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[CEDEC 2006#03]発売日前日「ファンタシースターユニバース」。開発5年間の歩み
酒井氏は「ファンタシースターユニバース」(以下,PSU)においてディレクターを務め,節政氏は,主にネットワーク関連の開発を担当したとのこと。(酒井氏には明日掲載予定の開発者インタビューでも,本作についてたっぷりと話を聞かせてもらっているので,お楽しみに。)
講演は主に,事前に配布された資料に則った形で進められた。ここではそのスクリーン写真をメインにお伝えしよう。
まず,酒井氏によるPSUの紹介で始まり,次に,PSUの開発についてへと移った。PSUが一般に紹介されたのは2004年5月のE3だったが,実際の開発はそれより早く,2003年3月から行われていたという。またネットワークモードの開発に当たっては,ゲームシステムの複雑化と,多人数化(MMO化)によるバグに苦しめられたとのこと。
またこのときは,ダミークライアントによるテストが非常に効率的だったという。ダミークライアントとは,10台程度のPCを使い,1台当たり500前後のクライアントによる接続を行うことで,ランダムに歩いたりチャットをしたりといった負荷テストに用いられる。
続いて酒井氏は,PSUのゲームデザイン,「ファンタシースターオンライン」(以下,PSO)シリーズの歴史といった解説を行った。シリーズの歴史の紹介の中では,PSOがゲームキューブに移植された際に,接続者数は減ったが,プレイヤーの低年齢化が進み,親子でプレイする人も出てきたといった話が聞かれた。
その後,バトンタッチされた節政氏は,PSO,「ファンタシースターオンライン ブルーバースト」(以下,PSOBB),PSUの違いや,ゲームデザイン上の工夫について,サーバーの物理構成を含めた形での解説を行った。
ゲームデザイン上の工夫について,同氏は,PSOではエネミー(モンスター)の同期を取っていなかったため,広い部屋ではなく小さい部屋をつなぎ合わせた形のダンジョンにし,同期のズレをカバーしていたと披露した。なお,PSUではエネミーの同期は行われているとのこと。
また,PSUのサーバー構成については,下の画像を参照してもらえば分かるように,フロントサーバーとゲームサーバーを分けた二段構成となっている。サーバーを分ける意義についてはさまざまあるが,例えばこれによってゲームサーバーがインターネットから直接参照できなくなり,それによってハッキングを受けにくくなるといったメリットがあるという。ちなみに,フロントサーバーは1台当たり2000人程度,ゲームサーバーには1000人程度が同時に接続できるとのこと。
その後,節政氏は,ネットワークゲームにおけるパケット削減と,データベースの負荷を減らす手法についての解説を行った。PSUの場合,パケット削減については,キャラクターが歩くときに発生するパケットをいかに減らすかが大きなポイントであったという。また,データベースの負荷低減については,共有メモリ上にキャラクターデータをキャッシュし,直接データベースを参照しにいく頻度を減らすといった手法を紹介した。
節政氏は最後に,オンラインゲーム(とくにPSO)におけるハッキングの手法と,それへの対策についても触れ,チート行為を完全になくすことは不可能であり,どの程度のチートを許容するか(決して容認するという意味ではない)を,ゲームデザインの中でトレードオフしなければならないと述べた。紹介された手法には,「逆レスタ」(本来は回復魔法であるはずのレスタを使ってプレイヤーにダメージを与え,それによってPKを行う)や,預かり所でのデュープバグといった,古くからのプレイヤーにとっては懐かしくも苦い思い出のチート行為などもあった。
今回の講演は,中盤以降は比較的専門的な内容を多く含むものであったが,作品ごとの比較や,両氏の非常に丁寧で分かりやすい解説によって,最後まで興味を持って聞くことができた。オンラインゲームの制作を目指す人にとっても,得るところの大きい講演だったのではないだろうか。(ginger)
- 関連タイトル:
ファンタシースター ユニバース
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キーワード
(C)SEGA Corporation, 2005