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[CEDEC 2012]時代はFlashからHTML5に移行するのか? DeNAが推進する“Flash&HTML5”という選択
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印刷2012/08/23 00:00

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[CEDEC 2012]時代はFlashからHTML5に移行するのか? DeNAが推進する“Flash&HTML5”という選択

ディー・エヌ・エー ソーシャル事業部 パートナーアライアンス統括部 サービス推進部テクニカルコンサルティンググループ グループリーダー エンジニア 水島壮太氏
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 日本最大のゲーム開発者会議,CEDEC 2012の2日め(2012年8月21日),ディー・エヌ・エー(以下,DeNA)の水島壮太氏による「Next Generation Web SocialGame Platform」と題した講演が行われた。このセッションでは,同社の新ツールが紹介されるとともに,同社の世界展開などについても示された。

 冒頭,Mobageの世界展開などを軽く説明した水島氏が示したのが,

 8.15

という数字だ。
 これは2012年8月15日をもってAndroidのWebブラウザでの「Flash Player」のサポートが終了したことを意味する。

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 以前,アドビのイベントに行ったときは,ブラウザでのサポートはなくなるが,AirにシフトするだけでむしろFlashの再生環境は強化していくから大丈夫,といった感じの説明を受けて,そういうものなのかと思っていたのだが(関連記事),現場ではまったくそういうことはなかったようだ。Webゲーム業界にとっては,一大事だ。
 では,これからAndroidでFlashベースのゲームはどうしたらいいのか,という問題についてのDeNAの回答が「ExGame」というシステムである。以前,「こちら」でも軽く紹介したことがあるのだが,これはもともと,Flash再生機能を持たないiPhoneなどでFlashゲームをそのまま動かすための環境として作られたものだ。

 FlashのないiOSで有効だったのなら,FlashPlayerがなくなったあとのAndroidでも使えそうだというのはだいたい分かるだろう。Android 2.2以降なら利用できるとのこと。

FlashのSWFファイルを動かすExGame。左はFlashと並べて動作比較をしているところ。起動のタイミングが若干ずれているので少し絵は違うが,動作としてはまったく同じだ。右は,そのHTMLソース。赤い部分の3行を入れるだけで利用できる
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 ちなみに,同社は「ngCore」というミドルウェアも提供しており,スマートフォン用のアプリを作成する方向も推進している。現在はWebベースのゲームとアプリベースのゲームが混在しているわけだが,それぞれの利点について水島氏はまとめていた。

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 総合的に見ると,Webベースのもののほうがメリットは大きいようだ。とくにAndroidでは端末間の差が大きく,対応が大変なことや,イベントを行うたびにアプリをアップデートさせるようなことは難しいといった事情があるためだ。ブラウザ間でも挙動の違いはあるが,機種の差に比べるとさほど大きなものではないという。これまで同社ではFlashPlayerがあればそれを,インストールされていなかったらExGame版を利用させるような流れを用意して対応していたのだが,FlashPlayerが期待できなくなるというのは,それなりに痛手であるようだ。

現時点でMobageの利用者の割合は,フィーチャーフォンとスマートフォンで半々だという。近い将来フィーチャーフォンがなくなるのはほぼ確かだが,スマートフォン対応だけでは,現在の市場の半分を失うことになる
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 続いて,同社の海外展開の状況が報告された。
 アプリの事例では,シリコンスタジオ制作の「Fantasica」が挙げられた。これはngCoreで作られたゲームだが,コンシューマタイトルを思わせるような見栄えで,DeNA社内でも注目を浴びたゲームだそうだ。海外展開も好調で,日本と同等のKPI(重要業績評価指標:ここでは単に業績と考えていいだろう)を記録しているという。つまり,高品質なアプリであれば,洋の東西を問わずビジネスになるということだ。

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 次に,Web系の事例が紹介された。
 Web系といっても,多くはアプリとして提供されているものであり,煩雑な縦スクロールをしたり,データを逐次ロードしたりするため,電波状況の悪い海外では通用しないのではないかと考えられていたタイプのゲームだ(実際,そのように考えたからngCoreを推進したのだとのこと)。

