インタビュー
「メイプルストーリー」日本オリジナルアップデートは「戦国時代」。戦国愛に溢れる開発スタッフにインタビュー
その名のとおり,日本をテーマにした本アップデートでは,「オダノブナガ」「タケダシンゲン」「アケチミツヒデ」といった戦国武将や,新キャラクター「ハヤト」「カンナ」などが登場する予定だ。今回4Gamerではこのアップデートについて,メイプル本部 開発チームの4名に話を聞いてみた。
- メイプル本部 本部長 オ・ハンビョル氏
- メイプル本部 ライブ2室 ライブソリューションチーム チーム長 キム・ジュンヨップ氏
- メイプル本部 ライブ2室 日本メイプルチーム チーム長 キム・ヒョンソン氏
- メイプル本部 ライブ2室 日本メイプルチーム 企画パート長 クァク・キョンス氏
新職業は戦士タイプの「剣豪ハヤト」と魔法使いタイプの「陰陽師カンナ」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。今回は日本オリジナルのアップデートということですが,戦国時代がテーマになっているんですね。
ええ。今回のアップデートは,メイプルストーリーのサービス戦略的にも重要なもので,日韓サービスの担当開発者を投入して,かなり力を入れて開発しました。
オ・ハンビョル氏:
私は以前,韓国版の大型アップデートを中心に開発していたのですが,去年から日本版のアップデートも担当することになり,オリジナルコンテンツを入れたいと考えていました。
これまでは,韓国で実装されたアップデートがその後に各国で実装される形になっていましたが,これでは新鮮味を感じていただけませんから,今後も皆さんにメイプルストーリーを楽しんでもらうため,どうしても実装したかったんです。
4Gamer:
アップデートのテーマに戦国時代をチョイスしたのは,日本のコンテンツだからということになるのでしょうか。
キム・ヒョンソン氏:
そうですね。アメリカならカウボーイ,イギリスならアーサー王伝説,中国なら三國志といった具合に,世界中の国には,その国の文化と歴史を見せてくれる物語があります。日本にふさわしいエピソードを考えると,やはり戦国時代が象徴的でいいなと。
4Gamer:
ではまず,アップデートの目玉となる部分を教えてください。
クァク・キョンス氏:
大きなところでは,新職業として7月25日に「剣豪ハヤト」が,8月16日に「陰陽師カンナ」が実装されます。
剣豪ハヤトはこれまでの戦士系に近い操作ながら,より快適にプレイできるよう調整しています。これまでのような防御力が高いタフな戦士ではなく,軽快な動きができる職業なんです。
4Gamer:
剣豪と聞いて思い浮かべるイメージどおりですね。スピードタイプの前衛職といったところでしょうか。
クァク・キョンス氏:
そうです。それと,爽快な「抜刀術」を使えることも特徴になります。抜刀状態でも戦闘は可能ですが,納刀しておくと攻撃力やクリティカル確率が向上したり,一定範囲の相手に殺気でダメージを与えたりできるので,うまく抜刀術を使うと,フィールドでの狩りが快適になるはずです。
日本刀は,攻撃時の爽快感を表現するのに向いた武器だと思っていますので,そこを感じてもらえるよう注力しています。
実を言うと,以前の大型アップデート「レジェンド」の時点で,剣や日本刀で派手に戦うアクションを入れたいというアイデアは出ていたのですが,その時は,日本が舞台でもないのに日本刀を使う職業を入れるのもどうかということで実現しませんでした。今回ようやく実装できて,作り手としても嬉しく思っています。
4Gamer:
もう一方の陰陽師カンナはどういった職業になっているのでしょう。
クァク・キョンス氏:
陰陽師カンナは魔法使い系の職業です。これまでの魔法使いは,ボス戦やグループプレイで目立たないという意見を多くいただいたので,そこを改善できるよう意識しています。
単体の敵への攻撃力が高いだけでなく,敵の攻撃から仲間を守れる「結界」や,仲間の攻撃力を向上させるスキルなども使えるので,グループプレイで遊びたい人にはうってつけの職業だと思いますよ。
キム・ヒョンソン氏:
