ニュース
[CEDEC 2005#03]AGEIAがPhysXの実機デモ実施,発売時期も判明
■シングルコアCPU搭載PCはローエンドになる!?
これまではゲーム用ハードのほとんどがシングルコアCPU仕様だったが,今後はPCもコンシューマ機もすべてがマルチコアCPUになる。これが何を意味するかといえば,シングルコアのCPUを搭載するPCは「Minimum spec target」――つまりローエンドになることだと,Lassanske氏は述べた。リアリティのあるゲーム体験を提供するという点において,マルチコア構成を採るXbox 360やプレイステーション 3に,シングルコアCPU搭載PCでは太刀打ちできないというわけだ。
Lassanske氏は,シングルコアCPU搭載PCが物理演算に利用できるリソースは10%から多くても15%と定義し,これだと,せいぜい敵キャラクターや車両,アイテムの物理演算がいいところと指摘する。だが,これがデュアルコアPCになると,1個めのコアは最大30%程度,2個めは100%を物理演算に利用できるようになるので,数百オブジェクトの物理演算,数千オブジェクトの追跡(物理演算が必要な局面になるかどうかの追跡)を行えるようになり,パーティクルや草木といったエフェクトの物理演算も可能になるとのこと。さらに,水が流れるような流体シミュレーションも限定的ながら行えるようになるとした。Xbox 360の論理CPUは6個だが,OSやDirectXの処理が必要なので,それほど物理演算のパフォーマンスは上がらない。
さらに,プレイステーション 3では,数千オブジェクトの物理演算,数万オブジェクトの追跡,そして制限なしのエフェクト物理演算と流体シミュレーションが可能になるとのことだ。
つまりLassanske氏は,デュアルコアCPU搭載PCであっても,スペック面でプレイステーション 3の後塵を拝すると述べたことになる。なら,いよいよPCゲームもおしまいかといえば,ここで同氏は,「PhysX搭載PCなら,プレイステーション 3と同じレベルの物理演算が可能」として,PhysX搭載カードの実機を使ったデモを披露して見せたのだ。
■Pentium Extreme Editionで6fps→PhysXで40fps超!
今回,Lassanske氏が見せたのは,AGAIA Technologiesの物理シミュレーション用開発キット「AGEIA PhysX SDK」(旧称:Novodex SDK)を利用したデモスイート「Novodex Rocket 2.0.001」である。
同氏は,Pentium Extreme Edition 840/3.20GHz(以下Pentium XE)搭載のシステムを用いて,大量の岩が崖を転がり落ちてくるデモを実行した。Pentium XEでは,4個の論理CPUのうち,1個がレンダリングに用いられ,残る3個は物理演算に用いられているとのことだが,このときのフレームレートは5〜7fpsで,画面は完全にコマ送り状態。しかもCPUはかなりビジーな状態だ。
それが,「物理演算をPhysXに任せてみよう」と,Lassanske氏が設定を変更すると,フレームレートは一気に35〜40fpsへ跳ね上がった。岩の転がりはもちろん滑らか。しかも,タスクマネージャから見えるCPUの使用率は一気に下がっているのが分かる。本当にプレイステーション 3と同レベルなのか,また,このデモがどこまで実際のゲームとリンクしているのかはともかくとして,インパクトは大したものといえよう。
こういった物理演算専用プロセッサPhysXのメリットは,シングルコアCPU搭載PCでも享受できるとのこと。この場合,CPUとPhysXが,デュアルコア"的"に動作することになる。専用の物理演算プロセッサが"2コアめ"として働いて,物理演算から解放さえされてしまえば,ゲームをプレイするうえでシングルコアCPUのペナルティはないようだ。
ちなみに,2005年8月現在,physicstools.orgの「こちら」からダウンロードできる「Novodex Rocket 2.0.001」のα版には,(時間の都合もあり,すべてチェックしたわけではないが)今回の2デモは含まれていない模様。これについては,今後の展開を待ちたい。
■12月発売,価格は250〜300ドルに
講演終了後,Lassanske氏と話ができたので,最も気になる発売時期と価格について聞いてみたところ,デモ用のPCを片付けながら「クリスマスシーズンになる。12月だね。カードの価格は250〜300ドル」と答えてくれた。この時期にクリスマスシーズンと予告する以上,よほどのことがなければこれで決まりなのではないだろうか。期待していた人にとっては,以前お伝えした予想価格より高くなりそうなのが残念なところだが,今回のデモを見る限り,少なくとも性能面はかなり期待してよさそうだ。(佐々山薫郁)
- 関連タイトル:
PhysX
- この記事のURL:
Copyright(C)2008 NVIDIA Corporation