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印刷2005/02/25 18:12

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最終β版で斬る。”パワードール”入門編の「ブルーフロウ」

■セミリアルタイムでなく,シナリオ型"RTS"
 先日「こちら」の記事でおおまかなゲーム内容をお伝えして以来,しばらく間が空いてしまった工画堂スタジオのSFリアルタイムストラテジー「ブルーフロウ 〜Blue Flow」(以下ブルーフロウ)だが,マスターアップ一歩手前のバージョンをプレイする機会があったので,その印象をお伝えしよう。
 公式サイトの言明に従うなら「パワードールの入門的タイトル」たらんとする本作だが,その試みは,どのように・どこまで達成されているのだろうか? そこに重点を置いて,プレイ内容についての情報をお届けしたい。

 何はさておき述べておかねばならないのは,本作が"RTS"であることだろう。「パワードールの入門的タイトル」と聞けば,多くの人は「パワードール4」のセミリアルタイム制をベースにしたシステムを想像することと思うが,プレイしてみた限り,それはかなり異なる。
 パワードール4は視界ルールを根幹に据えたサーチ&デストロイゲームであり,一度に出遭う敵を最少に絞りつつ,ゲームの進行を随時停止して配下のローダー(戦闘用大型ロボット)1機1機に細かな指示を与えるのが,オーソドックスな進め方だ。
 それに対してブルーフロウは,もう少し派手というかイケイケな展開になる。一度に出てくる敵が多い代わりに,扱うローダーはかなり丈夫,おまけにマップ上で機体の修理や弾薬の補給も可能となっている(後者はパワードール4でも一応可能ではあったが)。進行を止めて,ローダー1機単位あるいは3機小隊単位で命令を与えることも可能だが,敵は多いわ,ゲームの進行速度は固定だわで,戦闘が最高潮に達しているとき,全機にきめ細かな指示を出している時間はまずない。1機1機を緻密に動かすというよりも,彼我の形勢や損害状況をトータルに把握し,部隊全体の動きをマネジメントする"RTS"になっているのだ。



■セオリーどおりの編成があらかじめ用意されている
 本作の舞台は人類が宇宙に進出し,多数の植民惑星が拓かれた25世紀の世界。植民惑星の連合組織が地球政府の支配に叛旗を翻し,主人公の少年が住む惑星にもその戦乱が波及する。
 ある日墜落する輸送機を見た主人公ら3人の少年は,そこに積まれていたコンテナを発見する。積み荷は平和維持軍(地球政府軍)の新型ローダー「ブルーフロウ」で,当然ながらトップシークレット。奪取しようとする惑星連合軍と,回収にやってきた平和維持軍との戦闘に巻き込まれた主人公は,やむなくこのローダーを操り,平和維持軍の部隊と行動を共にするハメになる……というのが,本作の大枠のストーリーだ。
 その平和維持軍の部隊というのが,女性隊員だけで構成された広報部隊(実は精鋭特殊部隊)で,隊員と主人公らのやり取りを通じて以降のストーリーが展開されていく。

 ゲームはシナリオ進行に従って次々にミッションをこなしていくキャンペーン形式を採っており,一つのミッションはブリーフィング(状況/作戦目標の説明)・部隊編成・戦闘から成る。このあたりの流れは"パワードールシリーズ"と同様だが,本作にはあらかじめ用意された部隊編成で戦う「クイックスタート」というルールを備えているのが目新しいところ。
 前述のようにローダーに1機ずつ(もしくは小隊単位で)命令を与えて緻密に戦闘をこなすパワードール4では,各機各様の装備が極めて重要で,ゲーム性のかなりの部分を占めていたのだが,ストラテジーゲームにさほど明るくないプレイヤーにとっては,まさにそこがストレス源であったともいえる。
 それに対して本作の戦闘は,RTSらしくほぼ部隊総がかりのものであるから,1機1機の想定任務に最適な装備を模索するというよりは,むしろ"今このチームに何が必要か"という考え方になる。"パワードールシリーズ"ほど追い込んで考える必要はないし,自ずとオーソドックスな組み合わせが決まってくる。いわばそれをあらかじめプレイヤーに提示するのがクイックスタートなのである。