MPではなく「霊力」を使って戦うこともカンナの特徴の1つです。「デーモンスレイヤー」の「フォース」に近いイメージで,使い切って薬で回復させるのではなく,自然に回復するのを待つ形になります。
メイプルストーリーの世界に戦国時代を組み込むにあたって,これまでメイプルストーリーで使われていた力とは違うものを利用して戦う職業として表現したかったので,あえてMPを使わない魔法使いにしてみました。
■剣豪ハヤト
■陰陽師カンナ
「名声度システム」「ランマル遠征隊」など新たなコンテンツも登場
4Gamer:
新職業以外では,どういった要素が実装されるのでしょうか。
「名声度システム」「戦国大合戦」「ランマル遠征隊」が登場します。
まず名声度システムは,「モウリ」家,「タケダ」家,「ウエスギ」家から与えられた任務をこなして名声値を上げ,自分のキャラクターをその家門にとって重要な人物として成長させていくというコンテンツです。
キム・ヒョンソン氏:
家門からの評価を上げると装備やアイテムが手に入るのですが,家門によってもらえるものも変わってきます。
4Gamer:
というと,どこかの家を選んで仕えるというものなんですか? それとも,どの家とも仲良くできるのでしょうか。
キム・ヒョンソン氏:
1つの家に仕えなければならないという制限はないので,それぞれと仲良くなって,報酬を揃えることも可能です。
4Gamer:
戦国大合戦とランマル遠征隊はどういったものになるのでしょう。
クァク・キョンス氏:
戦国大合戦は,AIキャラクターと共に「攻撃戦」「防御戦」「補給戦」といった任務に挑むコンテンツです。剣豪ハヤトや陰陽師カンナだけでなく,既存の職業でもプレイできます。コンセプトは「戦場の感覚を味わってもらえること」で,ただ敵を倒すだけでなく,やぐらを守ったり補給物資を手に入れたりといった内容になっています。
ランマル遠征隊は,「強いボスを出して欲しい」というご要望をかなり頂いていましたので,それに応えたものです。モリランマルはカンナのライバルキャラクターとして設定されているのですが,かなり強力なボスなので,ぜひ挑戦してみてください。
オ・ハンビョル氏:
ほかにも,戦国時代のテーマとは異なるものになりますが,新システムとして「アルバイト」「キャラ札」というものも実装されます。
アルバイトは,操作していないキャラクターに指示を出して,報酬を獲得できるシステムです。たとえば「採鉱」をさせれば鉱脈から採れるようなアイテムが手に入りますし,「休憩」をさせれば,次にそのキャラクターでログインした時にバフを得られます。
4Gamer:
一度アルバイト先を決定してしまうと,実行中はそのキャラクターでログインはできないんですか?
オ・ハンビョル氏:
基本的にはそうなりますが,中断させれば大丈夫です。プレイヤーの皆さんは,さまざまなキャラクターを育成してくれていますが,その一方で,やはり新しいキャラクターが登場すると,これまでのキャラクターの稼働率が低くなってしまいがちです。そうした中で,使っていないキャラクターもケアできればということで,今回のアルバイトシステムを作りました。
キム・ヒョンソン氏:
キャラ札も,さまざまなキャラクターを活用するためのシステムとなっています。キャラクターのレベルを30まで上げ,2次転職をすると,キャラ札を1枚獲得できるのですが,その札をセットすることで,操作中のキャラクターで有用なバフが得られます。戦士系の札であれば力や体力が,魔法使い系であればMPや魔力が上がるといった具合ですね。
開発スタッフは戦国愛に溢れる人達だった
ところで,今回のアップデートは,開発チームの皆さんからすると,他国の歴史を見て物語を組み立てているわけですよね。やはり,そういった作業は通常のアップデートよりも手間のかかるものなのでしょうか。
オ・ハンビョル氏:
そうですね。勉強すべき部分が多く,難しいです。ただ,やはり独自のコンテンツとなれば,その国ならではのものを作りたいですし,日本でサービスを開始して,もうすぐ9年になるということで,プレイヤーの皆さんへの感謝を込めてがんばってみました。
クァク・キョンス氏:
実を言うと,私はもともと戦国ファンなので,今回の開発をきっかけに知識を広げられて満足しています。戦国時代は本当に魅力的なんですよ。
4Gamer:
というと,どのあたりがですか?