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 そこに出たのがCygames制作による「神撃のバハムート」だ。
 前述のような懸念はあったようだが,蓋を開けてみれば,神撃のバハムートは海外で記録的な大ヒットとなった。それに続いて出された「Deity Wars」も同様に好調。神撃のバハムートとは違ったテイストの作品でも大丈夫なようだ。パケ放題のない海外では,ゲームを進めるだけでパケット料が発生するわけだが,そういったことも問題にならないらしい。ちなみに,これら2作とも,ExGameによるタイトルだという。

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 さて,DeNAではこれら同様にWebベースの,あるソーシャルゲームを海外に持っていったのだが,そちらは惨敗だったという。理由は簡単で,ExGameを利用していなかったためだ。海外ではAndroid携帯(もちろん8月15日以前の機種)でもFlashPlayerが搭載されていないことが多いのだそうで,内容はどうあれ,全然動かないゲームでは評価されようがない。

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 とにかく,「日本の携帯ソーシャルゲーム市場は特殊なのではないか」「国内は絶好調でも,海外展開ではそううまくいかないのではないか」という見方は強かったのだが,アプリにしてもWeb系のソーシャルゲームにしても,日本で売れたゲームなら,ほとんどそのまま通用することが証明された。それぞれ,ngCoreとExGameという開発ツールが有効に作用している。

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 とりあえず,ExGameを使えばFlashLite用に作られてたコンテンツのほとんどをそのままアプリ化できる。これまでの資産を無駄にせず,しかも互換性などの制限が少ないWeb形式でいけるのは,大きなメリットになっているようだ。

 半面,ExGameはフィーチャーフォン用のFlashコンテンツを動かすことを目的に作られたものであり,互換性を重視した結果,スマホ本来のパフォーマンスが発揮できていないという問題もあったという。ゲームの中身も,基本的にはフィーチャーフォン用のコンテンツであり,ちょっと古めのゲームになっているのも否めない。

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 そこでDeNAが開発中なのが,「Post ExGame」(仮称)というツールだ。これは,パフォーマンスを重視して作られたスマホ時代のFlash再生環境となる。互換性は完全でない部分があるのだが,従来のExGameでは込み入った描画で重くなってしまい,解像度を下げたり,アニメーションを端折ったりしなければならなかったような部分もきっちり再生できるものとなっている。

現行ExGameとPost ExGameの速度比較。起動タイミングから,序盤は現行版のほうが速かったのだが,途中で逆転し大差をつけて終了している(速度差は処理落ちのため)
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 しかし,Post ExGameは単なる高速版ExGameではないという。DeNAでは,ゲーム自体はHTML5に移行しつつ,アニメーションなどを行う部分ではFlashで作成したコンテンツをパーツとして利用するという利用法が想定されているようだ。

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(左)複数のSWFファイルを実行して3D表示しているところ。(右)こちらは,ブロック一つ一つをSWFファイルで作成し,動きのあるパズルゲームを実現している
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 HTML5の台頭により,世間では,従来Flashが行っていた部分がどんどん置き換えられていくのではないかという見方が強いわけだが,オーサリングツールの優秀性やFlashコンテンツ作りに慣れた人的資源なども考えると,Flashが得意な部分はFlashで作成し,それをHTML5から簡単に利用できるようにするほうが効率がよい,そういう考え方だ。

HTMLで組みつつ,パーツとしてFlashを利用する
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 それぞれに得意な部分を生かしつつ,生産性を上げることで,よりリッチなゲームを生み出す環境を整える。それがDeNAによる次のプラットフォーム展開につながってくる。なお,Post ExGameは速度を維持しつつFlashとの互換性や機能を拡大する方向で鋭意開発中とのこと。

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 海外展開へのさまざまな懸念がなくなった現在,日本のソーシャルゲームやアプリは,これまで以上に海外に進出していくだろう。競争も激化する中,より表現力のある柔軟なツールの投入は,ゲーム開発者にとって歓迎すべきものといえそうだ。
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