りは,複数人で同時に遊ばないとWii Uならではの特徴は味わえなかった。一人で遊ぶ分には,コントローラーが大きいHD機といった印象で,肝心の本体スペックに非公開部分が多く,PlayStation 3やXbox 360との比較も難しい。なんてことを書いてはみたが,まあ,発売されれば買うんですけどね。価格も発表されていない段階で断言するのは,若干危険かもしれないですが。
松本隆一
新作タイトルのほとんどは,すでにE3開催前に発表されており,以前のように「おお,なんだこりゃ!」という驚きは少なくなった。取材もアポイント重視で,試遊台のそばに立っている人に,これは何ですかと聞くこともできない。各社のプレスカンファレンスまでネットで生中継されるご時世,成田を出発する時点で,だいたいの取材内容は決まっているという感じだ。
それでもまあ,我々(アメリカから見ての)海外メディアは,普段会えない人に会ったり,プレイアブル展示を遊んだりというお楽しみがあったりするのでE3は見逃せないが,地元である北米メディアには辛いかもしれない。来年以降,ショウのあり方がまた取りざたされる可能性も少なくないだろう。
Nobu
ソフトウェアに目を向けると,「アンチャーテッド -砂漠に眠るアトランティス-」をイチオシしたい。筆者は最初から買う気満々(前々作,前作共にプロ難度クリア済みのファン)なのだが,シアターセッションのデモプレイ/ムービーを見て期待は増していくばかり。Naughty Dogの技術力もさすがと言わざるを得ないが,エンターテイメントとしての出来の良さに毎回驚かされるアンチャーテッドシリーズは,今度はどんな驚きが待っているのか,個人的に発売が待ち遠しい1本だ。
期待作「DARK SOULS」のデモも会場でプレイしてみた。インプレッションについては,E3と並行して掲載したライターのマフィア梶田氏の記事を読んでほしいのだが,筆者の感想もここで述べておこう。とにかくE3版デモは,初っ端から“探索している感”がすごい。そして,思わずハマりたくなる“見える”罠(強敵)の数々,雑魚相手に油断=死に繋がるゲームバランスも健在で嬉しいかぎりだ。“ドMか俺は”なんて思いながら,なんとかボスまで辿りついたのだが,最後は屋根から落下して背後にいた外国人に笑われるという,文字どおりオチが付いてソウルは折られてしまったのだ。
A.I.
Ky
現地での印象深いエピソードは少なくないが,ここで語るべきことを挙げよと言われると長考を要する。
真っ当に考えれば,やはりE3 2011でとくに感慨深かったのはPlayStation VitaやWii Uといった新たなハードにいち早く触れられた瞬間……と言うべきなのだろうが,それもきっとほかの編集者が存分語ってくれるだろうから,やはり触れないでおく。それよりもここでは,筆者の視野を一つ広げてくれた一人の女性について語りたい。
その女性というのは,「BioShock Infinite」のヒロイン「エリザベス」だ。彼女はコロンビアという浮遊都市にて囚われの身となっているうら若き女性で,BioShock Infiniteでは主人公ブッカーと多くの場面を共にすることになるという。
栗色のボブカットにアクアマリンの瞳,胸の大きく開いた中世ヨーロッパ的服装など外見的特徴が目立つ彼女だが,筆者が最も魅せられたのは,なんと言ってもその背中を撫でていくようなハスキーボイスである。
帰国してからは「BioShock Infinite Voice actor」とか「Elizabeth Voice act」だとか,とにかくそれっぽいキーワードを頼みの綱に,電子の海を彷徨いまくったのだが,その声の詳細は結局分からず,今なおやきもきさせられている状態だ。
そもそも,日本のキャラクターならば,調べて声優の分からないヒロインなんていないし,一声聞けば,どの声優がボイスを担当しているのか,大体は分かるものである。
そういう経緯もあって,エリザベスは,筆者にとって非常にミステリアスな存在となった。異国の地で出会う謎めいた女性とくれば,漫画や小説なら,それはもう恋愛フラグが地面と垂直に立っている状態といっていい。つまり,彼女は筆者を“洋萌え”という新境地へと導いた女性になるわけだ。
これまでは,いわゆる“ジャパニーズ萌え”にしか興味のなかった筆者だけに,エリザベスとの出会いはかなりの衝撃的だった。
ちなみに現時点で公開されている情報によれば,「BioShock Infinite」の発売予定日は2012年の第2四半期。E3 2012が開催される前には彼女と再会を果たせそうだが,しばらくの間はこの焦がれた気持ちを持て余すことになりそうである。
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