クァク・キョンス氏:
「個性の強い人物がたくさん登場し,その魅力が失われることなく調和している」という点ですね。最後まで主君に忠誠を捧げた山中幸盛(主家である尼子氏を三度も再興しようとした)ですとか,自分の才能を買ってくれる主君であれば誰にでも従えた藤堂高虎(何度も主君を変えたことで知られる築城の名手)ですとか,個性的な武将が競い合う。彼らの生き様が本当に興味深いんです。
4Gamer:
また渋いところを突いてきますね。確かに,戦国好きでないと出てこないようなチョイスです。
クァク・キョンス氏:
でも,魅力的な時代であるだけに,それをどうやってメイプルストーリーで実装するか,すごく悩んだんです。我々の目的は歴史ドキュメンタリーを作ることではなく,戦国時代の物語をメイプルストーリーの世界観に融合させることですから。
4Gamer:
武将へのキャラクター付けは必要ですよね。そのまま登場させれば良いというわけではないでしょうし。
そこは本当に苦労しましたね。戦国時代アップデートで登場する「オダノブナガ」は,「第六天魔王」として日本を制覇しようとする悪役なので,敵らしい設定を付けています。でも個人的には,織田信長のことを調べていくうちに,なんだかものすごく好感を持つようになってしまって,悪役なのが悔しくて。
オ・ハンビョル氏:
そうなんです。私は織田信長が,戦国時代で一番格好良くて知的な武将だと思っているので,本当は主人公的な扱いにしたかったのです。しかし,開発がスタートしてストーリーラインが決まってきたら,キャラクター性の都合上,いつの間にか悪役にされてしまいました。日本の歴史コンテンツでも,彼は個性的な悪役であることが多いんですけど,どうしてなんでしょうね(笑)。
4Gamer:
悪役っぽいエピソードの多い武将ではありますけどね。でも,お気持ちは分かります。
クァク・キョンス氏:
私はNPCの設定を行うにあたって,戦国時代の魅力的な人物の名前を書き出し,「この人にはどういう役割をしてもらおうか」と,楽しみながら考えていました。ところが,書き出した人物が多すぎて,実際に開発が始まったら,現場から「こんなに多くのNPCは作れません」と言われてしまったんですよ。仕方なく,歴史的に重要度の低い人物や,活躍した時期が少しずれている人物を削ることになったのですが,その時は辛かったですね。
なんといいますか,皆さんの戦国好きは,正直驚くレベルなのですが……。実装のために研究したというよりは,ほとんど趣味ではないかという印象すら受けますよ(笑)。
クァク・キョンス氏:
実際,みんなで資料を見て,それぞれの人物に関して意見を交換した時は本当に楽しかったですから。彼らをメイプルストーリーに連れてきたらどうなるのかと妄想したものです。
オ・ハンビョル氏:
今の話でも伝わったかと思いますが,今回のアップデートは,本当に愛情を注いで作っています。プレイヤーの皆さんは,メイプルストーリーの世界で,どのように日本の戦国時代が動いていくかを,ぜひお楽しみください。
長い歴史を持つ日本でのサービスにも関わらず,独自コンテンツを提供するのが遅くなってしまいましたが,戦国時代アップデートは,「我々は日本のサービスをものすごく大事に思っています」というメッセージとして受け取っていただければ嬉しいです。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
日本独自コンテンツとして実装される戦国時代アップデート。新職業や新システムが3回に分けて実装されるというボリュームある内容は,かなり力が入っている印象を受けるが,開発スタッフの戦国愛(とくに織田信長)を聞いていると,ただ単純に日本でのサービスを重要視しているからというわけではなく,別の熱意も込められていそうである。
メイプルストーリーの世界と日本の戦国時代がどのように融合するのか。既存の職業とは異なる特性を持つ剣豪ハヤトと陰陽師カンナの使い心地はどうなっているのか。ゲーム内で確かめてみよう。
「メイプルストーリー」公式サイト
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