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リングライト付きWebカメラ「Razer Kiyo」を試す。最小限の照明でけっこうキレイに顔出し配信できるアイテムだ
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印刷2018/06/23 00:00

レビュー

最小限の照明でけっこうキレイに顔出し配信できるLEDリングライト

Razer Kiyo

Text by 林 佑樹


 2018年5月25日,Razer製Webカメラ「Razer Kiyo」(レイザー キヨ,以下 Kiyo)の国内販売が始まった。
 5月18日の記事でお伝えしているとおり,Kiyohaカメラの周囲にLEDリングライトを標準搭載した製品で,このLEDリングライトにより,Webカメラを使うときにユーザーの顔を明るく照らせるというのが最大の特徴だ。

Razer Kiyo
メーカー:Razer
問い合わせ先:MSYサポートセンター 電話:048-934-5003
実勢価格:1万4500〜1万6000円程度(※2018年6月23日現在)
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 カメラの世界だと,リングライトは小物の接写用やポートレート用,自撮り用といった具合に,近年,さまざまな製品が登場している。そのメリットは「複雑な照明設定をしなくても,リング中央にカメラを置いて被写体を正面から捉える場合,おおよそキレイに光が回った状態となり,極端なテカリや影が生じにくくなる」点にあるが,そんなメリットの獲得を目指したKiyoは,期待どおり働いてくれるだろうか。本稿ではKiyoの実力をチェックしてみたい。

Kiyoの利用イメージ。自分をWebカメラで撮影するにあたって,照明のことをあまり考えなくてもいいというのがリングライトのメリットだ
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Webカメラのレビューでおっさんの顔が大量掲載というのも辛かろうということで,今回はモデルとして稲森美優さんをお呼びした。TGS 2017のD3パブリッシャーブースで見た覚えのある読者諸兄諸姉もいるはずだ
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設置方法にかなり融通の利くKiyo。「手に持っての配信」にも対応


製品ボックスから取り出した状態のKiyo
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 Kiyoのサイズは折り畳んだ状態で実測約68.7(W)×68.7(D)×50(H)mm,実測重量は約170gとなっており,一般的なWebカメラと比べると若干重い。
 重い理由はその可変構造にある。Kiyoは本体側に2か所の可動部を持っており,これを使うことで机上に単体で自立させたり,ノートPCや液晶ディスプレイの上端に引っかけて固定させたりすることができる。底部には三脚用となる直径約6mmのいわゆる細ネジ穴もあるため,小型三脚の上に取り付けて使うといったことも可能だ。

LEDリングライト付きWebカメラ部と台座の間にもう1パーツあって,2か所の可動部を動かすことでさまざまな形にできる。また「もう1パーツ」のところにはノートPCや液晶ディスプレイの額縁部分へ引っかけるためのツメ的な突起もあり,設置自由度は高め
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こちらは実際にノートPCへ取り付けたところ。Razerの考えるKiyo運用法,第一といったところか。可動部が2か所あるので狙った角度で安定させやすい
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こちらはネジ穴を使ってスマートフォン用の簡易三脚に取り付けたところ。重要は170gしかないので,スマートフォン用のものでも十分に支えられる。ちなみにここで組み合わせている三脚はいわゆる100円ショップで購入したもの
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「折り畳んだ状態で手に持って使う」という運用もやりやすい
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 LEDリングライトの中央に配置されるカメラは有効画素数約400万画素で,720p(1280×720ドット,プログレッシブ走査方式)では最大60fps,1080p(1920×1080ドット,プログレッシブ走査方式)だと最大30fpsに対応する。視野角は81.6度でオートフォーカス対応だ。
 ハイエンドではないが,ハイクラスではあるスペックといったところで,実際のところゲーム実況の場合,プレイヤーの映像は画面の一角に表示する程度になるはずだから,その前提に立てば十分なハードウェア仕様と言っていいだろう。

 また,録音周波数48kHz,サンプリング周波数16bit,感度−38dB/Paというスペックのマイクも内蔵している。音質にとことんこだわるというのでもない限り,Kiyoだけで配信者の撮影環境は整えられるわけだ。

 さて,LEDリングライト側には12基のLEDが入っている。リングの外周部は調光ダイヤルになっており,回すと,消灯を含む12段階の明るさ調整が行える。

リング側面のダイヤルを回すとLEDリングライトが点灯する。ディフューザー(diffuser,散光器)付きなので,最大輝度にしても「ものすごくまぶしい」と感じることはあまりないだろう
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折り畳んだ状態でも,もちろんLEDリングライトは光らせられる
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 ただ12段階と言っても,リニアに明暗が分かれる感じはしない。甘めに見ても調整できるのは消灯を含んだ4段階くらいといった印象で,「消灯と最大輝度(=11段階め)だけ」と割り切って使ってもいいのではないか。

 明るさは1mの距離で10ルクス。室内の照明が普通に点灯している状況というより,室内を若干暗くしたような状況を想定したスペックのように思われる。実際,部屋を明るくしていると,最大光量であってもKiyoの効果は「顔に落ちた影が和らぐ」程度だ。なので,Kiyoを運用するときは,若干薄暗い状況を基準に配信環境を整えるのが望ましい。