 用途別に機種が用意されたローダー,肩装備・腕装備・ポケット用に分かれた武器および装備品,そしてパイロットの適性がそれぞれに異なるといった部分は"パワードールシリーズ"と同様であり,もちろん自分で最適な編成を模索することも可能となっている。工夫した編成の効果が劇的に表れる楽しみはさすがに"パワードールシリーズ"に及ばないし,1機1機の戦いぶりが確認しにくいため,編成の御利益がいま一つ分かりにくいのは難点かもしれない。
 ただし,逆に少々目論見が外れても戦い方次第で取り返せるし,武器ごとに使用の禁止/許可も指定できるので,例えば弱い敵をムダに大口径の火器で攻撃してしまうような事態は防げる。総じて,とっつきやすい形になっているとはいえよう。



■マップ上の修理/補給施設を確保して活用する
 前述したように,本作の戦闘はRTSライクでなかなか忙しい。ただし,ミッション内容は敵の撃破よりも重要拠点の奇襲占領などマップ探索に力点のあるものが多いので,多数の敵を相手に戦ってばかりいるわけではない。
 また本作では,敵の施設の占領と活用が重要なキーポイントとなっている。ローダーの修理施設弾薬庫,開閉を制御できるゲート施設などを占拠することで戦いをより有利に展開でき,「司令塔」「動力施設」を占領すれば,ある程度広域にわたる敵の設備を自軍の手中に収めたり,機能麻痺させたりできる。
 このように施設の活用は重要なわけだが,さらに本作には通常の戦闘タイプおよび白兵戦タイプのローダーに加えて,索敵と,敵の索敵/攻撃の妨害を狙う電子戦(ECM/ECCM)タイプのローダー,工作タイプのローダーが登場し,後者を使えば味方ローダーの応急修理も可能となっている。
 全ユニットを選んでそのまま敵に向かわせることの多い本作の戦闘ではあるが,少なくともこの工作タイプおよび電子戦タイプのローダーだけは,小隊命令ルールを活用するなりして,ムダに損耗させないことが重要だろう。

 主人公らと地球政府軍部隊の女性隊員達のやりとりで展開されるストーリー部分は,いってみれば戦闘のご褒美/お楽しみ要素。テレビアニメライクなノリの会話と,やや"あざとい"描写には賛否両論あると思うが,アドベンチャー的なストーリー分岐や,主人公が敵との会話を通して自分の置かれた状況に疑問を持つ,といった場面もあるので侮れない。
 ちなみに女性隊員達は戦闘中もしゃべりまくりで,クールかつ優秀なキャラクターが思わぬタイミングで撃破されると,すかさず茶化したツッコミが入るなど,"パワードールシリーズ"にはなかった女性キャラクターの"活用"が随所に(というかかなり露骨に)見られる。これも本作の重要な個性といえるだろう。

 なぜか海外製のキャンペーンRTSと逆のマウスボタン操作,右クリックで画面を進めるアドベンチャーシーンなど,ややこなれていない部分も散見され,ストラテジーとしては若干薄味であるものの,逆に親切なチュートリアルステージが用意されているなど,ビギナー/ライトゲーマーへの配慮は応分になされている。同社の「RASETSU 〜羅刹〜」シリーズと比べた場合でも,RTSとしての各部のバランスでは,明らかにこちらに軍配が上がるだろう。
 ストラテジーにあまりなじみのないゲーマーがとっかかりとしてプレイする,あるいは肩の凝らないストラテジー系統の作品がプレイしたい場合などに向いており,初めての試みとしては比較的まとまりのよい作品に仕上がっているといえよう。(Guevarista)

「ブルーフロウ 〜Blue Flow」
発売元:工画堂スタジオ
開発元:工画堂スタジオ いるかさんちーむ
発売日:2005年3月4日
価格:9940円(税込)

 →公式サイトは「こちら」
 →紹介ページは「こちら」

(C)2005 KOGADO STUDIO,INC.

  • 関連タイトル:

    ブルーフロウ

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