 実際にあれこれ検証したが,Kiyoを配信者から0.5mくらい離した状態を基準にすると,配信者にとって都合のいい距離を掴みやすいようだ。

配信者の正面にKiyoを置くイメージ。薄暗い部屋で,配信者から0.5mくらい離したところに置いた状態を基準にいろいろ調整するのがお勧めだ
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こちらは同じような距離で室内の照明を入れた状態。顔を中心に影を柔らかくできているので,これはこれで良好な映りになる
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顔のアップで使うときはもっと接近したほうがいいだろう。ただ,接近しすぎると眩しく感じられてしまう可能性はあり,その場合はLEDリングライトをトレーシングペーパーで覆ってみるのがいい
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これくら近くに寄るときれいに光が回るが,ゲーム配信用で使うことはあまりないだろう。あと,けっこう眩しい
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ちなみにこちらは0.7mほど距離を取り,かつ配信者の斜めに置いてみたテストのもの。Kiyoのような小型光源はなるべく対象の近くに設置して光を柔らかくするのが基本的な使い方となるので,離しすぎると,とくに明るい環境では狙った効果が得られなくなる
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 カタログスペックによると色温度は5600K。とくにちらつきはなく,また目視レベルだと色温度のブレ幅もそれほどないようだ。デジタルカメラで撮影してみても色はほぼ一定だったため,室内照明と合わせる場合にも都合がいいものになる。

真っ暗な部屋だととくに青白い感じになりがちである
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 ただ5600Kなので,一般的なPCディスプレイの色温度である6500Kと比べると若干青白い光となる。後段でテスト動画を示しているので,そちらをぜひチェックしてほしいと思うが,距離と肌の質いかんで,「色的に良好とは言いにくい」ケースも生じうる点は注意が必要だろう。
 KiyoはWindowsのクラスドライバを利用する製品で,「Razer Synapse 3」(や「Razer Syanpse 2.0」)にも対応せず,ドライバソフトウェアによる色合いの調整には対応しない。そのため,ただ薄暗い部屋というよりは,暖色系の間接照明を置いた環境のほうが配信環境は整えやすいはずだ。あるいは暖色系のデスクライトとKiyoを組み合わせるというのもアリだろう。

リングライトの一部にオレンジ色のフィルターを貼ってみるのもアリだが,色のバランス調整が大変なので,苦労と試行が好きな人向けのプランとなる
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 Kiyo単体での回避策としては,フリーウェアに多くあるWebカム用アプリケーションを使用して色合いを調整して,その結果を「Open Broadcaster Software」(以下,OBS)などといった配信用アプリケーションへ入力するという方法がある。ただ,それも自宅の環境と合わせていくとなると試行錯誤は必須となるので,面倒と言えば面倒だ。


「カメラと照明,マイクを1台で完結させやすい」点に魅力を感じるならアリ


 実際に運用してみると,よく考えられた製品だと思う。設置方法に自由度があるため,ノートPCに設置した状態から手で持ったり,さらに机上へ置いて自立させたりといったことがとてもやりやすい。手前にカメラを傾けることができるため,配信者の手元を映すといった場合も最小限の手間で済む。

配信中に手元を映したいといった場合に,Kiyoは難なく対応できる
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 総じて,配信中におけるアングル変更のしやすさは,ほかのWebカメラと比べてかなり上だという印象だ。また,とそこそこの性能があるため,これ1台で配信環境を完結させることができるのもいい。

 というわけで,稲森美優さんにあれこれと試してもらった動画を使い,ここまでの評価をおさらいしていこう。先に示した動画も含め,キャプチャに用いたアプリケーションは「OBS Studio」(Version 21.1.2)で,録画設定はプリセット「超高品質,ファイルサイズ大」で,エンコーダは「ソフトウェア(x264)」を使用した。音声のサンプリングレートは44.1kHzだ。
 配信向けの前提で映像をチェックしたい場合は,再生画面を小さくすると雰囲気をつかみやすいと思う。


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 照明を付けた状態ではオートフォーカスの速度も申し分なく,光が届く範囲も分かりやすい。一方で肩のあたりに注目するとトーンジャンプが頻繁に発生しており,そもそもフルHDやハーフHDといった解像度で使うのではなく,ゲーム画面の片隅へ入れ込む用として割り切った設計になっている印象がある。
 次に照明を消した状態だと,オートフォーカスの遅さが目立つ。ただ,ゲームプレイ中,配信者はそれほど動かないので大きな問題ではなく,むしろ室内の光量を落として部屋の中をあまり見せないようにしたいときに使えることのほうをより注目したい。
 気になるのは前述した色温度で,暗い環境ではかなり青白く映るため,色合いをなんらかの形で調整したくなるというのが正直なところだ。

製品ボックス
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 というわけで,Webカメラとして評価した場合,Kiyoの描写性能は劇的にいいものではなく,色温度などを調整できるソフトウェアもないため,差別化できるポイントはLEDリングライトと融通の利く可変構造くらいということになる。
 それでいて価格はWebカメラとして明らかに高めなので,ここはかなりのネックとなるが,「照明もマイクも全部Kiyoだけで完結させやすい」のが,ほかにない魅力なのも確かだ。あれこれ追加で揃えるのが面倒だとか,Webカメラの設置環境に制限があるとかいった場合には,Kiyoが選ぶべき配信用Webカメラの第1候補になるのではなかろうか。

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